変化は始まっている ー はっきりと目には見えなくてもー 希望を持ち続け、行動し続けよう
日本に少しでも住んだことがあるヨーロピアンからは、日本人の「しかたがない/そういうものだから」という言葉や態度に、とてもフラストレーションを感じたことをよく聞きました。
どんな宗教を信じているかに関わらず、ヨーロッパでは、「神の目からみて正しいことをするよう、努力する。特にそれが難しい状況であればあるほど」という信念をもって行動しているひとびとにあいます。 日本だと、歴史や文化ともあいまって、宗教との関わり方はヨーロッパとは大きく違いますが、上記のひとびとは、自分や自分の近しい人々に対して、自分が生きている間に何らかの利益・見返りがあるから信心している、というわけではありません。 「正しいことをしている(=どんな難しい状況でも、自分のヒューマニティー、地球上に生きるすべてのひとびと(地球上の生きるものすべてを含む場合もー地球・植物・動物などすべて)へのヒューマニティーを保ち続ける)」は、そうしていれば、自分が生きている間に、正義が行われなくても、その道は未来にむかって続いていき、どこかで正義が行われる日が必ず起きることを信じて歩き続ける信念なのかな、と思います。
そういう意味で、今、ガザで起こっている虐殺は、これ以上残虐なことが、同じ人類に対して行えることはないだろう、と思った次の日には、さらに、考えられないようなひどいことが起こり、エスカレートし続ける状態に、ヒューマニティーに対して絶望する気持ち・無力感をもつ気持ちもわかります。
でも、実際は、変化は地球上のさまざまな場所で起きています。
変化の結果は、すぐに見えなくても、続けていることで、その輪はひろがり、意外な時期・場所で、Tipping point(ティッピング・ポイント/変化がとめられなくなる時点ー変化が一気に起こる)が訪れます。
だから、信念をもち、希望を持ち続けて行動していくことは大事です。
現在、虐殺にあい、生き残っていても、イスラエルに人工的につくられた飢餓によって死にかけているひとびとのためにも、あきらめるわけにはいきません。
いくつかの波は、アジアにもあります。
イギリスの独立系メディアのMiddle East Eye(ミドル・イースト・アイ)の記事には、日本のラーメン屋で働く男性(Chikahiro Naoyaさんと報道されていました)が、一人で毎週、イスラエル大使館の前でプロテストを行う、勇敢な姿が投稿されています。 インスタグラムのポストはここより。 パレスチナ人を含む地球上の多くのひとびとが、感謝の声を寄せていて、X(元Twitter)などのほかのソーシャル・メディアでも、ヨーロピアンたちにもよく引用されています。
韓国では、市民団体(Urgent Action by Korean Civil Society in Solidarity with Palestine)がシフトを組んで、団体のメンバーの一人が、イスラエル大使館の前でプロテストを毎日続けています。
記事はここより。
最近、ガザととても距離の近いギリシャでは、港で働くひとびとが、イスラエルに送られる予定の武器の積み荷を扱うことを拒否しました。
記事はここより。
また、ギリシャの一つの島、Syros(シロス島)では、多くのイスラエル人が乗っていた観光船が、下船することを島民・プロテストする市民たちによって拒否され、下船することなしに別の場所へと向かわざるをえませんでした。 イスラエルは、すべての市民(イスラエルの人口の2割にあたる原住民のパレスチナ人を除く)に兵役義務があり、2年の兵役が終わっても、Reservist(リザーヴィスト/予備役の軍人)として招集されることはよくあり、兵士から成る国で、多くのひとびとが虐殺に関わっています。
一部のユダヤ教宗派の人々は、宗教上の慣習により軍役を免除されていたものの、最近、法律で彼ら・彼女らも軍役が義務となり、それが社会の亀裂も生んでいます。
また、イスラエルで兵役を行うと、スパのチケットや観光のチケットがもらえたりと、ほかの国々の兵役とはかなり違うようです。
ロンドンにいると、イスラエル育ちのユダヤ人で、イスラエルでは暮らしたくない、という人たちにもあいます。
軍役の経験は、人それぞれだとは思いますが、彼の場合は、戦略の詳細は教えてもらえず、戦車にほかの若いひとびとと乗せられて、1日ぐらいたったところで、突然深夜に戦車から出るように司令官から命令され、銃をかかえて、どこかもよく分からず、犬が吠える声におびえて、とにかく銃を撃ちまわるような始まりだったそうです。
イスラエルは、始終、近隣の国々に攻撃をしかけている国で、ガザやウエストバンクといったパレスチナ人に対してだけでなく、停戦合意をしたレバノン(イスラエルが長年違法侵略と違法占拠を続けている)では毎日のようにイスラエルがレバノン市民を殺し、シリアにも国際法違反の攻撃を行い、イランにも国際法違反の攻撃を行ったことは覚えておく必要があります。
記事はここより。
イギリスでは、ロンドンのRoyal Opera House(ロイヤル・オペラ・ハウス/王立オペラ劇場)でダンサーのDanni Perry(ダニー・ペリー)さんが、オペラ「Il Trovatore(イル・トロヴァトーレ)」のカーテン・コールで、パレスチナの国旗をもって登場し、それを取り上げようとするスタッフともみあいになっても、パレスチナの国旗を降り続け、イギリスの独立系メディアのNovara Media(ノヴァラ・メディア)のインスタグラムのポスティングにもありました。
映像と、ダニーさんがなぜパレスチナ国旗を掲げたかについては、ここより。
簡単に訳すと以下です。
ここに、なぜオペラのカーテン・コールでパレスチナの国旗を掲げたのかがあります。
私は、カーテン・コールの間、私自身の一瞬の間に、自分のデモンストレーションを行うことを選択しました。
私は、私のことより、もっと重要なことについて、表明することにしました。
私がこれを行ったのは、パレスチナの人々に対して起こっている、ガザでのイスラエル軍による残虐・非道な行為への注意を喚起したかったからです。
オペラを観に来る人々、オペラを観る機会があるひとびと(※1)は、(イスラエルによるパレスチナ人に対する残虐・非道な行為をストップできる)権力と影響力をもっているひとびとです。
でも、彼らは、沈黙を続けています。
右派のメディアの報道(※2)は、私には本当に滑稽に思えます。
彼らが私をあざわらうことで、私のdefiance(デファイアンス/勇敢な抵抗・挑戦的な態度・反逆)をあざわらい、今現在、ガザで本当に起こっていることから(ひとびとの関心や注意を)そらさせようとしています。
この2日間で、イスラエルが食料をブロックしていることが原因の飢餓で、18人の人々が死にました。
国連と国際司法裁判所は、これを虐殺だと認識しています。
この状況で、私の抵抗を、「inappropriate(インアプロープリエィト/不適切)」と言ったロイヤル・オペラ・ハウスを、とても不快に思っています。
カーテン・コールが終わったあと、ロイヤル・オペラ・ハウスのダイレクターであるOliver Mears(オリヴァー・ミァース)さんが舞台にやってきて、とても攻撃的な態度で私に言いました。
「きみは、この王立劇場で働くことは、二度とない!」
それに対して、私はこう答えました。
「そんなこと、どうでもいい」
私は、私のデモンストレーションを一人で行いました。
なぜなら、この業界で働くほかのひとびととこの会話をもつことについて、私はとても孤独に感じていたからです。
アーティストとして、私たちは大きな観客たちに届くこれらのプラットフォームをもっているのはとても幸運なことです。
だからこそ、私は、私たちにはこれらを(パレスチナ人のために・ヒューマニティーのために)使う責任があると思っています。
「私たち」には、制作者やクリエイティティヴ、この業界で働く人々のすべて。
プラットフォームを使いましょう。
声をあげましょう。
ベルギーでは、ミュージック・フェスティヴァルに旅行で来ていた、戦争犯罪を行ったイスラエル人の若い男性二人がベルギー警察に逮捕され、尋問されました。
これは、Hind Rajab FoundationとGlobal Legal Action Networkの根気強い証拠集めと、国際的な働きかけがあります。
いったん釈放されたものの、戦争犯罪へのケースがオープンされ、尋問は続きます。
現在(2025年7月24日)時点で、オランダに移動したことが確認され、上記のHind Rajab FoundationとGlobal Legal Action Networkが、オランダに対して、即刻逮捕するよう要求しました。
現在のところ、ベルギー警察によって法的にベルギーを去ることを許可されたのか、それとも、正義をくぐりぬけた逃亡犯罪者なのかは不明だそうです。
オランダは(ベルギーなどのほかの国も)、彼らを逮捕する義務があります。
なぜなら、Genocide Convention (ジェノサイド条約ー集団殺害罪の防止および処罰による条約ー多くの国が加盟する中、日本は非加盟), the Geneva Conventions(ジュネーブ条約-戦時国際法としての傷病者、及び捕虜の待遇改善のための国際条約ー日本は加盟国), the Rome Statue (国際刑事裁判所に関するローマ規程ー日本は加盟国), Dutch national law(オランダ国内法)のもとで、オランダは行動(逮捕する)を起こす法的に拘束力のある義務があります。
もし、この二人の戦争犯罪者を自由に別の国に移動することを許すのであれば、オランダは、国際法の深刻な違反であり、残虐・非道行為を大量に行った加害者にimpunity(インピュニティー/不処罰、刑罰を免れること)を与えることになります。
オランダ当局は、直接的な法的な責任と、モラルの責任を担っています。
Hind Rajab FoundationのX(旧Twitter)のポスティングはここから。
なお、なぜこの二人の戦争犯罪者の逮捕が重要なのかというと、イスラエル兵は77年以上にわたり、パレスチナ人に対して戦争犯罪を犯しても、責任を取ったことがありません。
歴史上、イスラエル兵がパレスチナ人に対する戦争犯罪で、逮捕され尋問されることは今回が初めてです。
イスラエル政府やアメリカ政府からのプレッシャーはとても強く、ベルギーは、戦争犯罪者が帰路につく空港で、形だけの尋問を行って、彼らをイスラエルへと帰国させることを選択することも可能でした。
それでも、ベルギー警察は、このミュージック・フェスティヴァルに行き、二人を逮捕しました。
なんらかの方法で、この二人が正義を逃れてイスラエルに帰国したとしても、戦争犯罪に対するケースはオープンされて調査は進みます。
これは、転換点です。
Hind Rajab Foundationやほかの国際的な団体も、イスラエル兵の戦争犯罪を記録し、さまざまな国・機関へと証拠を提出していて、イスラエル兵たちが、accountability(アカウンタビリティー/((自分が行ったことについての)責任)と Justice(普遍的な正義)を問われる日は近づいてきています。
インスタグラムのポスティングはここより。
(※1)イギリスは、階級社会がいまだに色濃く残っていて、オペラを見に来る人々は圧倒的に白人上流階級・中流階級の上が多いとみなされています。二年前ぐらいでも、労働階級出身の議員がオペラを見に行ったことをソーシャル・メディアに載せると(彼女は正直に、オペラに行ったのは初めてで意味もよく分からず楽しんだとはいえないけど、興味深い経験だったというような内容の投稿)、白人上流階級が圧倒的に多い保守党の議員が、きみみたいな(労働階級で身分・知能が下ということを暗黙に指しているーもちろん真実ではない)ひとには、オペラに行く価値なんてない、というような発言をしていて、少し話題になっていました。
後者には、階級が下の人には何を言ってもいい、という暗黙の了解がある世界に生きていて、普通のひとびとから批判がくることなんて予測していなかったようです。
イギリスは、実はオペラも8ポンド(約1500円)ぐらいから桟敷席でみることができ、野外劇場のシェイクスピア劇場も立ち見だと5ポンド(約950円)で、庶民にも楽しめるようにできているのですが、イギリス社会の労働階級で育つと、オペラや劇場は自分が行くべきではないところ(上流階級のもの)という見方を植え付けられ、そういった場所に行こうとする発想さえブロックしているのだと思います。
イギリスでは、オペラは上流階級のものとされているのとは違い、国民決議で王室を追い出すことを決め共和国となったイタリアでは、オペラは庶民のものでもあり、戦後の貧しい時代に小学校を終えることしかできなかった私の夫の母やその友人たちも、オペラの歌を口ずさみ、みんなで長距離バスを借りて近隣の都市にオペラを楽しみにいったりしているほど、庶民的なものでもあります。
ただ、イタリアのミラノのスカラ座は、ロンドンのように安いチケットはなく、ドレスコードもあり、ロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスのように普段着+スニーカーで気軽に行けるような場所ではないそうです。
(※2)多くのイギリスの主要メディアは、アメリカ・オーストラリアのメディアもにぎるRupert Murdock(ルパート・マードック)さんの配下にあり、極右派のメッセージを煽情的に報道する場合が多く、イスラエルを何があろうとも完全支持という背景があります。ダニーさんの場合、「Queer(クィアー)」で「学費が年間43000パウンズ(約800万円)かかる私立学校でダンスを学んだ(←イギリスでは私立学校は珍しく、8割以上は国公立。大学もほぼすべて国公立)」という、彼が、お金持ちで甘やかされて夢のような現実的でないことを言っている、というような印象をつくりだして、彼の言っている内容(虐殺をストップ)から目をそらさせるよう、卑劣な方法でダニーさんを個人攻撃しています。
でも、上記のように、ダニーさんはそれを跳ね返しています。
これは、自分がたまたまもっている特権を、世界のヒューマニティーのためにつかう、ということでもあります。