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爆撃の中でも、未来への希望を持ち続けるガザの子供たち

Yoko Marta
14.11.23 03:23 PM Comment(s)

爆撃の中でも、未来への希望を持ち続けるガザの子供たち

The UK(イギリス、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4か国から成る連合国)の多くの地域では、ガザでの即時停戦を求める大きなデモンストレーションが続けられています。

このデモンストレーションを、自分たちの政治的な権力を増すために悪い方向で使っている政治家やメディアもいますが、「市民の命を守る、誰の命も同じだけ貴重、ヒューマニティー」という、ある意味単純な目的です。

The UKには、ユダヤ人、イスラエルの市民権を持つユダヤ人、パレスチナ人の親や親戚のいる人々、アラブ地域からの移民家族、彼らの子孫等、さまざまな人々がお互いの権利や自由を尊重しながら住んでいます。

私も含めて、多くの人々が、ユダヤ系、アラブ系両方の友人や知人をもっています。

でも、今回のハマス(テロリスト組織で、ほとんどのパレスチナ人は普通の市民)のユダヤ人虐殺、イスラエル政府(極右派とファナティックな宗教論者が集まっている政府で、イスラエル国民からの信頼はもともと低かった)のガザのパレスチナ人市民や病院を含めた無差別爆撃の継続とで、The UKを含めたヨーロッパ全域で、ユダヤ人への攻撃(anti-semitism/反ユダヤ主義)とアラブ系の人々への攻撃(Islamophobia/イスラモフォビア)両方が増加しています。

このデモンストレーション(誰の命も貴重、命を守る)をWeaponise(ウェポナイズ/兵器でないものを兵器化する)するまやかしの議論は、教科書にでてくるような典型的なものです。

  • デモンストレーションは、パレスチナ人の命のことばかりを主張し、イスラエル国家やユダヤ人はこの世界から消えるべきだといっている
    → 誰も、そんなことは言っていません。
    一か月程度で、一万人以上のパレスチナ人市民が無差別爆撃で殺されていることを止めるようにと求めるデモンストレーションで、ヒューマニティーに基づき、国籍や民族、宗教等に関わらず、誰の命も貴重だと言っています。
    イスラエル政府の国際法違反や戦争犯罪を糾弾することは、イスラエル国家の存続やユダヤ人の存在を否定するものでは、全くありません

  • パレスチナへの即時停戦を求めるデモンストレーション参加者は、みんな反ユダヤ主義者で、ユダヤ人がこの世からいなくなるべきだと思っている
    → 誰もそんなことは言っていません。
    上記のように、イスラエル政府の国際法違反を批判することは、イスラエル国家の存続やユダヤ人の存在を否定しているわけでは、全くありません。残虐に殺されたユダヤ系イスラエル人への深い悲しみ、人質となったユダヤ系イスラエル人とイスラエルで働いていた外国人の即時釈放を求めること、ガザへの爆撃を即時に停止し人道的に必要な物資(水、食料、燃料、薬品)を即時に提供すること、ウエストバンク(国際法でパレスチナ領)でのユダヤ系イスラエル人不法占拠者が原住民のパレスチナ人を殺したり、暴力で脅して土地を離れることを強要する等をやめることー 人道的な観点から見れば、これらすべてが同時に成り立つのは明確です。パレスチナ人の命や人権を大切にすることは、ユダヤ系のイスラエル人の命や人権を大切にしないということではありません。どちらも同じように大切です。

  • ハマスとパレスチナ人は一体で、ハマスが行った残虐な行為は、パレスチナ人全体の責任
    → 完全に間違っています。
    ハマスは、国際的にもテロ組織と認定されている団体で、一般市民とはなんの関係もありません。それに、集団的懲罰は、国際法違反です。今回、爆撃で亡くなっているのは、半分近くは子供と見られており、子供たちがテロ組織で積極的に殺戮等を行っているとはどうやっても考えられないし、証拠もありません。
    また、この殺された数としてあがってくるのは、爆撃で死んだ人々の数で、病院が爆撃されて治療が受けられなくて亡くなった子供、飲料水がなくて汚染した水を飲まざるを得ず病気になり死んだ子供たち、必要な薬や治療器具が手に入らず死んだ人たち、飢餓で死ぬ人たちの数は含まれていないことは覚えておく必要があります。また負傷者の数は、死者の数よりも数倍多く、これらの負傷者が適切な治療を受けられない現状では、さらに死者が増えるのは明白です。
    即時停戦がなければ、コレラ等の伝染病が一気に広がると見られています。

  • 今回のハマスの残虐な攻撃があったことにまつわる、長い歴史の背景を語ることは、ユダヤ人の命が失われたことを軽く見ている証拠で、テロリスト組織のハマスのユダヤ人殺害を正当化している
    → 完全に違います。
    ハマスのユダヤ人虐殺は、どこからみても、ゆるされるものではありません。なぜテロ攻撃が起こったのかを分析することは、今後のテロ攻撃を防ぐことにも役立ちます。多くの識者の認識では、イスラエル建国の前から、ユダヤ人民兵組織がテロ攻撃でパレスチナ人を殺戮、暴力で脅したり村全体を破壊してパレスチナ人を追い出し、多くのパレスチナ人が先祖代々の土地を追われ、近隣国やパレスチナ地域のガザ・ウエストバンク地域の難民キャンプで過ごすことを与儀なくされました。イスラエル建国のあたりでは、パレスチナ人が地域の人口の約70パーセント占めていたのに、パレスチナ人の抵抗があった後に国連が提案したのは、イスラエルに50パーセント以上の土地を与え、パレスチナ人には半分より少ない土地と、パレスチナ人にとって不利で不公平な内容で、パレスチナ側から拒否されました。国連の決定には、ヨーロッパでの数百年にわたるユダヤ人迫害と、ホロコーストでのユダヤ人虐殺へ対する(ヨーロピアン)全体的な罪悪感が作用していたという説もあります。
    ヨーロピアンたちが行ったユダヤ人迫害と虐殺の罪を、パレスチナ人を犠牲にして支払う、というのは、どうやってもおかしな話です。
    強いものが、たまたま弱い立場にある人々を搾取できるだけ搾取し、基本的人権も与えず、(正当に)抵抗するものたちがいれば徹底的に残酷にたたきつぶし、他の植民地国の人々が抵抗するという気持ちをもつことさえ禁じる、という植民地主義的な考えが影響していたのかもしれません。大英帝国(現在のイギリスの前身ーウェールズもスコットランドも北アイルランドを含むアイルランドは、もともと大英帝国の植民地でアイルランドは激しい戦闘で大英帝国をやぶることによって、北アイルランド地域を除いて、イギリスから独立)は、世界の半分近くを数百年にわたって植民地化し、独立運動が起こった際には、さまざまな地域で虐殺や、現在の国際法では完全に戦争犯罪であることをおこなっていたことは記録もあるし、よく知られています。
    イスラエル政府は、国際法でパレスチナ領と明確に定められた領域にも、不法占拠をどんどんひろげる政策を長年とっており、その過程でパレスチナ人が殺されたり、パレスチナ人に対する暴力やパレスチナ人に属する家屋・オリーブ畑の破壊等でパレスチナ人が去らざるを得ない状況になることが長い間続いており、イスラエル警察は見てみないふりか、不法占拠者に積極的に関与して、パレスチナ市民・農民を攻撃することも報告されています。
    イスラエル政府や犯罪をおかしたユダヤ系イスラエル人が責任を問われることはありません。
    ガザ地区よりはましといわれるウエストバンク地区ですら、長年、パレスチナ人には基本的人権もなければ、正義が行われることもありません。
    ガザ地区については、ハマスのユダヤ人虐殺が起こったずっと前から、イスラエル政府は、とても狭いガザ地域にパレスチナ人を閉じ込め、人間の尊厳をもった最低限の生活も送れない状況にし、ガザ地区からの人やものの出入りも大きく制限し、多くの人々は、この小さな地域から出られません。また、電気・水・ガソリン・通信といった生活に必要なものもすべてイスラエル政府がコントロールしており、イスラエル政府の意向で簡単にとめられます。また、パレスチナ人への監視も強く、よくOpenair prison(天井のない牢獄)と呼ばれています。この状態も、国際法違反だという指摘は国連やアムネスティー等の人道国際団体からありますが、イスラエル政府は無視し、アメリカをはじめ、イギリスやほかの西欧諸国も見ないふりを続けています。
    また、これも国際法違反ですが、多くの子供たちを含めたパレスチナ人が、裁判なしで不当に長くイスラエルで投獄されていることもよく知られています。多くは、イスラエル兵士に嫌がらせをされて石を投げた程度だそうですが、あっという間にパレスチナ地域外のイスラエルに連行され、弁護士もつけてもらえず独房に入れられ、子供には不適切なレベルの尋問が行われ、拷問が行われることもそう珍しくはないそうです。
    今回のハマスのユダヤ人虐殺時に人質をとったのは、上記の数多くのイスラエルで投獄されているパレスチナ人と、ユダヤ系イスラエル人との人質交換を行うことだったと見られています。
    でも、国際社会は、イスラエル政府がパレスチナ市民に行っている国際法違反の非人間的な扱いから目を背け、何もしないどころか、武器を売って金儲けをする機会にし、アメリカは長期間にわたってイスラエル政府に軍事資金を供給しています。イスラエルはパレスチナ人を除いては、高所得国で、援助は本来必要ではありません。

    イギリスを含む西側諸国では、このデモンストレーションには、多くの若者が参加しています。彼らは、直接パレスチナ人の家族がいるというわけでなくても、パレスチナ地域で長期間にわたって起きているSettler Colonialism(後からやってきた人々が、もともといた原住民を殺戮したり暴力や武力で土地や資源を奪い、残った原住民を二級市民のような扱いをすること)と、抑圧の歴史と仕組みを理解しています。これらは、Black Lives Matter, Me, tooも基本は同じ、「強い立場にあるものから、弱い立場にいる人々への不当な抑圧」です。誰に対しても、どの地域であっても、「不当な抑圧」について立ち上がり、誰もが対等で基本的人権が尊重される社会を求める気持ちが強く、行動にうつす若者たちが多いことは、未来への大きな希望です。

こんな理不尽な状況でも、子供たちは夢を見ること、希望を持ち続けることを諦めません

The UKの大半のメディアは、アメリカの状況と似ていて、極端に金持ちのとても右寄りの考えをもった人々に牛耳られています。そのため、報道はイスラエル政府を支持するものが多いのですが、独立系新聞ガーディアン紙では、ガザ出身でガザに住むジャーナリストからの報道を読むこと、みることができます。残念ながら、すでに多くのジャーナリストが亡くなりました。

以下のビデオは、南ガザで報道を続けるMohammed Aborjela(モハメッド・アボルヘラ)さんと、たとえつかの間でも子供たちから爆撃を忘れさせ、笑顔と希望を引き出す努力をうつしています。3分程度の短いクリップで、英語訳の字幕があります。

この中にでてくる少女、Rafeef(ラフィーフ)さんの家と隣の親戚の家は爆撃で完全に破壊されました。お父さんは、この爆撃で身体が麻痺して動けなくなったそうです。それでも、ラフィーフさんは、ガザ地区が再建され、自分の家にお父さんや家族と戻り、お父さんが歩けるようになることを諦めていません。ほかの子供たちも、目の前で家族が爆撃で殺されたり、住んでいた地域が爆撃で完全に破壊されたのを目の当たりにしています。彼らのトラウマはどんなに深いものかと思うと、やりきれない気持ちになります。
ほかの子供たちも、将来なりたいものは?と聞かれて、はっきりと「医者」と答えたりしています。子供たちは、爆撃が続く中で、夜には恐怖で眠れず、朝日が出てやっとうとうとすることができる状態で、ひどくストレスがある状態ですが、モハメッドさんや他の大人たちが、安全な時間を見計らって子供たちみんなが参加できるような遊びをすると、多くが楽しんで参加します。

即時停戦(爆撃を完全に止める)し、人道的救助がすぐに始まり、イスラエル政府が現在止めている、水・電力・ガソリン・食料・薬品等の生きていくために欠かせない物品がガザ地区に入るようになれば、この子供たちは、生きて大人になれる可能性が高くなります。

安全な場所にいる私たちにできるのは、彼らのことを忘れないこと、何が起こっているかを理解しようと努め続けること、停戦を自国政府に求めることです。

参考:

パレスチナの状況について、国連のFrancesca Albanese(フランチェスカ・アルバネーゼ)さんが、深い考察と、明確に簡明なことばで、人間性に暖かい気持ちをもって語るのは、とても印象的でした。イスラエル政府のいくつかの戦争犯罪について、人権の観点から明確な批判を行っており、イスラエル政府からは、イスラエルに占領されているパレスチナ地域に入ることを許されていない(これ自体がすでにおかしなことなのですが)そうです。
フランチェスカさんは、言葉をごまかさず、「今現在、イスラエル政府が行っているガザ地区への爆撃は、無差別で大規模で、自己防衛権の域ではなく、法律違反/エスニック・クレンジングの可能性もある」と述べています。彼女は、人権の法律の専門家です。
フランチェスカさんは、とても敵対的な質問に対しても、オープンで、人権を見つめた心のこもった対応で、敵対相手からも尊敬を勝ち取るのがみてとれます。ぜひ一度国連の質疑応答等のフランチェスカさんが出ているクリップをみることをお勧めします(イタリア語なまりの英語ですが、とても聞き取りやすいです)
本来は、イスラエルに対して影響力のあるアメリカやイギリスを含む西側諸国が、批判するべきことは批判するべきなのですが、どちらもまだイスラエル政府をほぼ完全支持のままです。デモンストレーションが各地で起こり続けていることにより、イギリス政府の反応は少しずつ変わり始めています。
フランチェスカさんへのインタビューは、ガーディアン紙の ここ から読めます。

Yoko Marta