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人事プロフェッショナルのあるべき姿ー3

Yoko Marta
21.05.21 06:15 PM Comment(s)

Outcomes-driven

  Outcomes-driven(結果主導)と聞くと、ビジネスでの利益をいかに多くするかと思うかもしれませんが、CIPDでは、「結果」は、大きな目的である、「より良い仕事、働く人々のためのより良い仕事人生をつくる」と直結している必要があると定義しています。フェアでインクルーシブな職場をつくり、企業や働く人々が属する広い意味での社会に貢献します。生産性を上げたりビジネスとして利益を上げていくことは重要ですが、これは前述した大きな目的が先にあり、正しい方向に進んでいれば結果もついてくるということになります。働いている人々をモノのように見なし、利益を出すための道具だとする考え方は、ここでは全く存在しません。
 「ヨーロピアンは怠け者=残業をしない」という不思議なことを言われたことが何度もありますが、基本的に彼らは就業時間内で仕事をよいクォリティーで完了します。残業が生じるということは、本人の能力不足(時間管理ができない等も含む)か、マネージャーが管理できていない(マネージャーとしての仕事を果たしていない)ということになり、該当する原因により、適切なサポートや対応がなされます。また、就労時間は会社との契約書に記載されている合意された時間であり、それ以外の時間は個人の時間であり、会社がコントールする時間ではないという概念は一般的だと思います。私たちのアイデンティティは複数であり、会社員というのも、父親、息子、地域のサッカー指導者、イギリス人といった様々なうちの一つでしかありません。日本のように上司に延々と平日に飲み会に付き合わされるというのはなく、イギリスの場合は、金曜日のお昼に、同僚たちとパブに少し長めに行ったり(これは仕事をきちんと時間内に終わらせている限り大目に見てもらえる)、或いは、木曜か金曜の夕方にパブで飲みたい人が飲んでいて加わりたい人が加わる(家が遠い同僚は20分くらい参加して去る等)、会社での人付き合いも緩やかです。もちろん、上司にお酌だとか、あり得ず、みんな平等です。
 ただ、ヨーロッパで残業を誰もしないわけではなく、緊急事態でどうしても必要となった場合などは、積極的に残業します。ただ、この緊急事態というのは、1年に1回起こるか起こらないかのレベルであり、もし緊急事態が月に1回起こるような状況であれば、それは本当に緊急事態なのか、或いは緊急事態がそんなに頻繁に起こるということは仕事のマネージメントができていないということで、マネージャーの責任が重く問われ、緊急に改善することを迫られるでしょう。また、ヨーロッパでは一般に男性も共同で子育てしているので、子供の送迎等で突然の残業は無理な場合も十分にありえます。こういった緊急事態に責任があるのはマネージャーなので、部下が残業できなかったからといってその後不利に扱われることはありません。緊急事態を起こさないように最大限の努力(計画、実行、管理)、或いは緊急事態に備えての対応計画はマネージャーの責任範囲と明確です。
 残業が特定期間、恒常的に行われる場合、例えばイギリス本社の200人程度の部門が丸ごと東南アジアにオフショアされることになり、東南アジアの新同僚たちに仕事の引継ぎを3か月程度で行う、といった場合は、会社と雇用者の間で話し合いが設けられます。事前に、残業条件(残業時間代は通常の時間給の2.5倍、残業時間の上限は1週間で18時間以内、晩御飯がビュッフェで提供される、帰りはタクシー代が出る、ホリデーの上乗せ等)が労使間で合意され、契約書が作成され署名を行います。さまざまな事情で残業できない人は、残業しないことが普通に認められます。家庭の事情(子供が難病を患っていて頻繁に病院に行く必要がある等)は、性別に関わらずきちんと考慮され、同僚やマネージャーも協力的で一人の人間として尊重されていることを感じます。私が経験した限り、こういった家庭の事情は夫婦間で公平に分担され、男性同僚も家庭の事情で早退したり、育休の取得も当たり前のように行われていました。ただ、イギリスの場合、育休は北欧のように充実していないので(その代わり北欧と比べて税金はずっと低い)、給料が高いほうが働き続けないと家のローンの支払いが大変なので、男性は短い育休で女性が長めに取得することはどうしても多くなるようです。男性も子育て・料理と分担しているのも普通なので、ITエンジニアとして働いていたときは、同僚はほぼ男性ばかりでしたが、今日の夕食は何にするか、とかアイロンがけをいかに早くするか等を普通にみんなで話してました。日本で、女性に一方的にこういった料理や子育てが偏っているのを見て育ってきたので最少は不思議でしたが、男性同僚の一人に「料理も掃除も生きる上での必要なスキルの一つでしょ。病気や身体的な理由で不可能ということを除いて、それができない、したくないってあり得ないし、そんな基本的なことができない、って人間として恥ずかしいことだよね。しかも子供は夫婦二人の子供なんだから公平に面倒見るのが当たり前でしょ。」と言われて、納得しました。 

Yoko Marta