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イギリスでのAI詐欺への対策

Yoko Marta
04.09.23 02:26 PM Comment(s)

イギリスで起こっているAI scam (AIを使った詐欺)​

イギリスの独立系新聞ガーディアンのポッドキャストで、このAIを使った詐欺について、どのように見分けるのか、どのような防御策が考えられるかが、セキュリティー専門家から語られていました。(2023年9月)

最近、イギリスで人気の Money saving expert (節約の達人)、Martin Lewis(マーティン・ルイス)のAIなりすましがあり、話題になりました。マーティンさんが特定の製品やファイナンス商品を太鼓判で押しているような映像で、本人すら自分じゃないかと疑うほど、似ています。服装も自分がその日着ているものと同じだったそうです。でも、完全にフェイクです。
マーティンさんは、何年も前からAIを使用したディープ・フェイクの危険性については警鐘を鳴らし、きちんとしたRegulation(決まり)が必要だと言ってきています。EU(欧州連合)では、さまざまな規則作りが行われていますが、残念ながらイギリスではEUより遅れています。ただ、日本やアメリカの野放し状態と比べると、ずいぶんましなレベルではあるようです。

セキュリティー専門家も、だます手口はとても巧妙で、だましたほうが100パーセント悪いにも関わらず、だまされた人が通報しないケースが大多数だそうです。 迷わずAction Fraud (アクション・フロード)にレポートしましょう。
あなたの通報が次の被害を防ぐかもしれません。

なりすましには、モバイルでコールしてきて、「子供を誘拐した/取引で今すぐ手付金を入金しないといけない」等、さまざまだそうです。実際に、会話も成立し、子供の声や反応にそっくりで、保護者がだまされることも珍しくはないそうです。

見分けるいくつかの方法としては、以下の2つを挙げていました。

① 通常の番号ではない電話番号や、非通知の番号から、かかってくる
② とにかく緊急と言うことで、考える時間を与えない

対策としては以下の4つを挙げていました。

① 家族間で、緊急連絡の際のCode(秘密の合言葉等)を決めておく
② 電話やソーシャルメディアで、コールやメッセージを出している元をチェックする → 普段使っている電話に直接連絡して確認
③ ソーシャルメディア等に自分の情報(旅先の写真、所在地が分かるもの等)をアップロードする前に考える →例)旅先やレストランの写真等は、実際に行ってから数日後に投稿する ← 詐欺師、詐欺集団は、ソーシャルメディアの情報を収集して、「○○レストラン(ソーシャルメディアで今日行ったと投稿したレストラン)で携帯電話をなくしたからこの番号からかけている。事故にあったので、お金を至急送ってほしい」等、もっともらしい内容を装います。自分の所在地、ホリデー等の個人・安全情報をソーシャルメディアに載せるのは危険を招くことを意識しておく必要があります
④ Theft Protection Serviceを使うことを考慮する。今回のPodcastに登壇していたセキュリティー専門家はMcafeeで働いている人だったので、もちろん彼の働く会社の宣伝もあると思いますが、Mcafee以外にもさまざまな企業が提供しているようです。Darkwebで、自分の情報が出たときに知らせるサービスもあるようです。

ロマンティックな関係だと思わせての詐欺等もありますが、日本と大きく違うのは、「事故を起こして相手からお金を要求されている/会社でミスをして、お金を払わないと解雇される」といった詐欺に対して、お金を払うひとは、まずいないことだと思います。
事故を起こしたのであれば、警察に通報し、それに見合う責任をとればいいことです。法に基づいて平等でフェアな調査が行われた後は、本人が責任を取り、その結果をうける必要があります。
また、会社で起こったことに対して、従業員がお金を払うというのもありえない話です。横領等の犯罪は除いて、常識の範囲内で行動していてなんらかのミスがあり、それが結果的に会社にとっての損失につながっても、それは会社の責任です。なぜなら、会社として、損害を防ぐようなチェック機能はあるべきであり、個人の問題ではなく、会社の運用上の問題だからです。

意図的であるとなかろうと、何か悪いと見なされることをしたのであれば、法や規則によって責任を取るだけの話です。
ただ、そこには誰もの「法の下にはすべての人が平等に扱われる」という社会の信用が基盤となっています。もし、政治腐敗が進んでいる国で、権力がある階級だと何をしても罰せられず、普通の市民だと何もしなくてもまともな裁判も行われず刑務所にいくような社会だと、何が起こっても隠ぺいしようとするのは、不思議はないかもしれません。
悪いことを選択し行った子供や家族の犯罪や罪を隠ぺいするのは、モラルとして間違っています。家族への愛があるのであれば、もし本当に犯罪をおかしたり、悪いことをしたのであれば、法律や規則に基づいた結果を負わせ、きちんと反省して社会の良い一員として正しい行動を選択できるよう、サポートし続けることです。誰もが犯罪や悪いことを隠ぺいするような社会は、誰にとっても安全で健全な社会ではありません。私たち一人一人の行動や考えが、社会をつくっているということは常に意識しておく必要があります。

イギリスで、ディープフェイクを扱ったミステリー・サスペンスドラマでおすすめは、「The Capture」です。主演の女優、Holiday Graingerは、他のドラマでも探偵役で登場していますが、頭が切れ、かつモラルもIntegrityもあり、正義感が強く、人情味あふれる役柄がいつもはまっています。女性が男性のアシスタント役や下位のひととしてフレーミングされることが多い日本と比べて、多くの女性が主役として、部下たちを率いていくのも(イギリスでは普通ですが)新鮮かもしれません。

Yoko Marta