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Contract ー 契約書

Yoko Marta
21.06.21 04:21 PM Comment(s)

契約書とサイン

※2024年3月 更新

イギリスを含めたヨーロッパでは、働く際に必ず契約書を交わします。
通常は、仕事のオファーがあった後すぐに契約書が届くはずですが、カジュアルワーク等の場合でも、働く初日には必ず契約書が交わされます。
もし、契約書が届かない場合、提示されない場合は、必ず雇用主に確認しましょう。
また、きちんと読む時間を与えられず、とにかくその場ですぐにサインしろと言われても、サインしてはいけません。必ずきちんと読んで、疑問がある部分は確認し質問して、すべてに納得できた後にサインしましょう。契約書を読み込むのに2~3日もらうのはごく普通です。できれば、現地人で既に数年働いている人にチェックしてもらう、或いは彼らがサインした他の会社の契約書との内容と比較してみるのもお勧めです。契約書は、通常は2部あり、雇用者と労働者が両方にサインして、1部ずつお互いに保管しますが、もらえない場合は、必ずその場でコピーをもらえるよう依頼し、きちんと受け取って保管しておきましょう。
ヨーロッパ内でも、「日本人同士なのに信用しないのか」と恫喝され、契約書がないまま働き始めたり、契約書を読まないままサインしてしまったために、後から払われるはずの給与が払われなかった等のトラブルも聞きました。
「日本人だから信用しろ」という言葉を聞いたら、まず警戒しましょう。
特定の国籍の人々が全て、遺伝的に誠実で正直なんてあり得ません。しっかりと目を開いて観察し、疑問点は明確に質問し、自分の身は自分で守りましょう。場合によっては、その場からすぐに立ち去ることも必要です。そのためには、その国の法律をしっかりと理解していることが必要であり、問題があったときにどの機関に相談したらいいのかを知っておくことも重要です。


イギリスの場合は、働く際の契約書についての政府からの情報がここに記載されています。
また、仕事上の問題も含めたさまざまな市民の問題を無料で相談できるCitizen Adviceの記事はここから読めます。
決まりは変更される場合もありますが、BBC News等を見ていれば自然と耳に入ってくるので、現地のニュース番組や信頼のおける新聞は読んでおくことをお勧めします。知人からの情報を鵜吞みにするのではなく、政府からの正しい情報を必ずチェックし、必要に応じてCitizen AdviceACASといった専門機関(無料)に相談しましょう。英語に自信がない場合は、通訳(先述した機関では無料)もお願いできます。外国人の英語にも慣れているので、連絡することを恐れる必要はありません。

 

以下に、現時点での Citizen Adviceからの情報をざっとまとめています。
イギリスは他のヨーロッパ諸国と比べると、労働者の権利は弱いのですが、日本のように正規・非正規といった区別は基本的にないので、短期やテンプで働いていても日本と比べると格段に労働者の権利が強いです。外国人ということで、弱い立場にはありますが、自分でできうる限り正しい情報を得て、フェアな環境で働きましょう。

 

まず最初に、法律で定められたもの、ギリスの最低賃金2023年4月1日からは、21歳以上だと11.44ポンド。2023年3月31日までは、23歳以上だと10.42ポンド。毎年4月1日に変更されます)、ホリデーの権利5.6 weeks paid annual leave a year、ゼロ時間契約にも適用)等)は、最低限保障されています。契約書がない場合も同様です。契約書に法律以下の条件が記載されている場合は無効です。上記を満たしていることを前提として、下記の事項が契約書には通常含まれています。

  • 時給或いは年棒、残業代、ボーナス
  • 働く上での規定の働く時間や曜日、残業にあたる時間帯 (最大限の残業時間は法律で定められています。基本的には週48時間が最大労働時間です。ただし、雇用者と労働者の両者の合意の下に上記以上の時間で契約書にサインすることも可能。)
  • 休日賃金とホリデー日数・時間数(Holiday Pay ※法律での最低保障は5.6 weeks paid annual leave a year。よくある例としては、フルタイムだと1年目は、20日/年。パートタイムで、フルタイムの半分の時間働いているとすると、フルタイムの人の半分の10日/年。ゼロ時間契約でもホリデーはあり)※病欠した日数がホリデーから引かれることはまずありません。 
  • リストラの際の支払金(redundancy pay
  • 解雇・免職の際にどの程度の期間を雇用者が与えることが必要か (通常は、2回のWritten warning(書面での警告)があり、3回目は解雇可能。ただし、深刻なもの、暴力や横領等の犯罪だと即解雇もあり。会社の大きなRedundancy等の場合は、Garden Leave1か月~3か月(通常通り給料は支払われるが、会社へは行かず、会社の社員証やパスはすべて返却)という場合も)

上記は必ずしも契約書に記載されていると限らず、Staff Handbookや会社から送付された手紙等に記載されている場合もあります。受け取った契約書、メール、Staff Handbook等はすべて自分で保管しておきましょう。また、サービス残業という概念はありません。法律では、何がWorking Hoursとしてカウントされるかがこちらに記載されています。日本ではサービス残業は普通かもしれませんが、イギリスでは違います。自分の権利はきちんと把握しておきましょう。
上記でWorking Hoursとしてカウントされるものの一部は以下です。
所定時間を超えて普通に働いていれば、当然残業と見なされます。

  • 仕事場、或いは仕事場の近くにいて、Standbyですぐに働ける状態で待っている(ただし、休憩時間ではない。休憩時間は自分の働く場所から離れていることができ、中断されることはない。雇用主が休憩時間が終わる前に仕事に戻れという場合は、休憩と見なされない)
  • 仕事の一環として荷物が届くのを待っている、次のシフトの人を待っている
  • 同じ雇用者の下で働く場所が数か所あり、一つのアサインメントの場所から次のアサインメントの場所への移動時間
  • トレーニング、或いはトレーニングへ向かう間の移動時間

休憩時間は、6時間続けて働いた場合は20分の休憩が法律で義務付けられています。ただし、休憩時間は時給は通常支払われません。先述した法律では、前日の仕事が終わってから次の仕事を始めるまでに最低11時間開けることが義務付けられています。(例/前日の夜8時に仕事を終了。翌日は、朝の7時より前に働くことは違法)また、一週間のうち、連続24時間全く働かない期間を設けるか、2週間のうち、連続48時間全く働かない期間を設けることが法律で定められています。もし雇用者が法律に従わないようであれば、丁寧に質問して話し合い、それでも解決しない場合は、専門機関のACAS、或いはCitzen Adviceに相談しましょう。雇用者が口頭で言ったこと、メール等はすべて記録に残しておきましょう。

 また、契約書にわざわざ記載されていなくても、暗黙の契約というものがあります。例えば、お互いへの信用(例/病気で休むと申告したが嘘だった=信用という暗黙の契約を破った)、お互いにCareする(安全な環境で働ける職場を提供するのは雇用者の義務。ハラスメントのない職場環境をつくる、必要に応じて安全に必要なヘルメットやトレーニングが与えられる等)、道理の通る範囲で雇用者からの指示に従う(違法なことをするよう指示するのは、道理が通らないので、従う必要は全くなし)等です。最後の「違法なこと」については、違法と知りながら行った場合は共犯となります。食品を扱っている職場で賞味期限を書き換える等の指示があった場合は、なぜかを質問し、きちんと説明してくれない、或いは脅すような態度を取られたという場合は、働いた分はきちんと支払ってもらい、仕事は去るしかないでしょう。もし経済的な事情等で、どうしてもすぐに仕事を去ることができない場合は、何が起こったかを正確に記録しておき、すぐに専門機関のACASかCitizen Adviceに相談しましょう。


ジョブエージェンシーを使うことによって、ある程度のトラブルは避けられますが、エージェンシーによっては、賃金をよく見せるためにHoliday Payを時給換算にいれて広告する等(例/時給は最低賃金だが、Holidayは全く取得せず換金して支払われるものとして、Holiday Payを含めた賃金を時給として提示。8か月契約等で雇用者・労働者ともにHolidayを取得する代わりにHoliday Payの支払で合意することを前提としている場合あり)、誠実とは言い難いケースもあります。仕事を比較する際には同じ条件で比べないと意味がないので、詳細までしっかりと確認しましょう。また、別の記事でも書きましたが、病欠で休む場合は、通常Holiday日数から引かれることはないし(特にヨーロッパ大陸だと病欠には寛容)、通院で半日休むといった場合もHoliday日数から引かれることはないはずですが、契約書をきちんと確認しましょう。会社によっては、フレックスタイム制で、理由に関わらず休んだ時間数を一定期間のうちに残業等でカバーする形式(これはイギリスで存在しました)というのもあります。ただし、どんな契約だったとしても、病気やケガで長期に渡って休む必要がある場合は、国からの保障があります。
イギリスの日系企業だと、日本人だけが通院の際にHoliday日数を使うことを強要されたり、残業代が出ない契約(イギリスもヨーロッパも通常は年棒契約で残業がないことが前提)なのに日本人だけが残業を強要されるケースを耳にしましたが、労働者とのしての権利は正確に把握した上で、どう対応するかを決めましょう。
会社の経営者がどこの国籍であろうと、イギリスであればイギリスでの雇用法が雇用主にも労働者にも(雇用主・労働者の国籍に関わらず)適用されます。あまりにもアンフェアな環境であれば、転職せざるを得ないかもしれません。その際は、半年から1年程度長期的に見つつ、転職活動をスタートさせましょう。転職活動中も最低限の仕事上でのパフォーマンスはカバーし、余裕があれば、次のステップアップに役に立ちそうなスキルに特に力をいれる(現時点での会社でも役に立ち、次の会社にも売り込める)といいでしょう。
日本と違って、就職・転職する際は、通常二か所からReference(リファランス/推薦書)が求められることが多いです。
通常は、会社で働ている間に転職活動を行い、良い転職先が見つかり、Job Offer(Conditional offer(コンディショナル・オファー/条件付きのオファー(リファランスを確認してから、DBS(犯罪歴チェック)を通過することが条件等))である場合も含めて)が出たときに、現在働いている会社に離職する旨を告げます。そのため、リファランスは、転職先からJob Offer(Conditional offerである場合も含めて)が出たときに現在の会社のマネージャーや人事からリファランスをもらうこともあれば、それより過去の職場からもらう場合もあります。ただ、どこかでリファランスが必要になる可能性はあるので、できればよい関係を保っておくことは大切です。リファランスについての決まりは、ACASのサイトのここから確認できます。
リファランス先として指定された人には、転職先のマネージャーや人事が電話やメールで確認を取る場合もあります。
もし、会社が倒産してしまい雇用主やマネージャーに連絡の取りようがなくて2通揃わない、或いは、働いていない期間があり、2通そろえるのは難しいといった場合は、ボランティアをしていた機関からのリファランスや、周りの人(家族・親族は除く)からのCharacter Reference(キャラクター・リファランス/人柄を保証するような推薦書)でも代用できる場合もあります。
また、会社によっては、在職した期間、職種、職位のみをリファランスとして発行する決まりになっている場合もありますが、これも通常はリファランスとして通用します。

リファランスの書き方については、Indeedのサイトに大まかなことがざっと記載されています。
日本人マネージャーだと、リファランス(英語)を書いたことがない、といった場合もあるかもしれないので、上記からサンプルをつくり、それに修正・付け加えをしてもらうのも、相手に大きな手間を与えないということでいいかもしれません。
さまざまな事情で、当面、どこかの企業で働かないけれど離職するという場合は、離職する際にリファランス・レターをもらっておきましょう。


アンフェアな環境だと、同僚たちも不満がたまっている可能性があるので、転職活動については黙っておいたほうがいいでしょう。転職エージェント等に登録する際は、現時点で働いている会社には転職先が決まるまで秘密にしておくことを確約しておきましょう。エージェントによっては、誰かが転職を考えていると相談されたときに、その企業に対して、「新しく人が必要ではないですか」という営業をかける場合もあります。プロフェッショナルであれば、誰かが辞める相談にきたとは言うはずはありませんが、念のために釘をさしておきましょう。以前勤めていた会社の上司や同僚とつながっていれば、ぜひ声をかけておきましょう。イギリスを含めたヨーロッパでも、そういったつながりから良い就職先につながることはよくあることです。 

Yoko Marta