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Enough is enough (もう、たくさんだ)- 労働者の団結

Yoko Marta
19.08.22 05:43 PM Comment(s)

Enough is enough (もう、たくさんだ)- 労働者の団結

イギリスでは、鉄道ストライキにはじまり、さまざまなプロフェッション(法律、先生等)でストライキに向けての行動が取られています。
イギリスは他のヨーロピアン諸国に比べて、労働組合も弱く、労働者の権利も少なく、ストライキ決行を許可する法律もどんどん厳格にされ、ストライキを決行するまでには多くのハードルをジャンプする必要があります。
ちなみに、鉄道の場合、ストライキには2週間の予告も必要条件に含まれており、市民は2週間前には、どの鉄道がストライキに入るのか、その間の時刻表(全面ストップは稀で、最低20パーセントぐらい運行している場合が多い)も知らされています。
それでも、今夏、ここまでの多くのストライキが決行されている、或いは、ストライキへ向けての必要な法律的な手続きが進んでいるのには、正当な理由があります。

イギリスは、現在エネルギー危機で、政府が何もしなければ、2023年1月の時点で、全国民の3分の2が、ガス・電気代を払えなくなると予測されています。現時点では、
BBCによると平均的な家庭で、2023年1月には、ガス・電気代は、年間4266ポンド(日本円約70万円)に上がると予測されています。2021年10月時点では、平均的な家庭での年間のガス・電気料金は、約1400ポンド(日本円約22万6千円)でした。

これに加えて、ガソリン代、食料品店日用品も大きく値上がりし、インフレーションは、過去40年で最大の10パーセントを超えました。
G7諸国の中でも、一番高い数値となっており、欧州連合離脱も影響していると考えられています。

また、サッチャー元首相時代からの規制撤廃による自由化により、公共事業(鉄道や水、電気やガスといったエネルギー)の私有化が進み、多くのほころびが出ていることも影響しています。

特に、顕著な例は、「水」事業です。

先進国でも、「水」事業を私有化した例はイギリスを除いてはほぼ見られないようです。
ただし、The UKの中でもイギリス国のみが水事業の私有化を行い、ウェールズ国とスコットランド国は私有化せず、イギリスのような大きな問題を抱えていません。
アメリカでさえ、全面的な「水」事業の私有化はされていないそうです。
イギリス国では「水」事業企業は、自分たちの儲けに集中し、設備への投資は最小にすることを続けています。

その結果は、処理をしていない汚水を海や川に信じられない量と回数を流し続け、広範囲にわたる海岸で泳ぐことができない状態にしました。
また水道管のアップグレードを十分にしていない為に、あちこちで水道管から貴重な水が大量に失われ続けています。
市民が払う水料金も非常に高く設定されていますが、水事業は、競争がなくモノポリーのため、市民は高い料金を払い続けるしかありません。
イギリスのように雨がよく降るイメージのある場所でも「干ばつ」が宣言されたのは、予測可能であった気候危機に備えての貯水池の設置をしていなかったことが原因だとされています。
現在は、深刻な水不足を防ぐために、一部の地域で、ホースを使って水を遣るのが禁止され、これを破ると罰金が課されます。
これだけのミスマネジメントが続いていながら、マネジメントと株主には多額のお金が払われ続けています
本来なら、「水」事業の企業を監視し、取締るはずの規制機関が機能しているはずですが、この機関も水事業企業に取り込まれて、市民のためでなく、企業の利益のために動いていると見なされています。
この段階となると、政府介入しか手段はありませんが、現政府はサッチャー元首相の所属していた保守派が多数派で、かつ党のなかにいた中立派を追い出し、現在は極端な右派が力を握り、独特のイデオロギーを掲げて突き進んでいるため、適切な政府介入はないとする見方が多いです。
日本の自由民主党やアメリカの保守派ともよく似ているのですが、イデオロギーは、主に以下です。
「小さな政府=政府は介入しない、市場にまかせる、ビジネスの保護と規制の撤廃(企業への税金をできる限り低く、規制(通常、消費者である市民を守る目的のもの)をできる限り撤廃し、企業ができる限り儲けられるように助ける)、個人責任」
保守党が過去12年間政治の権力を握っており、大企業やトップ10パーセントの富裕層はますます富を蓄積し、フルタイムで働いていても家賃が払えなくなったり、フードバンクを使用せざるを得ない人々が年々増加の一方をたどっています。ホームレスの数も大きく増加しました。
保守党の多くの議員は、これらの大企業や富裕層から多額の献金を受けて彼らの便宜をはかっているように見られることが問題にはなっています。ただ、献金は公式に報告している限り合法であり、かつ直接的にこれらの企業にどう便宜がはかられたのかを証明するのは容易ではないようです。

この状況の中で、労働組合のパワフルなリーダーたちが台頭し始め、政府に対しても、メディアで明確で論理的な議論を展開しています。

そのうちの一人は、RMT(鉄道業界の会員が多い労働組合)のリーダーである、Mick Lynch(ミック・リンチ)さんです。
労働者たちのために、労働者と一緒に闘っているということが明確で一貫しており、政府の大臣や議員との討議でも、データを精確に使い明瞭な議論を展開していきます。
残念ながら元首相のボリス・ジョンソン氏は、嘘を平気でつき続けることで有名であり、現在の大臣や議員も、討論の中で平気で嘘を織り込む人々が多々いるのですが、ミックさんは見逃さず「きみは嘘をついている。事実は、こうだ。証拠はここにある」と冷静に切り返します。
イギリスは階級社会であり、ミックさんは労働階級であることが話し方からも明らかで、それが余計自分たちを上流階級であると見なしている保守派の多くの議員や大臣を恐れさせるのではないか、ともされています。
実際、私たち一般市民がニュースで目にしているのは、自分たちは教養のある特別な階級であると暗に主張する大臣や議員が嘘を平気でつき論理が完全に破綻したことを感情的に繰り返し、ミックさんのような労働者階級の人々が、理論整然と冷静に語る姿です。
保守派を強く支持するのは、圧倒的に白人で60代以上の男性で、田舎に住む人々で多くは富裕層とされており、これらの人々には、大臣や議員が言った内容ではなく、彼らの人種や階級、経歴が自分と近いということが大きくものを言うのかもしれません。

ミックさんも参加しているキャンペーンでEnoguh is enoughがあります。
日本語に無理やり訳せば、「もうたくさんだ」とでもなるのでしょうが、大企業や富裕層の暴利をむさぼり一般の市民を貧困に追い立てる現状を、労働者みんなで一致団結して変えていこうという運動です。
とても、パワフルな動画がここから観れます。
シンプルな英語で語られているので、分かりやすいと思います。
彼らが求めているのは、とてもシンプルな以下の5つです。
1 実質的な昇給
2エネルギー費の削減
3食糧貧困の撲滅
4すべての人々に適切な住処
5富裕層や大企業に課税する

私の心に残ったのは、いくつか。

より素早く、懸命に働いているのに、賃金は減る一方。
クライシスがあるたびに、その代償を支払うのは、自分たち労働者。
大きな報酬を刈り取るのはトップ10パーセントの富裕者と大企業。
これは避けられないことじゃない。
これは、政治的な選択
労働者たちの必要性か、富裕層や企業の貪欲さを取るか
現在の、生活費の危機は、私たちすべてに影響しています。
あたたにも私にも、私たちの職場にもコミュニティーにも。
公正な給料、良心的な/手の届く額の請求書、十分な食料、そしてまともな住処。
これらは贅沢品ではありません。
これらは私たちの権利です。
私たちを分断させることはできません。

私たちは、より良い取引のためにキャンペーンを行うすべての人を必要としています。
私たちは自分のために立ち上がるつもりです。
私たちは戦うつもりです。
怒りを行動に移す時が来た。

大企業や大きなシステムに対しては、私たち小さな力しかもたない市民が立ち向かうには、一致団結することしかありません。
普通に考えれば、鉄道で働いている人々の数百倍の給料をマネジメントが支払われるのもおかしな話です。実際に、鉄道で働く人々がいなければビジネスも成り立たなければ、本来公共であるべき交通機関は機能しなくなります。恐らく、何がPublic(公共)で、何がPrivate(個人・私有)なのかを再定義する時期にもきているでしょう。私たちが世間で起きていることに無関心であれば、システムや構造は、ますます既存の富裕層や大企業が暴利をむさぼる方向に進み、ある程度進んでしまえば、リバースすることは非常に難しくなります。
この国でも、企業が儲かれば、彼らが設備投資も行い、より多くの人々をもっと良い給料で雇い、社会全体に利益がある、という神話は根強いですが、イギリス国の「水」事業でも明らかになったように、これはただの神話です。一般市民がこれらの神話にたやすくだまされないよう、知識をつけ、団結することはとても重要です。

イギリスでも、このムーブメントが良い結果を生み出すには時間がかかるでしょうが、私たち市民は無関心の壁を越えて、団結、組織することを学んでいく必要があります。
これは、日本でも同じでしょう。
個人レベルですぐにできるのは、社会問題に関心を持ち、周りと意見を交わし、社会の人々みんなに共感をもって、無関心の壁を一緒に越えていくことでしょう。