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男性と女性が同等に働くと何が起こるか?

Yoko Marta
03.02.23 05:57 PM Comment(s)

男性と女性が同等に働くと何が起こるか?

イギリスの歴史で面白いのは、実は、男女の賃金格差と男女の働く人数の違いが非常に小さな時代があったことです。


経済について、分かりやすく説明されている国営放送BBC Radio4のシリーズ「 Understand: The Economy Series 1 - 10 Inequalityより。一つ一つのお話は15分くらいで、基本となるインフレーション等の知識や現在のイギリス・世界の経済問題を語りつつ、歴史も交えて分かりやすく楽しく学べます。

14世紀にはヨーロッパでは黒死病が蔓延し、人口の約3分の1から2分の1が亡くなりました。
男性の労働者が足りず、女性も多く雇われることになりました。
労働者不足で、給料は黒死病が起こる前の2倍以上に跳ね上がったそうです。
これには、当時のイギリス国王が、地主や当時のエリートたちの肩をもち、黒死病の前の給料以上に上げることを労働者がリクエストすることを禁止する法律を出したものの、労働者たちからの大きな反乱がおこり、結局はこの高い給料でとどまったそうです。
女性は、黒死病前までは男性が行っていた仕事にもつき、活躍しました。
女性の社会での地位や権利も向上しました。

ここでは、地主やエリートから「Power:力」が働く人々へとシフトしたことが表れています。
この給料の高止まりは、産業革命がおこった19世紀ぐらいまで続いたそうです。

産業革命後は、女性は男性と同等に働くことからはじきだされます。
それは、なぜ、どのように起こったのでしょう?

BBC History - Women's work では、産業革命(1760-1840)の後期とその後にあたるヴィクトリア朝時代(1820-1914)の女性の働く状況について記載しています。
当然資料も限られてはいるものの、分かっている限りでは、産業革命後期までは、若い女性や子供たちの多くは働いて、給料を家庭に入れていました。地域にもよりますが、繊維工場がある地域では、若い女性が多く雇われ、上流階級と中流階級の下の階級の人々(人口の3分の2)は、給金をもらって働いていました。
上流階級・中流階級の女性は、宗教上の理由もあり、家庭で家庭をマネージするのが一番である、「家庭の天使」という役割を押し付けられることが多かったようです。

産業革命初期・中期は、新しい技術が必要となり、雇用主は、女性や子供を含む若い人々に新しい技術を伝えることが、大人の男性と比べて容易いとして雇っていました。なぜなら、男性たちは、これらの変化に対して、それまでの確立されたやりかたと違うこと等を理由に反対していたからです。
女性は、工場(搾取労働も含む)で、フレキシブルで安価で、適応した働きを、産業革命で急速に伸びていた消費財、特に、女性のスキルと結び付けられやすい、テキスタイル、陶器、船上の人々のための買い物・食事計画等に提供しました。
新しい技術は、若い女性がその職を行うことを念頭において設計・修正・適用されていたことも多かったそうです。

女性は、外で働いて給料を稼ぐだけでなく、家庭周りのこともしないといけなかった人もかなりいたようです。それと同時に、男性が家庭周りのことをシェアする例も少ないとはいえ、出てきたようです。

産業革命後期、産業革命後の19世紀が進むにつれ、職場の管理と規律を強化するために、性別固有の雇用が高まりました。女性が多かった繊維業界ですら、マネージャーの役割はほとんど男性によってのみ行われ、男性は最も高価で技術の進んだ機械を操作し、高い地位とより高い賃金の仕事を独占するようになりました。
これは、男性がこういった職に適応していて、女性は適応していなかったということではなく、既得権益をもっていた男性たちが、こういった仕組みを自分たちの権益を保つために、作りだした仕組です。
アメリカでも、多くの男性が戦争とスペイン風邪で亡くなった後、女性たちが高価で技術の進んだ機械操作の分野にも進出したことは歴史上の事実でもあります。
また、鉄鋼、鉱業、エンジニアリング、造船などの重工業の拡大は、男性の稼ぎ手という理想を支持する、ほぼ独占的に男性の労働を雇用するセクターも生み出しました。
こうして、19世紀の性別の仮定の強化は行われ、女性はどんどん良い仕事から、しめだされていきました。これは、現在にも影響しています。

アメリカでは、スペイン風邪(1918)と第一次世界大戦(1914-1918)で、多くの男性が死んだため、女性が、それまでは男性が行っていた職業へと進出しました。これは、女性の経済的独立を助けただけでなく、イギリス同様、さまざまな権利を勝ち取ることにも貢献しました。

ただ、ここでも戦争が終わると、イギリスのように、女性は良い仕事からはじき出されます。

日本と比べると、イギリスを含むヨーロッパでは、女性の社会への進出はずいぶん進んでいますが、まだまだ改善の余地はたくさんあります。
女性が男性と同等の働きができるのは、歴史上も明らかです。
また、新しいテクノロジーや仕組について素早く適応するのは、歴史上でも、女性や子供たちです。既存権益をもった人たち(男性であることが圧倒的に多い)は、古いやり方、自分たちが得をしているシステムから動くことに、大きな抵抗を示し、新しいテクノロジーや仕組になかなか適応しません。
現在のように、主要な地位や良い仕事に男性が多くついているのは、政治・イデオロギー等からきていて、「力(既存権益)をもっていた人=男性」が、女性を良い職からはじき出すシステムを作り出し、維持していることにあります。
今現在起きているのは、テクノロジー革命であり、インテリジェンス、知識、想像力が問われます。これには、男女の身体的な違いが影響するという根拠はどこにもないでしょう。

女性が男性の仕事を奪うのでは、と恐れる人々はどこにでもいますが、歴史をふりかえると、女性と男性が同等に近く働いて、誰もが良い賃金をもらっていた時代もあります。
イギリスの場合、それは、「Power:力」が一部のエリートから、普通の働く人々へとシフトされたことにもよります。

これは、男女関わらず、誰にとってもよいことではないでしょうか?

Yoko Marta