良心を監禁して刑務所にいれる社会 - イギリスでのハンガー・ストライキ

Yoko Marta
09.01.26 06:18 PM - Comment(s)

良心を監禁して刑務所にいれる社会 - イギリスでのハンガー・ストライキ

イギリスでは、現在、The UK(イギリス・北アイルランド・スコットランド・ウェールズの連合4か国)の歴史上で、最大に近いハンガー・ストライキが行われています。
このうちの女性2人は、54日以上のハンガー・ストライキを行っていて、身体的に、いつ死んでもおかしくない状態です。

このうちの一人、アムさんはハンガーストライキを始めてから54日以上たち、10キロ以上の体重を失い、死ぬ覚悟もできているとしています。
タイトルの「良心を監禁して刑務所にいれる社会」は、アムさんのことばです。

ハンガーストライキを行っているのは、アムさんを含む20代から30代前半の若いひとびとの計8人です。
(※2025年12月30日現在では、このうち2人は健康があまりにも悪化したため、ハンガー・ストライキを止めざるを得なかったようですが、残りの6人はまだ続けています。
2026年1月8日のUpateː アムさんは死の危険が迫ったため、いったん中断となり、現在ハンガー・ストライキを続けているのは、4人で、そのうち、いつ死んでもおかしくない60日をこえたハンガーストライキを行っているのは、Heba Muraisi(ヒーバ・ムライシ)さんと、Kamran Ahmed(カムラン・アフメッド)さんの2人です。
ヒーバさんは、既にハンガー・ストライキを67日行っていて、いつ死んでもおかしくないとみられています。
カムランさんは、心臓に問題が出始め、既に6回病院へと搬送されました。
この状況にも関わらず、イギリス政府は、彼ら・彼女らの要求を考慮したり、話をすることも拒否しています。
インスタグラムのリンクはここより。

このハンガー・ストライキを行っているひとびとは、イスラエルによるパレスチナ人虐殺に反対して、イスラエル最大の武器工場エルビットのイギリス子会社に押し入り、いくつかの機械を壊したこと、また、数人は、RAF(Royal Air Force/イギリス軍)の飛行場に侵入し、電動スクーターで、ガザのスパイ飛行に使われていると確認されている飛行機に近づき、翼部分に赤いスプレー・ペイントをかけたことで逮捕され、投獄されました。

裁判の日程は1年以上先で、現在は、裁判も、有罪判決も行われておらず、イギリスの法律では、6か月以上その状態で身柄を拘束するのは違法にも関わらず、いまだに彼ら・彼女らは投獄されたままです。

ここには、イギリス政府からの強いプレッシャーがあると見られています。

イギリス政府は、国連の「イスラエルはパレスチナ人に対して虐殺を行っている」との明確なレポートがあったにも関わらず、それを否定し続け、「イスラエルには自衛権がある(パレスチナ人に自衛権があると発言したことはなく、それを問われると完全無視)」をオウムのように繰り返し、武器のパーツの供給、軍事インテリジェンスの提供(スパイ飛行機をガザ上空に飛ばし続け、リアルタイムで情報提供)、軍事協力、政治・外交上でのカヴァーを行い続けています。
国際司法裁判所が機能すれば、現在のイギリス政府の首相・閣僚たちは、戦争犯罪者として有罪になるのは確実だとみられています。
だからこそ、イスラエルのパレスチナ人虐殺へ反対する国民たちを弾圧し、黙らせて、この虐殺をなかったことにするのは、政府にとっては重要なことです。
国際法・国内法・ヒューマニティーなどはどうでもいいことで、自分たちの権力を保つことだけが最大の目的であることは、とても明確です。

イギリスを含むThe UKでは、圧倒的に大多数の国民がイスラエルへの武器の禁輸・イスラエルへの経済制裁などを求めています。
多くのデモンストレーションが毎週行われ、政府への批判は大きく高まっています。

政府は、国民の声を代弁することが主要な仕事なのにも関わらず、これらのヒューマニティー・正義などを求める普通の大多数の国民たちを、ひどいやり方で弾圧しています。
警察は、プラカードをもって静かに立っているだけのデモンストレーターの80代、90代の老人や、車いすのひと、盲目の人たちを引きずって逮捕したり、若い女性一人に数人の警官がよってたかって押さえつけて逮捕したりしています。
これは、The UKだけでなく、ドイツやフランスといったほかのヨーロッパの国々でも同様です。

ヨーロッパの大多数の市民は、イスラエルによるパレスチナ人虐殺に反対していますが、ヨーロッパのほとんどの政府は、イスラエルの虐殺をほう助することをやめる意図は全くなく、政府に反対する国民たちを弾圧しています。
なぜなら、西側大企業は「虐殺」や「戦争」で大きな利益を出しているので、それを止める理由はなく、後述しますが、アメリカや西ヨーロッパの権力が小さくなり続ける中、イスラエルが行っているパレスチナ人虐殺は、アメリカと西ヨーロッパの覇権を世界中に取り戻すことにつながっているからです。

この政府の国民に対する弾圧では、「政府(エリート: 政治家・西側国際企業の経営陣や株主ー多額の政治家への献金やギフトなどで政治家を操っている・大富豪・主流メディアの編集部のジャーナリスト)」対「国民(エリートを除く、大多数の普通のひとびとで、実際にひとびとが生きていくのに必要なものを作ったり、サーヴィスを行っているひとびと)」という図式になっていることを認識しておくことは大切です。

政府(=権力者)にとって、国民は「敵」であり、自分たちは、「国民に選ばれて国民を代弁し、国民の声にこたえ、国民の福祉・健康をはかるために、国民に仕えるために存在する」という本来の意味合いは完全に消去されています。

ハンガーストライキを行っている彼ら・彼女らは、「パレスタイン・アクション(パレスチナは、イギリス英語では、パレスタインと発音)」という団体に所属していて、上記の行動を行ったとされています。
この団体は、イギリス政府により、今年(2025年)夏に、テロリスト指定され、活動禁止となりました。
テロリスト指定されたということは、国際テロ組織のアルカイダや過激派組織のISIS(アイシス)などと同様に扱われることとなり、この団体に賛同しているという表明をするだけで、文字通りにいけば、10年以上の禁固刑となります。

この団体のテロリスト指定については、多くの法律家が疑問を示していて、現在、イギリス政府のテロリスト指定の合法性について、裁判で争われています。

なぜなら、国際テロ組織のアルカイダや過激派組織のISIS(アイシス)は、世界のあちこちで無実の市民たちの命を奪っていますが、この団体は、虐殺を2年以上にわたって行っている国の主要武器メーカーの工場の機器の一部を破壊し、虐殺を行うことを助けている偵察のための飛行機の翼にスプレーをかけただけで、不特定のひとびとや、社会に対して命の危険に関わるような脅威を引き起こしたわけではありません。

また、上記の国際テロ組織は、アメリカやイギリスのバックアップを大きく受けてつくりだされ、このテロ組織が殺しているのは、圧倒的に中東地域の無実のイスラム教徒の市民たちであることは、覚えておく必要があります。
アメリカやイギリスがこれらの国際テロ組織をつくりだし、大きくすることを助けたのは、自分たち(西側諸国政府・西側大企業)の利益・権力を保ち続けるためです。
中東地域は、豊富な資源があることで知られていますが、植民地時代は、アメリカやイギリス・フランスなどの元植民地宗主国が奪い放題でした。
でも、旧植民地国が独立しはじめると、多くの旧植民地国は、自国の資源を自国の経済や自国民の人間的な発展につかうために、自国の資源を国有化し、自国のためのインフラストラクチャーや国内消費のための食料栽培へと経済を転換します。
これは、アメリカやイギリスといった西側諸国の資本主義経済を成り立たなくするため、西側諸国は、中東や南アメリカ、アフリカ地域で、国民に民主的に選ばれ、とても人気のあったリーダーや政治家たちを暗殺したり、クーデターを起こしたりするだけでなく、その土壌をつくるために、経済・社会を不安定にさせる目的で、主要政党やリーダーへの反対派やテロリスト組織に武器や資金、軍事トレーニング、軍事インテリジェンスなどを与えました。
アメリカ同時多発テロや、イギリスやフランスなどでのテロ行為で、上記の組織から攻撃を受けるのは、ブローバック(反動ー軍事作戦や機密政策が、実行者や関係者自身に引き起こす不利な状況)と呼ばれますが、西側世界で起こるブローバックで殺される人々の数は、中東やアフリカ地域などでこれらの組織によって殺される無実の市民の数に比べれば、圧倒的に小さいものです。
また、アメリカやイギリスは、始終、アフリカや中東、南アメリカの国々を違法侵略・違法占拠したり、新聞では大きく報じられなくても、様々な国々を爆撃して、多くの無実の市民たちを殺していることには、目を開いてみておく必要があります。
でも、これらの(多くは国際法違法の)決断を行う、西側政府のリーダーたちが、国際司法裁判所などで、裁きを受けることはありません。
なぜなら、権力の差がとても大きく、貧しくさせられている元植民地の国々が、西側諸国(元植民地宗主国)を訴えることは、とても難しいからです。

今回、国際司法裁判所に、南アフリカ共和国が、イスラエルの虐殺について訴えたこと、国際刑事裁判所からイスラエル政府のネタニヤフ首相とガラント元国防相に逮捕状が出たことは、大きな衝撃を西側諸国に与えました。
歴史上、西側諸国の政治家に逮捕状が出たのは、初めてのことだからです。
アメリカ政府は、国際法に従うどころか、これらの判決を下した裁判官たちに制裁をかけました。
イギリス政府も、ネタニヤフ首相に逮捕状を出すことについて、ブリティッシュ裁判官のカリム・カーンさんに対して、当時の元首相キャメロンさんが逮捕状を出さないよう脅しをかけたことが明らかにされ、これも国際司法裁判所や国内の司法機関が機能していれば、キャメロンさんは有罪で牢獄いきとなります。
でも、キャメロンさんは上流階級出身で強いコネクションもあり、妻はイギリス皇室との親戚関係にもあることで、正当な裁きを受けることはないとみられています。
ただ、絶対に捕まらないだろうと思われていた、チリの独裁者ピノシェさんが人生の終わりごろに逮捕されたように、いつか裁きが行われることも不可能ではありません。

国際司法裁判所で、案件によって裁判官を務めることもある国際法専門家のJohn Dugard(ジョン・ドゥガード)さんは、以下のような発言をしています。

「テロリズムはとても感情的なことばで、政府や抵抗・解放運動(植民地支配やアパルトヘイトへの抵抗)のどちらの行いのアセスメントには、使えるものではありません。
あるひとのフリーダム・ファイター(人民抵抗・解放運動を行うひとびとー武力を伴うことも国際法で認められている)は、ほかのひとにとってはテロリストです。
第二次世界大戦中のフランス抵抗軍のメンバーをテロリストとラベルを貼る人はほぼいないでしょうし、ナチスのことは、ほとんどの人がテロリストだというでしょう。(=第二次世界大戦中は、フランス抵抗軍のメンバーは「テロリスト」とされ、ナチスは正規の軍隊だったことを指している)」

イギリスのテロリスト・アクト(テロリスト法)は、アメリカの「ウォー・オン・テラー(2001年のアメリカ同時多発テロを契機として、中東の多くの国々に、アメリカとイギリスが中心となって違法侵略・違法占拠を行い、多くの無実のひとびとを殺し、社会・経済を崩壊させ、石油やガス・鉱物などの資源をアメリカやイギリスなどの多国籍大企業が奪い取り、大儲けをした)」の時代につくられましたが、最初から、意図的にあいまいな法律で、拡大解釈が簡単にできるものであり、当初も法律専門家やさまざまな団体から多くの反対がありました。
これは、イラクが大量破壊兵器を持っているということが嘘だと知りながら、国民の大反対を押し切って、違法侵略・違法占拠を行った元イギリス首相のブレアさんが在任していた時に通過させた法律で、国民をテロから守る、という名目で、実際には、政府に反対する意見をもつひとびとの個人の思想や発言の自由を侵害し、深く偵察を行うことを可能にしました。
このイラク侵略の際、イギリス史上最大の、イラク侵略反対のデモンストレーションが起こり、これは、既にイラク侵略を行うことを決めていたブレア政権に大きな頭痛をもらせました。

テロリスト法は、その後も新たな法律がつけ加えられ、近年では、イスラエルの虐殺を非難し、パレスチナをサポートするジャーナリストも、このテロリスト法により、拘束・逮捕されています。

その中のひとり、ブリティッシュ・ジャーナリストのTony Greenstein(トニー・グリーンシュタイン)さんは、X(旧ツイッター)で、「イスラエル軍に対するパレスチナの人民抵抗組織をサポートします」とツイートしたことが、テロリズム法違反にあたるとして、2026年1月に裁判に出廷することとなっています。
裁判で有罪となれば、14年の禁固刑(刑務所に入る)となります。
強調するべきは、トニーさんは、憎悪を煽るようなことを書いたわけでもなければ、実際に誰かに危害や脅威を与えたわけでもありません。
単に、上記のツイートを行っただけです。
これは、名前が知られているジャーナリストをテロリズム法違反の疑いで逮捕することで、ほかのジャーナリストたちに対して、脅しのメッセージ(政府の公的な発言と違うことーパレスチナでの虐殺について真実を報道するなどーを行うと同じように逮捕して裁判にもちこむージャーナリストは裁判費用や弁護士費用に多額の資金と時間を費やすことになり、裁判で無罪が証明されるまでは、仕事にも大きな支障をきたす)を送っているとみられています。

それと対照的なのは、実際に虐殺を行ったことが確認されているブリティッシュやヨーロピアンは、全く責任を問われることも、責任を取る必要もなく、普通にイギリスやヨーロッパで生活していることです。

イギリスには、多くのユダヤ系ブリティッシュ(イギリス人、スコッチランド人、ウェールズ人、北アイルランドはアイルランド原住民の子孫であればアイルランド人でイギリス入植者の子孫であればイギリス人として認識)や、ユダヤ系イスラエル人やユダヤ系ヨーロピアンも住んでいて、パレスチナでの虐殺をイスラエル軍兵士として行ったことが確認されている人もかなりいます。
でも、彼ら・彼女らは、なんの罪にも問われず、平然と、今まで通りの生活を行っています。

「テロリスト法」といわれても、自分にはなんの関係もない、と思っている人も多いかもしれませんが、テロリスト認定を行うのは誰か、なんのためにそれを行うのか、と考えると、これは、政治や社会になんの関心もない人たちにも大きな影響を及ぼすことがわかります。

これは、政府に反対する意見をもっているひとに対して、沈黙を強いるツールです。
誰もが、罰せられることを恐れて、政府の言いなりになっていれば、政府にとって、これほど楽なことはありません。
ファシズムや権威主義は、すでに始まっています。
でも、まだ抵抗する余地はあり、私たちは抵抗しなくてはなりません。

トニーさんは、裁判前で何かの罪があると有罪になったわけでもないのに、ジャーナリストには必須のコミュニケーション手段(パソコン、携帯電話など)を押収されました。
その返還を求めた裁判では、警察は「(トニーさんの)マインドを知るための、とても重要なツールである」という理由で、返還を拒否しました。

よく考えましょう。

「マインド(自分の中で自由に考えたり感じたりすること)」は、地球上に生きる誰もの基本的な権利であり、国家にも誰にも規制されるべきものではありません。
表現することについては、フリー・スピーチ(言論の自由)が保障されているとはいえ、誰かの権利や安全とぶつかる場合には、制限が設けられます。
イギリスでは、ヘイト・スピーチ(憎悪をあおる発言)が違法となってから、長い時間がたっていて、実際に適用され、ヘイト・スピーチを行ったと裁判で認定されたひとびとは、それに応じた責任を取らされています。
(日本では、ヘイト・スピーチを禁止する法律は存在しないようです)
また、法律内の発言であっても、発言(=表現すること)が明らかに攻撃的な場合は、それなりの結果が伴います。
でも、自分の中で思っているだけであれば、それが偵察や罪の対象になっていいわけがありません。

トニーさんは、イギリス人ジャーナリスト・作家のジョージ・オーウェルさんのディストピアな未来の世界を描いた著作「1984」に出てくる、思想警察のようだとしていますが、まさにその通りです。

ハンガー・ストライキを行っている人々の扱いについても、イギリス政府が見せしめとして使っていることは明らかです。

イギリスでは、裁判で有罪となる前に、警察が個人を拘束できる期間は6か月ですが、既にそれを超えていて、かつ、警察は裁判の日までの1年以上、刑務所に入れておく予定です。
これは、既に違法であり、このハンガーストライキを行っている理由の一つです。

また、囚人の体調が悪くなった時に医師の診察を許可したり、救急車を呼ぶことは刑務所に義務付けられていますが、ハンガー・ストライキを行っているひとの体調が危険な状態になっても、救急車をよぶことを刑務所側が拒否し続けました。
刑務所の前で多くの市民と、女性独立議員のザラ・スルタナさんが、「救急車がくるまでは、絶対にここを離れない。」と強い抗議を行ったことで、12時間以上たって、やっと救急車が呼ばれました。
イギリス議会では、同じく独立議員のジェレミー・コービンさん(元労働党の党首で、現在の労働党のリーダー=キーア・スターマー首相との大きな意見の違いで追い出された)が、「このままハンガー・ストライキが続けば、確実に命が失われる」という発言を行ったときには、多くの議員が、鼻で笑うような、あざけりの声を大きくあげました。
これも、ブリティッシュ市民の命がかかっているときに、信じられない光景です。

日本は、植民地宗主国の経験のみで、自国が植民地として支配された経験・歴史がないので、分かりにくいかもしれませんが、地球上の約8割近くは植民地支配が行われたため、残虐な支配や侵略に対して抵抗する原住民のひとびとは、テロリストというラベルを貼られ、政治犯として殺されたり、刑務所に長年入れられ拷問にかけられる経験はよく知っています。
ハンガー・ストライキは、政治犯がよく使った抵抗の手段で、そんなに遠くない昔の1981年には、北アイルランドで、アイルランド統一を求める暫定アイルランド共和軍のメンバーが牢獄でハンガー・ストライキを起こし、イギリス政府は、12人を見殺しにしました。
イギリスは、アイルランドを長年、植民地支配し、残虐に原住民のアイルランド人たちを扱いましたが、アイルランドは、長い武力闘争をへて、イギリスを追い出します。
でも、イギリス人の植民を大きく行っていたアイルランド島の北部は、イギリスの一部のままとどまることとなりました。
この北アイルランドでは、植民者(=侵略者)であるイギリス人たちが、職業・住む場所・教育・言語などについて、すべて大きく優遇され、原住民のアイルランド人たちが差別され、とても悪く扱われていたことで、平等な権利を求めて、原住民のアイルランド人たちが平和なマーチを行うようになります。
イギリスは、そこに大きくイギリス軍を送り込み、平和なマーチを行っていた市民を数人殺し、負傷者もでたことで、原住民たちの怒りは強まり、原住民のアイルランド人の武力組織と、イギリス人入植者の子孫の武力組織の間で、30年にわたる市民戦争が起こりました。
暫定アイルランド共和軍のメンバーが、ハンガー・ストライキで求めていたことの一つは、この組織をテロリスト認定から外すことでした。
現在も存在する北アイルランド議会のシン・フェイン党は、この武装組織の政治部門であり、シン・フェインという名前も、英語ではなく、アイルランド語であり、現在もアイルランド統一を政党の目標の一つにいれています。
彼らは、自分たちをテロリストではなく、政治囚と認識していました。
彼らにしてみれば、長い間イギリスの支配下で残虐に扱われ、原住民がイギリス人に殺されても、イギリス人が責任を問われることはほぼなかったことからも、その不当な支配に対する抵抗を行う人民抵抗軍で、支配者側のイギリス政府にしてみれば、自分たち政府と自分たちの市民(=北アイルランドに侵略・植民したイギリス人たちの子孫)に抗うとんでもない反逆者でテロリスト(=抑えつけるためには、どんな手を使ってもいい)という図式がありましたが、世界・社会にナラティヴとして大きく浸透していたのは、後者(力の強いイギリス政府のナラティヴ)でした。

でも、このハンガー・ストライキで12人がイギリス政府に見殺しにされたことで、関心・批判が高まり、本国のイギリス人たちの間でも、イギリス政府に対する反発が強くなりました。
イギリス国内で、家を貸す広告の看板に「アイルランド人、黒人、犬はお断り」と堂々と書かれていたのは、そんなに昔のことではありません。
アイルランド人は、見かけは白人で、イギリス人と違うわけではありませんが、植民地国の原住民として、宗主国であるイギリスによって、非人間化され、イギリス人より全てにおいて劣るとされ、人間以下のような扱いを長く受けました。
帝国主義(植民地化は、帝国主義から派生したもの+資本主義は帝国主義を必要とする)は、人間の序列化を人為的に構築し、ある一定のグループの至上主義を形成します。
白人至上主義だけでなく、イギリス人至上主義やイスラエル人至上主義、日本人至上主義も、帝国主義を支えていたものの一つです。

現在、ハンガー・ストライキを行っているひとびとが、ハンガー・ストライキを通して要求していることは、以下の5つです。

① 即刻に保釈すること (裁判なしで6か月以上の拘束はそもそも違法)
② 公平な裁判への権利
③ 刑務所による、手紙やメールといったコミュニケーションの検閲・弾圧をやめること
④ 団体をテロリスト・リストから外すこと
⑤ エルビット・システムズを閉鎖させること (イギリス政府は、本来、虐殺を行っている可能性があるとされている国に武器を供給することは違法ーだから、イギリス政府は、国連のレポートの結果にも関わらず、いまだにイスラエルは自己防衛を行っているだけで、虐殺を行っていない、と主張)

イギリス政府は、どの要求にもこたえるつもりはありません。

「②公平な裁判への権利」については、ここ数か月で、陪審員制度をやめる計画(陪審員は、普通の市民たちで、こういった人道活動家たちに対して深い理解を示すことが圧倒的に多く、無罪となる可能性が高くなるため、有罪にしたい政府にとっては都合が悪い)がでてきたり、前述したブリティッシュ・ジャーナリストのトニーさんの裁判を担当する裁判官は、イスラエルを熱狂的にサポートする団体のメンバーであることなどで、裁判の公平性を失ってでも、イスラエル・アメリカをサポートするイギリス政府の意向が反映されるような結果をもたらす土壌づくりを行っていることが明らかなことが、普通の市民たちにも危機感をもたらしています。
司法機関が、政府の言いなりとなり、公平さをもたらす機関として機能しなくなれば、一番被害を受けるのは、弱い立場にいる普通の市民たちです。
また、一度、その方向に動き出せば、流れを変えることは、とても難しくなります。

なぜ、抵抗し続けることが大切かといえば、政府は、少しずつ国内法や国際法に違反した行動をし、市民たちが耐えきれず、秩序だった反対意見を示すラインが動くこと(=秩序だった反対意見(政府の許可を取っているデモンストレーションなど)だと政府は無視しやすいけど、それが市民不服従のようにダイレクト・アクションとなると政府も無視できなくなる)を観察して、政府の行動を変化させています。
例えば、上記のアムさんの例では、あまりにも市民からのプレッシャーが強くなったため、仕方なく、救急車をよぶことを許可しました。
政府は、多くの市民たちが、恐怖で自己検閲をして、政府が何をしようと黙っていること、従うことを狙っています。

現在、ハンガーストライキを行っているひとびとの行ったダイレクト・アクション(武器工場の機器の一部の破壊、虐殺を直接助けているスパイ飛行を行っている飛行機への赤いスプレー)は、実際に、結果を出しています。

先日、エルビット・システムズが経営を続けるために欠かせない保険を扱っている、世界でも大手の保険企業2社が、エルビット・システムズの保険を行わないことを宣言しました。

だからこそ、政府はこれらのダイレクト・アクションを弾圧して、封じ込めることに躍起になっています。
そこには、自分たち政府や権力者の意向に逆らう人たちの命が失われてもいい、ということも含まれています。

ハンガー・ストライキもイギリスの主流メディアでは、ほぼ報道されず、死にかけていることが明らかになり、多くの市民からの批判が大きくなってはじめて、数社が報道しはじめました。
イギリスの国営放送BBCも、長い間、報道しませんでした。
これは、政府の意向に従っているからだとみられています。
もし、政府の意向に従った報道だけしているとすれば、それはジャーナリズムでも公共報道機関でもなく、政府のプロパガンダ機関ということになります。

また、イギリス最大のミュージック・フェスティヴァルで、「イスラエル軍に死を!」と歌った、2人組のパンク・グループのBob Vylan(ボブ・ヴィラン)は、この発言がヘイト・スピーチだとして警察の調査が続いていましたが、先日、有罪とするには証拠が少なすぎる、として、警察は調査を完全に止めることをアナウンスしました。
ボブ・ヴィランは、この発言を撤回することを何度も求められたものの、完全に拒否し、虐殺を行っている軍隊に対しての発言として適切であり、真実だとして、この発言を取り消さないことを徹底しました。
その間、アメリカで予定されていたツアーがあったものの、アメリカへのヴィザがキャンセルされたことでアメリカ・ツアーはなくなり、ヨーロッパでのツアーもキャンセルされたものもかなりあったものの、実際に予定通り行われたコンサートもあり、ここでは、その会場や主催者が政府からの脅しに屈する団体や人たちかどうかをあぶりだしました。
実際、このボブ・ヴィランへの警察の調査(政府からの指示による)は、根拠もなく、時間と国民の税金の無駄で、アーティストや一般のひとびとに恐怖を植え付ける目的だったことは明らかですが、ボブ・ヴィランはその脅しに負けず、信念を貫いて抵抗を続け、結果的に正義を勝ち取りました。

同時に、多くのアーティストや文化人は、イスラエルのパレスチナ人虐殺について完全に無言を貫いていますが、(例/ハリー・ポッター作者など)これも、私たちは覚えておく必要があります。
沈黙を貫いているということは、虐殺に加担しているということになります。

エルビット・システムズの保険を扱っているもう一社の企業の前(ロンドン)では、デモンストレーションが行われ、スウェーデンの活動家、グレタ・トゥーンベリさんが逮捕されました。
グレタさんが逮捕された理由は、「パレスタイン・アクションの囚人をサポートします。私は虐殺に反対です」というプラカードを持っていたことです。
同じようなメッセージを書いたプラカードをもって静かに立っているだけで逮捕されたひとびとの数は、この団体がテロリスト指定されてからの3か月間だけで、1600人以上にのぼっています。
これらのデモンストレーターたちは、普通の市民たちです。
虐殺に反対する、というごく普通のヒューマニティーに基づいたメッセージに対して懲罰を与える政府に反対して、逮捕されることが分かっていながら、大勢でこのプラカードをもって静かに立ち、逮捕者が多くなればなるほど、警察・司法機関もこれらを扱うことが難しくなり、政府の馬鹿げた行動をあぶりだす効果をだしています。
政治家を含むエリートたちは、国内でも、地球上でも圧倒的に少数派で、大多数の普通のひとびとが立ち上がって団結すれば、勝ち目はありません。

パレスチナ人作家のモハメッド・エルクルドさんが著作の中で、おばあさんが苦々しく言っていた昔話の中の話は、以下でした。

エジプトの(暴政で知られる)王がなぜ王になれたのかと聞かれた時の答えは、「誰も(自分が王となるのを)止めなかったから

私たち一人一人の力は限られているようにみえても、影響力はあります。
権力者に力を与えているのは、私たち普通のひとたちの無関心さや、権力におもねる態度(命令される前に、既に権力が望んでいるだろうと予測されることを実行する、命令の妥当性や正当性などを全く考えず、たとえほかの人々に害を与えるようなことでも、命令をそのまま実行するなど)です。

長くなるので、次回に詳細を書くことにしますが、イスラエルのパレスチナ人虐殺をヨーロッパやアメリカがサポートし続けているのは、いわゆる西側諸国が覇権を失う中、中国や南アメリカ、アフリカなどのいわゆるグローバル・サウスが、力を合わせてお互いの主権を尊重しながら、協力して対等な立場でみんなの国の発展をはかっていこうとする流れをたちきり、再び西側諸国に世界の覇権を取り戻そうとする(=グローバル・サウスを不安定にさせ、協力しあうことをやめさせ、西側諸国の支配下に置き、資源や労働力の搾取を続ける)ものです。
中国は、「一路一帯」で、世界をつなぐ貿易や陸路(線路や高速道路)を建設することを助けていますが、これは、イランなどの西側諸国の言いなりにならない国々が経路に含まれ、かつ、イランは石油や鉱物の資源を多くもつ国でもあるので、これらがつながると、西側諸国の覇権はほぼなくなるのは確実です。
(※現在は、イランやベネズエラなどの自国資源を国有化した国々に対して、深刻な経済制裁を数十年にわたって続け、これらの国々が自国資源を輸出しにくい、あるいはほぼ不可能な状況をつくりだしている。経済制裁は、戦争で爆弾を落とされるよりも死者を出すことで知られていて、経済的な戦争とよばれている)
そのため、西側諸国は、イスラエルを中継地点として、ヨーロッパとアジアを結ぶ別の経路をうちたてようとしています。
イスラエルは、パレスチナ人の資源であるガス(ガザ沖に存在する)を奪い、これを安い価格でヨーロッパに売ることで、ロシアからの安いガスや石油に長年たよっていたヨーロッパ経済を大きく助けることになります。
西側諸国に不都合な結果をもたらすことなしに、パレスチナ人に所属するガスを奪うには、パレスチナ人の存在が消去されることはとても都合のいいことです。
ヨーロッパは、特にエリート階級では、今も白人至上主義、西ヨーロッパ文化至上主義、西ヨーロッパのキリスト教至上主義が続いていて、非白人に何が起ころうと、なんとも思いません。
アメリカにとっても、中東地域が不安定であることは、中東地域を貧しく開発できなくさせ、資源を盗み取ること、格安の労働力を得ることをたやすくするので、大歓迎です。
中東地域の不安定さは、イスラエルの存在が大きな原因なので、イスラエルをサポートすることは、アメリカの関心とも一致します。
イスラエルは、最近ソマリランドを国家として認定し、イエメンを攻撃するためだと思われる基地を整えたようですが、この協定の中には、ガザやウエストバンクのパレスチナ人のほとんどを、ソマリランドに送るこむことも含まれているとみられています(エスニック・クレンジングで違法)
イスラエルは、停戦合意後も、毎日多くの停戦条約を破り、400人以上を殺し、多くの爆撃を行い、簡易な家や冬用のテントなどをガザに入れることを拒否し、毎日、子供や赤ちゃんたちが凍死したり、栄養不足で死んでいます。
多くの女性が死産や流産をしていることも分かっています。
西側主流メディアは、まるで自然災害でひとびとが死んだように報道しますが、これは、イスラエルが意図的にパレスチナ人を虐殺していることを、ホワイト・ウォッシュしています。

事実を知ること、知ろうと努力することは、とても大切です。

Yoko Marta