イスラエルの「人工的な飢餓」の仕組

Yoko Marta
12.08.25 02:51 PM - Comment(s)

イスラエルの「人工的な飢餓」の仕組

ウエストバンクでは、国際法違反のユダヤ人占拠者が、パレスチナ市民たちを武力や暴力で追い出し、殺人も起こっています。
現時点(2025年7月30日時点)では、ウエストバンクのパレスチナ住民の4万2千人(ウエストバンクの総人口は約320万人)が、ユダヤ人違法占拠者による暴力や放火などで、自分の家を追い出され、水や食料・安全に過ごせる場所にアクセスできることが難しい状況に陥っているそうです。
イスラエル警察も、イスラエル国防軍も、ユダヤ人占拠者の味方で、パレスチナ市民が残虐な攻撃を受けていても、全く助けず、ユダヤ人違法占拠者の暴力を助けます。
この違法占拠者の中には、多くのアメリカ生まれ・育ちのユダヤ人も含まれています。
イスラエルは、ethno state (エスノ・スティト/特定の民族占有国家ーイスラエルの場合ユダヤ民族)のため、3世代さかのぼって祖父母のどちらかがユダヤ人であったことが証明されれば、どこに生まれて住んでいても、ユダヤ人としてイスラエルの市民権を得ることができ、数世紀にわたって住んでいるイスラエル国家内のパレスチナ人よりも、多くのライツと特権をもつことになります。

エルサレムでも、ウエストバンクと同様に、ユダヤ人がパレスチナ人の土地や家を盗み取ることが加速しています。
ただ、これは、イスラエル建国前からずっと続いていることで、スケールと速度が極度に上がったことだけが、新しい現象です。
現在はアメリカ在住のパレスチナ人詩人・作家のMohammed El-Kurd(モハメッド・エル=クルド)さんは、エルサレム出身で、子どものときに、突然やってきたユダヤ人違法占拠者(ユダヤ系アメリカ人)に家の半分を乗っ取られました。
モハメッドさんの家の近所のひとびとは、完全に家を乗っ取られ自宅に戻れない人々も多く、半分だけ家を取られたことは、まだ幸運なうちに入るそうです。
モハメッドさんの家族は、裁判で長い闘いを続けるとともに、国際社会へも訴え続けました。
それが、家を完全に乗っ取られなかったことに貢献したそうです。
ただ、イスラエルの司法は、ユダヤ人至上主義にますます傾いていて、家が完全に乗っ取られる可能性も十分あるそうです。
ガザから目を離さないことと同時に、ウエストバンクとエルサレムのことにも心を向け続けている必要があります。
イスラエルによるパレスチナ地域の違法占領・アパルトヘイトが終わり、パレスチナ人たちが国際法で認められているように、自分の地に戻り、ライツと自由が、地球上のほかのひとと同じように享受できるようになるまで、私たちはヒューマニティーを共有する仲間として、一緒に闘う必要があります。

ガザでは、飢餓がますますひどくなり、2025年7月19日だけでも、18人のパレスチナ市民が飢餓が原因で死亡したと記録されました。
国連世界食糧計画では、ガザの三分の一にあたるひとびとが、数日何も食べていない状態だとみています。
道では、深刻な栄養不足の人々の多くが倒れ、病院に運ばれています。
イスラエルによる、4か月近く続く包囲では、飲料水や食料だけでなく、医療品や医薬品、燃料なども、ほぼガザには入ってこない状態となっています。

多くの専門家が指摘していますが、「人工的な飢餓」は、緻密で長期的な計画を必要とします。

飢餓が一気に広がり始まる前には、医療機関や衛生を保つ施設(浄水施設、下水施設、電気・燃料施設など)を破壊、あるいはうまく機能しなくさせ、食料や水が入らなくなったときには、もともと病気がある人や負傷したひとたちが、生き残れないような状況をつくります。
腎不全などのように専門の医療機器や定期的な治療が必要な病気をもっている人たち、糖尿病のように十分治療可能で長く生きることが本来可能なひとびとも、栄養不足で薬がなければ、あっという間に死んでしまいます。
赤ちゃんや子どもは、大人と違い、飢餓に耐えうるように心身が成長していないため、死ぬ確率が高くなります。

イスラエルが、虐殺の始まりから、病院を標的にし、多くの病院が複数回にわたって爆撃し、イスラエル兵がさまざまな医療機器を故意に壊して回ったこと、また、医療関係者を狙って殺し続けていて、病院がまともに機能できないことも、この飢餓の影響をさらにひどくしています。
浄水施設や、下水施設、電力施設などの、生きていくのに不可欠な公共施設を、イスラエルが最初から狙って爆破し続けたことは、飢餓状態に陥ったひとびとが死にいたることを早めています。
それだけでなく、イスラエルが計画的にエスニック・クレンジングの一環としてつくったガザ人道財団が運営する食料配布所では、毎日多くの人々が殺され、2025年7月31日の時点で、確認されているだけでも1239人が殺され、その数倍の人々が負傷したと記録されています。
病院まで来れないひとびともいるため、実際の数はこれよりも多い可能性は高いとされています。
これは、ガザ人道財団が運営し始めてから、約4か月という短い間の数です。
多くの子どもたちが含まれていて、中には、ガザ人道財団でさらわれて、イスラエルの牢獄に入れられ、拷問を受けた子どもたちもいます。

Muhammad Shehada(ムハマッド・シェハーダ)さんは、明瞭に、このイスラエルの飢餓計画について分析しています。
ムハマッド・シェハーダさんの記事より。

ムハマッドさんによると、4つの柱があります。

1. 一方的に救援物資をブロックすること
ガザの人口が飢餓に陥らないためには、最低でも、一日に約600台のトラックが救援物資を届ける必要がありますが、欧州連合や国際社会からのプレッシャーがかかり、少し台数を増やした現在でも、一日に約28台のトラックがガザに実際に入っていると見られています。
これでは全く足りません。
大切な事実は、ガザのすぐ外で、ガザの人々に必要な食料の3か月分を積んだ国連などのトラックが5か月近く、ガザに入れることを待っている状態です。
イスラエルは、ガザに入ることが許可される物資を始終変更し、トラックを拒否したり、イスラエル兵が救援物資のトラックに銃撃を行ったり、指定された道路が爆撃で壊されていて通過することが難しかったりと、トラックがガザに入れないよう&入れたとしても貯蔵庫や、配布センターに配送することをほぼ不可能にします。
国連で働いているひとびとは、既に300人以上イスラエルに殺されていて、これは、今までの紛争でも考えられないくらい、多い人数です。

2.ギャングに武器や資金を与え、救援物資を略奪させる
イスラエル政府は、パレスチナ人で、麻薬取引や強盗などで捕まってイスラエルの牢獄にいたAbu Shabab(アブ・シャバブ)さんに資金・武器を与え、彼の率いるギャングを後押ししていることを、公的に認めています。
イスラエル国防軍も、このギャングを助け、わざとギャングが救援物資が略奪しやすい道路へとトラックを誘導し、ギャングが略奪している間に、パレスチナ人市民や、市民の警護団が、略奪を阻止しようとすると、イスラエル国防軍が、これらの市民を射殺しています。
アブ・シャバブさん率いるギャングは、5月終わりだけでも、アラブ首長国連邦の救援物資のトラックの24台のうち、23台を略奪しました。
このギャングは、イスラム教過激派ともつながっていて、パレスチナ抵抗組織のハマスは、このアブ・シャバブギャングとも、イスラム教過激派とも敵対関係にあります。

3.意図的につくりだされた無法状態と社会の崩壊
イスラエル政府が後押しするアブ・シャバブギャングが、救援物資の略奪を行うことで、混乱を引き起こします。
ギャングは、略奪で得た食料を、法外な値段で市場で売ることにより、利益を得ますが、普通の市民たちにはとても手が届かない値段となります。
また、銀行機関もイスラエルの支配下にあり、銀行からお金をおろすだけでも、手数料を50パーセント取られる場合もあるそうです。
救援物資が普通の市民の手元には届かないため、家族も飢餓で苦しみ切羽詰まったひとびとが路上でほかの人から食料を奪ったり、上記のギャングが路上での盗みを行っている場合もあるそうです。
ハマスや上記のギャングとも全くつながりのないパレスチナ人の一族が、ほかの市民とも協力して、救援物資を積んだトラックが配送センターに無事つくことに成功した翌日には、イスラエルは、トラックが入ることをストップし、協力者たちを攻撃しました。

4.「人道」というカヴァー ガザ人道財団 (2025年3月26日に運営開始)
機能していたすべての救援を行う機関や団体を禁止し、イスラエルとアメリカが共同でガザ人道財団を設置しました。
今まで400箇所以上あった供給ポイントは、4箇所になり、空いているのは数分間で、多くても一日に約20台のトラック分の救援物資です(必要なのは、1日に600台)
多くの市民(子どもや女性も多く含む)は、実弾射撃、手りゅう弾、戦車からの砲撃等で殺されています。
「女性だけの日」とされた日には、女性と子どもだけが配布所に行ったにも関わらず、少なくとも2人の女性が狙撃されて殺されました。
最近、元アメリカ軍特殊部隊将校で、ガザ人道財団で民兵として働いたひとが、内部告発で、パレスチナ市民たちを毎日殺していることを証言しています。
ここから、イギリス国営放送のBBCの日本語版が見られます。
このガザ人道財団の目的は、、救援物資がいきわたっているように見せかけて、国際社会からの非難を避けることで、イスラエルが虐殺を続けるためのカヴァーを与えることだとみられています。
「ガザ人道財団」の計画には、ボストン・コンサルティング・グループやイギリスの元首相トニー・ブレアさんがトップのシンクタンクが大きく関わっていて、この計画の中には、エスニック・クレンジングの最終段階である「強制収容所」の計画も入っています。
「強制収容所」は、「Humanitarian City ー 人道都市」という名前でホワイト・ウォッシングしていますが、ガザの人々が食料にアクセスできる場所を南のガザ人道財団の食料配布所の4か所に限定し、住民を強制的に南に移動させた後は、これらの施設にひとびとを閉じ込め、最小限の食料だけ与えて、ほかの国に移民することに合意しない限りそこからは出られない、かつ、その強制収容所に入かないパレスチナ人住民たちは、ハマスの一員とみなして、イスラエル兵が殺す権利があるという残酷で、ヒューマニティーとして許されないものです。
既に、ガザ人道財団の4つの救援物資配布所の内、一か所は救援物資配布所としては閉じ、強制収容所に変える工事中だという報道もありました。

なお、トニー・ブレアさんは、イラクへの違法侵略を、イラクが「大量破壊兵器」をもっていないことを知っていながら、「イラクが大量破壊兵器をもっている」と意図的に嘘をついて、大多数の国民からの反対にも関わらず違法侵略を引き起こしたことを認めましたが、多くの無実のイラク市民が殺されたことや、この侵略によって地域全体が不安定になり多くのひとびとが殺されたことに対しても全く責任はとっておらず、いまだに社会的に高い地位、財産を築いています。

国際社会からの非難が高まる中、「ガザで飢餓は起きていない」というプロパガンダが通用しなくなり、イスラエル政府・協力者(西側主要メディアやインフルエンサーなども含む)は、「ガザ市内に多くの救援物資を積んだトラックがあるのに、国連が物資を配布せずに腐らせている。国連のせいで飢餓が起こっている。ガザ人道財団に反対するのではなく、協力しろ。」という戦略に転換しましたが、だまされていはいけません。
ガザ市内での爆撃は、今でも毎日続いていて、ガザ市内にあるトラックの救援物資を配送センターなどに運ぶにもイスラエル軍の許可が必要で、その許可はなかなかおりません。
また、上記でも記載したように、たとえ許可がおりても、わざとギャングがいる道路を通過することを命令されたり(命令された道路以外に少しでも進むと、トラックが爆撃を受けトラック運転手も殺される)、たとえ奇跡的に許可を得たとしても、いつイスラエルから爆撃を受けるか分からず、安全に救援物資を運ぶことが不可能な状態であることを、イスラエル政府は隠して、ひとびとに、イスラエル政府の嘘を信じさせようとします。
ムハマッドさんのXの投稿はここより。
また、Air drop(エア・ドロップ/飛行機での救援物資の投下)も行われましたが、こレはパフォーマンスでしかなく、路上のトラックで運べる救援物資の量とは比べ物にならず、テントの上に落ちて市民が殺されているし、救援物資は本来必要な人に届けるものであり、身体的に強い人だけがこの救援物資を取ることができ、空から降ってくるものを追いかけて取る、というところに、ひとびとの尊厳への考慮は全くみられません。
救援物資は、必要な人々に届けるのが基本であり、現在の「ガザ人道財団」のように、「死の罠」で、飢餓や負傷に苦しんでいる人々が、爆弾が降り続く数十キロの道路(既に爆破されている箇所が多く、健康な人にも歩くのが困難)を歩き、かつ道中ではイスラエル兵が狙撃したり、誘拐を行っている状況は、「人道」という観点から、完全にはずれていることは、とても明らかです。

また、この「ガザ人道財団」モデルは、西側諸国の大企業(軍事複合産業)に大きな利益をもたらすものであり、イスラエルとアメリカの非人道的な行いにストップをかけないと、このモデルは、地球上で使われるようになることを覚えておく必要があります。

当然ですが、地球上に生きているひとりひとりの命は、企業のプロフィットとは比べ物にならない、大切で貴重なものです。

Yoko Marta