The Green Catalyst
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セクシャルハラスメント グレイゾーンについて 2/3

Yoko Marta
24.05.22 03:41 PM Comment(s)

前回の記事はここより。
今回は、Red Flag System(ハラスメントに対する自衛手段)について。
【序章】
まず、自衛手段を語る前に、確認しておくことがあります。ハラスメントは、加害者が標的と定めた人に対してコントロールをし支配するという決意からきています。加害者以外に、この決意を変えさせることはできません。そのため、どんなに強力で精工なバウンダリーを作っても、Red Flag Systemを含めた自衛手段の効果は限定されたものとなります。ただ、この強力なバウンダリーを持つことで、以下の3つの点で助けとなります。
1.自分が悪かったのではないかという罪悪感の罠にはまらない 
2.ハラスメントを認識する鍵となる、自分の正当で根拠のある正確な感情を認める
3.助けを求める
 また、ヨーロッパでは当たり前に子供の頃から教えられていますが、子供でも女性でも誰でも、自分の身体は自分のものであり、他の人の所有物ではありません。肩をたたくぐらい、という人もいるでしょうが、あなたが許可しないのであれば、他の人にあなたに触れる権利はないし、他の人があなたに誰かとハグするよう強制することもできません。あなたには、それらを明確に拒絶する権利があります。あなたの身体的・精神的なバウンダリーはあなたが決めるものであり、他の人が決める権利はありません。また、このバウンダリーは、個人的な関係(友人、家族等)、プロフェッショナル(仕事)で違っているのが普通であり、また、状況によってあなたの自由意志でこのバウンダリーを変える権利はあなたにだけあります。
 ハラスメントに対して少しでも疑問を投げかけると、以下のような答えが返ってくるのではないでしょうか。
「君にはユーモアセンスがない」「ただの冗談だった」「ちょっとした誤解」「ここにいる誰もが(君以外は)面白いと思ってる」「(そんな小さなことで)セクシャルハラスメントと責められるなら、冗談すらいえない」
これらは、セクシャルハラスメントの標的となった人が自分自身を疑い黙ってしまうことを狙った加害者の常套手段です。もし、これらの言葉に対してなお黙らなければ、加害者や周りの人々から「雰囲気を悪くさせた、場を壊した、誉め言葉だったのに悪くとっている」等の厳しい批判を受けることになるでしょう。この社会に浸透した(間違った)ロジックの一部はこうです。「もし私たちが居心地悪く感じるのであれば、私たちのせい。なぜなら私たちが何か悪いことをしたか、何かを悪く解釈したか、或いは私自身が自分個人のバウンダリーを踏み越えさせることを招くようなことをしたのかもしれない。」これは普遍的で、社会から絶えず思い起こされなくても、既に内在化しています。グレーゾーンは、加害者が標的となった人になんの考慮も合意もなく、その人の個人のバウンダリーを踏み越え続けることによって生じます。私たちは、社会で人々と関わって生きていくのに、自分たちの経験を相対化して、自分たちを沈黙させたり、加害者のための言い訳を探したり、自分の感情に疑いを向けたりします。そのため、加害者の行き過ぎた行動に気づくのに時間がかかり、また、社会全体が加害者ではなく標的となった人を責めるような風潮が強い中では、何かを言うのはさらに難しいでしょう。このような状況では、疑いなしにこれは行き過ぎていてハラスメントだと言えるには長い時間がかかるでしょう。私たちの多くはその状況までたどり着くことさえできないかもしれません。なぜなら私たちは危機に瀕していると感じるか、加害者の過去の徐々に自分のバウンダリーを浸食していく行動で、彼らの行き過ぎた行為を認識する能力が低下させられ、ハラスメントであることを認識することが難しい状況に追い込まれているかもしれません。
 グレーゾーンという概念は、ハラスメントを隠すのに使われます。起こったことは何でもグレーゾーンで、誤解やゲーム、或いは偶発的に触った等。加害者は、標的となった人や周りの人や家父長制の社会からも、自分の行動の是非について問われず、何の責任も取らず自由に権力の濫用を行えるのを知っています。加害者の行動に対する私たちの感情が完全に無視された場合のみ、このハラスメントの境界線はぼんやりしているということができます。
この著書の2人の共著者は以下のように呼び掛けています。
  • 自分たちの人生についてよく感じる権利を取り戻すこと
  • 私たちのバウンダリーを価値あるものと認識し尊重すること
  • 誰かが私たちのバウンダリーを踏み越えたときの内面で感じることとコネクトすることを自分に再教育することと、ハラスメントを認識すること
 ただし、ハラスメントを終わらせるのは、私たちの責任ではありません。なぜならハラスメントは加害者が選択し行うことで、標的となった人々にはコントロールできません。正しい知識を持つと、グレーゾーンはグレーゾーンでないことが理解できます。変化は私たちの知識とエンパワーメントから始まります。今は、まさにグレーゾーンを解体するときです。現状は、社会は標的となった被害者を服装や行動が誘因となったと責め、加害者については「傷つける行為をしているとは気づかなかった」ということで許します。セクシャルハラスメントは直接胸を触った、強制的にキスをした等の目に見える段階で初めてセクシャルハラスメントとなるわけではありません。そこに至るまでに、長期間にわたって様々な形やニュアンスのセクシャルハラスメントが続いています。現状のセクシャルハラスメントの概念と判断は不正確です。これらは、自分たちの判断に一番注意を払うべきなのに、標的となった人々に自分たちが幻覚を見ていて誇張していると感じさせ、彼らが経験したことの重要性を消します。セクシャルハラスメントは、加害者が標的を決めてそのバウンダリーを踏み越えるところから始まります。家父長制の仕組みは、私たちに自然に備わっている内部の気圧計(直観)を混乱させ、何が自分にとってOKなのかという感覚を妨げます。ハラスメントの行動とそれにまつわる言説や神話は、ハラスメントに対する高い寛容性を社会に生み出します。最初に寛容するべきでなかった言動にも関わらず。
 ハラスメントの標的は、多くの慣習に違反することを恐れることなしに、自分たちのバウンダリーを取り戻すことは不可能です。ハラスメントのステップは徐々に起こります。例えば、加害者が性的なコメントしても周りから何も咎められなかった場合は、露骨な写真を送っても大丈夫、送る権利があると次のステップにうつるかもしれません。このハラスメントのエスカレーションが進めば進むほど、このシステムから抜け出すことが難しくなります。加害者は自分より弱い立場にある人(インターンや新入社員等)に自分の意図を隠して徐々にハラスメントをエスカレートします。ただ、これらの多くの小さなステップを一歩下がって全体としてみたときに、明らかにハラスメントだと理解することができます。私たちは多くの場合、随分時間がたつまで、バウンダリーが踏み越えられたことに気づきません。いったん、一歩下がってみたときに、実はハラスメントは長期に渡って建設されていたことに気づきます。私たちが追いつめられ、孤立させられ誰にも助けを求められないと感じるまでに、何かできないのでしょうか?我慢できない段階まで待つ必要があるのでしょうか?いったん、私たちがすべてのエレメンツ、罪悪感、恥、責任感、権威のある地位と弱い地位、これらをそれぞれが属する場所にリダイレクトすると(それらが存在するべき本来の場所に戻すー罪悪感や恥、責任は加害者に属するべきもの)、グレーゾーンはグレーゾーンでなくなります。私たちは解釈の余地があるような状況をNavigate(操縦)するのを助ける内部気圧計を持っています。もし私たちがこの内部気圧計にアクティヴに注意を払い再コネクトすると、私たちは自分たちが何が適切で何が適切でないか、何が歓迎で積極的に合意しているのか、何が私たちのバウンダリーを踏み越えているのかについて、とても優れた感覚を持っていることに気づきます。これと同時に、著者の二人は、どのようにセクシャルハラスメントが発展するのか、どう早い段階での警告を認識するかについて誰も教えてくれなかったことに気づきます。だから、彼女たちは、自分たちで仕組みを作ろうと決めました。
 著者の二人は、これらのパターンをアクションを取ることができるツールに凝縮しました。これがThe Red Flag Systemです。それぞれのRed Flagは以下のカテゴリーの一つに該当します。

【1.The Red Flag Systemの分類】
1-1. 環境要因
セクシャルハラスメントはどこでも起こりえますが、強力なパワーダイナミクスが存在する場所(ハイラルキーが強い等)、Dependencies(依存―例えば仕事の評価は直属の上司一人の機嫌にかかっており、不評を買えば仕事を失う等)やSexist Culture(性差別文化)がチャレンジされない場所だと、ハラスメントを受ける可能性がとても高くなります。 
1-2. The Good Guy Syndrome (いい人現象)
「彼がそんなことをするはずがない。」私たちが誰かのとても良い評判や人気を強調するとき、彼らの「行動」に疑問を投げかけることは難しくなります。これは特に周りの人から良い評判を持っている加害者が誰かにハラスメントをしている可能性を否定するのにこの良い評判を使っているのであれば、特にRed Flagです。その人の「評判・人気」というあり方と「行動」は分けて考えないといけません。
1-3. ハラスメントの常套手段
ちょっとした誉め言葉から始まり、”Hot and Cold(称賛したりおとしめたり)”、特別扱いしたり、周りから孤立させたりと長いリストとなります。全ては古典的なテクニックと考えられるもので、ハラスメントを徐々に積み立てていくのに使われます。
1-4. 私たちの行動
実際は何かがおかしいと感じているにも関わらず、何も起きていないと自分で自分を思い込ませようとすることや ある行動に直面したときに身体が固まってしまう等は、何かが間違っていることのサインです。 

このガイドで示されたいくつかのRed Flagは、個々で観ると問題ではないようにも見えます。誰かを暴行することは常に問題ですが、誰かを褒めることは必ずしも問題ではありません。しかし、これは状況によります。力関係が働く状況では、誉め言葉は単なる害のない楽しみやゲームではありません。誉め言葉を発した人は、その人の職権や権限を逸脱していませんか?(例/あなたのかかりつけ医、上司、担任の先生)その場合は、全体像はとても違ったものとなります。あなたは、反響や悪影響を恐れることなく、その賞賛を断りその人から距離を置くことは可能ですか?そうでないなら、これはRed Flagです。うまく機能する警告システムを持つためには、いくつかの要因を考慮に入れることが大切です。一つだけのRed Flag Systemだと非常に高いハードルを設定することになり、あなたの警告システムは反応・対応するのが遅すぎることになるかもしれません。もしあなたが自分自身に「彼らが何かとんでもなくひどいことをするまでは、そう悪くない」と自分自身に言い聞かせているようであれば、あなたはエスカレーションのレベルを見落とし、助けを求めてハラスメントから抜け出すことがとても難しくなります。いったん、あなたのRed Flag Systemを設定しはじめたら、一歩下がって状況をズームアウトし、何が起こっているかを観察する時間を取ることが簡単になるはずです。これは練習すれば練習するほど、何かがおかしいという感覚をつかむことが容易になります。問題のある行動が変化・進化した際に検知すること。あなたは、起こっていることについてOKなのかそうでないかを決めることができます。どこにあなたのバウンダリーを引くかはあなた次第で、他の人々があなたに押し付ける権利はありません。

 【2. 練習】  
実際の文献では、ブランク版(あなたが自分でどの言動がRed Flagを記載できる)と著者たち(Periodワークショップの参加者たち、自分たちのストーリーやを私たちに語ってくれた他の人と著者たちーがRed Flagとして認識したもの)がRed Flagとして認識したことを書き込んだ2つのバージョンがあります。後者からは、集団的感情の一端を観ることができ、あなたの判断をエンパワーしてくれます。 私たちが子供の頃から信じこまされてきた神話(加害者は被害者が苦痛に感じているとは知らなかった、加害者はいつもよそ者、男の性欲は特別で理性では抑えられない等)は、人々のハラスメントへの対応と認識する能力に直接影響します。この文献に例として出てくるストーリーを最大限に活用するために、この文献の「世界を変える」(59ページ)の「神話を破壊する」をチェックするよう、著者たちは勧めています。(これは、私の最終のBlog記事で紹介します)物語に終わりはありません。なぜなら、著者たちはハラスメントの初期の段階を見極める練習をあなたにしてほしいからです。
 お話は、いくつかありますが、ここでは、サンプルとして「プロフェッサー」を挙げます。実際の話より短く端折っています。
 私は、とても年を取った評判の高い教授のもとで修士課程を始めました。(The Good Guy Syndromeー良い評判、社会的に高い地位、環境要因ー不平等なポジション)
 教授はすぐに私のことを気に入ったようで私の知性を称賛しました。教授は本のプレゼンテーションに私を招待し、一番将来性のある優秀な学生だと私を紹介しました。 (ハラスメントの常套手段- 特別扱い)
 私は自分ののブログの記事のために教授をインタビューし、その記事のリンクを送りました。教授は、私のプロファイルにある写真がとても魅力的だとコメントしました。(ハラスメントの常套手段- バウンダリーの境界をぼやかす)
 授業中には、私が話している間、教授はいつもズボンのベルトのすぐ下のあたりを少しだけ偶然触っているように見えました。(ハラスメントの常套手段- セクシャルな行動)
 私は自分自身に、これは小さな害のないことで、多分なんでもないことを大きくしているだけだと、自分に言い聞かせました。(私たちの行動-自分で自分を納得させようとする)
 教授は会議にはいつでも自分を連れていき、称賛しました。(ハラスメントの常套手段-依怙贔屓)
 教授は、私の誕生日にはプレゼントをくれ劇場に招待すると申し出ました。(ハラスメントの常套手段- バウンダリーの境界をぼやかす)
 私は礼儀正しく断りましたが、教授はこのおかしな行動をやめませんでした。(ハラスメントの常套手段-Noを返事として受け付けない)
 私と教授が混んでいる会議室の後ろのほうの席に座っていた時、教授は私にくっついて座り、カジュアルに彼の手を私の膝におきました。(ハラスメントの常套手段- 望まない身体的な接触)
 教授はよく「きみは本当に優れている。君には君の才能を見えるようにする誰かが必要で、僕はそうすることをサポートするよ」私は次第に教授の論文チェックや多くの仕事を頼まれるようになりました。もちろん給料はなしで。教授は、この仕事は、サイエンスのコミュニティーと私の履歴書の上で通貨となると強調しました。(環境要因ー不平等なポジション)
 大学での競争は過酷なものでした。(環境要因ー有害な環境)
 教授の支えなしでは、ほぼ失っていたでしょう。私はこの事実をよく認識していました。同時に、教授が私をあっという間にトップに上げてくれたことと同時に、私を奈落の底に突き落とすこともできることを知っていました。
 ある会議に参加した際、その日の終わりに教授はひどく酔っ払い、泊っているホテルの部屋に戻るのに助けが必要なほどでした。(ハラスメントの常套手段- 個人的なスペースへの招待)
 私は、入室カードを教授の代わりに入れる必要さえありました。私と教授が部屋の中に入り、私が部屋を去ろうとしていたとき、教授は私のほうにきて、「自分たちはTryするべきではないか」といいました。(ハラスメントの常套手段- セクシャルなことへの誘い)

【3. RED FLAG用語】 
 行動を観る前に、あなたがいる環境を一歩下がってチェックしましょう。
[3-1.環境要因]    
3-1-1.不平等
経済的な不平等、極端なハイラルキー、低い所得、不安定な仕事、年齢、生存のために誰かに頼らざるをえない状況(経済的、住む場所、食べ物等)、誰かが「あなたのキャリアをいつでもつぶせる」- これらすべては抜本的にあなたの反応・高度する能力に影響します。
3-1-2.新人 (何かを新しく始めた人-新しく仕事を始めた、知らない町に引っ越した等)
新しく来た人として、あなたは脆弱な立場になるかもしれません。あなたは新しい場所でのシステムがどう機能しているかというルールを知りません。そのため、あなたはそのシステム(ゲーム)がどう働くかを学び、素早く適応しようとします。この状況では、権力をもつ人々にとって、システム(ゲーム)がどう働くかを彼らの都合のよいようにあなたに信じ込ませるのは簡単です。もしあなたがそれに従わなければ、あなたの地位は危ういでしょう。あなたは自分を証明したいと思うし、他の人々を満足(喜ばせたい)させたい、好かれたいと思うでしょう、だからあなたは特別に努力するでしょう。これは、「何が起ころうとも、頑張る」に基づく考えを奨励します。これは、普通だったらあなたが受容しない行動を受容するという環境を作り出します。あなたは誰も知りません。このサポートシステムの欠如は、あなたをさらに脆弱にします。
3-1-3.  有害な環境
これは、自由に話すことや異なった視点を持つことが尊重されることが難しい、或いは人々の行動に疑問を投げかけたり、チャレンジすることが難しい環境です。これらの原因は、性差別が広く行きわたり当たり前になっていたり、過酷な競争(人々は自分たちの成功によりフォーカスし、同僚や仲間への考慮や団結を示すことには興味がない)かもしれません。

[3-2. The Good Guy Syndrome (Guyと言っているがすべてのGenderに該当する)]
私たちが、「The Good Guy Syndrome」(いい人シンドローム)について話すとき、私たちは「すごくいい人だ」という評判を持っている人々が、いかにその評判を隠れ蓑にしているかを言っています。 私たちは、何百もの実話から、セクシャルハラスメントの加害者は社会で尊敬され信用されている人が多いと知っています。このイメージは高い信用性を持っており、周囲の人々はこのイメージを信じたいと思い、この人気のある人が加害者であることを証明することをますます難しくするでしょう。
3-2-1. The Friend Zone (友達ゾーン)
これは危険で、異性愛規範の概念です。「いい人だ」と言われている人が、自分たちが精神的なサポートを申し出たり、ただ単にナイスにふるまったからということで、あなたをガールフレンドにしたり、セックスを求める権利があると感じる構築です。精神的なサポートやフレンドリーなサービスという形の預金を預け、後からセックスという形で預金を引き出すことができると期待するような銀行預金口座は存在しません。これは 疑わしい概念で、セックスを借金問題にしようとしています。
3-2-2. 良い評判と社会での威信・名声、信望、威光)
誰にも好かれていて、多くの人々がその人の良い行動を目撃していて、「彼がそんなこと(セクシャルハラスメント)をするはすがない」という人は、いつでも良い印象で観られます。この人気があって好かれている人と(セクシャルハラスメントのような)ひどい行動とを結びつけることは難しく、それは加害に合った人が声をあげ、実際にあったことを周りの人々に信じてもらうことをとても難しくします。これは、周りの人々が加害者の良い評判を盾に、加害者の行動に言い訳をしたり、加害者に対する苦情を拒否するときには、特にRed Flagです。             

[3-3.ハラスメントの常套手段]
ここには、ハラスメントの話を分析しているうちに見極めた典型的なハラスメントのテクニックのリストがあります。これは、時系列の並びではなく、組み合わせたり自在に使えます。
3-3-1. 誉め言葉から始まる
これは古典的な、ハラスメントへの道を開くやり方です。誉め言葉が、不適切で心地いいものでなかったとしても、誉め言葉を言った人があなたにナイスであるように見えれば、その人の行動に疑問を投げかけるのは難しいでしょう。もしあなたが誉め言葉を言った人を好ましく思っていて、あなたがその人と同じ力のポジションを持っていれば(例/同級生や、等級も社歴も同じ同僚等で、不快に思えば復讐や反撃を恐れずに、明確に拒否を示せる対等な関係)、あなたはその誉め言葉を楽しんだかもしれません。でも、あなたは、あなたの仕事についてではなく、あなたの身体的なことに関する誉め言葉を、権力のある誰かからはもらいたくないでしょう。
3-3-2.  銅像などの台座に載せること (高い場所に持ち上げる)
典型的な巧みに人を操る加害者のパターンは、最初にあなたを高いレベルに持ち上げることです。彼らはあなたを称賛し、あなたの仕事や個性に並外れた熱意を見せるでしょう。特にあなたがその環境で新人であり、不安で経験が十分でないとき、またその環境下の多くの人々を知らないとき。これは、精神的・感情的な依存を作り出すことを意味します。加害者は、最初にあなたがこの依存関係に慣れるようにします。彼らは、あなたが自分への自信を与えるために承認を求めているのを知っています。
3-3-.3. 依怙贔屓・特別扱い
誰かがあなたに、他の人にはしないことをして、あなたを「特別な人」にするとき。例えば、飲みにいく、イベントにあなただけを招待する等。この特別なポジションは、はじめは魅力的に見えるかもしれませんが、コインの裏側では、周りの人々からあなたを遠ざけ、孤立化させます。これは、あなたを選別し、周りの人々に手を差し伸べのを難しくさせます。これは、罪悪感の罠へとよくつながります。あなたは最初は喜ぶかもしれませんが、心地悪く感じ始めても思い切って他の人に話すことはしないかもしれません。なぜなら、あなたはそのときまで「特別な人」というステータスを楽しんでいたことを恥ずかしく感じているからかもしれません。
3-3-4. The Good Old Times (懐かしく良かった時代)
「The Good Old Times」は、加害者の若いころや、「ワイルドな経験」を指しており、(自分も話しているのだから、あなたも自分のワイルドな経験等を話すべきだと)誘い込み、あなたの個人的な情報を引き出すやり方。
3-3-5. 救世主
もし誰かがあなたを「守る」のに飛び込んできたり、あまりも良すぎる何かを申し出るようであれば、それは全く純粋・正真正銘なものではないかもしれません。私たちは、友達が仕事とは思えない仕事、まるで彼女が夢に思っていたようなものをJob Offerとして受けとった話を覚えています。彼女は最初はわくわくしましたが、彼女が興味を示したところ、ダイナミクスは変わり、それはもっと怪しげなものになりました。その夢のような仕事の話は、彼女とは完全に違う意図を持っている人の影響下に彼女を誘い込むためのやり方でした。もしあなたが、同じような状況にあったら、目を開いたままにして。そこには、取引・交換があるかもしれません。
3-3-6. Playing Hot and Cold (称賛したり、冷たくしたりを繰り返す)
誰かに対してあるときは称賛し、次の瞬間には残酷な言動をするのは、標的を精神的(感情的)に加害者に依存させるために使われる手口です。あなたの行動が称賛されるときもあれば、次の瞬間には、ひどくけなされ、あなたは混乱します。このような不安で不確実な状況では、標的をコントロールするのが容易になります。そのような行動(Playing Hot and Cold)は心理的なプレッシャーを作り出し、予測不可能なため、セクシャルハラスメントだと気づくのが難しくなります。
3-3-7.  バウンダリー(境界線)を曖昧にする
これは、友情と恋愛関係の間、或いは、プロフェッショナルとプライヴェートな生活の間でもあります。曖昧なバウンダリーだと、どの地形で自分が動いているのかを分類するのがより難しくなります。これは、仕事に関係すること、それとも既にとても個人的なこと?これはまだ友達同士なのか、それとも既にもっと親密でただの友達ではないのか?これらのバウンダリーは、どんどん計画的に(意図的に)動かされます、仕事というコンテクストだと、会社は大きな家族で、すべての雇用者は友達だと偽って主張するような場合。このダイナミクスは、加害者に、潜在的にとても多くのグレーゾーンを開く機会を与えます。このような環境では、境界線が(加害者によって)ぼやかされたとき、人々の安全を保障する行動規定のような固定された規則を引き合いにだすことがさらに難しくなります。
3-3-8. 相互関係の罠
誰かがあなたに何かをしてくれると、あなたはその人に借りがあるように感じるかもしれません。そのため、あなたはその人に何かを頼まれると断るのを難しく感じるかもしれません。たとえ、その頼みがあなたがお返しだと思うようなこととは完全に違っていても。(例/友人とシェアして借りていたフラットを突然の仲たがいで、すぐに出ていかなければならず行き場所がすぐに見つからない。長年の親友が自分のフラットのカウチで次のフラットが見つかるまで寝泊まりすればいいと言ってくれる。少したってから、その見返りにセックスがあって当然だろうと言われ、迫られる→ この長年の親友が、あなたへ貸しがあると思うのも間違いだし、見返りとしてセックスを求めるのはほぼ犯罪。あなたの望まないセックスを強要されれば、それは犯罪)
3-3-9. 個人的なスペースへの誘い/おびきよせ
個人的なスペース(加害者の家なのか、泊っているホテルの部屋なのか)、コミュニケーションの方法をスイッチすること(例/会社や大学の正式なメールからカジュアルなものに、或いは個人のメッセンジャーに)なのかに関わらず、これは交流を公衆の場から遠ざけ、境界を曖昧にすることに貢献します。そのような孤立したスペースだと、加害者たちは誰にも見られていないと感じ、標的に対して完全なコントロールを行使します。これは、ハラスメントに対して苦情をあげる人々に対してよく使われる手段であることに注意してください。(ハラスメントに苦情を言っている人を狡猾な手段で、プライベートな空間に誘い込み、さらにハラスメントをエスカレートさせる)加害者は、周囲の人々に「彼女がそれを望まないなら、そもそもなぜ彼女は誘いを受け入れたんだ?(なぜ個人的なスペースへ行ったんだ)」という疑いを持たせるように操作します。
3-3-10. 加速
突然、何かが変わったように見えます。ダイナミクスはシフトしていて、何もかもがとても速く動き、あなたは再調整も、なぜ状況がそのようになっているのかという理由も分かりません。あなたは以前の状態を復元しようとしますが、最大限に努力するものの、状況は復元できません。加害者があなたを引きずり下ろすとき、あなたは彼らから離れることができません。なぜならあなたは、自分をまた引き上げてもらうのに彼らに頼らざるを得ない状況だからです。
3-3-11.  相手が断っているのに、それを絶対に受け入れない
健全な社会的関係であれば、人々は、あなたが「No」と言ったときにそれを受け入れるべきです。「No」は「No」です。もしあなたの「No」が軽視され、「No」と言っている行為を続けたり、彼らに立ち向かったときに攻撃的になったり、またあなたが断ったときにあなたにプレッシャーを与えたり、新しい日時を即座にセットアップして立ち去る(逃れる)ことを許さなかったり、可能な逃げ道をあなたに全く与えなかったり。これらは明らかにRed Flagです。
3-3-12. 文化の違いを口実にする
加害者は、不適切な行動について抗議されたとき、彼らの行動は「彼らが育った場所では普通」だという口実で、「文化の違い」を言い訳にします。これは、標的を黙らせ、彼らの行動をささいなものとし、誰にも邪魔されずに加害を続けることを許します。また、これはあなたに対して、あなたの文化や出身、その他のアイデンティティによって、ある行動は基本的にOKだという期待を置きます。(例/有色人種の女性は、植民地エキゾチックの神話によると、「荒々しいのが好き」)
3-3-13. 座興をそぐ人(場を壊す人)、とあなたのことを呼ぶ人
これは、あなたのレジスタンスを黙らせ、あなたのバウンダリーを設置する権利を否定することです。
3-3-14. 加害者は何をしているかよく知っています
加害者があなたを追い詰めハラスメントを行っていることを隠そうともせずに、あけっぴろげに言う、またはジョークを言うときは、Red Flagです。
3-3-15. 性的な目で観ること、性的な行動・コメント・提案
もしあなたが、明確に言葉にして合意していないのに、性的な目で見られたり、性的な行動・コメント・提案を加害者にされたとき、反響や報復を恐れることなしに「No」と言えない状況にあるとき、これはRed Flagです。性的な意味での合意した関係外(恋人同士・夫婦以外)では、それらは不適切です。私たちのリサーチでは、これらの静的な性質の行動は、出し抜けに起こるか、とても不適切なコンテクスト(例/職場でのメッセージ)で現れます。これは、あなたの不意を打ち、驚かせ、あなたの「No」という能力を減少させます。
3-3-16. 望まない身体的な接触
望まない身体的な接触と性的暴力を何でもない小さなこと、とするのは、私たちの身体と私たちのバウンダリーを私たちを引き離します。誰かがあなたの合意なしにカジュアルに触ったり、あなたに暴力をふるったりレイプするのは、どれも許されないことであり、通常は違法です。

[3-4. 私たちの行動]
ハラスメントを受けている人の行動や反応は、決してハラスメントの原因ではありません。ただ、あなたの反応は何らかの情報を持っていると私たちは思っています。不快なコメントや行動、状況に対するあなたの反応は、あなたの直観が何かがおかしいとあなたに警告を与えようとしています。私たちは、私たちのInteglity(整合性)を脅かす何かに対しての反応を黙らせ、私たちの感情を取るに足らないものとするレベルまで、被害者を責めることを内在化しています。これらの行動をここではよく観察し、これらを何か問題があることのインディケーター (表示器)だとして理解します。
3-4-1. 自分で自分を納得させる
これには、(ハラスメントが起こっていることが)事実であることを自分では知っているのに、その事実を払いのけることから、それを真実であると信じることを拒むことまでさまざまなものです。自分を説得は、以下のようなものか、以下のうちの一つから始まり、ほかのものへ移ります。
ーあなたは、(ハラスメントが起きている)事実を払いのけます
ーあなたは、加害者の行動は無害、偶然、或いは自分が神経過敏、誇張している、作り上げている(想像)だとして自分自身を納得させようとします
ー別の言葉でいうと、あなたは不快な状況があなたの心から消えるよう多くの感情的な労働をしています。あなたは、あなたの内部であなた自身の感情と交渉しています
ー あなたは自分自身がどう感じるかを否定しています。
-あなたは他の人の行動に言い訳するのに大きな努力を払っています
3-4-2. 直観
あなたの身体は、何かがおかしいとあなたに警告しようとするときがあります。それは、あなたの腹部、胸部、或いは内部の声があなたに語り掛けているかもしれません。これらのシグナルがあなたに伝えることに注意を払っていれば、間違ったことにはなりません。この能力を取り戻すのには時間がかかるかもしれません。特に、もしあなたがハラスメントや虐待を生き延びたのであれば。
3-4-3. 自動的な沈黙
あなたが積極的に自分自身を黙らせようとし、何が起こっているか誰もが知らないように確認しているときは、恐らく何かが起こっています。ステレオタイプは、ここでは大きな役割を果たします。私たちは、私たちの外見や、彼らが私たちから性的な好意を期待するからでなく、私たちが私たちであることに興味をもってもらいたいと思っています。残念なことに、この家父長制社会では、いまだにここに行きつきます;有色人種の女性は、ワイルドなセックスを望むと確信されている、成功した女性は彼女らがボスと寝たのでその地位にたどりついた、もし私たちが男性にナイスでいたいなら、彼らとセックスしなければならない。。。一方では、私たち女性はこれらについて非難されます。その一方で、これらは自動的に確信されます。そのため、ここには出口はありません。すべてのケースで、私たち(女性)は常に間違っているということになります。性別ステレオタイプは、私たち女性を価値のないものと決めつけ、私たちがこの世界に存在すること、私たちのために立ち上がること、私たちのために 遠慮なく話すことの正当性を奪います。
3-4-4. 礼儀正しい受け答え
あなたは相手の気持ちを傷つけたくないので、礼儀正しく答えるかもしれません。衝突・対立を避け、問題を回避することで、この問題が消えると期待するかもしれません。私たちは、良い意図を信じるよう教え込まれ、本当に適切な行動ではないと最初に感じたことを飲み込み、そのような(不適切な)行動に、丁寧に対応せざるを得ないと感じます。
3-4-5. 自分自身を責めること
覚えておいてください。あなたが言葉に出して明確にセクシャルハラスメントを頼んだわけでなければ、あなたは頼んでいません。もしあなたが誰かがしたことについて、自分自身に責任があると思うなら、それはRed Flagです。
3-4-6. 身体が固まって動けないこと
これは、あなたの脳が心理的、身体的なひどい害悪に対してあなたを守る反応です。とりわけ、望まない身体的なことへの注目や、あなたが不意をつかれたとき。これはとてもよくあるリアクションで、悪く感じたり罪悪感をもつ必要はありません。ただ、このリアクションは何かがおかしいことを指している可能性が高いことに留意してください。

Yoko Marta