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IntegrityとHumanity - スコットランド労働党リーダー Anas Sarwar (アナス・サルワル)

Yoko Marta
23.11.23 12:09 PM Comment(s)

IntegrityとHumanity - スコットランド労働党リーダー Anas Sarwar (アナス・サルワル)


ガザでは、明日木曜より4日の一時停戦が合意されたようですが、多くの人道的救助を行う団体では、4日は全く十分ではなく、パレスチナ市民の命を救うために、もっと長い停戦か、恒久的な停戦が必要だとの切実な声もあがっています。※残念ながら、木曜現在で、この人質解放は延期され、早くても金曜になると発表されました。

The UK(イギリス、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの連合4か国)において、イギリス中央政府では、現在、労働党が一番大きな野党です。11月15日にガザ地区での停戦を求めるスコットランド国民党提出の動議があり、イギリス労働党リーダーのキーア・スターマーさんは、労働党議員に棄権するよう指示しましたが、56議員は、自分たちのモラルや信義に従い、賛成票を投じました。彼ら・彼女らは、賛成票を投じるということは労働党のやりかたに従っていないということで、労働党での大きな役割から辞任しなければならない、ということを良く理解した上で、この行動を選択しました。BBCの日本語版の短い記事はここから。
結局は、反対票が多く、否決しました。

労働党は、特に前任のコーヴィンさんが反ユダヤ主義だとみられ(本人は否定)、ユダヤ系の議員が辞任したりと、ユダヤ教徒とはとても難しい関係に長年あります。キーア氏の妻はユダヤ系ブリティッシュで、子供たちもユダヤ教の教えに沿って育てられており、キーアさんはこの難しい状況を、うまく扱っているようでした。また、キーアさんは長年、人権に特化した法律家として活動してきました。
今回のハマスとイスラエルの紛争については、キーアさんは、次の選挙に備えて、アメリカと現在のイギリス首相スナックさんの言うことをオウムのように繰り返すだけで、多くの市民から批判が高まっていました。このラインは「イスラエル政府には、自衛権がある。今停戦を行うと、ハマスに時間を与えてさらなる攻撃をイスラエルに行うことになるので、停戦は行うべきでない」で、無実のパレスチナ市民、特に多くの子供たちと女性たちが殺されていることにはふれることがなく、政治的にはある程度成功しているものの、彼の人権法律家としてのIntegrity(統合性)や信念・ヒューマニティーに対して疑問の声があがっていました。

ここで、スコットランド労働党のAnas Sarwar(アナス・サルワル)さんは、キーアさんとは、全く違う姿勢を見せ、Integrity(統合性)があり、Humanityに満ちた言動を行います。

アナスさんは、パキスタン移民の両親から生まれ、スコットランドで育ったスコットランド人で、イスラム教徒です。ちなみに、現スコットランドの首相も、パキスタン出身の両親から生まれたスコットランド人でイスラム教徒です。奥さんのお父さんは、パレスチナ人です。

アナスさんは、ガザでの停戦に賛成票を投じました。
これについて、アナスさんは、その理由をX(旧ツイッター)でとても明確に述べています。
この短い声明から、アナスさんが、どんなに誰もの命を平等に大事なものだと考え、Integrity(統一性)をもった政治家・ひとなのかということが、よく伝わってきます。
独立系新聞ガーディアン紙の記事はここより。

翻訳ではありませんが、ざっとした内容は以下となります。

ここで、私は、なぜ、何が(停戦を)実現するために起こるべきかを説明します。
私たちは皆、無実の人々の死と破壊、損失を見てとても胸が張り裂けそうになる悲しみを感じています。
もし私たちが平和を求めるのであれば、それは、すべての命、イスラエル人、パレスチナ人であろうと、Equalだと見られなければなりません
一人一人のユダヤ教徒、イスラム教徒、キリスト教徒は、Equalであると見なされなければなりません。
停戦が起こるためには、即時の人質解放、即時の人道的救助へのアクセス、例えば水、食料、医療・薬品、燃料がガザ地区に入ることが必要です。
私たちは、即時にロケットが、ガザ地区の内側から外へ、また外からガザ地区へと飛ばされることを止めなくてはなりません。
それは、即時の停戦を意味します。
平和へのプロセスへのPathway(パスウェイ/経路)が必要です。なぜなら、現在私たちには平和もプロセスもないからです。
でも、私たち、停戦をサポートする人たちは、両方(ハマスとイスラエル政府)が(停戦の条件を)遵守することによってのみ、停戦が可能であることを理解する必要があります
現在、ハマス、テロ組織、は、イスラエルにロケットを発射し続けるといっており、ベンジャミン・ネタニヤフが率いるイスラエル政府は、停戦を考慮に入れることすらしないと主張しています。
パレスチナ市民は、ハマス(テロ組織)ではありません。同時に、私はイスラエル市民がベンジャミン・ネタニヤフの極右政府と同じではないと信じています。
私たちが停戦を見たいのであれば、国際的なDiplomacy(ディプロマシー/外交術)が必要です。地上での状況を変えるために。
一人一人の命がEqualだとみられたときのみ、私たちは(もっと恒久的な)平和をみることができます。平和と安全は、パレスチナ市民、イスラエル市民が本当に望んでいるものであり、猛烈に必要なものです。

アナスさんが述べているのは、ヒューマニティーに満ちていながら、現実をよく観察したものであります。イスラエル政府とハマス、どちらもが停戦条件を遵守する気がなければ、停戦は成り立ちません。
現在のイスラエル政府は、政府高官が「パレスチナ人は動物と同じ(=人間以下)」と堂々とインタビューで答えたり、「パレスチナ人をこの地域から取り除く(=民族浄化と取られても仕方ない)」と言っても、イギリスの多くのメディアでは、こういったとんでもない発言に対して、インタビュアーもチャレンジしないことが多く、ほかでは考えられない対応です。そこには、ユダヤ人を数百年にわたって迫害してきたヨーロッパの歴史からの集団的罪悪感ということも感じます。また、イスラエル政府の国際法違反や戦争犯罪を指摘することと、反ユダヤ主義は違うのですが、力をもっているユダヤ人団体が、イスラエル政府批判をしただけで「反ユダヤ主義、彼らはユダヤ人がこの世から消えればいいとしている」と声を大きくしはじめるのに、恐れている部分もあると思われます。当然ですが、「反ユダヤ主義」は違法です。ユダヤ人というアイデンティティー、或いはほかのどのアイデンティティーでも、差別は行われるべきではありません。イスラエル政府の言動について批判しているのは、ユダヤ人というアイデンティティーについて批判していることとは全く違うので、反ユダヤ主義とは違う、ということは、国際法専門の法律家の数人も一致した意見でした。

これまでの長年にわたる紛争のRoot cause(ルート・コゥズ/根本原因)は、イスラエル建国前後、現在に続くまで、ユダヤ系の人々が、パレスチナ人が数百年住んでいた土地を、原住民(パレスチナ人)を武力や殺害、村の破壊、国際法に違反した逮捕等で追い出し続け、残ったパレスチナ人をアパルトヘイトのように支配下にいれ、基本的人権がない状態にしていることです。
今回の紛争は、無実のイスラエル人が多く殺害される痛ましいものとなりましたが、二度と起こらないようにするためには、誰もが基本的人権をもち、Equalである社会をつくることから始めるしかないでしょう。

Yoko Marta