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地球上の私たちがみんなもっているShared Humanity

Yoko Marta
19.04.24 03:05 PM Comment(s)

地球上の私たちがみんなもっているShared Humanity

たまたま聞いていたポッドキャスト「Intercepted」で、アメリカ人救急医師(もともとはパレスチナ難民の両親のもとにクウェートで生まれ、アメリカへ難民として移民)のMohammad Subeh(モハメッド・スベー)さんが、ガザでの数週間の救急医師の経験を話していました。


モハメッドさんの両親は、1948年のイスラエル建国時にユダヤ系民兵によって暴力的に追放された75万人のパレスチナ人たちの一部です。
モハメッドさん一家はKwait(クウェート)で難民として暮らし、1984年にモハメッドさんが生まれ、モハメッドさんは人生の最初の6年をクウェートでパレスチナ難民として暮らします。どこに行くにもTravel Document(トラヴェル・ドキュメント/旅券等の身分や国籍を証明するもの)を持ち歩かなければならず、そこには、「Stateless(ステイトレス)/無国籍」と書かれていました。

ちなみに、これは多くのパレスチナ難民が経験していることで、たとえその国(難民として受け入れられた国ーレバノンやジョルダン、カタール等の周辺の国々)で生まれようと長く住もうと、滞在国での国籍や市民権を得ることは非常に難しく、多くは数世代にわたって、難民キャンプに暮らさざるを得ない状況です。
市民権や国籍がないということは、職を得ることも難しいし、住む場所も仮の場所で、政治・経済状況の変化でいつその国からも追放されるかも分からない、常に不安定な存在となります。
イスラエルは、国際法で追放されたパレスチナ人は自分のもともとの家・土地に帰る権利があるにも関わらず、これを禁止しています。

1990年に湾岸戦争が起こったとき、モハメッドさんの父は殺されることが明らかだったため、家族で難民としてアメリカに渡ります。
モハメッドさんは、小学校では、湾岸戦争での体験や突然の全く違う環境・言葉等で混乱していて、成績はよくなかったそうです。でも、ロサンジェルスの貧しく犯罪の多い地域に暮らし、地元の学校の近くで、救急医師がヘリコプターでやってきて負傷した人々を助けるのをみて、救急医師になりたい、と強い思いをいだいたそうです。
高校では救急医師だったひとがメンターになってくれるという幸運もあって、医学部へとすすみ、救急医師となります。
でも、モハメッドさんがアメリカの市民権を得たのは、アメリカへ難民としてやってきてから15年たった後の2005年だそうです。
モハメッドさんは「難民がやってくると、すぐアメリカ人の職を奪う」と巷で言われていることは、自分の進んできた道を考えても、考えられないことだとしています。

モハメッドさんは、ガザに親戚がいて、それも理由の一つでガザでの医師ヴォランティア―に参加したのですが、そこで見たものは、救急医師としてアメリカの犯罪が多い地域で多数の負傷者を扱うような経験をしているにも関わらず、完全に想像をこえたものだとしていました。
詳細はかなりグラフィックなので省きますが、モハメッドさんは、連れてこられる負傷の中で、子供が占める割合の多さ(連れてきてくれる家族や誰かがいただけで、幸運なほう)と、負傷具合、負傷者たちからの話から、ドローンに付属している銃から、狙いうちされた場合がとても多く、「indiscriminate attack(インディスクリミネイト・アタック)/(市民と兵士を)区別しない攻撃」どころではなく、「子供や女性を含む市民を狙い撃ちにした攻撃」だとしていました。
ドローンには、高性能のカメラがついており、イスラエル兵士は誰を射撃しているのかは、よく分かっています。
また、モハメッドさんによると、患者たちの負傷具合には共通点があり、逃げられないように足を撃ち、身体の中心部を撃つような残酷なものだとしていました。
モハメッドさんは、病院で働く医師や看護師たちも、病院外に出るときは病院で働いていることが分からないよう、わざわざほかの一般市民と同じような服装に着替えていたことを指摘していました。実際に、医療関係者はさらわれて拷問を受けたり、狙撃され殺されたりしているそうです。イギリスを含む西側の主要メディアでは、「イスラエル自衛軍は、世界で一番モラルの高い軍隊だ」というイスラエル側のプロパガンダがくりかえされることが多いのですが、それが事実でないことは、実際にガザに行った医師たちお多くが証言しています。

その中でも、モハメッドさんが絶え間なく経験したのは、Shared humanity(シェアド・ヒューマニティー/地球上にいる私たちがひととしてみんなで分かち合っているヒューマニティー)だそうです。

最初に診た患者さんは、飢饉が広がっているにも関わらず、なけなしの食料であるクッキーをモハメッドさんに受け取ってほしいと差し出したそうです。モハメッドさんは、「おじさん(その地域では、親戚でなくても尊敬と親しみをこめて年上の男性を、おじさんと呼ぶそうです)、これは受け取れないですよ。。どうぞご自分か家族と分けてください」と答えたそうなのですが、「こうやって、私たちを助けにきてくれているだけで、とてもうれしいんです。どうぞ感謝の気持ちを受け取ってください」と主張したそうです。
また、家族全員を目の前で殺された少年は、唯一親戚のなかで生き残ったのは叔父とその幼い姪だったのですが、彼女がひどい負傷をして病院にいたために、一緒に病院に住んでいたそうなのですが、そんな状況にも関わらず、毎晩モハメッドさんの仕事が終わると、一緒に話そうといってやってきて、いつもモハメッドさんが自然にスマイルするような時間をくれたそうです。

ある日、自分の家族も殺され、その上に親友だった従弟までも殺された少年が、「どうして従弟は殺されないといけなかったの?彼が何をしたというの?」と、どう慰めても泣き止まず、そのときは彼を連れて難民テントでいっぱいの病院の庭を歩いて彼の気持ちを鎮めようとしたそうです。そのとき、自分たちも爆撃や狙撃で負傷して足や腕を失った子供たちも含めて、子供たちがみんなやってきて、「どうして泣いてるの?」と聞いて、彼が大事な家族を失ったのだと知ると、みんなが彼をハグして、「大丈夫だよ、彼は天国にいったんだよ」と慰めたそうです。

病院に運び込まれてきた4歳ぐらいの少女は、一緒にいた10歳くらいの兄といるところをドローン狙撃され、兄は病院に運び込まれてきたものの命は救えず、その少女は、ほかの家族全員も殺されていたため、孤児となったそうです。
モハメッドさんは、数多くの孤児となった負傷者を見たそうです。
スズメバチが飛び交っているようなドローンの飛ぶ音が24時間、病院や難民テントのまわりでも途切れず、少女は兄が殺されたショックと自分も狙撃され負傷したことで怯えているし、モハマッドさんも、この絶え間ないノイズや、大きな爆撃が何度も起こり病院や地面が揺れるのに慣れるまで、1週間以上かかったそうです。
モハメッドさんがフラストレーションを感じざるをえなかったのは、医療に必要な基本的な用具や薬、消毒薬や痛み止めといったものがなかったり、とても少なくて、麻酔なしで手術をせざるを得なかったり、助けられる人々を助けられなかったりしたことだそうです。
それらの医療品は、この病院から数キロメートル離れたイスラエル・チェックポイントに長い列をつくっているエイド・トラックの中にあるのを誰もが知っています。

モハメッドさんが、西側のダブル・スタンダードだと感じたのは、西側のチャリティー団代である「World Central Kitchen/ワールド・セントラル・キッチン」で働く人々がイスラエルの攻撃によって殺されたときに、西側諸国は強い反応を示したもの、200人ほどのエイド・ワーカー(ほとんどはパレスチナ人)が殺されたことは、西側メディアで報道されることもほぼなければ、それが強い反応も起こさないことです。
モハメッドさんは、これは、西側にいる人々の命は、パレスチナ人の命よりもずっと貴重である、といっているようなもので、人々の命や価値に優劣をつけるような仕組みが、今回のガザでの大量殺戮も可能にしているのではないか、としていました。
モハマッドさんは、現在はアメリカ国籍をもっていますが、とても長い間、「無国籍」でした。
それは、モハメッドさんに、世の中をもっと自由な見方でみることを可能にしてくれたと言っていました。
人々は、国籍や経済的・社会的地位や肌の色等、さまざまな人工的なことで人々に優劣や上下を決めつけたり、思い込みをもちがちですが、長年「無国籍」であったモハメッドさんは、ここから自由です。
また、救急医療の場でも、患者の命の尊さに、社会的にとても高い地位を持っている、貧しい地域の人々なのか等は全く関係ありません。
すべての命が同等に貴いものです。

モハメッドさんは、人々に優劣をつけはじめると、あるグループの人々は、ほかのグループの人々より、命の価値や、よい人生やリソースにありつける権利がよりあると思い込み、それは、劣っていると勝手に自分たちが決めつけたグループの人々を非人間化することにつながるのではないか、としています。
モハメッドさんは、この「○○至上主義(人種だったり宗教だったり男女の別だったり、その時代や地域の状況でさまざまー事実ではなく、人工的に優劣が決められたにすぎないから)」が、多くの問題の根本的な問題だとしています。
いったん非人間化した人々に対しては、どんな悪いことでもやってしまうことを、自分たちに許可することになります。

ただ、ほかの人々やグループを非人間化するということは、自分自身や自分自身が所属するグループを非人間化しているということを忘れていはいけません。

イスラエルに住むユダヤ人ジャーナリストで、イスラエル政府のパレスチナ地域の違法占領について長年にわたって反対し、事実を報道しているGideon Levy(ギデオン・レヴィ―)さんへのインタビュー内で、レヴィ―さんは、イスラエル兵から狙撃されたことがあることも話していました。
レヴィーさんも、若いうちは、イスラエルでの教育的な洗脳につかっていたので、イスラエル自衛軍がパレスチナ市民やパレスチナ人女性にひどい扱いをしているのを繰り返し見ても、彼らは例外で、多くのユダヤ系イスラエル人兵士はいい人に違いない、と思いこもうとしていたそうですが、客観的な歴史事実を知ることや、つらくても目を開いて何が起こっているかを認めて、パレスチナ市民とも友人として話をすることを通して、自分が洗脳状態であったことに気づき、徐々に自分の洗脳状態を解き、事実をそのまま見るようになったそうです。
レヴィ―さんは、イスラエル国内でさまざまな嫌がらせや脅しを長年にわたって受けています。
ほかのグループだと見なした人々(Others)を非人間化する行動やメンタリティーは、結局自分たちのグループ内にも及ぶことになります。
レヴィ―さんは70歳を越えていると思うのですが、自分はジャーナリズムを信じているし、これらの脅しを怖いとは思っていないし、自分が真実を追い求めて事実を書いている姿勢を(それで結局は命を落とすことになろうとも)全く後悔しないし、逆にもっとアグレッシブに事実を書いてもよかったぐらいだ、と言ってました。
危険もかかえながら、ジャーナリズムを貫いていることについて聞かれて、「歌い鳥が歌うことをやめられないように、自分も(真実を追い求めて)書くことをやめられないだけのこと」としていました。

モハメッドさんは、世界中の人々が目を覚まし、何が起こっているかに気づき、私たち誰もがもっているintellect(インテレクト/知性・知力・思考力)をつかい、研ぎ澄ますことに期待して、希望をもっていると言っていました。
実際、世界中の多くの地域で、ガザでの即時の完全停戦、イスラエルのアパルトヘイトをやめるよう、マーチやデモンストレーションが続いています。

もちろん、モハマッドさんもそれが簡単ではないことは知っています。
ガザで起こっていることについて、意見を表明したとき、医師仲間には、モハマッドさんを「医療現場にはいられない。君は解雇されるべきだ」と脅した人々もいたそうです。
アメリカは、プロ・イスラエル派(親イスラエル派)が経済界や権力をもった人々のなかに多い国です。
でも、若い人々(人種や社会的・経済的地位に関わらず)や、若いユダヤ系アメリカ人の多くは、ガザで起こっていることについて、植民地支配や黒人差別といった差別システムやアパルトヘイトとの共通点(どのグループか、人種やひとが生まれつき優秀であり、ほかの人々やグループを劣っていると見なして、劣っていると決めつけたグループやひとの基本的人権や尊厳をふみつけ、彼らのリソースを奪い、力で従属させる・非人間化する)をみて、大きく反対しています。
これは、人類の歴史の中で、多くの地域で、システム的に長い年月と世代にわたって行われていることでもありますが、人々の心の中から、ひとに優劣をつけることが消えなければ、どんなに法律やシステムを変えても、システムは形を変えて生き残り、多くの人々を苦しめることになります。

モハメッドさんが言ったように、ひとの命や価値には優劣はなく、誰もの命も人生も同等に貴いものなのだということを内在化していることは大切です。
真にそう思えないなら、どのように人の命や価値が同等に貴いものではない、といった考えを刷り込まれのか(赤ちゃんのときに、そういった考えをもって生まれているわけではなく、家族や社会、教育等で意識的・無意識に学んだもの)を、考え、自分をそれまでの洗脳状態から解放することは重要だし、可能です。

【参考】
ほかのメディアでのモハメッドさんへのインタビュー
https://www.kqed.org/news/11981941/hopeandlossingaza

ロンドンで活躍しているパレスチナ人シェフSami Tamimi(サミ・タミミ)さんのレシピ本「Falastin(ファラスティン)」
モハメッドさんも、ポッドキャスト内でファラスティンと言ってましたが、パレスタインは英語圏の呼び方で、現地語(パレスチナ地域で使われるアラビア語)では、ファラスティンだそうです。そのため、レシピ本のタイトルも現地語読みになっています。レシピに沿って作るのも比較的簡単にしていて、おいしいです。

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