人生は短い。正しいことをしよう。抑圧されたひととともに立とう。パレスチナ人とともに立とう。

Yoko Marta
16.07.25 10:37 AM - Comment(s)

人生は短い。正しいことをしよう。抑圧されたひととともに立とう。パレスチナ人とともに立とう。

今回は、イランのテヘラン大学教授のProf. Seyed Mohammad Marandi(セイエド・モハンマド・マランディ教授)さんと、Judge Napolitano(アメリカのリタイアした陪審員でコラムニストのナポリターノ)さんとの対談です。
ここから、無料で見ることができます。

モハンマドさんは、イランのテヘラン大学の英文学とオリエンタリズムの教授であり、イランの核交渉チームの元顧問(メディア・アドヴァイザー)でもありました。
イギリスの国営放送のBBCやイギリス主要メディアの一つ、Sky News(スカイ・ニュース)などにもよく登場し、イスラエルのプロパガンダに従った報道に対して、ユーモアも交えながら鋭く切り返すことでも、よく知られています。
英語が母国語レヴェルだと思っていたら、イラン人の両親のもとにアメリカで生まれ、13歳まではアメリカで教育を受け、その後イランへと戻ったそうです。
このクリップ(英語のみ)でも、西側メディアのプロパガンダや嘘を、ユーモアを交えて軽やかに、鮮やかに切り返しています。

モハンマドさんは、アカデミックであるにも関わらず、イスラエル・西側諸国のプロパガンダに効果的に切り返して真実を語ることで、イスラエルの暗殺リストにも載っているとセキュリティーからいわれたそうですが、生死がかかっていても、これらの対談やインタヴューを行うことをやめません。

イスラエルは、長年、イランの科学者の暗殺をさまざまな場所や国で行っていることでもよく知られています。
もちろん、国際法違反です。
でも、イスラエルの国際法違反については、西側主要メディアも西側政府も無言で、見ぬふりをしてきました。
ここ数日でも14人のイラン人核科学者(アカデミックで一般市民)を爆撃だけでなく、車に仕掛けた爆弾で殺害するなどの、テロリスト行為を行っています。
科学者を狙うことで既に犯罪ですが、たまたまその場にいた人たちも殺しているのは、確実にテロ行為で深刻な犯罪です。
イランのAI専門家も同様に殺されています。
イスラエルによるイラン市民殺害については、西側主要メディアでは、報道されませんが、独立系メディアや中東を拠点とする主要メディアでは報道されます。

モハンマドさんが、生死がかかっていることを知りながらインタヴューを受け続けるのは、イラン人の非人間化、イラン国家を戯画化するようなプロパガンダが定着すると、「イランもイラン人も野蛮だから、イランを侵略してもいいし、イラン人を殺してもかまわない」という、manufactured consent(製造された合意)が形成されるからです。
モハンマドさんは、イラン人の非人間化に対して抵抗することは、たとえそれが自分の死を意味しても、自分の義務だと思っています。

ガザの状況をみていれば明らかですが、パレスチナ人の非人間化がことばを通してイスラエル政府の高官たちによって行われても、西側主要メディアはそれにチャレンジすることなく従うだけでした。
ガザの病院がイスラエルによって爆破されたときは、証拠もないのに、パレスチナ抵抗組織が犯人として責められ、その後、イスラエルが多くの病院や小学校を爆破し始めると、まともに報道することさえなくなりました。
現在では、難民キャンプのテントに避難させられた人々に対して、大きな爆弾を落としたり、人工的に引き起こした飢饉で、飢えている人々を少数の「エイド」と見せかけた場所に引き寄せ、その場でイスラエル兵がパレスチナ人を撃ち殺し、毎日100人以上殺されていることも、当たり前の状況となっています。
西側メディアはほぼ報道しないか、イスラエルが行っていることを巧みに隠して、まるで自然災害でパレスチナ人が死んでいくかのような報道しかしません。
これは、パレスチナ人の非人間化が完全に定着したからです。

ちなみに、この対談はイスラエルが国際法違反をおかし、イランに対して武力攻撃を始めた数日後の2025年6月16日(月)に行われています。

イスラエルは、テヘランの国営放送の建物にも爆弾を落とし、ジャーナリストやこの建物で働く人々の3人殺されたようです。
これは、もちろん戦争犯罪です。

奇襲攻撃の一日目には、モハンマドさんが住んでいるフラットのすぐ近くの普通の市民が住むフラットがイスラエルによって爆撃され、20人の子どもを含む60人以上のイラン市民がイスラエルによって殺されたそうです。
イスラエルによると、このフラットには、軍事に関するオフィサーの二人が家族と住んでいると認識していたので、彼らが家族と眠っているところに爆撃を行うのは正当性があり、同じフラットにたまたま住んでいた市民やオフィサーの家族が殺されるのは、巻き添えとして仕方のないこと、のようですが、もちろん、これも戦争犯罪です。
このような、軍事関係者を一人殺すために、数十人、数百人の市民を巻き添えにすることは仕方のないこと、といった非人間的なことが当たり前になっていいわけがありません。
アメリカはさまざまな国々に違法侵略を行ってきましたが、その報復として、アメリカ軍の軍事指導者の一人が住んでいるフラット全体を爆破して100人のアメリカ人市民を巻き添えで殺すとすれば、誰ひとり、それが正当だとはいわないでしょう。
ここには、アメリカ人(特に白人)の命は非常に価値があり、有色人種のひとびとの命にはなんの価値もない、というバイアスが深く浸透していることも大きく影響しています。

西側メディアでは、これらのイラン市民の殺害については、全く言及せず、「イスラエルの優れた攻撃が、見事に軍事ターゲットを精確に破壊した」です。
既に、戦争犯罪である、病院や浄水施設・下水施設、市民が集まる公共の場などがイスラエルの爆撃にあっていますが、それについて、西側メディアは、ほぼ報道しないか、上記のように「軍事ターゲット」に精確に爆撃した、などで、普通のひとびとが殺されていることは完全に無視です。
これも、イラン人の命の価値を人間以下とみなしていることのあらわれです。

このテヘランの国営放送の建物に爆弾が落とされたとき、モハンマドさんは、この国営放送が含まれている大きな複合施設の一角にいて、セキュリティーからすぐに避難するように促されます。
モハンマドさんは、既にいくつかの西欧のメディア(今回の対談も含む)に登場する予定になっていて、この建物以外で、インターネットがうまくつながる場所はなく、全員が避難した中、一人でとどまることにします。
モハンマドさんは、家族の安全を守るため、家族とは離れていることを余儀なくされています。

モハンマドさんは、アメリカと西側政府がイラクをバックアップしてイランを違法侵攻した、イラク・イラン戦争で、二度の化学兵器攻撃を生き延びました。
モハンマドさんは、以下のように語っていました。

アメリカは、イラン人に対してGreat injustice(大きな不正義)を行いました
アメリカは、(民主主義で選ばれた、民主主義を大きく前進させていた)イラン政府をクーデータにより転覆させ(1953年)、残酷なシャーを(アメリカの傀儡政権として)就任させ、シャーは残忍な秘密警察組織をつくり、多くの無実のイラン市民を殺し続けました。
シャー政権に対する革命が起きたとき、アメリカはシャーを亡命させました。
それに怒ったイランの若者たちが、イランのアメリカ大使館を占拠しましたが、それは、アメリカへのテロ攻撃の9月11日の責任者であるビン・ラーデンをほかの国々がかくまっているように感じたのと同じです。

アメリカは、サダム・フセインを支持し、化学兵器を与えました。
化学兵器は、ドイツが、サダム・フセインに提供しました。
私は二つの化学兵器攻撃を生き延びました。

(注/アメリカと西側諸国のサポートを受けたイラクのサダム・フセインが、アメリカの傀儡政権シャーを革命で追い払ったあとのイランの混乱に乗じて、イランに違法侵略したー1980年~1988年ー目的はイランの石油などの資源と土地。現在は、石油だけでなく、世界で最大とみられるリチウムをもつ)

この化学兵器使用について、(西側諸国の)誰一人、私たち(イラン人)に謝りませんでした。
でも、サダム・フセインがクウェートに侵略したとき、当時のアメリカ大統領ブッシュ(父)は、(既にサダムが廃棄したとアメリカは知っている)化学兵器について語り始めました。
アメリカは、サダム・フセインに対して、自国(イラク)とイランの市民たちに対して使うよう化学兵器を渡しておきながら、すでに化学兵器を廃棄していると知っていたにも関わらず、化学兵器を所有しているという名目で、イラクを破壊しました。

モハンマドさんは、イランのウラン濃縮について、以下のように語っています。

イランは、ほかの国々と同様、ウランを濃縮する正当な権利があります。

(注/実際、イランは既にほかの国々よりもずっと厳しい核監査基準を受け入れている)

なぜイランがウランの濃縮濃度を60パーセントまで高めているかといえば、キューバやほかの国と同様、女性たちや子どもたちをターゲットとする(経済)制裁をアメリカが取り除くようプレッシャーをかけるLevelage(レヴェレッジ/てこのような作用、影響力)とするためです。

(注/イランは、とても深刻なアメリカからの経済制裁に長年苦しんでいるー特に一般市民。高血圧などの通常の薬などの輸入も難しくしている)

アメリカは、(西側諸国カがテロリスト組織として認定している)アルカイーダやISIS(イスラム過激派組織)が独占しているシリアに対しては、経済制裁を解除しましたが、イランとキューバでは解除していません。
私は、3年前に核交渉チームのメディア・アドヴァイザーだったときにも、(イギリス国営放送)BBCに対して、「イランは、核の濃縮度を60パーセントに高めることで、普通のイラン市民を深刻に苦しめている(アメリカの経済制裁)を解除させるカードとして使う」と明言しました。

(注/ほかの専門家も言及していましたが、ウランの濃度をあげたからといって、必ずしも核兵器をつくる目的だとは限りません。イランは、長年宗教上の理由からも、核兵器は開発しないとしていて、かつ、中東地域での核兵器をもたない協定づくりを進めていましたが、これを拒否したのはイスラエルです。また、国際原子力機関でも、イランは核兵器をもっていないし、核兵器プログラムをもっていないことも明言しています。アメリカの情報機関もイランが核兵器も核兵器プログラムや施設をもっていないことは、2025年3月時点で公表されています。これについて指摘されたトランプさんの応答は、「そんなこと(=イランが核兵器をもっていないし、もつ計画もないこと)は、どうでもいい!」)

イスラエル、アメリカ政府、西側主要メディアがねつ造している「イランの脅威」に関しては、モハンマドさんは、以下のように説明していました。

イランがアメリカにとって脅威だったことはありません
たった一度アメリカ(本土)が攻撃されたのは、アメリカのナラティヴによれば「テロリスト組織」によってですが、(テロリスト組織の)アルカイーダはアメリカが(資金・トレーニングを与え)作り出したもので、それがBlow back(ブロゥ・バック/戻ってきて打撃を与える)となっただけです。

また、イスラエルのネタニヤフ首相が40年近く、「イランは数年・数か月・数日で核兵器をもつ」と言い続けて、「イランは世界の脅威」というプロパガンダを行い続けています。
ネタニヤフさんは、国際手配されている国際犯罪者です。
この「イランの脅威」については、全く事実でないことが証明されているにも関わらず、このネタニヤフさんのオオカミ少年のような言動は、疑いも批判もなく、西側主要メディアは真実であるかのように報道し続けています。
これは、「イランは世界の脅威」というmanufactured consent(製造された合意)が形成され、イランを攻撃することを正当化することを可能にします

実際には、イランがほかの国を攻撃したことは一度もありません
イスラエルは、70年強の短い歴史のなかで、多くの隣国に対して、違法侵略・占拠を行い、現在でも、パレスチナ・レバノン・シリア・イエメンに国際法違反の武力攻撃・占拠を行い、パレスチナに対しては、虐殺・エスニッククレンジング・人工的な飢餓をひきおこし、ネタニヤフ首相には国際刑事裁判所から指名手配されています。

また、モハンマドさんは国際原子力機関(IAEA)が、すでにアメリカ政府や西側政府に政治的にキャプチャーされ、中立な科学機関ではなく、政治的な機関となっていることにも言及していました。
これは、ほかのイランの専門家、Dr. Foad Izadi(フォード・イザディ教授)さんも指摘していたのですが、今回のイランが核開発について深刻な違反をしているとして挙げられたのは、数十年前にすでにかたがついていたことでクローズすると合意されていたことが、突然、このタイミングでオープンになったことには、政治的な要素が強いのではとしています。
フォードさんは、イギリス国営放送のBBCインタヴューに招かれた際、ジャーナリストが内容を全く理解していないことに驚き、ジャーナリストたちに、実際に国際原子力機関がオープンしたファイルについて、内容を確認したかを聞いたところ、誰も読んでいなかったそうです。
ここには、「深刻な違反があった」という合意を先に作り出し、イランを攻撃することを正当化することをメディアが助けているのは明らかです。
フォードさんは、たとえ深刻な違反があったと認められたとしても(今回は違う)、国際機関にはきちんと手順があり、まず国連安全保障委員会での投票がまずあり、その後国連の規則に従って、該当国は監査におかれますが、今回、その手順はふまれていません。

また、フォードさんもモハンマドさんも指摘していますが、イスラエルとアメリカ政府は、イランが交渉途中で席をたったかのように見せかけていますが、実際は、イラン政府はアメリカ政府と誠実に交渉中だったにも関わらず、イスラエルが(アメリカ政府がバックアップしていたことは確実ーイスラエルだけでは、イランへの奇襲攻撃は行えないから)イランに奇襲攻撃を行ったため、交渉のテーブルに爆弾を落としたのはイスラエルとアメリカ政府です。
このイスラエルの奇襲がある数日前には、トランプさんは合意ができそうだとポジティヴな発言をしており、奇襲の2日後にはアメリカ政府とイラン政府の交渉が予定されていました。
イスラエルの国際法違反の奇襲攻撃では、この交渉の重要な担当者がイスラエルによって暗殺されました。
これは、イスラエルのいつものパターンで、ハマスとの交渉でも、ハマスの政治部門の有能な担当者を暗殺しました。
また、トランプ首相は、この交渉中にも、核濃度をあげていい、と合意した次の日には、全く反対のことを言ったりと、自分が合意したことに反対するようなことが続いていて、誠実に交渉しているとは見えないにも関わらず、イラン政府側は、誠実に交渉し続けていました。
また、イスラエルが奇襲直後には、アメリカは関与していない、としながらその次の日には、アメリカが関与していたことが明らかな言動を行っており、アメリカ政府をまともな交渉相手として信用することが、誰にとっても難しいのは、明らかです。

モハンマドさんは、アメリカ政府が、イランが脅威だったことはないにも関わらず、アメリカ政府がイランを敵対視し続けていることには、以下が関わっているとみています。

・ イランは、中東で唯一、アメリカに屈しない国 (中東の多くの国々はアブラハム合意を結んだか結びかけていた)
・イランは、唯一、イスラエルによるパレスチナ占拠・エスニッククレンジング・虐殺に抵抗するパレスチナ人たちを支持し続けている国(もう一つは、西側諸国によってテロ組織と認定されているイエメンのアンサール・アッラーのみ)

アメリカも西側諸国も、帝国主義・植民地主義の考えから抜け出せず、帝国が落ちぶれていくにも関わらず、中東での覇権を握ろうと必死です。
中東諸国のほとんどの国は、家族で代々、強権的に市民たちを圧政によって支配し続けた王権国家で、アメリカの助けがなければ、自分たちが市民によって取り除かれることを恐れています。
今回の、ガザ虐殺でも、アラブの国々は何もせず見ていただけで、トルコのように一見助けようとしたように見えても、アメリカ政府からのプレッシャーがかかればほかのアラブ諸国と同様、見てみないふりとなりました。

今回のイランの実在しない「核兵器疑惑」は、イランを攻撃する正当化のために使われたとみられていますが、世界全体としてみたとき、「核兵器」は、今回のことが原因で拡大する可能性を強めています。

ウクライナは、1994年当時、世界で3番目に多くもっていた「核兵器」を、自国の主権への保障と引き換えに廃棄することを合意しました。
ウクライナの国家主権の保障を行ったのは、アメリカ、イギリス、フランス、中国、ロシアですが、ロシアがウクライナのクリミアを侵略したとき、アメリカやイギリスは全くウクライナを助けませんでした。
アメリカ政府が、さまざまな合意を平気で破る現在、いざというときのカードとして、核兵器を保有したい国が増えたとしても、全く疑問ではありません。
でも、これは、世界中を危険に陥れます。

さまざまな国際法を70年以上にわたって破り続け、国際法を骨抜きにし、違法に核兵器を大量に保有し、現在は虐殺を行っているイスラエルが、世界の最大の脅威であることは誰がみても明らかです。

イスラエルやアメリカのような帝国主義・植民地主義は、その独占欲・拡大欲はとどまるところを知らないため、ほかの中東の国々(イラク、シリア、リビアなど)に行ったように、イランを違法侵略して壊したあと、ほかの国々へも向うことは確実です。
アメリカ政府は既に、他国だけでなく、自国の国民に対する攻撃をはじめています。

メディアの偽情報やmanufactured consent(製造された合意)に惑わされず、自分の心と頭をつかって考え続けることは、とても大切です。
また、地球上のすべてのひとびとの命の価値は同じで、誰もの命が同じだけ貴重なものだと、心から信じていることは大切です。

ある日のモハンマドさんツイッターには以下のようにありました。
人生は短い。正しいことをしよう。抑圧されたひととともに立とう。パレスチナ人とともに立とう。
モハンマドさんは、これを実行し続けています。

Yoko Marta