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患者の命を最後までみたガザ地区の医師Dr. Hammam Alloh(ハマム・アル医師)

Yoko Marta
18.12.23 04:24 PM Comment(s)

患者の命を最後までみたガザ地区の医師Dr. Hammam Alloh(ハマム・アル―医師)

ガザでは二か月以上、パレスチナ市民たちがイスラエルの攻撃と包囲(水や食料がない)が続いています。現在は半数以上がが飢餓状態にあるとの報道もありました。


国連はあまりにも無力には見えますが、国連で働く多くの法律専門家は、今回のイスラエルの主張する「自衛権:戦争を仕掛ける権利」に疑問を投げかけています。

イスラエルに長年占領されているパレスチナ地区(ガザ、ウエストバンク、東エルサレム)で起きている国際法に違反する犯罪等を観察・記録している国連のFrancesca Albanese(フランチェスカ・アルバネーゼ)さんも、その一人です。

もちろん、国際法の解釈も一通りではありませんが、フランチェスカさんの解釈、「自国(イスラエル)が占領している地域に対して、自衛権の行使:戦争を仕掛けることはできない。」という理論は道理が通っているように感じます。

また、自衛権があるからといって、無制限に何をしてもいいわけではありません。医者やジャーナリスト、また普通の市民、人々が生きるために必要なインフラストラクチャー(水の浄化システム、病院、学校、避難所)をターゲットにするのは戦争犯罪です。


今回のイスラエルのガザ攻撃では、ほかの戦争と比べても非常に高い割合でジャーナリストが殺されており、中には、ジャーナリストという職業が原因でターゲットにされたのではないかと疑わざるを得ないケースもあることが、独立系新聞ガーディアン紙のポッドキャストにもありました。 ここ から聴けます。

残念なのは、国際社会は、イスラエル政府が長年パレスチナ市民に対して行っている数えきれないほどの国際法違反(子供を軍隊裁判所にかけたり、裁判なしで牢獄に長期間拘束する等)から目をそむけ続け、特にアメリカはいまだにイスラエルの軍事行動を、外交上のカバー、武器の供給等、全面的にサポートしています。

あまりにも多くのパレスチナ市民が殺され、あっという間にひとりひとりは忘れ去られていくのかもしれませんが、彼ら/彼女らのことを忘れないことは大切です。
少なくとも身の安全がおおよそ保証されている地域に住んでいる私たちにできるのは、目をそむけず、パレスチナ市民に何が起こっているのかを知る努力をすることは、ヒューマニティーという観点からも重要です。

ある日、ニュースを見ていると、北ガザで唯一機能していたアルシファ病院のDr. Hammam Alloh(ハマム・アル―医師)が、非常に流暢な英語で、アメリカ人Interviewerからの残酷なトーンの質問「どうしてあなたは、家族を連れて南ガザへ行かないの(話し方からして、南ガザへ行かずに彼が北ガザのアルシファ病院で死んだとしたら、それは彼のせいという響き)」に答えていました。

穏やかで柔らかい口調の中にも、フラストレーションがにじみ出ていて、私自身も涙が出そうになりました。

もし私がここ(アルシファ病院)を去ったら、誰が私の患者たちの面倒をみるのでしょう?私たちは動物ではありません(※)、私たちにはきちんとしたヘルスケアを受ける権利があります。あなたは、私が医学学校で合計で14年間勉強した理由は、自分のことだけを考えて、患者のことはどうでもいいと思っているのでしょうか?

ハマム医師は、アルシファ病院に隣接している自宅で少しだけ休憩を取っているときに、家が爆撃を受け、一緒にいた数人の家族・親族とともに殺されました。
妻と子供たちは、別の場所に避難していたようですが、無事かどうかは不明だということでした。
イスラエル政府は、標的を精密にしぼり、市民の巻き添え被害は最小限にしていると言い続けていますが、ハマム医師の家は、普通の家族の家であり、テロリストがいないのは明確です。
今までに爆撃で殺された子供や女性の数からも、標的を精密に絞っていないのは確実です。
また、病院を爆撃するのは、戦争犯罪なのは誰もが知っていることです。

アメリカもイギリスも、イスラエル政府のプロパガンダを繰り返すだけです。でも、イギリスの多くの市民は政府に反対で、戦争の即時停戦を求めて、毎週末にさまざまな場所でマーチやプロテストが起こっています。
ほかの多くの病院にも攻撃が続いており、ブリティッシュの医師も、ガザの別の病院で、爆撃だけでなく、ドローンが病院の窓の外を飛び交い、窓の近くにいたスタッフがドローンからの射撃によって数人殺されたり負傷したという話をしていました。

最近でも、病院に必要な医療品が完全になくなり、手術を行えなくなった医師が、病院の床いっぱいに転がって苦しんでいる多くの患者を残して病院を去らざるを得なかったことを涙ながらに語っているのが国営放送BBCでも報道されていました。

イスラエル政府は、ガザ地域でのテレコミュニケーションを使えないようにする等で、ガザでの情報がほかの世界に知られることを防ごうとしていますが、ここでは勇気あるジャーナリストや、一般のパレスチナ市民が、ガザに起きていることを知らせようと、死を覚悟しながら状況を伝え続けています。


また、ウエストバンクでのユダヤ系イスラエル人からのパレスチナ人への暴力・殺害についてきちんと記録をとり、この犯罪と不正義に抗議し続けているユダヤ系イスラエル人たちもいます。
最近(2023年12月4日)のBBC Newsでも放映されていましたが、ウエストバンクでは長年宗教過激派がパレスチナ地域は神が自分たちに(ユダヤ人のみに)約束した土地、ということで、土着のパレスチナ人たちを暴力や殺害でどんどん追い出していますが、ハマスのイスラエルでの殺害があってからは、世界の注目がガザにいったのをいいことに、さらなる勢いでパレスチナ人たちが去らざるを得ないように追い込んでいます。それを記録していたイスラエル系ユダヤ人が、その地域を管轄している警官に話すと、BBCの取材で撮影されていることは明確であるにも関わらず、この犯罪には全く興味を示さず、このユダヤ系イスラエル人に「裏切者!」と叫び、明らかな犯罪(ユダヤ人が、土着のパレスチナ人の家の庭に武器をもって押し入り、なぐったり銃で撃とうとしているのが録画されている)は完全に無視です。
このユダヤ系イスラエル人は、ヒューマニティー、基本的人権、Justice(ジャスティス/日本でいう正義とは概念が違う)という基本原則によって行動しているだけで、パレスチナ人側につく/イスラエル側につく、といった問題でないのは明らかでしょう。
勇気あるユダヤ系イスラエル人たちが、自分が属する社会からの厳しい批判や中傷にもまけず、ヒューマニティーに基づいて行動し、声をあげ続けていることを忘れてはいけません。

こういった報道をみると、多くの市民が殺されていくのになすすべもなくテレビ画面の前にいることは苦しいと思うものの、多くの医師や普通の市民、ジャーナリストたちの勇気ある行動は、戦後への希望へとつながります。

ただ、これ以上の市民が殺されたり負傷することを防ぐために、停戦は即時に行わなければなりません。
イスラエルも、アメリカもイギリスも「ハマスを壊滅するまでは停戦はありえない」という主張を繰り返しますが、ハマスはイデオロギーでもあり、何をもって「ハマスを壊滅した」と定義できるのかについては、どの政府もことばを濁して答えません。政治的な問題には、政治的な解決が必要であり、第二次世界大戦のように日本やドイツの全面敗北というのは、歴史上でも非常に珍しく、通常は戦争はどちらかが完全敗北となるのではなく、話合・交渉で終結します。
イスラエル市民・パレスチナ市民どちらもの権利と自由が平等に尊重されることは解決に不可欠です。その際には、現在ある、あまりにも大きな力の差(イスラエルがパレスチナを長年占領・支配し、イスラエルは核兵器保有国で世界でも最大の軍事力をもつ国の一つで経済的にも裕福で、パレスチナ人は基本的人権すらない)は考慮された交渉である必要があります。

(※)この発言は、恐らく、イスラエル政府高官が繰り返す、「パレスチナ人は人間以下の動物」といった発言からきているのではと思います。イギリスのメディアで、ここまで明確なHate Speech(ヘイト・スピーチ)を行えば、通常Interviewerがチャレンジするのですが、今回のハマス・イスラエル戦争に関する対談では、驚いたことに、多くのInterviewerがチャレンジしませんでした。ここには、ヨーロッパ一般にあるユダヤ人全般に対する集団的罪悪感(ホロコーストだけでなく、ヨーロッパ全土で行われた数百年にわたるユダヤ人への迫害の歴史)もあり、イスラエル政府に対しては何も言えず、ただただ追従する風潮を示しているのかもしれません。また、イスラエルはプロパガンダ専門部隊ももっており、「イスラエルは民主主義(実際は、アパルトヘイト国家で民主主義ではない)で洗練された人々、アラブは野蛮」といった嘘の情報をあちこちにばらまきます。どんな状況でも、誰かを非人間化するのは、とても危険なことです。ホロコーストも、ユダヤ人を「ドブネズミ」等、非人間化することばから始まっていることを覚えておくことは重要で、こういった非人間化することばには、背後に何があるのかを洗脳される前に、気づいて考える必要があります。

Yoko Marta