The Green Catalyst
The Green Catalyst
Creating futures we can believe in

パンデミック後のリーダーに求められるもの

Yoko Marta
11.02.22 04:28 PM Comment(s)

リーダーシップとは  BBC RADIO4 RETHINKより

Leadership(リーダーシップ)と聞いて何を思い浮かべるでしょう?

ヨーロッパとアジアでは、文化も歴史も大きく違うので、リーダーシップの定義も大きく違いますが、このパンデミックで、その意味が大きく問い直されることとなりました。

BBC Radio 4の「Rethink」では、ヨーロッパのさまざまな国々と、アメリカ、ブラジル等から人々が加わり、リーダーシップについて考えました。ここから聴くことができます。

最初に、The United Kingdom(ブリトン(イギリス・ウェールズ・スコットランドの3か国)及び北アイルランド)では、4か国の連合国ではあるものの、イギリスが一番力をもっており、多くの政治上の決め事はイギリス政府主導となります。ただ、パンデミックでは、国ごとにどういった規則(ロックダウンの時期や、マスク着用を義務にするかどうか、隔離期間の設定等)を設定するかという独立した権限がありました。イギリスの現首相ボリス・ジョンソン氏は、多くの死者が出て厳戒なロックダウンを施行せざるをえなかったのに、その期間に現首相やその周りの人々が多くのパーティーをしていたことが明るみに出て(ウォーターゲートにかけて、「パーティーゲート」と呼ばれています)、辞職を求める声も高まっていますが、本人は、自分は絶対に首相を辞めない、戦車でももってこなければ、自分を首相官邸から動かすのは不可能だ、というような声明を行っており、国民からの信頼はとても低い状況です。これに反して、スコットランドの女性首相、ニコラス・スタージョン首相(スコットランド人の苗字には魚の名前が多く、スタージョンも魚の名前です)は、ダイレクトに真剣にスコットランド国民と向き合い、スコットランド国民から大きな信頼を得ています。スコットランド独立を掲げた政党のリーダーでもあります。また、ウェールズの首相もスタージョン氏と同じく、大きな信頼をウェールズ国民から得ています。ちなみに、ウェールズにはウェールズ語という英語とは全く違う言語があり、The United Kingdomでの国の公用語にはウェールズ語も含まれています。政府機関に問い合わせの電話をかけると、電話の待ち時間に英語とウェールズ語で案内が流れていることもあります。政府のウェブサイトも英語とウェールズ語が用意されています。北アイルランドは、現在、政治的なかけひきで、イギリス人としてのアイデンティティを主張するDUPのリーダーが突然辞任したため、オポジションのシンフェイン(イギリスの支配を絶ち、アイルランドへの統合を掲げる)も自動的に辞任となり、現在政府が機能していない状況です。残念ながら、これは、初めてではなく、北アイルランドの役人たちは市民の日常生活に影響が出ないよう、最大限の努力を行っています。

この番組では、パンデミックを比較的うまく扱った国々と、パンデミックでひどい状況が作り出された国々についてのリーダーシップについての比較がさまざまな角度から行われていました。

共通しているのは、パンデミックが起こる前からの、リーダーシップに対する信頼が確固としてあった国々は、比較的うまくパンデミックを扱ったという意見です。ニュージーランド、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、台湾等。番組内では日本は出てきませんでしたが、日本も死者数・感染者数が比較的少なく、著しい暴動等もなかったようなので、この枠組みの中に入るかもしれません。難しいのは、現時点ではパンデミックは終息しておらず、パンデミックでの影響(経済、社会の変化、失業への影響、長期間にわたるコロナをきっかけとした病気等)をある程度正確にはかることができるようになるには数年かかると思われることで、ここで話し合えることは、現段階で見えていることとなります。

では、パンデミックでひどい状況が作り出された国のリーダーシップはどのようなものだったのでしょう?

パンデミックでひどい状況が作りだされた国々は、リーダー(首相や大統領)が国の中に大きな分離を意図的に引き起こしたポピュリストです。例えば、アメリカのトランプ元大統領やブラジルのボルソナロ。彼らは、人々の間にお互いの不信感を植え付け、そrをどんどん大きくし、パンデミックをみんなで一丸となって扱うことを不可能とし、多くの死者を出し、現在も多くの死者を出し続けています。アメリカ・ブラジルと比べるとスケールは小さいですが、イギリス(The UKの中の一国のイギリスのみで、他のウェールズ、北アイルランド、スコットランドは含まない) もこの分類に入ります。

この違いを、民主主義と 専制主義と結び付けて考えたい人々もいますが、すべてのパネリストは、民主主義の度合いが違ったとしても、民主主義と見なされている国々で多くの死者を出したイギリスのような国もあれば、専制主義の中国のようにパンデミックをコントロールした国もあります。そのため、やはりリーダーシップへの信頼(リーダーシップを支える国家の機関や役人や専門家たち、ヘルスケアシステムへのたちへの信頼も含めて)が鍵なのではないかということで一致しています。

また、よく出てくる議論ではあるのですが、パンデミックを比較的うまく扱った国々の首相は、女性が圧倒的に多いです。これについては、私が非常に信頼しているアメリカ人ジャーナリストのAnne Applebaum(アン・アップルバウム)さんが興味深い切り口から語っていました。

女性のリーダーがこのパンデミックをうまく乗り切ったという見方から少し離れて、特定の社会では女性のリーダー(首相・大統領)を進んで受け入れる土壌(文化・人々の意識・社会)が存在すると考えたらどうでしょう。こういった社会では、人々が自然と協力してみんなの命や健康を守るために、自分たちから進んで規則遵守するでしょう。

※アップルバウムさんは、興味深い執筆も多く行っていると同時に、対談でも鋭い切り口を見せてくれます。ジャーナリストらしく、明瞭な文章なので、一度読んでみることをお勧めします。

実際には、デンマークは2人目の女性首相であり、イギリスのように死者数が加速的に増加していた状況ですら対応がすべて後手後手にまわった状況とは違い、また、ヨーロッパの国々がロックダウンをまだ行っていない状況であったにも関わらず、感染者が500人を超えた時点で、ロックダウンを決断し、そのために、死者数・感染者数を最小限にコントロールし、ロックダウンの期間も短く、人々の生活や経済にも大きな影響を起こさずに済みました。

また、「女性」という点については、多くのパネリスト(実際はパネリストは一人の男性を除いてすべて女性の専門家でした)が指摘していたのは、以下です。
  • 現在の世界・社会は、女性のためには作られていない。女性がリーダーシップをとる立場に到達するには、男性より多くの障害を乗り越えなくてはならない。そのため、状況をよく観察して、どんな難しい環境に対しても適応する能力が高い場合が多い。
  • Empathy(エンパシー: 共感 ※同情とは全く違うもの)が高い、或いは人々の話を聞き気持ちに寄り添うことができることを示せる

また、パンデミックのような歴史に残るような出来事は、リーダーに影響をどのように及ぼすのでしょうか?

この質問の背景の一つは、イギリス現首相のジョンソン氏が「Get Brexit Done!(欧州連合離脱を成し遂げよう)」という特定のスローガンを元に選ばれたことにあります。誰しも自分が首相に選任された期間にパンデミックが起こるとは予期しないでしょうが、ジョンソン氏の目的は、特定のイデオロギーの実現であり、国民の声をきいて国全体を団結させて良い未来へ向かうという発想がないのは誰にも明らかでした。欧州連合離脱は、スコットランド・北アイルランドの2国では欧州にとどまりたいという投票が多かったにも関わらず、The UK全体でカウントすると、わずかに欧州連合離脱票が多く、国民間だけでなく、連合国の間での分離もより大きくなりました。これは、スコットランド、北アイルランドでのイギリス離脱の動きを大きくすることにも貢献しました。ジョンソン氏はジャーナリスト時代にも虚偽の文章を書いたことで新聞社を解雇されたことでも知られていますが、逆にそういったことを逆手にとってどんなスキャンダルもくぐり抜け、「信用」という点では元から全く期待されていません。今回のパンデミックでも、ヨーロッパで極端に多い死者を出したのは、この信用のなさも大きかったでしょう。全体的な意見としては、やはりパンデミック前からの信用の積み重ねとともに、真摯に人々と向き合い、サイエンスの専門家の声もよく聞き、国民のことを一番に考え、なぜ特定の決定に至ったのか(マスク着用義務や、隔離の規則等)をダイレクトに明瞭に説明できること、ということでした。

昨今リーダーシップに関しては、アメリカを含め多くの国で権威主義・独裁主義・専制主義を好む人々が増え続けているのは、気がかりな点だとして挙げられていました。ある調査では、アメリカ人の6人に1人が、軍事政治(軍隊が政治を行う)を望んでいるという結果もあったそうです。
民主主義とのは、さまざまな人々の意見が同じように尊重され、一見すると権威主義に比べると取り散らかっていて面倒で時間のかかるものですが、さまざまな質問をオープンに行えるので(首相やサイエンスの専門家と言った権威に自由に質問を行える)、透明性が高まり、エラーがあれば早い段階で検出でき、社会・国全体で良い方向へ進むことを可能にします。権威主義・独裁政治の強いリーダー1人のいうことに誰もが疑問を挟まず一丸となって従う、というのは民主主義の煩雑さに辟易している人々には魅力的に映る部分もあるでしょうが、中期・長期的に社会に良い変化をもたらすとは考えられないでしょう。

パンデミック中に、メディアを操作したリーダーたちは、トラブルに見舞われています。
アメリカの元首相のトランプ氏、イギリスのジョンソン氏、ブラジルのボルソナロ氏など、彼らはデマも使いメディアを操作してきましたが、長期間の「信用」は全くなく、短期的には機能しても、中期・長期的には難しい現状があります。
ただ、国民たちの多くが目を開いていない状態だと、またしてもメディアを操作してリーダーにいつづける、上るのは想像に難くないでしょう。民主主義ということは、私たちは周りで起こっていること、政治に深く関心をもち、良く知り、実際に関わっていく必要があります。

パンデミック後のリーダーに必要とされているものは何でしょう?

地球上の多くの人々が、パンデミックのトラウマを抱えています。これは、実際に誰かをパンデミックで亡くしたことかもしれないし、パンデミックで経済上の基盤を失った人々、命は助かっても長期間の病気や不調に悩まされ続ける人々、毎日患者を治療し続けた医療関係者、家族や親戚に長期間会うことができずその間に痴呆症が進んでしまったりとさまざまでしょう。リーダーたちは、このトラウマに共感し、現実の体験をもとにした現実的な楽観主義に基づいたヴィジョンを分かりやすく人々に伝えることが必要です。これは、夢物語のような非現実的な楽観主義ではなく、パンデミック後という難しい時期を私たちは、共に乗り越えていくことができる、という自信を持ったものである必要があります。

また、今回のパンデミックでは、ジェネレーション間での分離も引き起こしました。若い人々は、老人たちの命を守るためにロックダウンに従い、学校へ行けなかったり、顔を合わせるサービス業で働いている人々は圧倒的に若い人々が多く、経済上の基盤を失った人々の多くは若い人々です。今回のパンデミックだけでなく、気候変動も引き起こした原因の大人や老人ではなく、現在の若い人々・子供たち・これから生まれてくる人々が大きなネガティブな影響を受けることとなります。また、パンデミックが起こったのは、まだ2008年の経済危機から立ち直っていない時期であり、この経済危機でも大きな影響を受けた/受け続けているのは若い人々です。リーダーたちは、このジェネレーション間での不平等もよく理解し、若い人々へのサポートを大きな規模で長期に渡って行っていく必要があります。