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普通の市民にできる草の根外交運動:パレスチナの人々の命と尊厳を守るために

Yoko Marta
25.01.24 05:04 PM Comment(s)

普通の市民にできる草の根外交運動:パレスチナの人々の命と尊厳を守るために

最近、イギリスの独立系新聞ガーディアン紙に、ユダヤ系カナダ人女性ジャーナリスト・作家・映画製作者・アカデミックのNaomi Klien(ナオミ・クライン)さんが、パレスチナの人々の基本的人権と自由、安全が保障されるためには、イスラエル政府が日々行っている国際法違反や戦争犯罪をやめることが必要で、そのために国際社会がプレッシャーをかけ、イスラエル政府が国際法を守るようになるまで、私たち地球上の誰もができることについて、寄稿していました。
ここから読めます。
ちなみに、「Naomi」という名前は、イギリスでも北アメリカでも、「ナオミ」ではなく、「ネィオミ」に近い発音のことが多いです。

ヨーロピアン時間では、明日(2024年1月26日(金))、南アフリカ共和国がICJ(International Court of Justice/国際司法裁判所)に提訴した、イスラエル政府によるパレスチナ人へのジェノサイド(集団虐殺)について、Interim ruling(インテリム・ルーリング/暫定的な判決)が出される予定です。ジェノサイドについての判定には数年かかるので、今回の暫定的な判決では、実際にジェノサイドが起こったかどうかより、「これからジェノサイドが行われる可能性がある(=虐殺が起こる可能性をとめる措置を取る必要性がある)」という部分にも焦点があてられます。
ガーディアン紙の記事は、ここより。
南アフリカ共和国の提訴内容は、よくまとめているという評価が多いようですが、ジェノサイドと認める基準はとても高く、現時点で、国際司法裁判所が出せるのは「イスラエルへの即時停戦命令」ではなく、「イスラエルが一般市民への被害をもっと減らすように/人的援助を(イスラエル政府が)ブロックしないように」程度になることを予期している専門家の意見もあります。
結果がどうであろうと、南アフリカ共和国の提訴は勇敢で、モラルのある行動を国際社会に示しています。
南アフリカの提訴に反対しているのは、ドイツやアメリカ、イギリス等の西側諸国で、多くのほかの国々はサポートしています。
アラブの国々の声が聞かれないのは、アメリカのサポートなしではやっていけない国々がほとんどで、アメリカの機嫌を損ねることを恐れて黙っているのではないか、という専門家の見方もあります。アラブの国々の多くは専制政治で、国民の声は政治には反映されないものの、即時停戦を求める市民のデモンストレーションがあちこちで起こっているのを見ても、アラブの国々の多くの国民の望むことは明らかです。
国際司法裁判所の決定は法律的に効力があるものの、Enforcement(エンフォースメント/強制)はできません。そのため、イスラエル政府は、自政府にとって気に入らない判決だった場合は無視するだろうと見られています。ただ、無視すれば、国際社会からのプレッシャーは大きくなるだろうことは、予測できます。

この判決がどうでようと、ナオミさんが記事で述べているように、私たちには、できることがあります。

実は、もともとの記事は、15年前に書かれたもので、それについ最近加筆したものです。
ナオミさんは、15年前の2009年に、イスラエル政府・イスラエル軍が行ったパレスチナ人に対する大量殺人(22日間で、1400人のパレスチナ市民が殺害された。イスラエル側の死者は13人だが半分以上は兵士)が起こったことを機に、沈黙を破り、イスラエル政府に対しての非暴力のボイコット運動(BDS)に参加することを公に呼びかけました。
この決定は、ユダヤ人である彼女にとって、簡単なことではありません。
ユダヤ人コミュニティーから「裏切者」と思われるのではないか、という恐怖はずっともっているそうです。
でも、彼女は、イスラエル建国前後より長年にわたって何度も繰り返されるイスラエル政府のパレスチナ人市民大量殺害に耐え切れず、自分の良心にしたがって行動することを選択しました。

彼女が呼びかけたのは、イスラエル製品やイスラエル農作物に対してのBDS(Boycot, Divestment and Sanctions/ボイコット・投資をやめること・経済的制裁)活動に加わることです。
ナオミさんも指摘していますが、これはユダヤ人に対してではなく、イスラエル政府に対してであり、イスラエル政府が国際法を遵守するようになるまで続けます。
長年、イスラエル政府が国際法に違反していることはたくさんありますが、その中でも以下を求めています。
・ パレスチナ地域の違法占拠をやめる
・ アパルトヘイト政策をやめパレスチナ人全員(パレスチナ系イスラエル人も含めて)に、ユダヤ系イスラエル人と同じ基本的人権と自由を保障する
・ 国際法に違反して逮捕・投獄されている多数のパレスチナ人の釈放
・ 国際法に違反するパレスチナ人への不当な暴力・殺人をやめる
・ユダヤ系イスラエル人により暴力や家屋の破壊を通して追放され現在も隣国や国内で難民となっている人々が帰還できる権利(国際法でも認められている)

同じ手法はさまざまな場所や時代で使われています。

一つの例は、南アフリカでアパルトヘイト政策(白人が10パーセント、有色人種が90パーセントの社会構成の中、もともとヨーロッパから植民地支配者としてやってきた白人が現地人の黒人を支配・搾取・システム的な人種差別や殺人・暴力を長い間行い続けた)を崩し、初めての黒人である大統領ネルソン・マンデラさんが民主主義的に選挙で選ばれたのは、根気強く行ったBDS活動の結果でした。
地球上の多くの人々が、当時のアパルトヘイト政策を批判し、南アフリカの製品や農作物を買うことを拒否し、有名人が南アフリカのラグジャリーなホリデー・リゾートへ行くことを拒否、コンサートを行うことを拒否等が続き、多くの企業は南アフリカのアパルトヘイト政府と関連していることが自企業の全世界のビジネスにネガティヴな影響を与えることが明白になり、南アフリカから撤退した結果、南アフリカの当時のアパルトヘイト政府が、経済的に立ち行かなくなり、アパルトヘイトを諦めざるを得ない状況に追い込まれたからです。
多くの人々がこのBDSは、非暴力手段でありながら、とても効果的であることを理解しています。
このイスラエル政府に対するBDSは、パレスチナ人政治家で人権擁護を掲げるOmar Barghouti (オマール・バルグーティ)さんが創始者の一人です。
オマールさんは、このBDS活動に対して2017年にガンジー平和賞を受賞しました。その際にも、アメリカでの授賞式に参加するために飛行場(パレスチナ地域はイスラエル政府の軍事コントロール下にあり、空港もなければ、ガザ地域を数秒出るにも多くのチェックポイントがあり、門限もあり、イスラエル政府の許可なしでは地域外にも出られなけば海外に行くこともできない)へ行く途中にイスラエル警察に逮捕され、パスポートも取り上げられました。
実際、これは国際法違反のはずですが、西側諸国はイスラエル政府の国際法違反については、長年、目をつぶって受け入れています。
さまざまな方面からイスラエル政府へのプレッシャーがあったおかげで、なんとかアメリカの授賞式には参加することができたそうです。

国際法でパレスチナ領と定められている場所にも、ユダヤ系イスラエル人が違法占拠を数十年にわたってどんどん広げていますが(イスラエル政府・イスラエル軍がバックアップ)、違法占拠をしているユダヤ系イスラエル人には門限やチェックポイントもなく、イスラエル市民に適用される(市民)法が適用され、基本的人権や自由が保障されています。
それなのに、同じ地域に合法的に住んでいるパレスチナ人たちには、イスラエルの軍事法が適用され、10人以上の集まりには許可が必要、理由や証拠なしの逮捕・投獄・子供の逮捕や投獄もイスラエルが自由に行え、裁判なしで長年拘束されたり(国際法違反)、軍事裁判にかけられる(裁判官は往々にして法の専門家ではなく、軍人)、ハイテク偵察機器による24時間監視等が続いており、基本的人権も自由も全くありません。
また、イスラエル兵がパレスチナ市民を殺したり、国際法違反や戦争犯罪をパレスチナ市民たちに行っても、イスラエル兵やイスラエル政府が責任を取ることがない状態は、イスラエル建国前後(1948年)からずっと続いています。

多くの植民地国が、多大な犠牲を払って独立を獲得したのは20世紀半ばで、フランスの最後の植民地のアルジェリアが、当時のアルジェリア人口の10~15パーセントを独立における闘争で失った後にフランスを追い出したのは1962年であり、いまだにSettler Colonialism(セトラー・コロニアリズム/移住者がもともとその場所に住んでいた原住民の土地を盗み、原住民を軍事的・社会的に支配・搾取、システム的に差別)を続けている場所は、地球上でも歴史的パレスチナ地域だけと見られています。

アルジェリアの場合も、フランスは最後の植民地国を手放すまいと、信じられないレベルの残虐なアルジェリア人殺害を行いましたが、結局は、ほかの場所から土地や資源を盗みにきた人々(白人系ヨーロピアン=フランス人)が、原住民であるアルジェリア人のように、自分たちの家族や家、土地を守るために闘っている、その土地や文化・歴史に根付いた人々に勝てるわけはありません。
フランスの植民地時代には、イギリスを含めた多くの植民地宗主国や南アフリカのアパルトヘイト政府が行った手段「Divide and Rule(ディヴァイド アンド ルール)=支配する人々を民族や部族等に細かくグループ化して、優遇するグループや悪く扱うグループを作り、支配される側の人々の間に憎しみをつくりだし、支配側に不満が向かないようにする仕組」を使い、マイノリティーだったユダヤ系アルジェリア人を、多数派のアラブ系アルジェリア人と比べて、かなり優遇したために、アルジェリア独立の後には、多くのユダヤ系アルジェリア人はフランスの手先と認識され、フランスに移民するか、イスラエルに移民するしかなかったそうです。
旧植民地宗主国に住んでいる人々で、植民地支配を正当化・美化したりノスタルジアのように語る人々もいますが、彼ら/彼女らは、歴史を理解していないか、知りたくない人々(自分や自国は常にイノセントで常に正しいと思っている、思いたい人々)です。

ナオミさんも含めて多くの学者や法律の専門家が指摘しているのは、イスラエルのパレスチナ人に対する戦争犯罪や毎日の国際法違反が年々悪化しているのは、イスラエル政府が何をやっても責任を取らされない状況が続いているからだとしています。これは、ユダヤ系イスラエル人のジャーナリストの一部も合意しています。

これを成り立たせているのは、特に歴代アメリカ政府による、外交カバー、軍事援助・資金援助等です。
外交カバーは、国連でイスラエルが国際法に沿って罰せられそうになると必ずVeto(ヴィートー/拒否権の発動)を行うことも含まれ、長年、これは続いています。
また、イスラエル政府は、国際法で定められたパレスチナ領へのユダヤ系イスラエル人の違法占拠をやめるよう勧告を受けても、無視し続けていますが、西側諸国の政府はイスラエルに対して経済制裁も行わないし、イスラエルは何でもやりたい放題で、結果についてなんの責任もとらない状況が数十年にわたって続いています。
これは、パレスチナ人にとってとても死につながるような悪い結果をもたらしているだけでなく、イスラエルに住んでいるユダヤ系イスラエル人の心身にも、イスラエル国家自体も毒して、内側から崩壊が既に始まっていると指摘しているユダヤ人もいます。
政府や国家がやりたい放題で全く責任を取らない状態が続いていれば、イスラエル兵士だって、パレスチナ人市民を国際法違反となる悪い扱いを行っても責任を取ることはないと分かっているので、さらに行動が悪化するのは明白です。
今回のガザ侵略においても、イスラエルの軍事法においても禁止されている行為であり、戦争犯罪にもあたる行為を堂々とSNSにあげているイスラエル兵士たちもたくさんいることで驚きの声もありましたが、これも、今までの(パレスチナ人へ)何をしても罰せられないということから、エスカレートした結果だと見られています。
昨日(2024年1月24日)放映されたイギリスのITV(アイティーヴィ)ニュースでは、イスラエル政府から安全地帯だといわれていた地域に爆撃・地上での攻撃が始まり、イスラエル兵士に今すぐテントを去れと追い出された人々のうちで、なぜか兄は去ることを許されず、かつ他の親戚もその地域にまだ残っていたため、なんとか家族を救出しようと、白旗を掲げた男性5人に、ITVニュースのジャーナリスト・カメラマンがインタビューしていました。
インタビューが終わった後、この男性5人は白旗を高く掲げ、両手をあげ(武装していないことの証明)、とてもゆっくりと慎重に歩いていたのですが、1分もしないうちに、イスラエル兵からの絶え間ない射撃が始まりました。これは、ITV(アイティーヴィ)ニュースのカメラマンが撮影しているし、イスラエル兵士たちは、このパレスチナ人男性がインタビューに答えていた市民であることは分かっていたはずです。
インタビューに答えていた男性は胸を打たれ、一緒にいた4人の男性は射撃が続く中、なんとか男性を射撃が届かない場所に運ぼうとしますが、その間も射撃はとまらず、いったん男性の身体を地面においた後、射撃の合間をぬって男性を安全な場所に移そうとしますが、それでも射撃はとまりません。カメラには、走りさるイスラエル兵が撮影されていました。
これは、明らかに戦争犯罪ですが、ジャーナリスト(ジャーナリストであることを示す目立つベストを着用)が撮影していることを知っていながらも戦争犯罪を行えるのは、絶対に責任を取ることはないとイスラエル兵士もよく分かっているからです。
ジャーナリストが撮影していることが分かっていながら戦争犯罪が平然と行われているなら、ジャーナリストがいないところでは、もっとひどいことが起こっていても不思議ではありません。
今までも、イスラエル兵士がパレスチナ市民を射殺したことは何度もあり、記録も残っていますが、罰せられたり、責任をとった兵士はいないようです。
なぜなら、国際社会(西側諸国)はこれらを無視して、「イスラエルは中東の唯一の民主主義国で、ホロコーストで迫害されたユダヤ系ヨーロピアンがつくった国で、彼らはいつもイノセント(=大量虐殺を経験した民族が戦争犯罪や虐殺を行うなんてありえない)である」という奇妙な論理を展開します。
この無法ぶりは、他の国々にも影響します。
国際法があっても、イスラエルのように常に違反をして責任を取らない例外だってあるのだから、自分たちだってそうして構わないはず、と国際法をみんなで遵守して安全な世界をつくろうという仕組も崩れます。

ナオミさんは、上記について興味深い考察をしています。

すべてにおいて、(イスラエル政府がパレスチナ人に対してやることは)年々、悪化しました。
硫酸のような辛辣なことば、怒り、(独りよがりな)正しさの主張。
明らかに、パレスチナ人に対するイスラエルの扱いを裏打ちするimpunity(インピュニティー) ー(批判や痛みに関する)無感覚さや、アンタッチャブルであるという傲慢さーは、静的な力ではありません
それは、まるで(海上への)石油流出のように振舞います
いったん流出すると、外にむかって浸透し、その通り道にあるすべてのもの、すべての人を汚染します。それは、広範囲に広がり、深く沈んで浸透します。

Impunity(インピュニティー/犯罪や悪いことをしても罰を受けない/責任を逃れられる)が支配するとき、すべてが変化し、動きます
植民地の境も含めて。
イスラエルの怒りに満ちた決意は、(ハマスが2023年10月7日に行った戦争犯罪)の罪を最大限に利用して、現在の政府高官が長年夢見てきたことを行うことです。

それは、ガザ地区におけるパレスチナ市民の人口を減らすこと:
現在、イスラエル政府が行っているのは、パレスチナ市民の直接的な殺人(爆撃、射殺等)とDomicide(ドミサイド)と呼ばれる大量の家屋破壊、飢餓・飲料水不足によるのどの渇き・伝染病の拡大。
最終的には、パレスチナ人大量追放
それは、ガザ地区におけるパレスチナ市民の人口を減らすこと:
現在、イスラエル政府が行っているのは、パレスチナ市民の直接的な殺人(爆撃、射殺等)とDomicide(ドミサイド)と呼ばれる大量の家屋破壊、飢餓・飲料水不足によるのどの渇き・伝染病の拡大。
最終的には、パレスチナ人大量追放

これは、ある国家に対して、ならず者国家になることを許した(当然の)結果です。
本当にあったユダヤ人が集団的に迫害されたトラウマを、再現のない言い訳やカバー・ストーリに利用し、Impunity(インピュニティー/(国際法違反・戦争犯罪)を数十年にわたっておかしつづけて、その結果の責任から完全に免れている)を(国際社会、特にアメリカとヨーロッパを中心とした西側諸国が)許した結果です。
このようなインピュニティーは、一か国だけを飲み込むだけでなく、(その国家に)味方するすべての国々を飲み込みます
ナチスが行ったホロコーストをきっかけとして、さまざまな国々が努力して作り上げた国際人道法の構造すら飲み込みます。
もし、私たちがそれを許すなら

イスラエル政府は、BDSがとても効果的であることをよく理解しており、さまざまな手段を使い、さまざまな国や州でBDSをブロックすることに成功しています。
「反ユダヤ主義」であるとすぐに裁判にもちこむことで、裁判に勝てると分かっていたとしても、裁判を行うための資金が十分でない団体も多く、時間もお金も多額にかかる裁判にいける団体や個人は本当に少数です。こうすることで、BDSについての議論さえブロックしています。
The UK(イギリス、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの連合4か国)でも、Public body(公共団体)がイスラエルに対するBDSを行うことを禁止する法案が、今年(2014年1月)に議会で可決され、貴族院へと提出され、そこで議論が行われることになります。
ドイツでは、もっと極端なやりかたでイスラエル政府に対するBDSを禁止しているようです。
ナオミさんでさえ、イスラエル政府への批判やイスラエル政府に対するBDS活動への賛同をおこなっていることで、ドイツで講演することをキャンセルされたそうです。
ドイツは、20世紀初頭に、現ナミビア(以前の植民地国)に対して虐殺を行ったことが認定されています。
国際法で「虐殺」に関する法律ができる前に起こったことで、ドイツ政府は、やっと事実を認めて、賠償金の支払やなんの賠償も行わないことを条件に謝罪はする、と決めたようですが、このナミビアでの虐殺があった記念日のあたりで、南アフリカから提出された「イスラエル政府によるパレスチナ人虐殺」について、「イスラエルは全く虐殺を行っておらず、南アフリカの訴えに大きく抗議する。私たちはイスラエル政府に完全に賛同する」という内容の表明を公式に行ったことで、ナミビアの政府高官から(正当な)辛辣な批判をされていました。
「虐殺」の定義がつくられたのは、ホロコーストの後なので、ドイツ政府が主張する「ナミビアでの虐殺は、虐殺に関する国際法が制定される前に起きたから、なんの賠償もしない」というのは、同じ論理をつかうなら、ホロコーストにも適用されるはずですが、そうはなっていません。
以前の植民地国の有色人種の人々の権利や命を、白人ヨーロピアンとくらべて非常に軽くみているという図式がクリアーに見られるようになってきているということでもあるかもしれません。
本来、誰の命も平等に尊いものです。

BDSは困難に何度もぶつかっても、まだ続いています。
ユダヤ系イスラエル人のジャーナリストでさえ、「イスラエルにパレスチナ人に対する殺戮をやめさせるには、国際社会が鍵となる。イスラエルは自分自身では変わることはない。フォーミュラはシンプルです。イスラエルがパレスチナ占領について罰せられたり、代償を支払うことがなく、責任を取ることがなく、人々(ユダヤ系イスラエル人たち)が日々の生活でその(代償や罰)の効果を感じない限り、何も変わりません。」

既に多くのパレスチナ人市民、多くは女性と子供、が殺されましたが、「Better late than never(ベター・レイト・ザン・ネヴァー/決して行動しないよりも、遅くても行動したほうがいい)」ということばにもある通り、私たち一人一人の市民が、この戦争の終結・パレスチナ領の占拠をやめさせる・パレスチナ人が安心して基本的人権と自由が守られる環境をつくる手助けをするために、BDS活動に参加し続け、イスラエル政府に国際法を遵守するようプレッシャーを与え続けるのは大切です。
ハマスもテロリスト組織と西側諸国から認定されていますが、もともとは、イスラエル政府からの暴力的支配や、パレスチナ領でのイスラエル兵からのパレスチナ人市民や子供への絶え間ない暴力、武力や殺人を伴ったパレスチナ人の土地の強奪等が続いていることに対する抵抗運動だったようです。
実際、オスロ―合意の話し合いが続いている間も、イスラエル政府はパレスチナ領から土地を盗むことを続けており、法律も合意も無視するような無法な政府には、国際社会がプレッシャーをかけて法律や合意を守らせるべきなのですが、当時も今も、イスラエル政府は、原住民であるパレスチナ人から土地を盗みつづけ、その犯罪についての代償を払わされることもなければ、責任をとらされることもありません。
不当な占拠や支配に関しては、国際法で武力を伴った抵抗も認められており(市民への暴力や病院等への爆撃はもちろん違法)、不当な占拠や支配が終われば、これらの組織が存在する意義がなくなります。
でも、こういった抵抗組織が存在せざるを得ない状況では、どんなに抵抗組織を攻撃しようと、またほかの抵抗組織が生まれるのは確実です。

南アフリカも、アパルトヘイト政府打倒には、武力を使った抵抗運動、非暴力(DBS)抵抗運動を続け、数十年かかりましたが、結果的には実現しました。
多くの場合、抑圧政策を永久には続けられません。
例外は、カナダやアメリカ、オーストラリアのように、白人系ヨーロピアンが、その土地の原住民を殺戮し土地を盗み、殺戮しきれなかった原住民は狭い土地に閉じ込め、そこから出られないようにしたり、原住民の子供たちをさらって、親や部族から無理やり引き離し寄宿舎学校に住まわせ、原住民のことばや文化を禁止し、キリスト教・白人ヨーロピアン文化をたたきこみ、侵略者側(白人ヨーロピアン側)に暴力的に同化をはかりつづけたことです。
カナダでは20世紀終わりまで、原住民の子供たちを親から奪ってさらっていたそうですが、ほとんどのカナダ人はその事実を知らないそうです。
自国に都合の悪い事実を歴史から消し去るのは、どの国でも共通でしょう。
でも、事実を知ることは大切だし、歴史の教科書に記載されていないことも、現代では、比較的簡単に調査して知ることができます。

私たちには、まだ希望が残っています。
私たちは既に21世紀の半ばに入っていて、特に若い人々は、植民地や人種差別等の抑圧の仕組を、鋭く見抜くことができる世代です。
歳をとっている世代も、自分たちが信じ込んでいたことから一歩離れて、歴史を調べ、さまざまな資料や記事、ニューを見て、自分で何が起きているかを判断しなおすことは可能です。

イギリスやアメリカのように、自国政府がイスラエル政府の戦争犯罪や国際法違反に目をつぶり、無条件で完全にイスラエル政府をサポートする国にいても、BDS活動に参加し、少なくとも自国政府の不正義の政策の共犯者にならないことは可能です。
南アフリカでのBDS活動のように、世界中の国々の市民がこれに加われば、時間はかかっても、確実に状況は変わります。

私たちには、この不正義を変えていくことができるし、ある程度安全な国に生きている私たちには、変えていくよう行動する義務があります。 

[参考]
国連機関(OCHA)の歴史的パレスチナ地域での殺傷者数データ
https://www.ochaopt.org/data/casualties

Yoko Marta