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リクルートメントへのAI技術の活用ーイギリス

Yoko Marta
23.06.21 05:44 PM Comment(s)

自動履歴書選考とAIチャットボットとのテキストでのやりとりの一次試験

 イギリスでの最大の人事プロフェッショナルボディーのCIPDでのフェスティバルは終わりましたが、まだWebinarを聴講することが可能です。その中で印象に残ったのは、AIの活用。

 パンデミック下で、スーパーマーケットでの雇用を一気に増やす必要性が出てきて、あるチェーンではその時点での人数と比較して22パーセント増加分の人々を1か月で雇用する必要性に迫られました。そこでは、数千もの応募数に対してシステム(AIを活用し、模範となる社員のデータセット等を活用)で履歴書を自動選考し、一次試験はAIチャットボットとテキスト会話。そこをくぐり抜けた人々に対して人間同士でインタビュー。期限内に必要な人数を雇用でき、実際に雇用された人々の定着率や満足率も、通常の方法(履歴書を人事がチェックして、面談等も進めていく)と変わらなかったそうです。もちろん、システムを開発した企業の意見も入っているので、必ずしも公平な見方とは言えませんが、多くの人数を短期間で雇用できたのは事実であり、今後もこういったある程度仕事内容がシンプルであるものに対しては有効な方法なのかもしれません。新規雇用だけでなく、企業内部でのタレント開発にも大きな力を発揮するようです。例えば、会社内でオンラインでのトレーニング(従業員が何を勉強するか選択可、外部のUdemy等である可能性も)を行い、Certification(例/データ分析の資格)を取った場合は、それをシステムにアップデートしておき、社内で新しいプロジェクトが発生した場合は、社内で必要なスキルを持っている人々を部署等に関係なく抽出してチームを形成するというものです。働く人々にとっても、自分の勉強したことが活かせ、会社にとってもわざわざ新規で雇用する費用やリスクも削減でき、ポジティブな変化といえるでしょう。会社にいる間に、どんどんスキルが増えていくのは、今後は必須となっていくでしょう。AIの活用に関しては、アマゾンでリクルートメントをする際にAIの活用で自動化しようというプロジェクトがあり、今までの模範となる従業員のデータセットを入れたところ、結局男性ばかり選ばれ(それまで男性が圧倒的に多かったから)履歴書抽出の段階で、今までの男性優位のバイアスがさらに強調された結果となり、いったん諦めたというケースもありました。Kate Crawford氏が「Atlas of AI」という著書で、AIはArtificialでもInteligentでもなく、マシーンラーニング(膨大なデータセットがあり、そこからマシーンが高速分析)であり、データセットはインターネット等(Facebook等の個人写真等も含む)で個人情報の尊重ということも考えずに収集され、世界的な標準があるわけでもない形で分類、Labelingしたものであり、この分類やLabelingはバイアスも強く政治的・社会的であること、AIの歴史自体が戦争目的のために開発されてきた経緯等も含めて、国際的な基準やルール作り(基本的には多くの普通の市民のSocial Goodのために使われるべき)が必要としていて、適切な活用には程遠いところですが、今後もリクルートメントには今まで以上に使われていくことは避けられないでしょう。「Atlas of AI」は、日本語訳は出ていないようですが、明瞭な英語で非常に読みやすく、短いので、ぜひ英語で読んでみることをお勧めします。また、Kate Crawford氏は、対談等もよくされていて、これもまた明瞭な発音で聞き取りやすい英語で、分かりやすく話してくれるので、見ることをお勧めします。

 人事は、今後は人数としては減っていくプロフェッションだとしているリサーチもありますが、マシンでは測りきれないものを見ていく技術や経験をもった人のみが生き残る世界となるのかもしれません。

Yoko Marta