The Green Catalyst
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人事プロフェッショナルのあるべき姿ー2

Yoko Marta
19.05.21 04:56 PM Comment(s)

Purpose(目的)- Evidence-led(証拠に基づく)

  Evidence-led(証拠に基づく)と聞くと何を想像するでしょうか?

  例えば、警察での調査だと、さまざまな証人や証拠をさまざまな角度から見て判断することとなるでしょう。ただ、通常の仕事の場面でそこまでの完全さは必要とされないでしょうし、そんな時間もないでしょうが、働く人々、企業や社会にとって良いインパクトを与える良い決定をするためには、Critial thinking(クリティカルに物事を考えること)と手に入る限りでの一番良い証拠・事実が大切となるでしょう。この「証拠・事実」とは、自分の体験や、一般に言われている常識や逸話、誰かから聞いた話や一般に信じられている知恵とは全く異なります。人は誰でも自分が働いている会社や部署、育ってきた環境や国の文化等に影響されバイアスをもっていますが、人事プロフェッショナルとしては、それらのバイアスを意識、把握しバイアスをできる限り少なくし、客観的な証拠・事実を集め、さまざまな角度からクリティカルに検証し、最終的な決定に至ることが必要です。私自身、ロンドンで20年以上、さまざまな国籍の人々と働いてきましたが、自分のバイアスを理解してクリティカルに考えられる人々は、教育レベルや国籍に関わらず存在します。自国の小さな村に住んでそこから出たことがなくても、その場所での特定の文化や考え方に縛られず自由に考えられる人々もいれば、様々な国々で様々な国籍の人々と働く機会があっても、自分が育ってきた国や地域の考え方が一番正しいと主張して周りにもそれを押し付けずにいられない人々も存在します。自分が常識だと信じていることや当たり前だと思っていることほど、なぜ自分がそう信じているのか興味をもちながら、検証してみる必要があるでしょう。それには、リサーチペーパーを読むのもいいし、社会問題等をさまざまな国籍やバックグラウンドの人々と話してみることも有用でしょう。適切なリサーチペーパーを探したり、読み込んで分析したりする技術は人事でも、他の職種でも今後も重要なスキルであり続けるでしょう。

 日系企業で働くヨーロピアンにとっては、状況について事実を説明しているのに、日本人マネージャーから「言い訳をするな」「とにかく(自分に対して)謝れ」と話を中断されることに戸惑うということもよく見聞きしました。日本で育った人々にしてみると、上司に何か言われれば、理由や事実が分からなくてもとにかく謝るということも普通と感じる人も多いのかもしれませんが、ヨーロッパでは、まず客観的な事実をお互い把握し、そこからベストな解決方法を導き出すのが普通です。目的はあくまでも、「問題を解決する」ことであり、感情的な対応をすることはアンプロフェッショナルと見なされても仕方ないでしょう。また、ヨーロッパでは「謝る」ということは、実際に何か大きな間違いをしたことを認めることであり、「謝る」ことと、間違ったことに対する「対策・行動」はセットになっており、特に後者の「行動」は一番重要な点となります。日本のように形だけ謝り、その後は何もしないということは、まずありえません。実際に問題があると認識しているのであれば、何が問題なのかを明確に言語化し、冷静に客観的な事実と証拠をもとに話合う必要があるでしょう。お互いの事実の認識にズレがあることはよくあることでしょうが、さまざまな角度から必要な質問をしつつ、できる限り正確なピクチャーを見ることで、より良い解決方法が見つかるでしょう。

 常に、目的(働く人々や会社、社会により良いインパクトを与えていく)にフォーカスしていれば、やり方はいろいろであっても、正しい方向に進んでいけるでしょう。

Yoko Marta