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難しいひとびとの交流が避けられない場合

Yoko Marta
25.01.24 04:32 PM Comment(s)

難しいひとびとの交流が避けられない場合

多くの人々の転職活動の際に聞くことのひとつは、なぜ転職しようと考えたのか、ですが、圧倒的に多くあがるのは、「人間関係」です。これは、ヨーロピアンの間でも同様で、世界共通だと思います。
職場全体が、がんの病原におかされているような状態であれば、問題を起こしているひとが去ったとしても、がんが転移するように同じことが起こるため、恐らく転職する以外の方法はないでしょう。

もし、仕事自体は好きで将来性があると感じ、職場全体が毒性の高い状態になっているのではなく、違法なハラスメントや心身に危険があると感じる職場ではない場合、転職活動をしながらも、まだできることはあるかもしれません。

以前、よいコンフリクトについてのAmanda Ripley(アマンダ・リプリー)さんのPodcastから記事を書きましたが、今回も、アマンダさんの記事をもとに考察しています。

※考察なので、直訳ではありません。

もし、私生活で、誰かの悪口や噂、根拠のない陰謀説などをふりまいて、感情的に誰かを理不尽に責めるような人がいれば、避けるのが賢明です。
でも、職場など、どうしても交流することが避けられない場合は、いくつか試せることがあります。

まず大事なのは、相手を「悪い人」と大きなラベルを貼って、非人間化しないことです。
その人のBeingとDoingを区別することは大切です。
その人は、何か現在非常に難しいこと(家族が生死に関わる大病をしている等)に直面しているのかもしれないし、子供のころのひどい虐待でトラウマの症状を示しているのかもしれない、という共感を忘れないこと、その人の言動の背後には何があるのかという純粋な興味とひととして尊重する気持ちを持ち続けることは大事です。
もちろん、共感しながらも、あなたを傷つける言動や悪い言動(Doing)があれば、それに対して明確に述べ、その行動を止めてもらうことは共存できます。
また、私たち誰もが、自分の利益のため、権力や注目を求めようとして、誰のためにもならない悪いコンフリクトを作り出す言動を取る能力と可能性があることも忘れてはいけません。

誰のためにもならない「悪い」タイプのコンフリクトを起こす行動の特徴はいくつかあり、早い段階で気づくことが大切です。

  • 一度や二度ではなく、同じパターンの言動が繰り返し起こる (例/いかに自分が不当な目にあっているかを感情的・説得上手に周りの善意ある同僚や上司にふりまき、巻き込み、同僚や上司たちみんながお互いを疑い、避け、攻撃しあう方向にもっていく)

  • 一かゼロか、「良い:100パーセント」か「悪いː100パーセント」かという極端な考え方。どこにもニュアンスは存在しない

 あなたは、これらの言動をみて見ないふりをしていたら、自然とものごとはおさまるかもしれないと期待するかもしれませんが、残念ながら、この状態を放置しておくと、あっという間にあちこちに転移し、手がつけられなくなります。
初期段階で、この問題行動に向き合い、対処することが必要です。

ただ、一つ私たちが覚えておかないといけないのは、誰のためにもならない悪いコンフリクトを作り出すことなしに、従業員の正当な権利である、人事への批判、人事へ苦情を上げること、同僚や上司たちの意見に合意しないこと、ユニオンを率いたり、署名を回覧することもできることです。
悪いコンフリクトを作り出すパターンは、極端な行動や絶え間ない批判(=建設的でないもの。ものごとをお互いに良くするために建設的に意見を交換するのではなく、個人攻撃をするためだけの攻撃等)や、根拠のない噂や陰謀説を流して、職場に不信感をうみだすことです。
ここで、ダイレクトに彼らの言動を批判することは、状況をエスカレートする可能性が高く、先述したように、自分も相手のようにふるまう能力も可能性もあることを頭において、難しくても、共感をもって対応することが重要です。でも、これは、相手の悪い言動を黙って受け入れて、自分が我慢することではありません。

一つの方法は、信用できる第三者(誰か間に立って仲介できるひと)に同席してもらい対面で、悪いコンフリクトを生み出している人と食事、或いは軽くアペリティーヴォの時間を過ごす等です。誰でも、人々に分かってもらいたい、という気持ちを持っているので、これはチャンスです。もし相手の90パーセントが悪い言動であるなら、残りの10パーセントの良い部分に注目して話すようにします。お互いの共通している価値観、例えば「尊敬・尊重すること」等を挙げます。
これらの価値観が今後のお互いの交流・相互関係を導くものとして、実際にそれらをあらわす行動(例/お互いに優しいことばで挨拶する等)と、これらの価値観を損なう行動(お互いの動機を非難するようなメールを送る等)をブレイン・ストーミングします。
決定的に大事なのは、これらの共通の価値観が損なわれたときにどうするかという協定を決めておくことです。
お互いに多くのことに不賛成だけれど、どちらもが最も気にかける深い価値観についてお互いが受入れ、それらが守られていることが分かれば、どちらもが深い息をつくことができます。

また、悪いコンフリクトを生み出すひとのエネルギーを、未来に焦点をあてたポジティヴな方向に導くことも、一つの方法です。その際は、意見を押し付けるのではなく、コンフリクトを生み出すひとに、自分で選んでもらうことが大切です。未来に向けて、ミッション・ステートメントを一緒につくるのもいいでしょう。

誰もが疑いあうような悪いコンフリクトを生み出さないための、最大の防御は、良いコンフリクト文化を保っていることです。それは、安全にものをいうことができ、難しい質問も気軽にでき、正直な不賛成は奨励され、誰もが良識あるふるまい(相手を尊重した発言と行動、誰もが平等で対等という基盤)をする環境です。ただ、こういった環境は、自然にできるものではありません。意識的につくり、保っていく必要があります。これは、ガードレイルのようなものです。
これには、いくつか方法がありますが、従業員全員が関わり、バウンダリーの明確な設定や、誰もが賛同できるお互いの関わり方のルールをつくることが効果的です。なぜなら、誰もが共通の合意したルールを理解していることを知っていれば、悪いコンフリクトを生み出す人も、コミュニティーに属していたいと思うのはみんなと同じなので、通常は自分の言動をルールに合わせて変えることを選択します。
ただ、数十年の経験があるプロフェッショナルな調停人でさえ、3つの悪いコンフリクトのうち、解決できるのは平均2つで、残り1つはどうにもならないそうです。
どんなに良い努力をしてもどうにもならないケースがあるということを知っておくのは、自分の期待値の調整にも役立ちます。

上下関係の序列が極端な日本を含むアジア・中近東の社会では、職場での職位が上で勤続年数が長く男性であれば、自分が下だと見なした人々の意見は、全く聞くに値しないという構造ができあがっていて、正直な意見の交換や、まして不賛成を表明するというのは考えられないかもしれませんが、職歴の長い職位の高い人々が全員そうではないし、特権をもっている人々が先頭になるか、これらの人々を味方として、変えていくしかありません。一人一人がかわっていけば、職位が上の人々も変わらざるを得なくなります。

また、ヨーロピアンの間で大きな不信感を招く、日本ではよくある「表面上だけ賛成して、実際の言動は反対」ということにも気をつけなくてはなりません。ヨーロッパであれば、私たちは平等・対等に意見を言うスペースが誰にも与えられているので、そのときに意見を言わず口先では賛成し、でも心の中では賛成していないので好き勝手にふるまい、賛同したルール(ヨーロッパは「契約」社会なので契約と考えたほうがいいかもしれません)を無視するというのは、軽蔑されるし、卑怯な行動だと解釈されます。
これは、日本人間とヨーロピアンの間で起こる軋轢として、よく見ました。
もちろん、その場ではいい案だと思ったけれど、後から考慮してみて、或いはルールが施行されてから不都合なことや、気にかかる点があれば、みんなでまた話し合ってルールを変えるのは、歓迎です。

以下のコンフリクトへの対処法のいくつかは参考になるかもしれません。

  • もし問題があれば、問題がある相手のところにいって直接話しましょう(もちろん、相手の言動が違法、攻撃的、危険だったりする場合は除きます)対面か電話で。書くコミュニケーションは避けましょう。

  • 自分の中で、最高の結果と、ここまでなら譲れるという最低ラインを考えておきましょう。これは、相手に知らせる必要はありません。自分のコントロールが及ぶのは自分の言動だけで、相手がどう思うか、どう行動するかについてあなたにはコントロールがないことを自覚しておけば、自分の期待値を調節することにもなります。オープン・マインドが大事です。

  • どんなに不賛成でも、真正な興味にみちたたくさんの質問をしましょう。

  • たとえ引き続き不賛成だったとしても、自分が相手の言っていることを正しく理解したかを、自分のことばに置き換えて相手に確認しましょう。

  • スラック等の不健康なコンフリクトをつくりだすツールを使うことをやめましょう、可能なら。もし、使わざるを得ないなら、どのようにこのツールを誠実さに裏打ちされた使い方ができるかを合意しましょう。

  • 良いコンフリクトを生み出す行動を、公に、頻繁に称賛・デモンストレートしましょう。実際に起こった話を、新入社員のオンボーディングの際にします。特にジュニアな従業員がタフな質問を上司に、非難・攻撃することなしに(非難・攻撃されることなしに)行った話

  • 問題をターゲットにする。ひとではなく。

  • 裏でのゴシップや、匿名での攻撃はしない。もし陰で自分の批判をしていることが分かれば、直接本人に落ち着いて話をしましょう。あなたには、自分に対する批判を知り、それに対してあなたの見解を知らせる権利があります。それを相手が避けるような場合は、それは嫌がらせであり、卑怯な行動であり、気に病む価値はありません。恥ずかしいことをしているのは相手であり、あなたにはなんの落ち度も責任もありません。

  • ひとつのネガティヴについて、少なくとも三つのポジティヴな遭遇を蓄積します。 できれば、対面で。あなたの夕食を料理してくれた人を非人間化することは難しいので。.

繰り返しになりますが、大事なのは、相手がどういうふうにものごとをみているのかを純粋に興味をもって理解しようとすることです。全く同じ意見になる必要もなければ、相手の意見に賛成する必要もありません。違う意見や見方をもちながら、お互いの深く大事な共有できる価値観に焦点をあてて、ひととして尊重しながら交流していくことが大切です。
そのためには、普段からたくさん本を読んだり、価値のある国際政治の記事を読んだり、哲学について周りの人々と話したりして、一生を通して、自分の価値観を培っていくことは大事です。

Yoko Marta