ファット・フォビアを製造して巨大な利益を得ているダイエット・ウェルネス・フィットネス業界の仕組(=資本主義の構造)に対して闘う

Yoko Marta
02.12.24 03:50 PM - Comment(s)

ファット・フォビアを製造して巨大な利益を得ているダイエット・ウェルネス・フィットネス業界の仕組(=資本主義の構造)に対して闘うー怒りを闘う勇気に変えて ー Kate Manne(ケイト・マン)

Kate Manne(ケイト・マン)さんは、Fat Phobia(ファット・フォビア)も家父長制のイデオロギーによる抑圧の一つで、人種差別、男尊女卑等、さまざまなSocial Justice(ソーシャル・ジャスティス/社会正義)と共通部分があるとしています。

家父長制や人種差別は、特定の誰かが(或いはグループ)が権力・資源・富を独占し続けるための社会構造や機関(司法、警察、政治・経済・教育等)をつくり、メディアも効果的に利用し、残りの人々は独占階級である人々よりすべてにおいて「下」、或いは人間以下として、彼らの力を奪い、搾取します。
家父長制だと、男尊女卑やミソジニー、セクシズムやファット・フォビアで、女性の多くを抑圧します。
優生学(白人は遺伝的に知性やモラル・身体的に優勢な種で、有色人種はすべてにおいて劣っている動物に近い種)・人種差別は、植民地化の正当化のために生み出された偽科学で、有色人種を抑圧します。
植民地化では、西ヨーロッパの白人たちが地球上のほとんどの地域に侵略し、原住民の人々の土地や資源を奪い、(正当に)抵抗した人々だけでなく、その土地にいること自体が(自分たち侵略者にとって)邪魔だとして虐殺したことを正当化するために捏造されたイデオロギーです。
現在の遺伝子科学では、地球上に住む人々の99パーセントぐらいの遺伝子は同じで、肌の色素の違いは、知性にも、当然モラルにも全く関係のないことは証明されていますが、いまだにこの偽科学を信じている人々はたくさんいます。
この植民地化は、西ヨーロッパでもアメリカやオーストラリアでも、「神(キリスト教の神)からの使命にしたがって、誰もいない荒野に(←実際は多くの原住民たちが数世紀にわたって独自の文明を築いていた)、開拓精神があり勤勉でモラルも知性も優れた白人が(ヨーロッパから)やってきて、荒野を文明的な場所にして花開かせた」がいまだに大きく信じられています。
これは、プロパガンダで、教育(教科書やどう教えるか)・新聞等のメディア、映画(例/アメリカやヨーロッパで好まれる西部劇では、原住民たちは野蛮なな獣のように描かれ、侵略者である白人たちはイノセントで文明があり、突然あちこちから現れることばすら話せない(←自分たちのことばを話しているけど、ヨーロピアン言語以外はことばだとはカウントしない)獣の攻撃から、自分たちを正当防衛するために果敢に闘うヒーロー ← 実際は、自分の土地や家を奪い、家族や部族の多くを殺した白人侵入者に対して、原住民が正当防衛をしている)、小説等で人々の意識下・無意識下に独占階級に都合のよいナラティヴが埋め込まれます。

だからこそ、私たちは、一見つながりのないことのように見えるかもしれないことをつなげて考え、みんなでつながり、共通のことについて力を合わせて闘う必要があります。
ミソジニーについて闘う人々は、白人至上主義や人種差別に抑圧されている人々と根っこは同じ問題を扱っています。
独占階級は少数で、数ではとても多い従属階級におしこめた人々が、社会の仕組や構造に気づいて、独占階級にゆさぶりをかけることをとても恐れています。
独占階級がよく使う効果的な手段は、従属階級の中の人々をお互いに憎悪させあい、たたかわせることです。
人種差別では、有色人種の中でも黄色人種を黒人より少し優遇することによって、黄色人種と黒人との間に不信感や妬みを生み出したり、エスニックや宗教の違いで人々を分断します。
仕組・構造を理解する人々が増えれば、これらの卑怯な戦術に惑わされず、独占階級が独占階級のためにつくりあげた社会の仕組・構造を壊し、誰もが平等な権利と自由をもつ社会・世界の実現は可能となります。

近年は、人種差別や男尊女卑・女性差別については、かなり理解が深まっていますが、ファット・フォビアについては、まだ社会の理解が進んでいない状態です。
その理由について、ケイトさんは、人種や性別、性指向等は、コントロールできないけれど、体重や身体のサイズについては、コントロール可能な「個人の選択」であると無意識・意識的に考える人たちが多いからでは、としていました。
ケイトさんは、ガーディアン紙の記事の中でも、身体のサイズ(身体つき)や体重は、遺伝によるものが約70パーセントであること(身長は約80パーセント)、貧しい地域・家庭で育てば、買うことのできる食べ物はカロリーが高くて栄養素が少ないものに偏らざるを得ない(=社会構造の問題)、病状をコントロールするための薬のせいで体重が増えたり、と、身体のサイズには、遺伝・経済状況や社会構造に影響されている部分が大きく、身体のサイズはコントロールが簡単にできるものではないことを、理論的に説明しています。(=身体のサイズがその特定の社会で普通、或いは望ましいとされているものではないのは、個人がだらしないから等の間違った偏見を打ち砕く)
また、BMIを肥満の基準として使うことは多いものの、これは問題のある基準であることはよく知られていて、フィットネスジムのトレーナーでとてもフィットしていて健康でも、BMI上では肥満であることは、けっこうあることだそうです。

実際、このファット・フォビアからくる差別や偏見は、医療や健康(病気なのに、体重のせいだと判断され、きちんと診察してもらえなかったり等)、職場面談での差別(経済的な問題につながる)、道徳観に結び付けられる(モラルが低い・意志力が弱い等の勝手な社会からの思い込みでひどい言葉を浴びせられたり、仲間外れにされたりする等)、人々の現実の人生や生活に大きな影響を及ぼしています。
ファット・フォビアは、拘束服のように、私たちの自由、動き、ポテンシャル(可能性)を制限します。
人によっては、摂食障害を引き起こし、最悪な場合は、死にいたることもあります。
しかも、この「太っているのではないか?」という世間からの刷り込みは、フィットネス・ウェルネス・ダイエットといった拡大を続けている業界によってさらに増幅されていて、3歳~6歳ぐらいの子供たちの多くが気にしていて、10歳では約8割以上が既に(痩せるための)ダイエットを行ったことがあるというデータもあるそうです。
このフィットネス・ウェルネス・ダイエット業界は、多くの人々に「太っているのはだめだ、痩せなくては」というメッセージをお金儲けのために、巧妙に、意識している範囲だけでなく、無意識な領域にも侵入して、私たちを洗脳します。
ギリシャの経済専門家、Yanis Varoufakis(ヤヌス・ヴァロウファキス)さんは、私たちが知っていた資本主義は既におわり、Techno Feudalism(テクノ・フューダリズム/テクノ封建制)がきたと述べています。
この特徴は、ソーシャルメディアやアマゾン等のアルゴリズムで、「私たち一般の人々の注意をひきつける→私たちがソーシャルメディアやアマゾン等を使うことによってアルゴリズムはさらに訓練される(←ソーシャルメディアやアマゾンの企業は無料で私たちの時間や労力をつかってアルゴリズムを訓練させているーお金儲けのため)→(アルゴリズムによって作り出された、多くは無駄で無意味な、ときには有害な)欲望を製造する → その欲望を満たすために、モノやサーヴィスを市場を通さずに直接売りつける(でも、本人は自分が欲しいから買ったのだと思っている)」
だから、「痩せなければならない、痩せていないとひととしての価値がない」といった嘘のメッセージが無意識化でも自分の意志とは関係なく浸透する仕組になっていることに気づく必要があります
「痩せなければ」というプレッシャーや恐怖をつくりだすことによって、利益を得ているのは誰か、をよく考えましょう。

また、とても大事な部分だと思うのですが、私たちの身体は、誰かを満足させたりするために存在するわけではありません
ケイトさんが、オーストラリアのシドニーの文学講演で話していたことが、とても心に残ったので、以下にケイトさんが言ったことと、私の考察を書いています。

ケイトさんの講演は、ここから無料で聴けます。

ケイトさんは、講演の最初に、著書の中からいくつかを抜粋して読んでいます。

私の身体は私のもの(私のためのもの)
あなたの身体は、あなたのもの(あなたのためのもの)
私の身体は、飾りではありません。
あなたの身体は、飾りではありません。
私たちの身体は、私たちのHomeです。

このノーションは、Body Reflexive(ボディ・リフレキシヴ)で、ボディ・ポジティヴやボディ・ニュートラリティーとは違うものです。
これは、革新的な再評価・再検討で、私たちの身体は、誰の為でもなく、私たち(=自分)のために存在していることを意味しています。
私は、この考えから、私自身の自由を見出しました
私たち(私たちの身体)は、他の人々を満足させることに責任はありません
自然な肌の色・私の身体に対するあなたの反応は、私の問題でもないし、私にとって重要なことではないし、救済でもありません。
身体はコレクション(収集)のオブジェクツ(モノ、収集品)でもなければ、消費するもの(例/ポルノ等)でも、植民地化のためのものでもありません
私は、あなたが私の身体に対して冷たく感じても、欲望を感じたとしても、そのことに対して申し訳ないと思わないことについて、申し訳ないとは思いません。

この講演の中では、ケイトさんは、ある話を引用していました。
黒人アジア人のぽっちゃりとした女性が水着を着た写真をソーシャル・メディアに載せたところ、著名人である男性が、頼まれてもいないのに、彼女を貶めるようなコメントをします。あっという間に、苦情が寄せられ、彼は謝りますが、実際に悪いことをしたとは思っていません。
その後に、彼は白人・ブロンドでやせている女性の姿を引用して、彼女は美しく望ましい、とします。
ここには、いくつかの差別・偏見があります。
まず、最初に黒人・アジア人はマイノリティーで、白人至上主義や人種差別から、勝手に「美しくない」という判断をされます。
また、「やせている/太っている」というのも、「やせている」ことが美しいという偏見(社会の構造上、つくりだされたもの)があります。
ケイトさんも言っていますが、このインターセクショナリティー(交差性ー人種・性別・社会階級・性的指向等の差別を個別にとらえるのではなく、交差するもの・レイヤーのように重なっているものと考えること)を見抜くことは重要です。
また、地球上のどの地域にも、「太っている/ぽっちゃりしている」のが豊饒さを示しているということで、美しさの基準とされていた時代は存在します。
「太っている」という判断も、人それぞれ、社会・環境でも違ってくるし、誰が、なんのために。誰かが「太っている」という判断をしているのか、ということを考える必要もあります。
ここでは、彼の言動には、ミソジニーもみられます。
彼は誰からも女性の外見についてのコメントを頼まれたわけでもなければ、彼女たちの身体は、彼を満足させるために存在するわけでもありません
それでも、彼の発言からは、女性の身体は彼に個人的に提供されるべきもので、彼のもの、ということが伝わってきます。
しかも、女性の身体の美しさの基準は、彼自身に権威があり、その基準は彼がどのぐらい(性的な)喜びを得たか、ということです。
残念ながら、まだまだ上記を無意識に自分の権利だと思って言動を行うひとは多いそうです。
標的になりやすい女子・女性は、少なくとも、この構造・パターンに気づくことは大切です。
そうすれば、個人的に受け取り傷つくのではなく、ほかの人たちと協力して、この有毒な社会構造を壊す行動に移すことができます。

ケイトさんのQ&A

Q: 「あなたの身体はあなたのものである、他の人々の楽しみや満足のためでなく」というアイディアを、どうやって保ち続けますか。特に女子や女性にとっては、頭では分かっていても、感情的にはとても難しいと思います。
何が戦略でしょうか?

A: 私は、「怒り」を戦略としてつかいます
(ここで、聴衆からとても大きな笑いーケイトさんに大きく賛同するような暖かいものーが起こっていました)
私は怒っています。
なぜなら、フィットネス、ウェルネス、ダイエット業界は、2030年までにグローバルで四千億アメリカンドル(約60兆円)に伸びるとみられています。
これは、本当に間違っています。
誰が、私たちに不十分・不適切であると思わせ、太りすぎている・大きすぎると感じることから利益をえているのでしょう
これらは、白人至上主義、人種差別、とても深いミソジニー、階級、ablism (エイブリズム/心身になんらかの障害がある人への差別や偏見)等の資本主義末期を前進させるための搾取です。
私が搾取されているというこの気持。
これらの気持ち(私は太りすぎ・大きすぎて、(ひととして)不十分・不適切であるという苦しい気持ち)は、私のものではありません。これは、私のお金を得るために資本主義の仕組によって、私に雑に埋め込まれたものです。
私にとって、助けになるものは何もありません。
なぜなら、私がどのように写真にうつっているか、といったことは、既に私とは関係ありません。
「私自身」対「業界(資本主義の構造)」という角度からみて、文化的・社会的・政治的に問題である構造としてみることは、私にとってとても役立っています。

ケイトさんには、幼い娘さんがいますが、ケイトさんは、子供をもったことで、さらにこのファット・フォビアの仕組について、リサーチを行い、声をあげなければ、と思ったそうです。
前述したように、ある統計では、少女たちは、3歳から6歳の間に「太っているのではないか?」と恐怖を感じ始め、10歳になるまでには、80パーセント以上がダイエットを試みているそうです。
ケイトさんは、摂食障害に悩まされた時期も長いので、娘やほかの子供たちにも、自分よりももっと、自分の身体・食べることとの健康な関係性をもってほしいと強く思います。
ケイトさんは、このダイエット文化の信念(細い人は魅力的で人間的に優れていてモラルも高く、人間的に価値がある等の偏見)、ファット・フォビアから抜け出すことは可能だということを娘さんに見せたかったそうです。

ケイトさんは、ある日、娘さんが自分の姿を鏡でみて、「Fabulous! (ファビュラス/素晴らしい・素敵)」と言っているのをみて、感動したそうです。なぜなら、娘さんが自分自身の身体と健康な関係をもっているのが明確だからです。

Yoko Marta