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よりよい社会のために -「子供の保護」

Yoko Marta
20.06.22 04:11 PM Comment(s)

すべての子供たちと若い人々は、安全でいる権利があり害から守られるべき

「子供の保護」と聞くと何を思い浮かべるでしょう?

イギリスでは、「子供」は法律的に、18歳未満の子供たちを指します。

私自身、2014年、2015年当時、子供向けのチャリティー団体で規模の大きかった「Kids Company」のボランティアとしての審査、トレーニングを一通り受けましたが、「子供を守る」ための仕組はかなり厳格です。残念ながら、私がトレーニングを終えた直後の2015年に「Kids Company」は経営上の問題で倒産しました。

子供向けのボランティアとして働くには、「犯罪歴」のチェックが必要で、以前に住んだことがある国すべてに問い合わせが行われます。この「犯罪歴」は最新のものが必要で、発行後2年で有効期限が切れ、取り直すことが必要なものでした。また、職場や友人等からの推薦状も必要でした。
その上でチャリティー団体の担当者とのかなり深いインタビューがあり、子供に危険を及ぼさないか、子供を利用して自分のニーズを満たそうとしていないか等(誰かから好かれたい願いを子供を使って果たしたい等)のチェックが行われます。フレンドリーですが、いかに子供の安全性を守るか、という点について非常に真剣でした。

印象に残っている質問は、子供から「絶対に誰にも言わないって約束する?」と聞かれたら、どうするか。
悩みながらも、私が答えたのは「私は、守れない約束はできない。あなたに身の危険がある場合は、あなたの安全を守るために、あなたを守ることができる人に言う必要がある」

インタビュワーも、これは、多くの人々が陥るジレンマだけれども、正直に明確に彼女/彼の安全が第一なので、それが脅かされる状況の場合は適切な機関や人々に伝えることを言う必要があると言っていました。

嘘をつくと、完全に信頼を裏切ることになります。

このチャリティー団体で扱っていたのは、貧困、親の不在、親のケアをしている等のさまざまな問題を抱えた子供たちでした。「貧困」といってもさまざまで、子供たちの抱える問題について、より深い討議がなされます。
また、自分自身に精神的なサポートがしっかりとあるか(家族や友人等)も聞かれました。子供たちの中には、非常に辛い経験をした/している子供たちも多く、それを聞く、目の当たりにすることによって、精神的に不安定になる人々も少なくないそうです。そうなると、自分にも子供たちにも良くない状態となるので、自分のことをよく理解していることは必須です。

基本は、自分が自分の足でしっかりと立って自立していて、自分のことをよく理解して、助けが必要な場合には適切な人々や機関に助けを求めることができる、ということでしょう。また、自分と他の人々とのバウンダリーを適切にひけることも重要です。

このインタビューに合格した後は、3回、他のボランティア候補と一緒に、1回につき数時間の研修を受けました。ここでは、子供たちになじみ深い遊びや、チャリティー団体の規則、問題があったときのレポートライン、子供の保護に関する法律等を学びます。子供と二人きりにならないこと、子供への身体的接触(ハグ等)は慎重である必要があり、子供からハグをしてきた場合、手をつないできた場合はいいけれど、大人側からは始めない等、細かい部分についての確認もありました。幼稚園や小学校の先生がパスする必要のある基本的な「子供の保護」についてのオンラインコースも勉強してパスする必要がありました。

イギリス政府のウェブサイトにある、基本的な原則は以下です。 ここ に原文があります。
18歳以下のすべての子供たちと若い人々は、安全でいる権利があり、害から守られるべき

この原則を見ると、ボランティア一つをとっても、子供にアクセスがある大人について、子供を害から守るためのシステムは厳格であることが要求されることは必然でしょう。

イギリスでは、自分の子供も含めて子供を叩くことは犯罪であり、子供に暴力をふるっている人を見ることはまずないし、子供の安全を守るのはすべての人々の義務なので、子供を叩いている大人がいれば、周りがすぐに介入するでしょう。
もちろん、だからといって子供への暴力が全くないわけではありませんが、原則と目的がきちんと表明され、違反すれば法律に従って罰せられるシステムがあることは重要だと思います。また、何が暴力と見なされるのか、ということも明確に規定されているのは大切です。

また、子供たちへの性的虐待の中でも、扱うことが難しい子供たちの性的搾取についても、イギリスでは非常に厳格で、明確に規定を定めています。それは、やはり、原則が「子供や若い人々は安全である権利があり、害から守られるべきである」からでしょう。

子供たちは、いくらしっかりしているように見えても、子供たちと大人たちとの間には、とても大きな力の差(精神的、身体的、経済的、ステータス等)があることを決して忘れてはいけません子供と大人は対等ではなく、大人が自分の何らかの希望や欲望を満たすために子供たちを利用してはいけないのは、明らかです。またこの大きく不均衡な力関係の間では、合意は成り立ちません

子供への性的搾取については、以下のように記載されています。

子供への性的搾取は、被害者(子供)の責任ではありません・・・被害者(子供)が必要なもの、あるいは望むものを、与えられる/与えられることを約束される/与えるという申し出を受けるとき、それは形のあるものの場合(金銭、ドラッグ、アルコール)も、形のないものの場合ステータス、保護、愛や愛情に見えるものの受け取り)もあります。非常に重要なのは、この交換が起こるのは不均衡なパワーダイナミックの中であり、被害者(子供)が何かを受け取ったからといって、被害者の被害者度が減るわけではありません。また、性的行為との交換に何かを受け取る場合だけでなく、悪いことが起こることを防ぐために、被害者が交換条件として性的行為を行う場合があることを忘れてはいけません。例えば、自分の家族に害が及ぶことを避けるために。」

この「子供への性的搾取は、被害者(子供)の責任ではない」という箇所は重要です。

「性的搾取」という言葉を聞くだけで、嫌な気持ちになり目をそむけたくなる人々もいて、それはそれで当然かもしれませんが、子供たちへのどんな形での暴力を防ぐ/なくすためには、現状を正面から見て、オープンに話し合うことが必要があります

誰もが被害者・加害者になる可能性があること、往々にして加害者は「良い人」と見られていたり、「ステータスの高い人」として知られていることを忘れてはいけません。

子供への性的搾取のイギリスでの定義は、イギリス政府のウェブサイトの ここ より、内容をみることができます。

  • 子供の性的搾取は子供の性的虐待の一種である。これは、個人またはグループが権力の不均衡を利用して、被害者が必要としているか望むものと引き換えに、18歳未満の子供や若者を性行為に強要、操作、または欺き、加害者またはファシリテーターの経済的優位性または地位の向上のために起こります。

  • 性的行為が合意に達しているように見えても、被害者は性的搾取を受けた可能性があります。子供の性的搾取は、必ずしも物理的接触を伴うわけではありません。また、技術(インターネット等)を使用して発生する可能性があります。

    子供への性的搾取としては以下のようなものが挙げられます。

  • 18歳未満の子供または若い人(男子または女子)に影響を与える可能性があり、 性交を法的に同意できる16歳と17歳を含む。

  • 性行為が合意に達しているように見えても、依然として虐待と見なされる可能性がある

  • 接触(PenetrationおよびNon Penetration)と接触のないもの両方を含めることができます。

  • 実際に対面、或いはテクノロジー(インターネット等)を通して、或いは両方で起こりえます。

  • 強制的な、または誘惑に基づく遵守・服従の方法を含む可能性があり、暴力や暴力の脅迫を伴わないかもしれません。

  • 子供または若者の即座の知識なしに発生する可能性があります( 他の人が、彼らが作成したビデオや画像をコピーし、ソーシャルメディアに投稿する等)

  • 個人またはグループ、男性または女性、および子供によって実行されます。虐待は、一回限りの場合もあれば、時間の経過とともに連続したできごとである可能性もあります。 機会に便乗したものから複雑な組織的虐待まで多岐に及びます。

  • 虐待を行っている加害者を有利とさせる何らかの形での力(権力)の不均衡に代表されます。年齢が最も明白かもしれませんが、この力の不均衡は、 さまざまな要因から起こります。例えば、性別、性的アイデンティティ、認知能力、物理的な強さ、地位、および経済または他の資源へのアクセス

新しいタイプの犯罪は、テクノロジーの発達や新しい手口の犯罪に法律や規制が追い付かない部分もあり、性的メッセージのみ(性的イメージや物理的な接触を含まない)だと判断が難しいものの、違法となる可能性があるため警察にすぐ通報するよう勧められています。チャリティー団体の発行している、分かりやすいリーフレットは ここ より。

ただ、法律がテクノロジーの発達や新しい犯罪の形態に追い付いていない、といっても、大人が子供たちに性的なメッセージを送るのは、完全に間違っているのは明白でしょう。

上記を元に考えたとき、日本の報道では、目を疑うものが多くあります。

例えば、数年前に、イギリス国営放送のBBCでStacey Dooleyが、JKビジネスについてのドキュメンタリーを制作、放映しましたが、私も私のヨーロピアンの友人たちも驚いたのは、警察が、被害者の子供側につくのではなく、子供を搾取するビジネスを行う大人側に味方することです。警察は一般市民を守るために存在するはずで、犯罪者を助ける存在ではないはずです。

また、別のニュースでは、警察が客のふりをして、子供たち(この場合は女子高生)を誘導し、その誘導にだまされた子供たちを補導するというものでした。
これも上記と同じで、取締らないといけないのは、子供(被害者)ではなく、自分たちの力(経済力、ステータス等)の優位さを使い、子供(この場合は女子高生)の脆弱性を利用して、自分の欲望を満たそうとする大人たちです。
警察がやるべきことは、子供を搾取する大人たちを取り締まることです。
子供の性的搾取は、加害者がゼロになれば、なくなります

忘れてはいけないのは、子供は、安全でいる権利があり、害から守られるべき存在です。子供たちの安全を守るのは、私たち大人みんなの責任です。貧困や家庭不和、心理的な問題等がある子供たちはサポートされるべきで、彼ら/彼女らの年齢や経験値、経済力、判断力、言葉で説明する能力、サポートネットワークの弱さといった彼らにはどうしようもない脆弱性を利用して、大人の欲望を満たす道具にすることを許してはいけません

イギリスでは、10年ぐらい前に、高校の先生と生徒が恋愛関係になり、それが明るみに出て、他国に逃げ、結局は高校の先生が逮捕される事件がありました。たまたま、一緒にイタリア語を習っていた二人のイギリス人女性が、この女子生徒の近所に住んでいたのですが、とても頭もよく性格のいい子で、家庭不和のせいで精神的に不安定で家庭に居場所がないような状況だったそうです。彼女は裁判でも、自分が先生に対して恋をし、自分がリードしてすべて合意だったと最後まで主張しましたが、先生は懲役刑となりました。
これは、先生側は大人で、理性をもって子供(生徒)を正しい方向に指導する役割にあるのに、それに反することを選択して実行したから当然の結果だと見なされます。生徒が一時的に恋に落ちても、拒否するという選択肢はありました。また、先生という信頼されるべき立場にある人には、それに見合った責任も伴い、生徒と恋愛関係になるのは、教師としてのスタンダードを大きく逸脱しています。本当に恋に落ちたのであれば、先生(大人)側が、生徒(子供)が大人として自立できるまで自制して待てばよかった話です。ただ、彼女(生徒)が自立して大人になった時点では、彼(先生)を自分のパートナーとしては選ばないだろう、というのが私も含めたクラスメートたちの意見です。対等の立場でないところに、本当の恋愛は成り立つとは思えません成長途上の子供たちの判断は必ずしも正しいわけではなく、大人たちは彼ら/彼女らの安全を第一に考え、彼らの安全を確保しなければなりません

よく西欧で言われることで、「社会というのは、社会の中で一番弱い人々がどう扱われているかで判断される」という言葉があります。良い社会は、一番弱い立場の人々の権利と安全が守られていることでしょう。

政府は子供たちの貧困や心理的な問題をサポートする機関等を設ける必要もあり、子供の保護への法律も変わる必要はありますが、私たち一般市民が毎日の生活でできることは、子供たち(18歳以下の子供)が性的搾取に遭うのは子供たちが悪い、というような被害者(子供)を責めるような発言を聞いたときは、疑問を投げかけることです。相手を非難したり、感情的になる必要はありません彼ら/彼女らが言っていることは、本当ではないことと、子供たちは安全でいる権利があり、害から守られるべき存在であることを淡々と述べるだけでも十分です。また、18歳以下の子供たちに対して性的な興味を持っているような発言があった場合も同様に、疑問を投げかけることが重要です。

勇気はいると思いますが、あなたのその一言が将来の被害を防ぎ、より安全な社会にすることを助けます。

同じような意見を持つ人々が増え、子供の安全が第一であることが当たり前になると、政治家も法律も変わらざるをえないでしょう。

Yoko Marta