政治腐敗と経済の歪な仕組みが、複数国の市民に与える損害

Yoko Marta
28.10.22 04:07 PM Comment(s)

金融会社グリーンシル・キャピタルの倒産と政治腐敗

2021年8月に書いた記事を部分更新・修正)

イギリスを拠点とする金融会社グリーンシル・キャピタルが2021年3月に破綻したことは、日本のソフトバンク社が出資していたこともあり、日本でもよく知られているかもしれません。イギリスでは、元首相(2016年6月に欧州連合離脱が国民投票で決定された段階で辞任)のDavid Cameron(デーッヴィド・キャメロン)が、現政府の主要ポジションについている人々に、グリーンシルに投資をするよう強いロビー活動を行っていたことで、大きく問題となっています。キャメロン氏がロビー活動を行っていたのは、現大蔵大臣(2022年10月後半時点で、新首相として就任)のスナック氏やイギリスの中央銀行等、元首相という地位の濫用と、グリーンシルの経営状態を知りつつロビー活動を行っていたのではないか(ビジネスが破綻しているのを知りつつイギリス国民の税金をグリーンシルに投資するよう強く働きかけたのではないか)と強く疑われています。キャメロン氏の広報担当者は議論していますが、グリーンシルがキャメロン氏に2年半のパートタイムアドヴァイザーとして支払った金額は、1000万ドル(約11億円)とされています。イギリス国民の税金からは、グリーンシルを通してスチール王のグプタ氏の傘下の複数社にコヴィッド支援ローンとして貸し出された3億5千ポンド(約535億円)は返却されない可能性が高いとされています。イギリス国営放送(BBC)のPanorama(時事ドキュメンタリープログラムで)の「David Cameron and the missing billions 」で、きれいにまとめられています。グリーンシルの倫理上問題があると思われるビジネス形態については、Sustainable Japanさんの記事に日本語でうまくまとめていました。ここより。
キャメロン氏は、ロビー活動について政府の監査機関からの調査にかけられましたが、「法律には触れていない」という結論となりました。この監査機関のトップは、グリーンシルを通してのグプタ氏への会社へのコヴィッド支援ローンを扱った法律会社で長く顧問をしていた経緯があり、キャメロン氏のことも良く知っており、監査役としてふさわしくない(個人の関心や利益が今回の調査とぶつかる)、との声もありました。監査がまともに行われなかったのではないかと、現政府のオポジションでである労働党からも疑問の声があがっています。キャメロン氏と現首相(2022年8月に辞任に追い込まれた)のジョンソン氏は同じ男子全寮制のイートンに通った友人でもあります。キャメロン氏の妻のサマンサさんは、英女王の遠い親戚であり、元首相であることと、イートン出身であること、父もファイナンスで富を築いたことで、特権階級からきていることは否定できないでしょう。
キャメロン氏とグリーンシル氏の関係は、キャメロン氏が首相であった時代から続いています。
2012年にグリーンシル氏は、政府へのサプライチェーンファイナンスをアドヴァイスし、2014年には、政府へ、無駄の多い政府からの契約の改善を行うために(サプライヤーがベストな価値を提供する)正式に雇われました。
ちなみに、2012年にレックス氏が推していた建設会社のCarillion社(カリリオン)は大きな損害を出して2018年に倒産しました。グリーンシル氏にとっては、世界の主要人物とつながりのあるキャメロン氏は大きな資産であり、実際に、キャメロン氏はグリーンシル社の専用ジェットで、サウディアラビアやさまざまな国にとび、投資案件を取り続けていました。

キャメロン氏が主張しているのは、「自分はビジネスのことは何も知らなかった。多くのビジネスは英国民にとっても有益だと信じて疑わなかった」。BBCでもGuardian Newspaper(政治腐敗を研究している学者の記事)でも、ビジネスのことを知らなかったというのは技術的に事実だったとしても、ビジネスの内容や状態を知らずに、自分の元首相という地位を利用してありとあらゆる手段をつかってロビー活動をしていたのは無責任だし、知っているべきだったとしています。
実際に内情を知っていてロビー活動を行っていたのであれば犯罪です。
この事件が示しているのは、ユニバーサルな現象で、友人や家族が高い地位にいる人々には特権的なアクセスがあり、彼らには(彼らの能力や仕事に対して)不釣り合いな不当に高い報酬が与えられ、特権階級優遇の不平等な現状をさらに強めている。
誰もが平等にそれぞれの力を発揮できるようにという考えとは正反対。
特権階級に生まれ落ちたのはキャメロン氏のせいではありませんが、特権を自分の利益のためだけに使い、英国民の大きな税金だけでなく、多くの投資家をMisleading(間違った方向に導いた)したことに関わっていたことは倫理上とても問題があるし、それを倫理上問題と思えないのは、さらに問題でしょう。
BBCのインタビュー時のグリーンシル氏は、問題のあるビジネスのやり方で、大きな損害をドイツ政府、イギリス政府、クレジットスイス社等がカバーしないといけない状況に陥れた張本人であるにも関わらず、終始、他人事のようでした。
損害については保険会社がカバーするべきで自分は関係ない(保険会社は既に契約を切っておりカバーしない)、領収書が実際に有効なものであるかどうかをチェックするのは自分の仕事じゃない(領収書が存在しないもの、領収書が不正なものがかなりあったことについて。彼のビジネスは領収書を信用の指標としてお金を出しているにも関わらず)。
グリーンシル氏は会社が破綻するまでに、多額の給料を自分に対して支払っています。
少数の欲深い人々が、いろいろな国の多くの市民に損害を与えるのは今回が初めてではなく、終わりでもないでしょう。
ファイナンスの仕組はもっと厳重なルールで厳密に監査される必要があるでしょう。
特権階級は、ファイナンスの自由を奪うと経済が悪くなり結果的に一般市民が仕事を失ったり不利益を受ける、という論理が好きですが、惑わされてはいけません。彼らの意図は、自分と既に特権階級に属している家族や友人の特権を守り拡張することであり、特権階級以外の人々の苦難や損害については何とも思っていません。
経済は、一般市民の生活を守るもの、良くするためのものであるべきで、一部の特権階級をさらに優遇するためのものではありません。

私たち小さな一市民にできるのは、こういった事件について正確な情報を知り、本質を理解し、不正を働く政治家には投票しない、国会でもう一度監査がまともに行われるよう署名に参加する等でしょう。
大多数の国民が政治を的確に理解するようになれば、政治家も政治も変わらざるを得なくなります。
長い道のりですが、一般市民が団結して、大多数の一般市民のためにとって良い社会や政治を求めていくことで、確実に未来は良い方向に変わっていくでしょう。私自身は、その日を自分の目で見ることはできないかもしれませんが、今の子供たちや若い人々に、より良い社会を残すのは、誰もの責務でしょう。