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Courage (カレッジ):イスラエルでの「良心」を理由とする兵役拒否

Yoko Marta
25.01.24 04:36 PM Comment(s)

Courage (カレッジ):イスラエルでの「良心」を理由とする兵役拒否

イスラエルでは18歳になると、兵役に行くことが基本的に義務付けられているそうですが、兵役を拒否する運動が起こっています。

18歳になった、イスラエルのTel Aviv(テル・アヴィヴ)に住むTal Mitnik(タル・ミトニック)さんもその一人です。
タルさんは、「良心」を基準に、兵役を拒否することにしました。
これは、「自分」が戦闘に行きたくないと自分だけのことを考えているのではありません。
イスラエルの若者と社会に、イスラエルとパレスチナが共存できる、ユダヤ系イスラエル人(多くは1930年代以降にヨーロッパでの長年の迫害を逃れたヨーロピアン白人系ユダヤ人/1930年以前はこの地域でのユダヤ人は約1割でイスラエル建国時でも約3割/現在は国際法で定められたイスラエル国(イスラエル違法占領パレスチナ地域のガザ、ウエストバンク、東エルサレムは除く)の約8割)、パレスチナ系イスラエル人(イスラエル建国時に多くのパレスチナ人がユダヤ民兵に殺害されたり家や土地を奪われて難民になり、現イスラエル国に残っている原住民のパレスチナ人は少ない。イスラム教徒・キリスト教徒の両方)、パレスチナ人(イスラエル占領下のガザ、ウエストバンク、東エルサレム地域)、誰もが同じ権利と尊厳をもち、平和に暮らせる未来をつくることを考えさせるためです。
この決断には、タルさんのような若者にとっては、厳しい結果をもたらします。
タルさんは、ほぼ確実に軍事裁判で禁固数か月となり、その後も、インターンシップや就職での障害、社会・社交上での問題になることもよく理解しています。
それでも、タルさんは家族や友人の大きなサポートがあるという特権をいい方向につかい、困難が伴うことが分かっていても、兵役を拒否することを公的に宣言しました。
これが、英語でいうところのCourage(カレッジ/勇気)です。
タルさんとともに、200人以上の高校生がこの宣言にサインしました。

兵役がない国で育つと、今一つ理解しがたいかもしれませんが、ヨーロッパでもギリシャにはまだ兵役があるし、イタリアにも数十年前までは存在し、イタリアの場合も、兵役を拒否すれば「国家に対する犯罪」ということで、禁固刑だったそうです。

タルさんのインタビューはここより観れます。

タルさんは、「Youth against Dictatorship(独裁政治に反対する若者たち)」の活動家でもあります。
タルさんは、IDF(Israel Defence Force/イスラエル国防軍)は、パレスチナ人への抑圧や人権侵害、暴力、殺害に関わっていることをよく知っています。
これらの暴力は殺害は、数人や数十人のたまたま悪い兵士が行ったわけではなく、これが体系全体だと分かっています。

一年前ぐらいに、ウエストバンクでイスラエル国防軍が2歳の子供を殺したと告訴がありました。
※ウエストバンクは、国際法でパレスチナの土地だと認定されたにも関わらず、ユダヤ系イスラエル人が入り込み、原住民のパレスチナ人を暴力で脅したり殺したりして追い出し、ユダヤ系イスラエル人居住地域をどんどん広げている事実があります。
あきらかな国際法違反で、パレスチナからも訴えが国際刑事裁判所にもあがっているそうですが、国際刑事裁判所はなかなか動かず、この問題にはアメリカやイギリスの弁護士たちがあらわれこの正当なプロセスをブロックしようとすることが何度も起こっているそうです。
過去の植民地支配等を通じて強大な力を今もふるうイギリスやフランス、アメリカ等の国々の利権は、旧植民地国(多くは有色人種の国々)の人々の人権を上回るという例だとも見られています。

タルさんによると、こういう国際法違反はよく起こっていて、イスラエル国防軍のスポークスマンは、まず最初に「パレスチナ人テロリストが犯人」と声明を発表(完全に嘘)し、その後に都合の悪い証拠がたくさん出てくると、数週間後に「国防軍がやったけど、この被害者の後ろにはパレスチナ人テロリストがいた(仕方ない。国防軍は悪くない)(これも嘘)」。
その後もジャーナリストや国際社会からさまざまな証拠がつきつけられ、数か月後に、とても小さい記事で「国防軍が被害者(多くは子供や普通の罪のないパレスチナ市民)を殺した」が出るそうですが、多くのユダヤ系イスラエル人の記憶に残るのは、最初の「パレスチナ人テロリストが犯人」だけだそうです。
タルさんによると、ここには、軍隊主義の普通の人々・社会への浸透の強さが現れているとしています。
イスラエル政府の政策を批判することはできても、国防軍や国防軍のすることを批判することはタブーで、国防軍のスポークスマンのいうことは、なんの疑問もなく100パーセント信じる風潮がとても強いそうです。
また、国防軍が人権侵害や不当な暴力をパレスチナ人にふるうのをみても、見ないふり、気づかないふりをする傾向となっているそうです。
でも、上記にあるように、タルさんを含めた若者たちは、国防軍が始終、嘘をついていることに気づいています。

タルさんは、この国防軍への宗教に近い絶対的信頼は、兵役が義務付けられていて、兵役の際には、国防軍とともに訓練やオペレーションをともにすることからもきているそうです。

タルさんによると、軍役はユダヤ系イスラエル人全員と思い込んでいる人々もいますが、ユダヤ教超正統派のひとびとは宗教上の決まりをもとに免除され、また、実際に徴兵令の手紙がきたひとのなかでも、実際に兵役を終えるのは50パーセントぐらいだそうです。残りの50パーセントは、途中で兵役をやめたり、そもそも兵役をはじめることもなかった人々だそうです。
ただ、現在までは、政治的な事情、「良心」をもとに兵役を拒否するひとは少なく、社交的な面でも、大きな批判にさらされるそうです。
でも、今までも、ガザやウエストバンク地域で、国防軍と一緒にパレスチナ人に全く正当でない暴力をふるったり、抑圧に加担するのは「良心」に反するとして、拒否して軍隊の牢獄に入れられた人々もいます。

兵役は、男性は32か月、女性は24か月だそうです。兵役を終えると、その後は40歳になるまでは、Reservist(リザ―ヴィスト/予備兵)として、国の緊急時には将兵されるそうです。

タルさんの大きな希望は、できるだけ多くのイスラエル人の若者にたどりつき、今とは違うオプションがあることを伝えたいということです。
軍隊に入隊することは永遠に続くことではなく、現在の軍隊は変わらなければならず、軍隊はこの場所(歴史的パレスチナ地域)で実際の解決の一部になる必要があるということ、暴力がないのが普通だと気づく必要があるとしています。
暴力なしに歩くのは普通で、ここでの解決がほしいのは普通です。
ここには700万人のパレスチナ人がいて、彼らはどこにもいかないし、(ユダヤ系イスラエル人は)彼らと一緒に生きていくという事実を認識しなければなりません。

タルさんの友達の多くは、現在兵役業務についているけれど、彼らは友達で、自分の意見や考え(兵役拒否)について、タルさんの意見の基盤のヒューマニティーと言うポジションを理解してくれているそうです。
タルさんの友達は、タルさんがこの場所にいいことを望んでいることを知っています。タルさんは、すべての人々への安全と平和がほしいと望んでいます。
このヒューマニティーのポジションを若い人たち、10代の人々に話すとき、今ガザで起こっている大量殺害やハマスが引き起こした虐殺に代わるものがある、「平和」と「暴力のない状態」は可能だと知らせたい、とタルさんは括っています。

Yoko Marta