問題の根っこをみて、それを扱うことの大切さ
Jason Hickel (ジェイソン・ヒッケル) さんは、著書が日本語にも翻訳されているようなので、知っているひとも多いかもしれません。
ジェイソンさんは、アフリカ大陸のエスワティニ(旧スワジランド)出身・育ちの経済人類学者で、帝国主義・植民地経済についても深い知識があります。
ジェイソンさんの両親は、ブリティッシュの医師だったそうです。
エスワティニ(旧スワジランド)はイギリスの統治下(植民地のようなもの)にあった時代も長く、その後、1968年に独立しました。
イギリスが世界の大部分を植民地化していた時代は長く、イギリス(The UKはイギリス・スコットランド・ウェールズ・北アイルランドの連合4か国)出身のひとびとが、植民地の支配者として、地球上のさまざまな地域に君臨していたのは、そう昔のことではありません。
The UKの連合国のうち、スコットランドはイギリスの元植民地国でイギリスの残虐な支配に苦しんだ時代があります。
同じくThe UKの連合国のうち、北アイルランドは、アイルランドを植民地にしていた時代に、イギリスから多くの植民者を送り込んだアイルランド島の北部の地域で、アイルランドが長い武力闘争でイギリスを追い出して独立した後も、イギリスの統治下として残りました。
北アイルランドでは、植民者(占拠)であるイギリス人(プロテスタント教徒)を職業や住む場所・言語などで優遇し特権を与え、原住民であるアイルランド人(カソリック教徒)を差別・弾圧した経緯から、30年以上にわたる市民戦争が起こりました。
この市民戦争が終わったのは、1990年代のことで、大昔のことではありません。
市民戦争の間には、イギリス本土から、イギリス軍が北アイルランドに派遣され、町にいくつもの検問所を設け、アイルランド人をコントロールしたり、イギリス兵が、明らかに武装していないアイルランド人の小学生の子どもに向かって銃で撃ち、失明させるということも起こっていました。
この対立は完全に沈静化されたわけではなく、ちょっとしたことで発砲事件などが起こることもあり、そこには、この市民戦争の直接のきっかけとなった、アイルランド住民による(移住者イギリス人と)同等のライツを求める平和なマーチに対して、イギリス軍隊が発砲し、数人を殺し、多くの負傷者を出したことについて、きちんと正義が行われていない(イギリス政府・イギリス軍はカバーアップを行い、犯罪を行った兵士、それを指示した上官などの責任はほぼ問われていない)こともあるかもしれません。
最近、ジェイソンさんが、ガザについて語るポッドキャストが興味深かったので、そこからの考察を書いています。
ポッドキャストは、ここから聞けます。
タイトルは、「Gaza Genocide & Empire with Jason Hicke/ガザ虐殺と帝国」で、帝国主義・植民地主義という世界の仕組という視点から、ガザの虐殺を語っています。
日本にいるとわかりづらいかもしれませんが、これは2024年9月の放送で、アメリカやヨーロッパでは少しでもイスラエル政府を批判したり、「虐殺」ということばを使うことで、アカデミックや普通の人々が解雇されていた時期で(現在もそうだけれど、虐殺ということばを避ける人々はとても多かった時期ー2025年8月現在では、イスラエルの虐殺行為はあまりにも明らかで、西側主流メディアで「虐殺」ということばは徐々につかわれはじめている)、ジェイソンさんのモラルの明瞭さを表しているともいえます。
帝国主義の観点から、イスラエルはアメリカのproxy (プロキシー/代理)として考えると、イスラエルによるパレスチナ人に対する虐殺を、Global North(グローバル・ノースーアメリカ・カナダ・ヨーロッパ・オーストラリア・日本などの経済大国で元植民地宗主国か移住者植民地国)がサポートし続けるのは、不正義ですが、一貫した方向性があります。
パレスチナだけでなく、sovereign(ソヴェレイン/主権・独立)を求める地域は、グローバル・ノースの帝国主義・帝国主義に基づいた資本主義の仕組を揺るがすため、必ずアメリカを始めたとしたグローバル・ノースから、軍事あるいは経済的な介入を受け、自国が発展できないようにさせられます。
資本主義については、さまざまな考え方があるものの、現在の資本主義は、帝国主義とは切っても切れない深い関係があり、民主主義とは相いれません。
さまざまな考え方はあるものの、ジェイソンさんは、資本主義の最大目的は、「資本の拡大と蓄積」だと定義しています。
欧米では、帝国主義(植民地主義・移住者植民地主義も帝国主義の考えから派生したもの)と資本主義が、車の両輪のようになって発展しました。
流れは、以下のようなものです。
製造を効率的にし製造を増やす(資本家階級にとって利益が増えるー労働者階級は賃金を買いたたかれ貧しい)
↓
資源がもっと必要になる
↓
資源はヨーロッパ内だけでは限りがあるし、労働力も酷使するとストライキや暴動が起きる可能性がある
↓
ヨーロピアン白人が、世界中の地域(現在のグローバル・サウス)に侵略して、原住民を虐殺し、資源・土地を奪い、生き残った原住民は奴隷として使う。(帝国主義ー植民地主義)
奴隷として暴虐に抑圧するので、暴動やストライキを行う可能性は低いし、抵抗運動が起こり大量殺人を行ったとしても、なんの責任も結果もとらなくて済む(植民地宗主国内だと、王政への反発などで政治的に転覆させられる可能性がある)
植民地国の土地は、植民地宗主国が大きな儲けを出すために、砂糖・ゴム・バナナ・パイナップルなどの海外輸出用の単一栽培にする。(=原住民たちが自分たちの自給自足のための穀物を耕すことを不可能にし、賃金はほぼない状態で、天候不良などが起これば急速に飢饉となるー植民地宗主国は信じられないレヴェルの飢饉を各地で何度も植民地国に起こしたー植民地化される前は、自給自足で、その土地に適合したさまざまな穀物や作物を育てていたので、天候不良でも最低限の食料をえることは可能だった)
↓
ほぼ無料の労働力と、グローバル・サウスの豊かな資源を盗むことにより、さらに多くの生産・製造が可能になる
↓
植民地宗主国だけでは消費が追いつかず(植民地宗主国のなかでも儲けているのは資本家階級だけで、多くは労働者階級として賃金を買いたたかれている=購買力は限られている)、植民地国を新たな輸出市場として、製品を売りつけて、もうける (植民地宗主国は、自国内の企業や工場には多額の補助金を与え、植民地国内で同じ製品をつくるひとびとが競争できない状態にし、その産業をつぶし、植民地宗主国から買わざるを得ない状態にする)」
例えば、インドだと、イギリスの植民地となる前から、高い品質の綿を織る高度な技術と産業をもっていました。
植民地宗主国であるイギリスは、多くの畑を綿花にし、原住民であるインド人を綿花畑で働かせ、その綿をイギリス(北部のマンチェスターに綿やシルクを織る工場が多くあった)に送り、イギリスから機械で大量生産する綿を安く売りつけることにより、インドの綿織り産業が競争することを不可能にし、イギリスはインドから多大な利益をあげました。
安く大量生産することができたのは、植民地であるインドのひとびとに、重労働させて原料の綿花を大量生産させ、重労働していたインドのひとびとには、ほぼ何も支払わなかったからです。
これが、とても不公平な仕組みであることは、一目瞭然だと思います。
植民地宗主国に儲けが出ることだけを考えた仕組(輸出用の作物の単一栽培等)だったので、天候不良などが起こると一気に飢饉が大規模に起こりましたが、植民地宗主国であるイギリスは、全く気にかけず、(子どもが多くて)人口が増えるインドで、定期的に飢饉が起こるのは、自分たち支配階級がコントロールする人数が一定化されて都合がいい、と言ったイギリス官吏のことばも残っています。
インドだけでなく、多くの植民地国では同じ仕組みが適用され、飢饉が何度も起こりましたが、植民地にさせられる前には、飢饉があった地域はほぼない、とされています。
これらの飢饉は、構造的な問題で、この構造的な問題をつくりだしていたのは、帝国主義です。
現在は、ほぼすべての地域が、長い武力闘争をへて政治的な独立を果たしたものの、これらの元植民地国のほとんどは、経済的に、グローバル・ノース(アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、オーストラリア、日本などの、元植民地宗主国・移住者植民地国で白人ヨーロピアンが原住民を殺してマジョリティー・原住民として置き換わった国々)の支配下で、植民地時代の搾取の仕組みがいまだに使われています。
なぜなら、グローバル・ノースにとって、資源が豊富なグローバル・サウスが経済的にsovereign(ソヴェレイン/主権・独立)となると、自国の資源(金やウラニウム、コバルトなど)を自国のために使い、自国産業を発展させ、自国内で生産・製造・消費を行うことが増え、結果的にその国は豊かになり、賃金もあがります。
グローバル・ノースにとっては、資源を盗み続けることができないだけでなく、資源の発掘権を獲得できたとしても、その土地で起こす公害についての規則に従わないといけなくなったり、引き起こした環境公害などについて責任を取らされる可能性が高くなります。(=グローバル・ノース企業の利益が減る)
また、グローバル・サウスでの賃金が上がれば、安い労働力として搾取することができなくなり、グローバル・ノースでの安い価格で大量消費する経済モデルが崩れることになります。
グローバル・サウスに余剰品を売ろうとしても、グローバル・サウスは自国内で生産・製造・消費を行い、グローバル・ノースからの輸入品を必要としなくなるため、現在のように、余剰品を売ることはできなくなります。グローバル・ノースで大量消費できなくなれば、生産を減らすしかなく、そうすると失業者が増え、さらに購買力・消費力が減り、現在の経済は成り立たなくなります。
そのため、グローバル・ノースは、グローバル・サウスを搾取することにより、グローバル・ノースに富・資源が蓄積されるモデルを壊すことを許しません。
たとえ、グローバル・サウスが地球人口の約8割を占める人類のマジョリティーであっても。
普通に考えれば、永遠に市場を拡大し、(誰もが生きるために必要ではない、あるいは必要な数を完全に超えた)余剰品を加速して作り続けなければ成り立たない経済が、まともだとは思えません。
グローバル・サウスは、豊富な資源をもっていて、素晴らしい労働力パワーと、有能な人々がたくさんいるのに、不安定な経済から抜け出せないのは、偶然や努力が足りないからではなく、グローバル・ノース、特にアメリカやイギリスといった国々の帝国主義的な経済・支配の仕組みのせいです。
グローバル・サウスは、第二次世界大戦前後、特に第二次世界大戦後には、長い武装闘争を通して、残虐な植民地宗主国を追い出しました。
アフリカ、西アジア(「中東」は植民地が勝手につけた名前で、地理的には西アジア)、南アジア、南アメリカなどの地域では、自国の資源を自国民のためにつかい、自国民の教育や福祉を向上させる民主主義的な動きー民族解放運動、国民主義、社会主義と呼ぶ場合もーが一気に増えました。
これらの国々は、元植民地宗主国であるヨーロピアン白人キリスト教徒・彼らを祖先とするひとびとが行った帝国主義から離れて、みんなで一緒に発展しようとする国際的な動きをつくりだしました。
そこで、ヨーロッパとアメリカが行ったのは、グローバル・ノースに富・権力が蓄積される仕組みを保つため、これらの国々のリーダーの暗殺、これらのリーダーや正当の反対派の軍隊や民兵に武器やインテリジェンス・軍事訓練などを与え間接的に軍事クーデータを起こす、直接的に軍事クーデターを起こすなどで、この動きをつぶしました。
これらの不法で不正義な介入は、第二次世界大戦後だけでも70以上にわたり、例をあげだすと切りがないのですが、以下が一例です。
(イラン)
モハンマド・モサデグ首相をCIAとイギリスの協力によりクーデータで取り除く
(コンゴ)
パトリス・ルムンバを軍事クーデータで取り除き間接的に暗殺
(チリ)
サルバドール・アジェンデ大統領を軍事クーデターで取り除く。暗殺されたのか自殺したのかは今でも不明
(ガーナ)
クワメ・エンクルマ大統領をクーデターで取り除く。
(ブルキナ・ファソ)
トーマス・サンカラ大統領を暗殺
上記のリーダーたちは、民主主義をおしすすめ、アメリカやイギリスからの介入がひどくなるまでは、国民たちの識字率を高め、インフラストラクチャーを整備し、貧困を減らし、自国産業を発展させました。
これらのリーダーや政府を取り除いたあとは、アメリカやイギリスの言いなりになる傀儡政権(多くは軍隊や極右派)をおき、これらの傀儡政権は、自国民を大量殺人したり徹底的に抑圧する警察国家をつくりだし、民主主義からは完全にかけ離れていましたが、アメリカとイギリスはこれらの政府をサポートし、緊密な関係を続けました。
アメリカやイギリスは、民主主義・自由といったプロパガンダを繰り広げていますが、実際にこれらの国々が行ったのは、民主主義をつぶすことです。
なぜなら、これらの国々は、自国の政治・経済をsovereign(ソヴェレイン/主権・独立)しようとしたからです。
その後は、明らかな軍事介入は、批判を招くこともあるしPRとしてはよくないということもあり、アメリカやイギリスは、経済制裁や、IMF(国際基金)やWorld Bank(世界銀行)を通したネオリベラル経済政策(ローンを受け取るためには、教育や福祉・インフラストラクチャーといった国内の経済や社会をよくするために国費を使うことを許さず、自国内の資源を私有化しグローバル・ノースの大企業に格安に売る・使わせるーローンの利率はとても高く、多くの国々ではローンと利息の支払いに国家予算の3割以上を使っている)で、グローバル・サウスの経済・政策をコントロールし、グローバル・サウスが貧しいままでいるようにコントロールしています。
イラクやリビアのように資源が豊かな国へ、アメリカとイギリスが中心になって違法侵略を行い、国とその地域全体を不安定にし、グローバル・ノースの国際企業がこれらの資源をコントロールし利益をあげているケースもあります。
イラクは世界でも豊富な石油埋蔵量がある国ですが、石油の売り上げはアメリカ・ドルでのやり取りで、アメリカの金融組織を経由するため、アメリカ政府がコントロールをもっていて、イラク政府に本来支払われるべきのロイヤルティーなどのお金はほぼ入らず、アメリカの銀行機関に差し押さえられている、という記事を読んだことがあります。
パレスチナに戻ると、イスラエルの残虐な違法占拠をやめさせ、パレスチナがsovereign(ソヴェレイン/主権・独立)をもった民主主義の国となることは、パレスチナ市民だけでなく、中東地域の圧倒的に多くの市民が心から望んでいることです。
中東地域は、イランを除いては、多くが王族などの専制政治で市民からの支持はなく、アメリカへ従属することによって自分たち王族の地位の安定をはかり、アメリカや西側からの軍事や偵察技術の提供により、警察国家として機能し、厳重に国民たちを監視・抑圧することで、自分たちの権力・特権・富を保っています。
パレスチナが占領から解放され民主主義の国となると、自国の市民たちもそれに影響されて、民主主義を求める流れが大きくやってくることを、これらの支配者たちは恐れています。
なぜなら、民主主義が行われれば、これらの王族たちは、誰もが地位も財産も特権も失うことは確実だからです。
また、アメリカやイギリスなどの西側諸国(西側諸国の大企業・軍事複合産業なども含む)も、石油やガス・鉱物などの資源の豊富な地域が民主主義となり、自分たちが中東地域を搾取できなくなることには大反対です。
現在の専制政治を行っている王族たちは、自国民のことはどうでもよく、自分たちの利益だけ考えているので、西側諸国にとっては、都合のよいひとびとで、その仕組みを変えたくはありません。
ジェイソンさんは、西側主流メディア、イスラエル政府によってよく使われるプロパガンダ「イスラエルには(国として)存在する権利がある」について、明確な答えを返します。
「Noーイスラエルのようなユダヤ人至上主義で原住民であるパレスチナ人に対して虐殺やエスニック・クレンジングを行っている国に存在する権利はない。(地球上に住む)ひとびとには、ひととして存在する権利はあるが、国には存在する権利はない。」
フランチェスカ・アルバネーゼさんを含む多くの国際法の専門家も同じことを言っています。
ジェイソンさんは、ナチや、南アフリカのアパルトヘイト国家が、国として存在する権利があるかと問われれば、ほとんどのひとが権利はないとするとして、イスラエルは虐殺やアパルトヘイトを行っている国で、イスラエルの現在の国としてのありかたは壊されるべきだとしていました。
南アフリカも、アパルトヘイト国家は壊され、憲法・法律・議会などがの仕組みや機関が、民主主義の原則に沿って新たにつくられ、共和国として、そこに住む人々すべてが同じ権利と自由をもつ国へと生まれ変わりました。
また、上記のプロパガンダの一環として、「イスラエルは国連によって国として存在する権利を認められた」もよく使われますが、ジェイソンさんは、当時の政治状況を知っておくことは重要だとしています。
イスラエルは、1948年にユダヤ人国家としての国家樹立を宣言しました。
国連の一員として認められたのは、1949年で、この時代は、地球上の多くの地域が植民地であり、国連に席がなかったか、席があったとしても投票できない状態でした。
また、投票できた元植民地国も、西側諸国からのローンをキャンセルする、ローンへの利子を高くするなどの脅しにあい、西側諸国の言う通りに投票するよう強要されたことも知られています。
世界の人口でいえば、完全にマイノリティーである西側諸国が大きな力をふるっていたことは重要です。
もし、地球上のすべての人々が同じ権利をもち、一国が一つの投票権をもつ民主的な機関として国連が機能していれば、イスラエルは国家として認められなかったでしょう。
イスラエルは国家樹立を宣言すると、エスニック・クレンジングを加速させ、500以上の村を破壊し、大量殺人を行い、75万人の人々を暴力で追い出しました。
ナクバとよばれているできごとで、この時点で、イスラエルは歴史的パレスチナ地域の約8割をコントロール下におさめます。
その後も、イスラエルはパレスチナ地域だけでなく、近隣の国々にも攻撃をしかけ、領地を奪い取り占領・占拠を行い続けています。
1967年には、ほぼすべての歴史的パレスチナ地域をコントロール下にいれました。
パレスチナ人で隣国などの外国で国籍なしとなり、難民キャンプなどで暮らしている人々は、約600万人で、歴史的パレスチナ地域に住んでいるけれど投票権のないパレスチナ人(ガザ、ウエストバンク)を合わせると、合計1100万人以上になるとみられています。
(イスラエルの人口は約700万人で、そのうち8割がユダヤ人だとみられている)
ガザの住民の7割以上は、歴史的パレスチナ地域からユダヤ人によって追い出された難民です。
国際法でパレスチナ難民は、自分の地に戻れることが保障されていますが、イスラエル政府が許可しないため、実現していません。
本来、イスラエル政府には、許可を与える資格も権利もありません。
ただ、国際司法裁判所には警察のような物理的に法律を守らせるような機関はないため、ほかの国々からの経済制裁などによって、その国が法律を守るよう強制するしかありません。
こういったことからも、イスラエルというアパルトヘイト国家が存在する権利があるとは思えない、とジェイソンさんは言っています。
二国間解決については、ジェイソンさんの見解は、抵抗を押さえつけるための時間をかせぐこと、イスラエルが虐殺を続ける時間を稼ぐものでしかない、でした。
結局のところ、二国間解決にかわる別の明確な案は、民主主義と、すべてのひとが平等なライツをもって暮らせる社会、ということです。
そのためには、南アフリカで行われた(アパルトヘイト国家の廃止→共和国を新規に設置)ように、イスラエルという国家の廃止、司法などの機関などの廃止を行うことです。
また、すべてのパレスチナ人は(国際法で保障されているように)、自分たちの地に戻れるように、国際社会がサポートするべきです。
虐殺・戦争犯罪・人道に対する犯罪を行った人々はすべて、裁判にかけられ、正義が行われるべきです。
現在の国際連合は、アメリカの影響で、全く役目が果たせない、全く民主主義ではない機関となっています。
たとえば、国連連合総会では、イスラエルの違法占拠はすぐに取り除かれなければならない、と決議されたにも関わらず、何も起こっていません。
国連連合安全保障理事会では、アメリカが、世界中の国々の決定に反対して、拒否権を行使するために、何もできません。
国際法は、アメリカとイスラエルには適用されず、この二か国がどんなに国際法を侵犯しても、なんの罰もない状態がずっと続いていて、まともに機能しているとはいえません。
ジェイソンさんは、拒否権(国連連合安全保障理事会では、アメリカ・イギリス・フランス・中国・ロシアの5か国が拒否権を保有)を取り除き、もっと民主主義的で透明性があり、早い反応ができる機関に変えるべきだとしていました。
そうすれば、虐殺などの極端な人道に反することが起こったとき、すぐに物理的・政治的に止めることができるようになり、多くの命が失われずにすみます。
ジェイソンさんは、BRICS(ブリックスーブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ、イラン、エジプト、アラブ首長国連邦、エチオピア、インドネシアの10か国から成る国際会議)を、希望をもって観察しています。
これらの国々は、元植民地国として搾取されてきた国々ですが、近年、経済力をのばしています。
これらの国々は、ガザの虐殺で、グローバル・ノースのあからさまなヒポクラシー(自由・人権・民主主義の国でそれを世界に広げるといった信条を口にしながら、実際には反対のことを行っているー虐殺に加担し続けている)をみて、新たなシステムと新たな国際ルールをつくろうと動き始めています。
普通の経済には、帝国主義は必要ありません。
普通の経済は、ひとびとの必要性が満たされ、ひとびとが善い状態でいられるような製造過程を組織することができ、普通の市民たちに(必要なものを)提供することができ、かつ自然環境を守れる範囲でそれが可能です。
資本主義経済は、帝国主義のアレンジメントを必要とし、恒常的な帝国主義の戦争が必要とします。
なぜなら、恒常的に価格や働くひとびとの給料を抑え続けことがこの仕組みには必要で、それに対して抵抗するひとびとやグループが出てくるのは当然で、正当な抵抗を抑えるために、圧倒的な暴力・武力をつかうことをアメリカやイギリスが選択するからです。
このような、グローバル・サウスを搾取して、グローバル・ノース(グローバル・ノースの大企業や政治家・ミリオネア・ビリオネアなどの資本家階級)に富・利益が蓄積するようなアレンジメントは、倒さなければなりません。
ジェイソンさんは、ほかのインタヴューで言っていましたが、現在生産の効率性は高く、地球上のすべての人々がdecent (ディーセント/十分な、適切な)な暮らし(快適な家に住み、栄養のある食事をし、PCやモバイルフォンなどもあり、交通・病院といったインフラストラクチャーも整っている)をすることは、既に十分可能です。
それなのに極端な貧困や相対的な貧困に陥らされているひとびとがいるのは、この帝国主義的な資本主義のせいで、本来は、不自然なことです。
今とは全く違う、地球上のすべての地域に民主主義があり、資源を分け合い、自然を大切にして、誰もが十分な暮らしをすることは、可能です。
そのためには、帝国主義を基礎とした資本主義を倒す必要があります。