資本主義は、普遍的な/万人への繁栄をもたらさない ー 資本主義を壊して別の道をつくることは十分可能 ②

Yoko Marta
24.11.25 05:05 PM - Comment(s)

資本主義は、普遍的な/万人への繁栄をもたらさない ー 資本主義を壊して別の道をつくることは十分可能 ②

富裕層やいわゆるエリートたちについて、よく聞かれる(偽りの)神話はたくさんありますが、よくあるものについて、Grace Blakeley(グレース・ブレークリー)さんは、分かりやすく説明しています。
もとになる記事は、ここから。
グレースさんの記事と、それを元にした考察を記載しています。

(偽りの神話 ①/5)
もし、あなたが懸命に働けば、Millionaire(ミリオネア/大富豪)になれる

(答え)
なれません。

最近のOxfamの調査によれば、大富豪の三分の一は、親や家族から資産を引き継いでいます。
(例/アメリカのトランプ大統領ーあまりにもビジネスができず失敗を何度も引き起こし、トランプ大統領が何もしなければ、彼の資産は今よりもずっと多かったとみられているートランプ大統領の事業の失敗は、親が面倒をみた)

残りの三分の一は、政府とつながっている人々だと見られています。
たとえば、国営石油事業のトップや重役たちは、その国の政府の家族や親せき間で仕事が引き継がれています。

最後の三分の一は、圧倒的多数の労働者を不当に搾取してミリオネアになり、それを保っているひとびとです。
たとえば、アマゾンのジェフ・ベィソスさんの事業の一つ、アマゾンの配送センターでは、心臓発作を起こした同僚がいても、誰も助けず、倒れたひとの身体をまたいで自分の仕事を続けるそうです。
なぜなら、仕事がすべて機械的にモニターされていて、少しでも休むと、解雇される可能性が高いからです。
その国の最低賃金で働かされているケースが多く、かつ労働条件も悪く、労働組合をつくろうとすると徹底的につぶされる・解雇されることも、独立系メディアによって、きちんと調査され、報道されています。
アメリカのアマゾン配送センターでは、労働環境の悪さで、救急車が出入りすることも多いそうです。
このような、ひどい搾取の仕組を続けるには、労働者の力を圧倒的に小さく保ち、かつ、多くの労働力を確保することが必要なので、こういった形態の大富豪が多く存在することは不可能です。

上記をみると、三分の二は、どの家族に、たまたま生まれ落ちたかに左右され、残りの三分の一は、どれだけ多くの人々を残酷に搾取できるかにかかっているので、がんばれば富豪になれる、というのは、完全に偽りの神話です。

多くのひとびとは、この偽りの神話を信じ込まされています。
なぜなら、これらの富裕層(地球上の約数パーセントのひとびと)にとって、地球上の大多数のひとびとを搾取し続けるために都合がいいからです。
これは、自然なことではなく、人為的に、メディアやシンクタンク、カルチャー(文学、映画、ドラマなど)などによって、無意識的に刷り込まれていることです。

この偽りの神話を信じているひとたちは、「(貧困は)自分たちのせい」と信じ、この構造上の不正な仕組に目をむけることをしません
これは、大富豪やいわゆるエリートたちが、自分たちの家族や親戚に富と権力を蓄積し続けるためにつくり、保持している不正な仕組に対して、抵抗したり、チャレンジするひとがほとんどいなくなることにつながり、ひとびとを搾取し続けることが容易になります。

また、これは構造上の問題なので、大富豪やいわゆるエリートが経済力と政治力・権力を圧倒的に多く蓄積している現実では、地球上の残りの搾取されているひとびとは、人数は圧倒的に大多数でも、みんなで団結して力を合わせないと、これらの大富豪たちの力にかないません
でも、この偽りの神話を信じていると、「周りはみんな敵。自分が生き残るためには、周りの人々を肘でおしのけ、突き落として、自分が上にあがり、勝つ必要がある。たよりになるのは自分だけ」という考えに陥り、本来なら助け合うべき同じ搾取される立場にいるひとびとが、自分たちの間で争いあい、搾取する側には、より搾取しやすくなります。

これは、帝国主義の派生である、植民地主義でも行われたことですが、植民地宗主国は、圧倒的大多数の原住民のひとびとや豊かな資源の搾取を続けるため、「Divide and Rule(ディヴァイド アンド ルール/分離させて、支配)」という方法をとりました。
さまざまな民族や宗教・文化・言語のバックグランドの違うひとびとが協調して住んでいたところに、ある種族を優遇し、残りも細かく分けて、優遇したり冷遇することで、原住民のひとびとのなかで、争わせ、自分たち植民地宗主国に不満が向かないよう操作しました。
これは、歴史的にもよく知られていることで、これを克服したのは、多くのひとびとが、この植民地宗主国の操作に気づき、植民地宗主国が人為的につくった壁をこえて、協働して、植民地宗主国の支配・搾取と闘ったからです。

私たちは、歴史から学ぶことができます。

私たちが、協働していれば、企業がまともな賃金を払わないのであれば、団結して給料交渉や、労働条件の向上について、強く交渉することも可能です。
資本家が、これらの価値をつくりだしているのではなく、労働者が価値をつくりだし、その価値にみあった賃金が支払われるべき、ということは覚えておく必要があります。

また、ブレークリーさんの、ほかの記事では、ここより進んで、経営者をもたず、働いている人々みんなが、何を生産するか、どのぐらい生産するか、どのぐらい働くかを民主的に決める、民主的な経営・働き方も提案されていました。
実際、これは、南アメリカやスペインの一部などで実現しています。
これは、社会主義的だとも見られることもありますが、そういったラベルに関わらず、こういった民主主義的な経営が増えれば、大富豪やいわゆるエリートたちにとっては、搾取できる労働力が減ることになり、ほかの労働者たちもエンパワーされるので、大富豪やいわゆるエリートたちの資本家階級は、「社会主義」というラベルを貼り、こういった動きを徹底的にたたきつぶそうと試みます。
だから、「社会主義」がどういった文脈・目的で使われているのかを観察することは大切です。
民主主義的な経済は、資本主義での資本家階級にとっては、自分たちがつくって保持している不正な仕組を壊すことになるので、大きな敵です。

資本主義では、資本は資本家階級(いわゆるエリートや大富豪)がコントロールしていて、民主主義的な経済をもつことは不可能です。

また、資本主義では、利益を蓄積し続けることが目的で、その目的のために、資源・労働力を最大限に搾取し、その段階で自然や地球が破壊されようと、公害がおころうと、それは全く考慮にはいりません。

たとえば、国民総生産は、経済をはかる一つの物差しに過ぎないのですが、これは、どの政府も多用しています。
現在の資本主義経済では、もし、石油企業が、南アメリカやアフリカ大陸などで石油流出を起こし地域を汚染すれば、その地域のひとびとの命や健康、経済は大きな損害を受けますが、石油流出を処理する仕事(西側企業)をつくりだされ、その作業をするためのひとびとのための住居や食べ物などが必要となり、国民総生産(西側諸国)はあがることになります。
国民総生産では、人為的な環境破壊による、多くは第三諸国でのひとびとの命や健康が損なわれたり、文化が失われる(環境破壊でその地域によっては大事な神聖な場所などが壊されるなど)ことについては、全く計算に入りません。
戦争も、大きな利益を出します。
多くの爆弾を使って(第三諸国で豊かな資源をもっている国の)市民が密集している地域を壊せば、軍事企業を含む西側軍事複合産業がもうかり、壊した家々をブルドーザーで取り除く西側企業がもうかり、そこに新たに建設する西側企業がもうかります。
その地域から現地のひとびとを追い出して、リゾート地にした西側企業が、大きくもうけを出すことも可能です。
豊かな資源を西側がコントロールし、それらの利益は、本来の持ち主である現地の国のひとびとには全く還元されず、西側政府・企業へとわたります。
地域を不安定にするので、安全を保つためという名目で、多くの西側民間軍隊などを雇うことにもなり、これらの新たにできた仕事を請け負うのは、すべて西側諸国政府・西側企業(爆弾を落として、普通の市民たちを殺した側)です。
当然、普通のひとたちが暮らせなくなり、命からがら、西側諸国へと亡命しようとすると、違法難民として、海や川に沈められたり、寒い山で凍死させられたりします。
難民をブロックする残酷な対策には、生体認証・ドローン・武器など、軍事複合産業が大活躍し、ここでも、西側企業が大きな儲けをだすこととなります。

こんな非人間的なシステムが、続いて言いわけがありません。

Yoko Marta