西側のひとびとのメンタリティーの深い問題 ー 非白人の命を、白人の命と対等だとみることができない

Yoko Marta
24.11.25 04:51 PM - Comment(s)

西側のひとびとのメンタリティーの深い問題 ー 非白人の命を、白人の命と対等だとみることができない

パレスチナの抵抗組織の政治部門のリーダーの一人である、ムーサ・アブ・マルズークさんが語ったことが、アメリカの独立系メディアDropsite NewsのXに投稿されていました。
真実・本質を鋭く見抜いた発言だと感じました。
投稿はここから。

ムーサさんの両親は、ユダヤ人に残虐に祖先の地(歴史的パレスチナ地域)から追い出され、ムーサさんは、ガザで育ち、その後、アメリカのコロラド州立大学で建設マネージメントの修士とルイジアナ技術大学のインダストリアル・エンジニアリングの博士課程を修了していて、西側の文化や考え方にも精通しています。

誰かの言っていることが聞く価値のあることだと証明するために、学歴などをいうことには、私自身、抵抗があるのですが、白人社会だと、非白人(日本人も含む)が非人間化され、「野蛮で教養がなくモラルが低い」というレベルが無意識・意識的にはられるため、念のため、記載しています。

当然ですが、表面的な肌の色素の違いに、文明化もモラルも関係なく、どんな見かけやバックグランドであろうと、どんな職業についているか、あるいは職についていないなどに関わらず、私たちのひととしての価値は同等に貴重なものです

また、先進国で育っても、教育の機会がえられなかったひとたちもいるし、学歴に大きな意味があるわけではありません。

イギリスの独立ジャーナリストのMatt Kennard(マット・ケナード)さんも言っていましたが、西側政府や西側大企業の帝国主義・資本主義に抵抗し、自然を守り人間らしい暮らしが誰にも可能になるよう、組織して闘っている南アメリカの原住民や農民などの労働者階級のひとびとは、経済や社会の仕組みもよく勉強していて、西側のいわゆるエリートよりも、よっぽど知識も経験も、モラルもあります。
大事なのは、ヒューマニティーを持ち続け、構造をみぬき、根本的な問題を解決できるよう、団結して動けることです。

ムーサさんの語ったことの内容は以下にざっと直訳しています。

[直訳はじめ]
パレスチナ人たちを公平に扱い、(パレスチナ地域の)安定性と安全性を保持するには、アメリカ(政府)はアプローチを変える必要があります。

なぜなら、ワシントンの政策が、トランプ大統領が繰り返し続けているように、「(条約や条件を完全に)受け入れるか、(そうでなければ)破壊」を続けるのであれば、私たちは、明確に(アメリカ政府に対して)いう必要があります。

そのやり方は、私たち(パレスチナ人たち)を恐れさせません。

私たちに、失うものは、ほぼ残されていません。

私たちがすでに耐えてきた武器や爆弾、さまざまなレヴェルの破壊以外に、どんな武器や爆弾があるのでしょうか。(=ありとあらゆる武器や爆弾、残虐な破壊方法がガザで使われたことを示唆)

アメリカ政府は、Zionist entity (シオニスト・エンティティー/ジオニズムという移住者植民地主義のイデオロギーをもとにした実体=イスラエルを指すー移住者植民地主義は、原住民の消去が必須条件)に対して、ガザを攻撃するために、数百トンもの爆発物を提供しました。

これ以上、(アメリカ政府は、ガザに対して)何ができるのでしょう?

何が、トランプ大統領を満足させるのでしょう?
7万人以上のパレスチナ人を殺すこと?
18万人(のパレスチナ人)を負傷させること?
これは、トランプ大統領を満足させるでしょうか?

トランプ大統領は、既にガザの90パーセントを破壊することを助けました。
これ以上、何ができると、トランプ大統領は考えているのでしょう?

西側のひとびと(※1)のメンタリティーには、とても深い問題があります

アメリカ人とヨーロッパの人たちは、アラブのひとびと、特にパレスチナ人たちーこの構想の中心にいるひとびとーを、(アメリカ人やヨーロッパのひとびとと)対等なひとびとだと、見ていません

それは、この戦争のどの段階でも見られることです。

イスラエル人の遺体(イスラエルとパレスチナ抵抗組織との間での遺体の交換のときのことを指している)が現れるとき、それらは、聖なるもので緊急なことだとして扱われます。

でも、パレスチナ人の遺体があらわれるとき、 (遺体は)手足を縛られ、ひどく損傷し(拷問や処刑にあっているのが明らか)、遺体の上に多くのほかの遺体が積み上げられているにも関わらず、(西側のひとびとは)尊厳やヒューマニティー、(このひどい扱いへの)憤りを全くみせません。

(イスラエルの)牢獄をみてみましょう。
何人のパレスチナ人が、拷問のもとに死んだでしょう?
彼ら(西側のひとびと)は、これについて何も語りません。
でも、イスラエル人の捕虜が、たとえ一食でもぬいたとき(※2)、それは国際的なニュースとなります。

その間、私たちの(パレスチナ人)捕虜は、レイプされています。
(イスラエルの女性)法務担当者が、このイスラエル兵たちの犯罪を敢えてレポートしたとき、イスラエルは、彼女を「犯罪者」として扱い、審判にかけました。(※3)
彼らがいう「世界で最もモラルが高い軍隊」に対して侮辱したとして。
真実は、(イスラエル軍には)モラルは全く存在しません。

これらの特異な西側のスタンダード、特にアメリカ、は、中心から腐っています。
彼らは、パレスチナ人をイスラエル人と対等として見ず、おそらくパレスチナ人を彼ら(西側のひとびと)と対等にみることもしません。
これが、修正されなくてはならないことです。
(社会・経済・文化などの包括的な西側の)基礎部分から。

なぜなら、私たち(パレスチナ人たち)も、アメリカ人が生きることを求めるのと同じように、私たちも生きることを求めています。
[直訳おわり]

日本だけにしか住んだことがないと、人種というと、白人、黄色人種などと思うかもしれませんが、同じ白人とくくられるアイルランド人も、イギリスでは長い間人種差別を受けてきました。
アイルランドは、長い間、イギリスの植民地として搾取され、イギリス人よりも下として扱われていました。長い独立のための武力闘争をへて、イギリスを追い出しましたが、イギリス人植民者の多かった北アイルランド地域は、イギリス領として残りました。
ここでは、イギリス人植民者(プロテスタント教徒)が職業や住む家などの優遇を受け、原住民であるアイルランド人(カソリック教徒)が差別されたために、アイルランド人がイギリス人と同じ、平等な権利を求める平和なマーチを行い、イギリス兵たちがアイルランド市民たちに発砲し殺人を行い、そこから市民戦争へと進み、30年ほど続いた市民戦争が終わったのは、そう昔ではない1990年半ばです。
多くの市民が、巻き添えになり殺されました。
完全に火種が消えたわけではなく、今でも少しでも不安定なことが起きると、銃撃や爆破が以前と比べればですが、小さな規模で起こることは続いています。

日本でいうと、同じ日本人にみえるひとびとが、両親や祖先の出身地などで差別されるのも人種差別です。
自分が特権のあるグループにたまたま生まれ落ちた場合、自分が差別をしていることや差別する考えを無意識にもっていることに気づくことは難しいのですが、イギリス人によるアイルランド人への差別がおかしいというのは、分かりやすいのでは、と思います。
それに気づけば、たまたま日本で、日本人と認識されるグループに生まれたからといって、「純粋な」日本人だから、ほかのひとよりも権利がある・優れていると思うのは、全く意味のないばかげたことだと分かると思います。
この社会からしみこまされた、「至上主義」に気づくことは大切です。
ガザで起こっている虐殺は、遠い世界のことではなく、ひとびとの心の中にある、「誰かの命がほかのひとびとの命より価値がある、優れている」といった、住んでいる社会から無意識に吸収したことや、経済や社会、法律などの構造からもきています。
経済や社会、法律も、ひとびとによって構築されたものであり、自然にできたものではないことは覚えておく必要があります。
これらは、私たちの社会の風潮などをうつしだしています。

特別なひとなんていない。地球上に生きている誰もが、同等な命の価値をもつ貴重な存在」と心から思い、それを行動にうつせることは大切です。
そうでないと、いつまでも、差別や誰かが悪く扱われること、ひどくなれば虐殺が起きることは、とまりません。

(※1)「西側のひとびと」は、基本的に帝国主義の一環として、植民地主義(直接植民地主義、移住者植民地主義)を行い、現在も、経済的な帝国主義を実施している国々。
直接植民主義は、イギリスやフランスの西ヨーロッパの白人・キリスト教徒が、自国からずっと遠い地域のインドやアフリカ大陸などに侵略して、資源を盗み、現地のひとびとを奴隷のように安い・無料の労働力として扱ったことで、移住者植民地主義は、アメリカ・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドのように、西ヨーロッパの白人・キリスト教徒が侵略して原住民たちを虐殺・エスニッククレンジングで消去して、資源を盗み、自分たちが原住民として置き換わったことを指しています。

(※2)イスラエル人の捕虜は、イスラエルによって人為的に作られた飢餓が続く中、比較的健康で、拷問などの後もない状態で解放されています。また、イスラエル人の捕虜の多くは、軍人で、軍人として闘っている間に捕らえたり、捕らえられたりするのは、国際法では合法です。もちろん、捕虜を悪く扱うことは、違法です。
イスラエル人の捕虜の状態を見る限り、パレスチナ抵抗組織は、イスラエル人捕虜を国際法に従い、捕虜の健康状態をできる限り適正に扱ったとみられています。
それに反して、パレスチナ人の捕虜は、ほとんどが罪状も裁判もなしに、イスラエルによって誘拐された市民たちで、手足の切断が必要だったり、視力を失ったり、拷問のあとが明らかにみられるひとびとが大半です。
パレスチナ人の子どもたちも多くがイスラエルによって誘拐され、牢獄に閉じ込められています。
これは、2023年10月以降に始まったことではなく、イスラエルのテロ行為・虐殺・エスニッククレンジングによるイスラエル建国から、ずっと続いていることです。
西側主流メディアでは、イスラエルの捕虜(パレスチナ人の虐殺を直接行っていることが明らかな場合でも)は、ひとりひとり、名前がフルネームで読み上げられ、趣味や家族からの話など、人間らしく扱われます。
でも、パレスチナ人については、全く報道されないか、報道されたとしても、捕虜の人数だけだったりします。
これも、パレスチナ人を非人間化する手段の一つです。
イスラエルは、現在も9000人程度のパレスチナ人をイスラエルの牢獄に閉じ込めているとみられ、その中の多くは子どもや市民です。
また、パレスチナ人の遺体についても、処刑のあとや拷問のあとがみられる遺体も多く、十年以上にわたって内臓や目がぬかれた遺体(イスラエルは臓器の売買を行っているととみられている)も多く見られると、国際団体も記録しています。

(※3)イスラエルの元最高法務官(女性)が、イスラエル牢獄の監視カメラに記録されていた、イスラエル兵たちによる、パレスチナ人男性捕虜に対する集団レイプを公表し、調査する意図があることを公言したことで、逆に、解雇され、現在は、国を侮辱するような行為を行ったということで、逮捕されている件。
この元最高法務官は、職業上の倫理観からこのレイプを調査することを決定したわけではなく、イスラエルで調査を始めなければ、国際刑事裁判所や国際司法裁判所が、イスラエルでは司法機能がまともに機能していないと判断して、介入してくることを恐れたため、調査を行うことを発表したとみられています。
時間かせぎのためで、まともに調査を行う意図がないことが明らかだったにも関わらず、元最高法務官は逮捕され、抑留されています。
レイプ犯人たちは、まったく処罰を受けておらず、一人は顔をだして「自分たちには、パレスチナ人をレイプする権利があって当然」として、イスラエル社会で人気者となっています。
このレイプ犯人たちが、いったん逮捕されて抑留されたときは、イスラエルの市民たち・イスラエル議員たちが、この逮捕されていた場所に押しかけ、「パレスチナ人をレイプする権利」を求めて、犯人たちの解放を求めました。
そのため、彼らはすぐに解放され、なんの責任も取っていません。
被害者のパレスチナ人男性は、裁判も罪状もないまま、最近解放されたものの、残虐なレイプによる内臓や腸の破裂で20回以上もの手術を受け、現在も後遺症を抱えているうえに、イスラエルに暗殺されることを恐れています。
これは、特異なケースではなく、さまざまな国際機関・団体が、イスラエルによる組織的なパレスチナ人へのレイプ・性加害を、国際基準に沿って、長年、詳細に記録を行っています。
ガザで、去年、イスラエルの爆撃によるパレスチナ人けが人の救出のために向かった救急隊員たちがイスラエル兵によって処刑されたときにも、その目撃者の少年が、国際機関の担当者からの正式インタヴューが行われる予定の数日前に暗殺されました。
これは、イスラエルの目撃者暗殺・被害者暗殺パターンで、長年行われていることです。
そのため、上記の被害者男性の暗殺への恐怖は、想像ではなく、実際に起きる可能性の高いものです。
イスラエルによる、ガザの250名以上のジャーナリストの暗殺・狙撃も、この目撃者の証言を黙らせるパターンです。
これらのジャーナリストの多くが、家に帰り、家族と過ごしているところを爆撃されたケースが多いことも覚えておく必要があります。
ジャーナリストを殺すこと自体が間違っていますが、ジャーナリストの家族、その近辺に密集して住んでいる普通の市民たちを殺すことが分かっていてこの攻撃を行っているのは、完全にヒューマニティーからかけ離れています。
西側主流メディアでは、「パレスチナ人テロリストを一人殺すために、何人のパレスチナ人市民を殺すことは適切か。50人、100人?もしリーダーだったら、数百人?」というフレーミングをされますが、このフレーミング自体が間違っていることに気づく必要があります。
市民を一人でも殺していいわけはありません。
また、西側政府や西側主流メディアが、「テロリスト」と誰かを呼ぶとき、往々にして、西側の帝国主義や資本主義に抵抗するひとびとであることも意識しておく必要があります。
南アフリカ共和国の民主化後の初代大統領、ネルソン・マンデラさんは、アパルトヘイトに反対し(アパルトヘイト下の南アフリカ白人政府は、アメリカやイギリスからも長い間サポートされていた)、誰もが対等である社会を求めて闘っていたため、アメリカでは、マンデラさんが政界から引退した数年後まで、ずっとマンデラさんは「テロリスト」登録されていました。
アメリカのトランプ大統領は、ベネズエラの資源(石油やリチウムなど豊富)を奪い取るために政権交代を武力で起こすことを公言していますが、その正当化の理由として使っているのは、(全く根拠のない)ベネズエラ大統領が麻薬組織に属している(この正当化のために、麻薬組織をテロリスト組織認定するよう法律変更)テロリストーなので、暗殺してもいい、という図式になっています。
現在、ベネズエラ大統領には、テロリスト組織のリーダーだったオサマ・ビンラーディンと同じ賞金がかけられています。
麻薬組織はテロリスト組織とは違うし、そもそも、ベネズエラ大統領が麻薬組織に属しているという証拠も全くありません。
ほかの国の主権を侵犯(政権交代や侵略)していいわけもありません。
ただ、このアメリカの行動は特異なものでなく、アメリカの建国以来、さまざまな地球上の地域で、軍事クーデーターを直接的・間接的に起こしたり、侵略したりと、軍事介入を繰り返しています。
軍事介入をしない場合は、(国際法では違法にあたる場合が多い)経済制裁や、世界銀行・世界経済機構などを通した経済政策を押し付けることで、アメリカなどの西側企業が、その土地の資源・労働力を奪い続けています。
これは、西ヨーロッパの元植民地宗主国(イギリス、フランスなど)も同じです。
西側諸国の人口は、地球上の約2割で、地球上のマジョリティーが搾取される仕組みは変わらないといけません
また、地球上の約2割の豊かな国の中でも、貧しい層は加速して増え続け、ひどい搾取がおきています。
これは、偶然ではなく、富裕層(大富豪や大企業の経営者たちだけでなく政治家なども含む)が、貧しい層を増やし、安い賃金で悪い環境でも働くしかない環境をつくりだしているからです。
たまたま、強欲なひとたちが富裕層となったから、というよりは、資本主義の仕組として、資本と利益を限りなく蓄積し続けるためには、労働力と資源をどこまでも安くし使い倒す必要があるからだともいえます。
日本にいると見えにくいと思いますが、階級(労働者と富裕・エリート層)という観点で見ることも大切です。
なぜなら、日本やアメリカのように豊かな国の多くの労働者と、第三諸国の労働者の状態は、かなり似ているからです。
アメリカが始終、軍事介入で他国の資源を奪うことをやめないのも、虐殺を助けることを続けているのも、戦争や虐殺は大きな利益を出すから、というのも大きな理由です。
私たちは、境界をこえて、団結して、この資本主義の仕組みと闘う必要があります。

Yoko Marta