和平構築とは、不正義に苦しんでいる側につくということ ー ベツレヘムの牧師、ムンター・アイザークさん

Yoko Marta
28.01.25 06:39 PM - Comment(s)

和平構築とは、不正義に苦しんでいる側につくということ ー ベツレヘムの牧師、ムンター・アイザークさん

ガザの停戦で、少しほっとしている人もいるかもしれません。
でも、国際法でパレスチナ領地と定められているウエスト・バンク、ベツレヘムでは、イスラエル軍、ユダヤ系イスラエル人からのパレスチナ人に対する暴力・殺人が増加しています。

国際ジャーナリストでもあり、神学者としての研究もしたChris Hedges(クリス・ヘッジ)さんのポッドキャストに、ベツレヘムの牧師、Munther Isaac(ムンター・アイザーク)さんが登場していました。

アイザークさんは、ポッドキャストの中で以下のように語っていました。

和平構築とは、一方の側につくということです。
一方の側とは、不正義に苦しんでいる側です。
神は、不正義の真っ只中、抑圧の真っ只中で、(不正義に苦しんでいる)私たちと共にいます。
正義を犠牲にして、(見せかけの)平和や和解を優先するべきではありません。
抑圧がある場合、神は、抑圧されている側に立ちます。
不正義がある場合、神は社会的に不利な状況に置かれた・疎外された人々の側に立ちます。
神は、貧しい人々の側に立ちます。
これは、聖書の中でも明らかに説明されています。

英語では、Neutral(ニュートラル/中立)とImpartial(インパーシャル/偏らない・公平な)は全く意味合いが違うのですが、日本語では伝わりにくいと思います。
アイザークさんが言っているのは、神はニュートラルではなく、不正義に苦しんでいる人々(=パレスチナ人のように、76年前にヨーロピアン系ユダヤ人たちに殺害や暴力で、数世紀にわたって住んでいた土地や家を奪われ、難民となり、その難民キャンプがある地域でさえ、国際法違反の軍事占拠・軍事包囲を受けていて、自由も尊厳もない状態の人々)の側、つまり、ヒューマニティーに基づいて、インパーシャルだということになります。
戦争や紛争というコンテクストでいうと、例えば、戦争や紛争状態にある2か国の人々がいて、別の国や団体が中立であると決めた場合、その戦争や紛争で負傷した人がいて助けることが物理的に可能でも、何もしないことになります。
でも、インパーシャルだと、ヒューマニティーに基づいているので、どの国の人であろうと、負傷した人をできる限り助けます

南アフリカのアパルトヘイトを闘いぬいた神父のデスモンド・ツツさんは、「中立」について、以下のようなことを言いました。
※意味をほぼ完全に取り違えている日本語翻訳をかなり目にしました。原文を自分で読むことは大事です。日本は基礎学力の高い国なので、中学校の英語を修了していれば、辞書を片手に十分理解できます。

不正義が起きている状況の時に、あなたが中立を選んだのなら、あなたは抑圧する側に立っています
もし象がねずみのしっぽを踏んでいて、あなたが、「私は中立です」と言うのであれば、ねずみは、あなたの中立性には感謝しないでしょう。

デスモンド・ツツ

ここでいう「中立」とは、ねずみは小さすぎて象には勝てない・見えない・何もできない状況で苦しんでいる不正義を、あなたは目の前にしていながら、自分にできることをせず(=象に一言いって足をどけてもらう等)、何もしないことを選択したことを指しています。小さなねずみのしっぽが大きな象に踏まれている状況は不正義であり、あなたはそれに対して、不正義に苦しんでいるねずみの側にたち、ねずみの苦難を取り除けるよう、一緒にたたかう必要があります。

歴史的パレスチナ地域に対しては、毒性のある偽りのプロパガンダ「同じ土地に対して、同等に正当な権利のある人々が所有権を争っている/宗教戦争(ユダヤ教 対 イスラム教)/ 文明の衝突(Judeo-Christianユダヤキリスト教文明 対 イスラム教文明)」がまことしやかに語られますが、これらの嘘を見抜くには、歴史・事実をよく知る必要があります。

歴史的パレスチナ地域に数世紀にわたって住んでいたアラブ系の人々(キリスト教徒・イスラム教徒)を暴力と殺害・虐殺、テロ行為で殺害、追い出し、1948年に設立されたのがイスラエル国家です。
国際法で、ユダヤ人に(不当に/国際法違反で)追放されたパレスチナ人は、先祖代々の家に戻る権利があることを公式に認定されていますが、イスラエル政府はブロックし続けていて、その上に、国際法違法と認められている行為=パレスチナ人の土地や資源(水へのアクセス等)を奪うこと、を続けています。
国際法の施行では、国際社会が国際法に違反する行為を行う国に対して、経済制裁等のできうる限りの行動を取り、国際法を遵守するようプレッシャーをかける責任がありますが、イギリスやアメリカは常にイスラエルの味方で、イスラエルにプレッシャーをかけるのではなく、国際司法裁判所にプレッシャーをかけたり、法律のテクニカリティ―を悪用してイスラエルの責任を問わないようにしたりという状態が続いていました。
そのIMPUNITY(インピュニティー/罰を受けない)が積み重なり、徐々に今回の虐殺につながったともいえます。

歴史をさかのぼると、オットーマン帝国(1299年ー1922年)の一部だった歴史的パレスチナ地域では、ユダヤ教徒は約3パーセント程度で、現パレスチナ人であるキリスト教徒・イスラム教徒とも、平和に数世紀にわたって住んでいたそうです。
オットーマン帝国はイスラム教の国ですが、当時のヨーロッパ(キリスト教)から迫害・追放されたヨーロピアン系ユダヤ人を受入れ、差別はあったものの、職業の自由も認められ、移動や教育もかなり自由で権利もあり、キリスト教ヨーロッパとは大きく違い、その地域の社会に溶け込んで暮らしていた安定した時代だそうです。
ちなみに、ヨーロッパでキリスト教への強制が激しくなった時期には、ユダヤ人に対してキリスト教に改宗するか、土地を去るかという選択に迫られ、キリスト教に改宗したユダヤ人もかなりいたそうですが、結局は、キリスト教徒であるにも関わらず、ヨーロッパから追放されたそうです。
ここで、「ヨーロピアン=白人・キリスト教徒」「ユダヤ人キリスト教徒=非白人(見かけは白人ヨーロピアンと同じでも)・キリスト教徒」という人種差別・白人至上主義が適用されているのがみえる、とする説もあります。
1492年にコロンブスのアメリカ大陸への航海で始まった植民地化の嵐は、この白人至上主義(白人は能力、見かけ、倫理、すべてにおいて、有色人種に対して優性、劣等な有色人種には土地や資源を管理することはできないので、白人である自分たちが彼らの土地や資源を奪うのは当然で正しいこと)を大きく広げ、自分たちの土地や資源を奪われた原住民(本来資源や土地の正当な権利をもっている人々)でさえ、この考えを内在化させることに成功しました。
もちろん、これらのプロパガンダに洗脳されず、抵抗し続けた人々もいて、数百年後には多くの地域は、独立を勝ち取ります。

20世紀前半、オットーマン帝国を弱体化させ崩壊させたヨーロッパ諸国は、歴史的パレスチナ地域を含む中東地域を植民地化し、当時のイギリス(大英帝国)がパレスチナ地域を統括しました。
この際に、当時のイギリス外務大臣のバルフォーさんが、ユダヤ人だけの国家を歴史的パレスチナ地域につくることを許可する、という曖昧な約束(バルフォー宣言)を結び、ユダヤ人の入植を積極的にサポートしました。
ここには、ユダヤ人、特に東ヨーロッパで迫害されていた貧しいユダヤ人がイギリスへくることを防ぐ方策となること、中東地域にヨーロピアンの従属者であるヨーロピアン系ユダヤ人がいる植民地ポストをもつのは中東地域をコントロールするのに都合がいい、という考えもあったようです。
もちろん、ここでは原住民であるパレスチナ人たちには、なんの相談も合意もありません。
この状況を心配していたパレスチナ人の知識層からのイギリスにむけた質問書・手紙は残っていますが、彼らの懸念は完全に無視されました。
イギリス側支配者たちは、原住民であるパレスチナ人よりヨーロピアン系ユダヤ人たちを圧倒的に優遇し、パレスチナ人の土地を奪って、ユダヤ人に渡したりもしていたので、パレスチナ人と移住者のヨーロピアン系ユダヤ人との間に大きな摩擦が起こりました。
ヨーロピアン系ユダヤ人の急速な入植の速度(歴史的パレスチナ地域にユダヤ人が3パーセント程度の人口割合から、約30年後には、約30パーセントまで急増)も当然ながら摩擦の原因でした。
パレスチナ人たちからの(正当な)抵抗運動は、イギリス側支配者たちによって、暴力的に抑圧することにつながりました。
イギリス側支配者たちは、反乱しそうな思想を持っている人が村に一人いれば、その村全体を焼き払ったり、村の男性全員を拷問にかけたりと、イギリスがほかの植民地国に行ってきたことと同様の、現在でいう国際法違反の大量殺害、家や土地の大量破壊、集団的懲罰等の犯罪行為を繰り広げました。
この際に、ヨーロピアン系ユダヤ人をイギリス側の警察組織に組み入れ、原住民であるパレスチナ人を抑圧する側にいれ、スパイ活動や拷問方法、破壊行動、残虐な暴力を使って抵抗運動を抑圧するときのトレーニングを与えました。
結局、イギリス側が、ほかの多くの植民地国からの反乱・独立運動や第二次世界大戦での疲弊から力を失い、ユダヤ人の入植を制限しはじめると、自分たちの手先として使っていたヨーロピアン系ユダヤ人がイギリス側に刃をむけ、多くのテロ攻撃をイギリス側に対して繰り返したことでさらにイギリス側は弱体化し、イギリスは歴史的パレスチナ地域の支配を諦めて、去りました。
このテロ行為を、イギリス側とパレスチナ人に対して多く行った民兵組織が、現在のIDF(Israel Defence Force/イスラエル防衛軍)の前身だそうです。
ちなみに、アメリカもイギリスもこのレッスンを学んでおらず、中東やアフリカ地域の資源を独占するために、西側にとって都合の悪いリーダー(自国資源の国営化や自国民の生活の安全と質を高めるために、労働法を厳しくして労働者の搾取を難しくし最低賃金もあげる、環境保護法を強化し西側企業が公害を巻き起こしなんの責任も取らない等を防ぐなど)が民主主義で選ばれると、その政党やリーダーに反対する団体(イスラム教過激派等も含む)に資金と武器を豊富に与え、戦闘法の訓練などを行い、西側にとって都合の悪いリーダーを間接的に倒すことを行いますが、めぐりめぐって、結局はアメリカやイギリスにテロ攻撃で返ってくる、ということが続いています。
もちろん、これらが引き起こす現地での不安定さに一番影響を受けるのは、現地の市民たちで、多くの人々が死に、生き残っても難民とならざるをえない状況(一部はヨーロッパやアメリカにやってくるしかない)をつくりだします。

この暴力や殺害を行ったヨーロピアン系ユダヤ人(見かけはヨーロッパ系白人ーただし、白人・黄色人種・黒人といった人種の考え方自体が偽科学で、植民地化を正当化するための主観的なもので科学的な根拠は全くなく、国や地域、時代、状況によって誰が白人と特定されるのかは異なる)の多くは、ヨーロッパで数世紀にわたって迫害され続け、ほかの国々からも移民を拒否されて、行き場のなかった人々が大多数だそうです。
ヨーロッパ大陸で迫害を受け続けたことで、「国家がないと自分たちの命の安全さえ守れない → ユダヤ人だけの国で、スパルタのように誰もが兵士で兵力の強い国にしよう」としたのは、彼らの立場にたてば分かる部分もあると思います。
問題は、自分たちを迫害した国に責任を取らせるのではなく、全く違う遠く離れた地域に行き、そこにたまたま住んでいた、自分たちへの虐殺や迫害とはなんの関係もない人々を、自分たちと同じ目にあわせた/あわせていることでしょう。
迫害や虐待をする人々への抵抗権は誰にもどのグループにもありますが、迫害や虐殺を行う権利は、誰にもありません。
迫害や虐殺、アパルトヘイトといった人々の基本的人権を踏みにじる行為を正当化できる理由は存在しません。

ユダヤ人は、中東地域では、迫害も差別もなく数世紀にわたって暮らしていたのに、なぜヨーロッパ大陸(ロシアも含む)で、差別・迫害され続けていたのかについては、イラク出身のユダヤ人で、イスラエルで子供時代の数年を過ごし、4歳ぐらいのときにイギリスに移民したイスラエル・ブリティッシュ女性学者のRachel Shaby(レイチェル・シャビ―)さんが、興味深い考察を語っていました。
レイチェルさんは、題名が「Off-White: The Truth About Antisemitism (灰色がかった白ː 反ユダヤ主義の真実)」を出版しましたが、その本についての話もかねて、ポッドキャストに登場していました。
ここから、無料で聴けます。

ヨーロピアン系ユダヤ人(アシュケナジとも呼ばれる)は、ヨーロッパやロシア地域で数世紀にわたって迫害を受けてきましたが、明らかに見た目の違う移民や、慣習が完全に違うグループ(流浪の民であるローマの人々は、現在ですらヨーロッパでひどい差別にあい、ナチにもユダヤ人のように標的にされて大量殺人が行われた)の人々とは違い、お金を扱っている職業に関っていることが多く、権力者に近い階級にいることが多かったそうです。
お金を扱っていたのは、キリスト教徒にとっては、お金を扱う職業は卑しいとされていたために、ユダヤ人にさせていた歴史があるからです。
また、ユダヤ人は差別され続けていて、金貸しのように卑しいとされた職業や、いくつかの限られた職業しか許されていなかったので、結果的にユダヤ系の人々が金融業にかたまっているという状況があったそうです。

レイチェルさんは、ヨーロピアン系ユダヤ人の歴史をたどり、ヨーロッパやロシアで、なぜユダヤ人が権力に近いところに置かれたかは、その地域の民衆の不満が高まって革命や暴動等の権力側にとって都合の悪いことが起こったときに、ユダヤ人をスケープゴートとして、権力側に対しての不満をそらすよう、使っていたことを挙げていました。
ヨーロピアン系ユダヤ人グループは、実際に差別を受け続けてきたにも関わらず、権力者がその地域の民衆(多くは貧しい農民や労働者階級)と差をつけた扱いをし、民衆たちとユダヤ人グループが団結・連合できない状況を意図的に作り出していたそうです。
そういった人種差別に苦しむつらい歴史をくぐり抜けてきたにも関わらず、イスラエル建国時・建国後には、イスラエル国内でも、レイチェルさんの両親のようにイラクやエジプトからのアラブ系ユダヤ人(ミズラヒとも呼ばれる)に対しては、ヨーロピアン系ユダヤ人はヨーロピアン白人は優性で、ミズラヒはアラブ系の有色人種で劣性というひどい人種差別を作り出したそうです。
レイチェルさんの両親も含め、中東では歴史的にユダヤ人に対する差別はなく、数世紀にわたって平和に暮らしていたそうですが、イスラエル建国時に、ヨーロピアン系ユダヤ人が多くのパレスチナ人を殺害・虐殺・エスニッククレンジングを行ったことや、中東地域への攻撃・侵略に対して怒った中東地域の政府が、中東地域に住んでいたユダヤ人を追放したり、と中東地域に数世紀にわたって住んでいた多くのアラブ系ユダヤ人は、イスラエルに移住せざるをえませんでした。
ここでは、イスラエルをヨーロピアン系ユダヤ人のみにしたかった当時のイスラエル指導者たちが、十分な数のヨーロピアン系ユダヤ人が移住しなかったため、中東地域にユダヤ人嫌悪を引き起こし、アラブ系ユダヤ人がイスラエルに移住せざるをえない状況をつくりだした、ともいわれています。
ここでの考え方は、優性な白人ヨーロピアン系ユダヤ人は事務職などの頭を使う仕事をし、劣性なアラブ系ユダヤ人は、車の整備工や大工や畑仕事に従事させることを目的としていたそうです。
レイチェルさんの両親は、飛行機を降りた途端、消毒を頭から浴びせられ、アラブ(有色人種)・アラビア語を話す、ということで、貧しく設備の整っていない地域の狭い家に大勢が押し込まれ、ヨーロピアン系(白人)ユダヤ人から侮蔑的な目を向けられたそうです。
同じ時期、ヨーロピアン系(白人)ユダヤ人は、イスラエルに着くとすぐに、設備の整っているよい地域に、大きな家を与えられていたそうです。
レイチェルさんの両親のように、教育があり、中東地域では上流階級・中流階級の上あたりにいた人々は、イスラエルでは、彼ら・彼女らの能力にみあった職につくことは許されず、日常での差別やことばでの侮辱もひどく、機会やコネクションがあれば、ほかの国々へと移住した人々もかなりいるそうです。
レイチェルさんのポイントは、虐殺までにいたった深刻なレベルの人種差別を受けたヨーロピアン系ユダヤ人が、ヨーロピアン系白人たちが自分たちを虐殺するのに使ったのと同じ馬鹿げた白人至上主義のロジックをつかい、自分たちをヨーロピアン系白人グループにいれ、ユダヤ人でも有色人種であるアラブ系の人々を差別し、原住民であったアラブ系の人々(有色人種でキリスト教徒・イスラム教徒)を迫害し続けているという、滑稽さです。
レイチェルさんは、ヨーロッパ大陸での迫害され続けた歴史を鑑みて、ヨーロピアン系ユダヤ人が強い側につきたかったのは分からないでもないけれど、イスラエルは、残虐な帝国主義・植民地主義・入植者植民地主義を行ってきたヨーロピアン系白人のロジック(白人至上主義/圧倒的な武力を用いて、劣った有色人種たちの土地や資源を奪い、彼らのボディーを無料か格安の労働力として人間以下の存在として扱うのは正しい)に従うのではなく、これらの偽りのロジックを完全に否定して、誰もがひととして同じ権利をもち、協調して生きていくことを選ぶべきだったとしています。

植民地主義・入植者植民地主義でよく使われるのは、「Land without people(人々がいない土地)」です。
実際は、原住民が数世紀にわたって住んでいることは認識しているものの、原住民はひと以下で、そこに長年いたからといって、その地域の土地や資源への権利はないとする考え方です。
イギリスのチャーチル首相も当時では普通だったのものの、現在では深刻な人種差別者にあたり、パレスチナ人に対して「犬(=パレスチナ人のような原住民)が飼い葉おけ(=先祖代々の家や土地・畑・水へのアクセス等)の上に長年座っていたからと言って、その場所への権利も、その場に続ける資格もない」といった内容のことを言っていたそうです。
アイザークさんは、原住民をひと以下の獣のようなものとして、非人間化することから、既に虐殺は始まっているとしています。
アメリカもカナダも、オーストラリア、ニュージーランドも移住者植民地主義で、上記の考え方と、宗教をベースにした「(キリスト教の)神からの指令で何もない荒野・砂漠に文明を築く」というスローガンを元に、西ヨーロッパからの白人キリスト教徒が地球上の多くの地域に侵入し、原住民を大量殺害し、土地や資源をすべて奪い、生き残った原住民も奴隷にしたり、狭い場所に閉じ込めて自由も尊厳も文化も奪うことを正当化しました。
イスラエルも、キリスト教のスローガンを使ってはいないものの、ユダヤ教の聖典で2千年前に歴史的パレスチナ地域はユダヤ人グループに与えられた、とあるというスローガンを使っている、移住者植民地です。
私たちが気づかないといけないのは、「聖典に、二千年前に神が自分たちに約束した土地だとあるので、私たちにはそこに自分たち民族・種族だけの国をつくる権利があり、そこに数世紀にわたって住んでいた原住民の人たちには住む権利は全くなく、この原住民たちを完全に取り除く権利が私たちにはある」という荒唐無稽な考えが西側諸国では当たり前のように受け入れられている滑稽さです。
ユダヤ教にも多くの宗派があり、宗派によっては、シオニズム(そもそもヨーロピアン系ユダヤ人の中で19世紀ごろに編み出されたイデオロギー)を完全否定しているし、アメリカやイギリスといった西側諸国のユダヤ系の人々(特に若い人々)も大きく反対しています。
イスラエル政府は、イスラエルはイスラエル国家樹立は、「誰もいない荒野に、ユダヤ人たちが神のことばに従って戻ってきて、素晴らしい場所にした」としているそうですが、原住民であるパレスチナ人が不正義をこうむった/こうむり続けていることは否定しようがありません

イスラエル政府は、アメリカやヨーロッパでイスラム教差別・嫌悪、人種差別が根強いことを悪用して、パレスチナ地域で起こっていることを、宗教戦争(ユダヤ教 対 イスラム教)/ 文明の衝突(Judeo-Christianユダヤキリスト教文明 対 イスラム教文明)として、アメリカやヨーロッパからのサポートを得ようとし、西側主要メディアもそれに協力していますが、ユダヤ人だけの土地にするために、アラブ系の原住民たちを取り除こうとしているのが目的なのは、明らかです。

この対談の中で、アイザークさんとクリスさんは、聖書の中にあるサマリタン(善きサマリア人)の話を引用して、誰もがUs(私たち)で、Others(ほかの人、よそもの、自分たちの仲間でない人)はいないと考えることは大事だとしていました。
自分たちと似たような見かけをしていて同じようなことを言う人たちを仲間と思うことはたやすいですが、地球上に生きている誰もが「私たち」で、誰もが同じ権利と自由をもっていることを認め合い、お互いを尊重して生きていくことは大切です。
アイザークさんは、パレスチナ人とユダヤ人が、現在の支配・被支配の関係ではなく、同じ権利と自由をもって生きていける社会を望んでいます。
そのためには、戦争のない比較的豊かな地域に生きている私たちが、イスラエル政府が国際法に遵守して、違法に奪った土地や資源をパレスチナに返還し、パレスチナ人が祖先の土地に戻ることを許可し、アパルトヘイト政策を終わらせるよう、自国の政府にプレッシャーをかける必要があります。
パレスチナが不正義にさらされている現状は、私たち一人一人の問題でもあります。

Yoko Marta