Solidarity(ソリダリティー/ほかの人と共通のヒューマニティーでつながり、一緒に立つこと・行動を起こすこと)
パレスチナ占領地域担当の国連特別報告者、Francesca Albanese(フランチェスカ・アルバネーゼ)さんが、最近発表した報告書、「From Economy of Occupation to Economy of Genocide」では、60社近い企業が、ガザでの入植と虐殺に直接・間接的に関与し大きな利益を上げていることを示し、各国の政府・企業は、イスラエルへの武器の供給だけでなく、イスラエルとの経済・外交的な関係をたち、虐殺に寄与することを完全にストップするよう、よびかけました。
現時点で既に存在する国際法で、これらの企業の責任者は、裁判で責任を問われる可能性も十分あります。
何度も起こっていることではあるのですが、アメリカの国連特命大使は、国連事務総長にあてて、フランチェスカさんの解任と、この優れた報告書の取り下げを要求しました。
これに対して、国際的な経済学者たちが、この不当で威圧的なアメリカ政府の要求に対して、フランチェスカさんへの強い支持を表明し、国連に対して、アメリカ・イスラエル政府の過激な要求を退けるよう、Open Letter(オープン・レター/公開状)を発表しました。
この中には、ギリシャの元財務大臣でもあった経済学者のYanis Varoufakis(ヤニス・ヴァロファキス)さんやフランスの経済学者、Thomas Piketty(トマス・ピケティー)さんも含まれています。
現在までも、何度も不当な解任要求やバックラッシュを乗り越えてきたフランチェスカさんですが、今回は、アメリカ政府やイスラエル政府だけでなく、多くの国際企業、なかには普通の国の国家予算よりも大きな富をもっている国際企業からの攻撃を強く受ける可能性もあり、この公開状は、大きなサポートとなります。
日本だけに住んでいると、この公開状に署名することが、どんなに勇気がいることで、大きな犠牲を払うことになる可能性が高いのかは、分かりにくいかもしれませんが、このSolidarity(ソリダリティー)はとても大切です。
ヤニスさんは、イスラエルがガザでの虐殺を止めること・イスラエルがパレスチナ地域の不法占拠をやめることを求めて、明確な発言を行っているために、ドイツへの入国禁止令が出ています。
ドイツでは、公務員で法律家だった女性が、ドイツの共犯性(イスラエルに対して、アメリカの次に多く武器を輸出)について語り、それは法律で許されているはずなのに、解雇されたケースもあります。
イギリスでは、ガザでの虐殺を止めることを求める団体(非暴力の平和を求める団体)が、テロ組織として認定され、この団体のメンバーであるだけで、数十年牢獄に入ることになります。
この団体をサポートすると発言すれば、それもテロをサポートしているということで牢獄いきとなります。
それでも、この不当な法律に対して反抗し、普通の市民たちが、この団体をサポートするメッセージを書いたプラカードをもち、平和に立っていたところ、70代をこえる女性が警察にひきづられて逮捕されるところが報道され、多くの市民たちはこの不正義に怒っています。
国際機関からも、イギリス政府に対して、法律の悪用であることを勧告されています。
皮肉なのは、この法律の制定が行われた日は、suffragettes movements (サフラジェット・ムーヴメンツ/女性参政権を求める運動)を祝う日でもあり、このサフラジェットは、上記の団体が非暴力であるのに比べて、爆破や建物の破壊など、暴力もかなり使ったことで知られていることです。
この団体が行ったのは、ガザでの虐殺を止めることを求め、イギリス国内のイスラエル武器工場で立ち入って製造ラインを止めたこと、イギリス国内の軍事基地に侵入し、ガザでの偵察飛行を行っているとみられる飛行機に赤色のスプレーを噴射したこと、などで、イギリスのテロ行為の定義にある、多くの人々を生死の危険にさらしたり、深刻な建造物などへの破壊を行ったわけではないのに、イスラム教過激集団や白人至上主義集団などの実際に人々を殺したり、負傷させたりしている団体と同じ枠組みに入れられています。
イギリスを含むヨーロッパでは、ガザでの虐殺を止めることを求めるデモンストレーションは、平和で非暴力であるにも関わらず、マーチやデモンストレーションが許可されなかったり、許可されたとしても、警察がひどいレヴェルの暴力で介入したりと、民主主義とは思えない弾圧が続いています。
これは、ほかのマーチやデモンストレーションでは考えられないことです。
作家や画家なども、ガザでの虐殺を止めることを求めることを表明したことで、講演会・展覧会などからキャンセルされ、本の映画化の話が消えたりしています。
病院・大学、テック企業などで働く普通のひとびとが、ガザ虐殺を止めることへのサポートを示したことで、解雇されたケースもあります。
アメリカでも、アメリカ政府を批判するのは「言論の自由」の範囲だけれど、外国政府であるイスラエル政府を批判することは許されず、国外退去となったりビザを取り上げられることと、状況は似ています。
フランチェスカさんのレポートは、普通の人たちにも、どう自分たちの政府や税金が、パレスチナ人の虐殺に関わっているか、という世界経済の仕組に光をあてるものであり、正しく状況を知ることは、この虐殺を止めること、未来にほかの虐殺が起こることを止めることにもつながります。
だからこそ、フランチェスカさんのレポートを、国際的に著名な経済専門家が太鼓判を押していることは、とても重要です。
全文は、無料で、Substackのこのページから読めます。(英語のみ)
下記にざっと要約しています。
※直訳ではありません。
歴史は、経済的な利益が帝国主義(植民地主義)の主要な推進力であり、それを可能にする要因であること、また、それらが引き起こした大量虐殺の多くにも関わってきたことを、私たちに教えてくれます。
企業は、植民地主義の初期段階(=コロンブスがアメリカにたどりついた1492年くらいから)、植民地主義の本質的な存在であり、企業は歴史的に先住民族とその土地に対する暴力、搾取、そして最終的には収奪に加担してきました。
このような支配の形態は「‘racial colonial capitalism(レィシャル・コロニアル・キャピタリズム/人種的植民地資本主義」として知られています。
アメリカとイスラエル政府は、植民地勢力が先住民族を収奪・搾取する権利に異議を唱えるひとをつぶそうとし、虐殺の否定を繰り返すという、使い古された道をたどっています。
大半のヨーロッパ諸国政府が(虐殺反対の)態度表明をするには臆病すぎる中、これらの政府は国際社会に対し、現在進行中の大量虐殺、そしてその体制を維持・促進している多国籍および国内企業の重要な役割に目をつぶるよう要求しています。
イスラエルにより占領されたパレスチナ領土の植民地化も、その例外ではありません。
経済学者として、フランチェスカさんの報告書が明瞭かつ精緻に示している三つの重要な発見を強調する責任があるとして、以下を挙げていました。
1. 占領と大量虐殺は複合企業にとって非常に高収益
典型的な軍事・防衛企業である、ロッキード・マーティン(F35の主要製造会社)、エルビット(イスラエルの兵器メーカー)、パランティア(ガザ全域での「標的」選定において重要な役割を果たしていると思われるアルゴリズムを持つソフトウェア企業)などだけでなく、キャタピラー、BNPパリバ、バークレイズ、アリアンツ、シェブロン、BP、ペトロブラス、A.P. モラー=マースク(※1)などの家庭でもよく知られている企業も含まれます。
2. イスラエルが占領するパレスチナの領土がビッグテック企業にとって理想的な実験場・試験場として機能してきた
その役割は占領から大量虐殺への移行によってさらに強化されています。
例えば、イスラエルほど国民の生体認証データへのアクセスをIBM(※2)に許可した国は他にありません。
2023年10月7日以降、マイクロソフト、アマゾン、アルファベット(フェイスブックやインスタグラムの親企業)、パランティアといった企業は、驚異的なスピードでクラウド資本サービスの拡大を進めています。
顔認識ソフト、ターゲット選定アルゴリズム(ガザでの市民への大量爆撃に使用)、自動処刑システムが、まるで実験用ラットを用いた試験よりも倫理的制約の少ない状態で、リアルタイムに、自由にテストされています。
ビッグテックにとって、これほど理想的な環境はありません。
3. アメリカ・ヨーロッパの主要大学が、イスラエルのアパルトヘイト体制と恒常的な占領/紛争型政治経済と深く結びついている財政的依存関係を持っている
イスラエルによる大量虐殺への支援を停止した場合、多くのアメリカおよび欧州連合の一流教育機関は深刻な財政問題に直面することになります。
フランチェスカさんの報告書は、ミュンヘン工科大学、マサチューセッツ工科大学、エディンバラ大学などを含む優れた西洋の大学・研究機関がこのような腐敗した依存構造にあることを明確に示しています。
欧米の人々は、自らの誇りでもある教育機関の一部が、イスラエルの占領と大量虐殺の政治経済を再生・維持することに財政的に依存している事実を知る権利があります。
公開状の最後は、以下のように締めくくられています。
数年後には、ほとんどの人がこの大量虐殺に反対していたと主張するでしょう。
しかし今こそ、良心ある人々が立ち上がるべき時です。
経済学者として、私たちは本日、アルバネーゼさん(=フランチェスカさん)とともに立ちます。
彼女の最近の報告書が、イスラエルの占領と大量虐殺の政治経済について計り知れないほど重要な光を当てているがゆえに、米国およびイスラエル政府から攻撃されているのです。
この、「数年後には、ほとんどの人がこの大量虐殺に反対していたと主張するでしょう」の部分は大切です。
現在のように、虐殺がまさに起こっていて、すぐに止めないといけないときに、黙っているのは、虐殺に加担することになります。
ユダヤ人に対するホロコーストが起こったのは、多くの人々が何もいわずに目を背け、黙っていたからです。
現在も、大きなプラットフォームをもつ人権活動家、女性の人権活動家などは、イスラエルによるパレスチナ人虐殺については一言も発しない、あるいは虐殺にあっている被害者のパレスチナ人側を責めるひとも多いのですが、これは虐殺に加担しているだけでなく、彼ら/彼女らのいう人権についての活動は、自分にとって都合のいいときだけに適用していて、なんの一貫性もないのでは、という疑いも引き起こします。
虐殺を止めることを求める声をつぶそうとする手段がひどくなってきたということは、地球上の大多数のひとびとの虐殺を止めるよう求める声がとても大きくなり、大きなプレッシャーをかけないとつぶせない(=この声が大きくなりすぎて政府や機関が押さえつけている蓋がとびさるときは近い)ということになります。
現在、虐殺と人工的な飢餓に苦しんでいるパレスチナ市民のひとたちの命を一つでも多く救うために、虐殺と飢餓にあっていないだけで、すでにある程度恵まれた立場にいる私たちは、人類全体のヒューマニティーを守るためにも、声をあげつづけていく必要があります。
フランチェスカさんの報告書については、後日書きたいと思いますが、すでに、ガザからパレスチナ市民を強制的に移動させる計画があることが報道されました。
これに直接関わっているのは、ボストン・コンサルティング・グループと、イギリスの元首相のトニー・ブレアさんが率いるシンクタンクのTony Blair Instituteです。
トニー・ブレアさんは、イギリス国民からの強い反対があり、かつ、イラクが大量破壊兵器をもっている、というのは嘘だとはっきりと知っていたにも関わらず、嘘をつき続け、違法にイラクに侵略を行ったことを最終的には認めていますが、なんの責任も取っていません。
トニー・ブレアさんに対しては、正式に国際司法裁判所で裁かれ、多くの無実のイラク国民を殺し、イラクを含む多くの地域を政情不安定、経済的に貧困を引き起こしたことについて責任を取るべきだという声もよく聞かれます。
もし、トニー・ブレアさんが非白人で、第三諸国の首相であれば、確実に国際司法裁判所に送られていたことは確実で、これも、フランチェスカさんの報告書とも関連していて、西側諸国(元植民地宗主国、帝国主義を続けている国々)はさまざまな決まりや法律から自由で、決まりや法律は第三諸国(世界の大部分の地域で、人口は世界の約8割近く)のみに適用される、というダブル・スタンダードをあらわしています。
これは、結局、世界中の誰をも危険におとしいれます。
ボストン・コンサルティングの関与については、Financial Timesのこの記事から詳細が読めます。
ボストン・コンサルティング・グループは、ガザ人道財団の設立にも直接関わっています。
ガザ人道財団は、稼働しはじめてから一か月強で、食料を受け取りにくる飢餓状態にあるパレスチナ人市民たちを600人以上殺し、4000人以上の負傷者を出していることが知られています。
ガザ人道財団が運営するエイド地点では、アメリカの民間軍事企業とイスラエル兵が、武器をもっていないことが明らかなパレスチナ市民たちに対して、好きなように狙撃したり、爆撃したり、手りゅう弾を投げたりすることが許可されていることを、兵士たちがリークしています。
国連組織や多くの国際事業団体が、このガザ人道財団を即時に止め、従来の国連組織や事業団体にエイドを配布させるよう、イスラエル政府とアメリカ政府に対して求めていますが、いまだに実現せず、飢えで死ぬか、ガザ人道財団で殺されるかの二択で、毎日、多くの普通の市民や子どもたちが、エイド受け取り地点で殺されています。
これらは、当然、犯罪です。
ボストン・コンサルティング・グループは、停戦後の計画についても関わっていて、その中には、50万人以上のガザに住むパレスチナ人を強制移動させることも含まれています。
これは、国際法で禁止されている「forced transfer (フォースド・トランスファー/強制移動)」にあたります。
ボストン・コンサルティング・グループは、数人のコンサルタントが実際のプロジェクトの内容を明確にせず関わっていて、個人のせいであり、企業は知らなかったかのようなスタンスを取っていますが、コンサルティング企業は、軍事複合産業のひとつで、お金さえ支払われればなんでもやることは知られており、これも、フランチェスカさんの報告書にもある、現在のとても歪んだ経済の仕組みで、金銭的な儲けを大きくし続けることが一番大切で、人々の命、特に非白人、第三諸国(西側諸国以外の国々ー多くは元植民地国で、地球上の約8割ぐらいのマジョリティーである人口)の命の価値はゼロかそれ以下だとみなされています。
この仕組みを変えるには、ひとびとの命を軽視して殺すことに関わっている国際企業に、法律に沿ってきちんと責任を取らせることが欠かせません。
それが起こるためには、普通のひとびとが団結して、不正義、非人間的なことに対して、抗議をし続ける必要があります。
正義なしの平和はありえないことは、心に止めておかなければなりません。
(※1)A.P. モラー=マースクは、イスラエルに輸出される武器や武器の部品の約9割以上の輸送に関わっているとみられています。既に、港で働く普通のひとびとが団結して、イスラエル行きの武器や部品を船に積むことを拒否することも、世界各地で起こっています。虐殺が行われている可能性が高い、戦争犯罪が行われている国に、武器を輸出するのは、国際法違反であり、それぞれの国の国内法違反となる可能性も高いです。
(※2)IBMは、ナチのユダヤ人虐殺にも大きく関与したことが知られています。人口などの詳細なデータを使い、ユダヤ人をまえたり、強制収容所の収容人数の計算や、ユダヤ人を強制収容所に運ぶ汽車の手配などの計算にも関わったとされています。