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教育におけるテクノロジーの役割とは?

Yoko Marta
03.02.22 04:41 PM Comment(s)

イギリス国営放送BBC Radio 4の「RETHINK」より

イギリスの国営放送BBC Radio 4では、パンデミック後に世界がどう変わるべきかを「Rethink(再考する)」する番組があります。

Education (教育)に関して、興味深いシリーズが5話のうちの一つ、教育におけるテクノロジーの役割について。

今回のパネリストも4人で、いつものように半分は女性です。
日本のウェビナーに参加すると、ほとんどのパネリストが男性で、ヨーロッパでの生活に慣れると非常に不自然に映るのですが、北欧に比べるとまだまだジェンダー平等が前進する必要のあるイギリスでも、女性が重要な地位にいることは全く珍しくありません。

今回の女性のパネリストの一人は、Distant Learning(ディスタント・ラーニングー遠隔で学ぶ)と実際に対面で教師や他の生徒と共に学ぶコースをブレンドしているArden University(アーデン大学)の学長でした。この大学のスローガンは「We are the university that comes to you (私たちは、あなたのところにやってくる大学です)」ということで、大学キャンパスに定期的に通学することが難しい人々が、自分のペースで大学の学位や修士を取れる仕組みになっています。
日本では一般的ではないかもしれませんが、イギリスでは、どの大学も通常、学位や修士コースはフルタイム・コースとパートタイム・コース(修士はフルタイム1年だけど、パートタイムで2年かけて卒業等)を設けています。
この仕組は、働きながら修士をとることも可能とします。
私自身、近所の大学、Goldsmith College(ゴールドスミス・カレッジ)でアートセラピーのファンデーションコースを1年取りましたが、生徒は私のように働きながらこのコースに週1回通っている人々と、フルタイム或いはパートタイムで大学の心理学の学士コースを取っている人々が混在していました。
違ったバックグランドの人々が混在するのは、お互いに良い影響をもたらしたと思います。

基本的には、すべてのパネリストは、「現時点では、テクノロジーは既にいる教師や既にある教育の在り方を増強する・高めるもの」という点では一致していました。
ただ、未来についての考え方はさまざまです。

面白かった例えは、「ロンドンで地下鉄のストライキが起こるたびに、20人の乗客のうち、1人は通勤をもっと効率的にする。ストライキでいつもとは違う通勤手段を考え、択ばざるを得なかったため。今回のパンデミックでのテクノロジーによる教育の変化も多分、似たようなものではないか。」
これは、「学ぶ」ということには、教科に関する知識を学ぶということだけでなく、感情的・社交的な必要性を伴うため、テクノロジーの良い部分も取り入れつつ、すべてが誰もが完全にリモートでの学習になるということはないだろう、ということを示唆しています。

いくつか興味深かった点について。

  • 突然のパンデミック(イギリスは、ヨーロッパで一番死者数が高く、感染率も高く、学校を閉鎖)で、教師たちはどうやってオンラインで良く教えるかを素早く学んだ。多くの教師たちが協力できるプラットフォームも非営利団体主導での設置があり、多くの教師が豊かなアイディアを供給。その結果、教師が病欠せざるを得ない場合も、既に教えることについてのパッケージができており、代理の先生にはこのパッケージ(オンライン上)を渡せば授業を円滑に進められ、生徒たちに不利益はない。また、このプラットフォームのおかげで、他の先生たちがどう生徒に教えているかをお互い学んで、良い面を取り入れる機会となった。
  • 女性のパネリスト二人は、生涯の教育学ぶ人が主体の教育に焦点を置いており、大学キャンパスの対面授業に定期的に参加することが不可能な人々(例ーほかに大事な責任をもっている。子育て、老人の面倒を見る等)が学ぶ機会を得られることを可能にすることを強調。どの社会でも、子供や老人のケアの責任や負担が女性に行きがちなことを表してもいるのかもしれません。
  • モバイルフォンは禁止されるべき? ー 多くのパネリストは、「モバイルフォンは、生徒たちのアイデンティティーの一つでもあり、取り上げるのはいい方法とは思えない。授業を興味深く、生徒たちが自然と集中して関われるように、質問や、生徒同士での学びの機会も適切に設けるようにして対応するほうが良い」
  • Motivation(動機)とCognition(認識・認知力)は大切 ー コンセプトが明確に説明され、構造化された方法で実践されるプロセスは重要。
  • デバイスの違いーモバイルフォンより、PCのほうが2倍程度学習時に効果的。そのため、生徒一人一人がPCを持っている環境をつくるべき。
  • リモート講義を誰もが平等に受けられるよう、アーデン大学では、1対1でのサポートとトレーニングが有効だった。また、外国からの生徒には、リモートだと講義をゆっくりと聞き返したりできるので、好評だった。

パネリストの一人は、中国での教育における人工知能の役割について語っていました。
中国は、人工知能を使った教育についてユートピア構想をもった最先端の国だと見られています。
パネリストは、中国で200万人の会員をもつ人工知能を使った教育のプラットフォームをもつ会社の最高責任者と話したことがあります。
この最高責任者によると、「このプラットフォームは、教育の質を100倍以上高めることができ、人類の創造性を解決することができ、どのように創造性をもつかを教えることができる。私たち人間は、潜在能力を最大限に活かせていない。誰もが10言語を自在に話したり、さまざまなことができるはずだ。もし、私たちが持っているこのテクノロジーを完璧にできれば。それはとても近い未来だ」
パネリストの感想は以下です。
「現在のプラットフォームを見る限り、最高責任者が見ている未来は、たとえ実現可能であると仮定したとしても、本当にとても長い長い道のりだ。現在のプラットフォームは、18歳で受ける大学受験のための試験に受かるために生徒をサポートするもので、教育のゴールは著しく狭義で結果が完全に定義されている、とても閉じられたシステムだ。ごく基本的なことしかできないものであり、特にテクノロジーを使うことの有用性は見られない。人間のマインド(心・精神・考え方・意識)はとても有機的で複雑なもので、最高責任者の言っていることはマーケティングに過ぎない。

この大きな見方の違いはどこからきているのでしょうか?

それは、「教育は、子供たちの心を開くもの」というヨーロッパの基本的な考え方と、教育と受験がまるで同義のようになっているアジアとの違いが大きいでしょう。
また、ヨーロッパでは、子供たちの学校での成績の良し悪しが、子供たちや親のひととしての価値を測るものとしては、全く考えられていません

アジアとヨーロッパでは、子供がどういう風に育ってほしいかという社会の期待が大きく違います。

アジア全般: 親や権威に従う、老人を敬う、規則に従う、礼儀正しい、こぎれいで清潔

ヨーロッパ全般:自分で考えることができる、自分の良心に従う, 良い判断を行使する、自分の言動に責任を持つ、常に物事がどのように、どうして起こるかに興味を持ち続ける

社会の基盤も考え方も違うので、どちらがいいというわけではなく、どういった未来を社会全体(特に未来の主役の子供たち)が望んでいるかを考える際に、アジア全般とは違った考え方もある、ということを知っておくのは有用でしょう。
また、アジア全般の考え方は権威主義(全てが、誰もが、同じで一つでなければならない)につながり、少しの違いにも不寛容になる傾向が非常に強いことは意識しておくとよいでしょう。
今回のパンデミックで学校閉鎖が起こり、オンラインでのクラスが始まったことにより、インターネットアクセス、デバイスへのアクセスの不平等がさらに明確になりました。
イギリスは貧富の差が大きい国であり、低所得家族の11パ―セントはオンラインの環境はなく、イギリス全体の17パーセントは安定したオンライン環境をもっていません。
これは、教育へのアクセスに大きな影響を及ぼしています。
2021年12月時点で、子供の教育について、5家族のうち1家族は、データ料金を払うのに苦心しており、20家族のうち1家族は基本的なガス料金や電気料金を支払うのに苦労している、というデータがありました。
サブサハラアフリカでは、女子教育や高校への教育へのアクセスが問題になっていますが、世界で6番目に裕福だとされるイギリスで、多くの人々が教育へのアクセスに苦しんでいることは、素早く解決されなければなりません。
多くの先生個人や、学校単位、非営利団体が既に動いているものの、貧富の差への解決には、政府の力も必要でしょう。

私たち市民が効果的に政府の施策に影響できるのは、投票することでしょう。

私たち市民一人一人が、自分たちの社会で何が起こっているかに興味を持ち、知識を高め、社会を望ましい方向に引っ張っていくことは民主主義において不可欠です。