世界で起こっていることはつながっている ー 真実を伝える漫画の力
Khalid Albaih (カリッド・アルベィー)さんは、スーダン人の両親をもち、ルーマニア(東ヨーロッパ)で生まれ、カタール(西アジア)で育ち・教育を受け、西ヨーロッパでもかなりの年数を過ごした、Political cartoonist (ポリティカル・カートゥーニスト/政治風刺の漫画家、ジャーナリスト、人権活動家です。
カリッドさんの漫画や描写を載せているフェイスブック・ページの名前「Khartoon!(カートゥーン!)」は、スーダンの首都「Khartoum(カートゥーム)」と英語の単語で漫画を指す「Cartoon(カートゥーン)」をかけている、遊び心の感じられるものです。
カリッドさんの名前を知らなくても、「Black lives matter」で、アメリカンフットボール選手が片膝をついていて、その選手のアフロヘアがこぶしをあげているように描かれている絵を目にしたひとは多いと思います。
ほかの多くの作品も、遊び心がありながら、政治の矛盾を鋭くついていたりして、印象が強く残ります。
イギリス拠点の、西アジアを中心に報道する独立系メディア、Middle East Eye(ミドル・イースト・アイ)のインタヴューで、カリッドさんが、インタヴュワーのMohamed Hashem (モハメッド・ハシーム)さんと話しているときにはじめて知ったのですが、スーダンは、エジプトよりももっと多くのピラミッドがあるそうです。
モハメッドさんは、カナダ生まれ・育ちで、イギリス大学でジャーナリストの教育を受けたイギリスを拠点とするジャーナリストですが、恐らくエジプト人の家族が家系のどこかにいて、スーダンのひとがエジプトの人に会うとよく言うことだと、二人の間で笑っていました。
スーダンのピラミッドは、エジプトのピラミッドと比べると、スーダン人のように、スリムで背が高いピラミッドだそうです。
インタヴューはここから。
スーダンは、大英帝国(現イギリスーThe UKはイギリス・ウェールズ・スコットランド・北アイルランドの連合4か国)の植民地だった時代もあり、公式言語は、アラビア語と英語で、カリッドさんも、英語を母国語レベルで話します。
資本主義と帝国主義の両輪で、西ヨーロッパの国々(西ヨーロッパの白人キリスト教徒が侵略し、現地の原住民を虐殺・エスニッククレンジングして原住民として置き換わったアメリカも含む)と日本が、急速に地球上の多くの地域をキャプチャーしたのは、ここ数百年程度ですが、帝国に属する人口は地球上の約2割弱にも関わらず、残りの8割を支配しました。
そのため、地球上の多くの地域では、植民地支配下の数百年の間、植民地支配者の言語を話すことを強制され、現在でも、アフリカ大陸・西アジア(中東という呼び名は西ヨーロッパの帝国主義により西ヨーロッパを世界の中心とした視点からの名前で、世界全体をみたときの西アジアという名前でよぶことが定着しつつあります)・アジア・中央/南アメリカでは、公用語の多くが西ヨーロッパ言語を含んでいます。
日本やイギリスのように、土着の言語だけを話すことだけで暮らせるのは、数少ない帝国主義の国だからだということは、覚えておく必要があります。
以前、アフガニスタン出身のスタンダップ・コメディアンが、アフガニスタンに住んでいた時にタリバンや民兵が、関所を一方的に設けて、民間人から携帯電話を取り上げることは珍しくなかった話をしていて、アフガニスタンで、携帯電話を取り上げられたことがない、というひとがいたら、そのひとは、タリバンの一員か、アフガニスタンに住んだことがないひとだ、という冗談(でも本当の話)を言っていましたが、自分たちが加害者側(加害を直接に行っている本人でないとしても、加害者グループに属している)でなければ、見えないことにできる・なかったことにできる(自分が経験することはないから)ことは、たくさんあることを物語っているともいえます。
ちなみに、このコメディアンは、ある日、さまざまなことが起こっていていらいらとした不満が爆発し、携帯電話を取り上げたタリバンの一人に対して、文句(携帯電話だけでなく、国全体の状況に対する一般市民がもっている不満も含めてー西側からの経済制裁や度重なる西側とほかの国からの侵略で国はぼろぼろ)を言うと、「そうだよね。君がいうこともすごく分かるよ」と、携帯電話を返してくれ、無事に関所を通してくれたそうです。
西側のメディアだけを聞いていると、西ヨーロッパの視点(西ヨーロッパの白人・キリスト教徒が侵略して原住民を虐殺して、マジョリティーとして置き換わった国々であるアメリカ・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドも含む)が唯一の正しいもの、が大前提なので、西ヨーロッパ以外の文化やひとびとを野蛮で非人間化することがノーマライズ(通常の当たり前のこととされるー疑問すら引き起こさない)されていますが、当然ですが、地球のすべての地域のひとびとの命も文化も、同等に貴重で尊敬されるべきものです。
カリッドさんの父は、スーダン政府の元外交官だったそうですが、スーダンの豊富な資源を狙って、アメリカや西ヨーロッパの国々が頻繁に、政治介入や、間接的な軍事介入を起こすことと共に、深刻な経済制裁を行うことで、政情・経済は不安定になりがちです。
経済制裁は、経済的に強い国から、経済的・政治的に力の弱い国や地域に対して行われ、圧倒的に一般市民へ大きな影響を及ぼし、戦争で直接殺されるひとびとよりも、もっと多くのひとびとが経済制裁が原因で死んでいると分かっています。
経済人類学者のJason Hickel(ジェイソン・ヒッケル)さんは、この記事の中で、経済制裁が原因で、多い年では年間に100万人以上、2021年だけでも81万人が死んだことを記載しています。
多くの経済制裁は、集団懲罰にあたるとして、国際法違反となる場合が多いものの、国連などの国際機関で圧倒的に大きな力をもつのは、アメリカやヨーロッパ(日本も含む)などの元帝国主義国(=元植民地宗主国)で、地球上の人口では2割弱のマイノリティーにも関わらず、自分たちと自分たちの味方だとする国々の国際法違反については、無視し続けています。
日本を含めたいわゆるグローバル・ノースで、そのマジョリティー(日本では「日本人」と認識されるひとびと、アメリカ・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドでは「西ヨーロッパから侵略して原住民を大量殺害・エスニッククレンジングして、マジョリティーとして置き換わった西ヨーロッパ白人キリスト教徒の子孫」、西ヨーロッパでは「白人」と認識されるひとびとー「白人」という区別自体が社会的に構築されたもので科学的な根拠はないので、白人主要国の間でも誰が白人と認識されるかは違う)として生きている場合、経済制裁を経験することはないので、分かりにくいと思うのですが、以下に少しだけ例を挙げておきます。
経済制裁が長く続いているキューバでは、1960年代から深刻な経済制裁が続いています。
現在、この経済制裁の上に、アメリカが、ベネズエラからの石油の輸出を力づくでストップさせ、アメリカからの命令(←本来は、アメリカがほかの国の主権を無視して、他国間の貿易を禁じるほうがおかしい)を無視してキューバに石油を輸出し続けていたメキシコ政府も、経済制裁などの脅しで、キューバへの石油の輸出をストップせざるを得ないとみられています。
キューバは、経済制裁が続くせいで経済的に厳しい状況が続いているものの、教育(教育は無料で貧しい国であるにも関わらず教育レヴェルがとても高いことで知られている、優れた医師が多いことでも有名)・福祉(住む場所は無料か格安で、基本的に路上で暮らさざるをえない人はいない)・医療(無料で、多くの医療施設があり、誰もが歩いて行ける距離に医療施設がある)が充実しています。
外貨をかせぐことがアメリカによってブロックされていることを、優れた医師団を地球上のさまざまな地域に派遣することで補っていましたが、これも、最近アメリカ政府によって、ほぼブロックされました。
この状況の中で、協力を続けているのは中国です。
中国は、キューバが石油だけにたよらなくていいように、多くの太陽光施設の建設をキューバで行い、食物の輸入がほぼ不可能になりつつある現在、主食の一つである米を、キューバへ無料で送り込むことを決定しました。
でも、アメリカからのキューバへの経済封鎖がこの状態で続けば、キューバの多くのひとびとが飢餓に陥り、特に既に病気があるひとびとや、子ども・お年寄りなどは多くが死ぬ可能性が高くなるとみられています。
たとえば、石油がこのまま全く入ってこなくなり、電気やガスなどがなければ、病院の多くの機器も動かなくなり、救急車も発動できなくなります。
経済制裁・経済封鎖は、戦争で爆弾を落とされて多くのひとびとが殺されるのと同じか、それ以上の残虐な効果をもたらします。
キューバへの経済制裁をやめるべきだと、国連でも、アメリカとイスラエルを除いた地球上の全国が賛同しましたが、アメリカが反対する限り、経済制裁は止まりません。
経済制裁を行う理由について、アメリカの政治家は、明確に「その国の経済を立ち行かなくし、一般市民たちを苦しめ(基本的な食物・薬・燃料などが手に入らない、自国の貨幣価値がさがり大きなインフレーションが起きる、自国政府は制裁により病院や学校といった公共事業への投資ができなくなる、失業率が高まるなど)、社会全体が不安定になり、内部崩壊を起こし、市民戦争や、その国の政府に対して市民がクーデーターを起こす状況をつくること」としています。
これは、アメリカや西側諸国の言いなりにならない国の政府(=その国の豊かな資源をアメリカ・西側の政府や企業に自由に搾取・盗むことをさせない政府)を取り除くか、機能不全にし、アメリカの言いなりになる傀儡政権をすえつけるか、社会の混乱に乗じて、その国の少数の腐敗したエリートと共謀してその国の資源を盗むことを指しています。
実際、近年でも、イラク・リビア・シリアなどで、既に起こっていることです。
上記のどの地域でも、アメリカと西側政府・企業は、石油やガスを独占することに成功しました。
この地域の国民たちは、西側の違法侵略や違法占領によって、社会は混乱し、西側の爆撃や占領で多くの無実の市民(多くの子供を含む)が殺されただけでなく、アメリカなどの西側諸国が、病院や上下水道などの施設を狙って爆撃することにより、本来なら簡単に治療できる病気で亡くなった市民たち、これらの施設が壊されていなければかからなかった病気(水質汚染で起こる病気や、爆撃で使われた化学薬品によるがんなど)にかかって死ぬひとびとが一気に増加するなど、直接の攻撃だけでなく、二次的な被害で多くの市民が死にました。
でも、これらの戦争犯罪について、アメリカなどの西側諸国が責任を問われることはありません。
これらの地域の資源を奪うために、アメリカを初めとした西側の国々は、深刻な経済制裁を長年行い、社会や経済を弱体化させ、その上で国際法違反の侵略を行い、その地域の多くの無実の市民を無差別に大量殺人しましたが、それについての反省が聞かれることはなく、「民主主義と自由を与えた私たち(西側諸国)は、慈悲深くモラルが高く、(侵略を行った)西側兵士や西側民間企業の武人たちは英雄」です。
イラクが大量破壊殺人兵器をもっている、という見せかけの理由が嘘であることを知りながら、イギリスを侵略へと導いたブレア首相は、嘘をついたことを認めながらも、自分はイラクにもイギリスや西側世界にもとても善いことをし、イラクは侵略以前よりもずっとよい国になった、と主張し、本来なら戦争犯罪者として裁かれているはずが、イスラエルによるパレスチナ人虐殺をホワイト・ウォッシュする、ガザ「平和協議会」のメンバーとしての任命を受け入れています。
虐殺は、ある日突然起こるのではなく、これらの不正義(アメリカなどの西側政府のimpunity - インピュニティー/何をしても責任をとらなくてすむこと)が当たり前のように受け入れられてきたことの結果であると見られています。
また、ベネズエラへの国際法違法の攻撃と大統領の誘拐を行う前にも、長く深刻な経済制裁を行っています。
経済制裁では、自国以外の国々との貿易の大きな制限や禁止だけでなく、銀行取引の禁止なども含まれます。
イランでは、民主的に選ばれたモサデグ大統領が、自国の石油を国有化したことで、イギリスとアメリカ共謀のクーデターで取り除かれた後、残虐だったことで有名な王族シャーが、イギリスとアメリカによって据え付けらえました。
シャーは、多くの国民を殺し、独裁政治で警察国家としましたが、「民主化・自由・独裁者を取り除くことは私たち西側諸国の価値観を大切にする上で必須」とする西側諸国は、シャーを取り除くどころか、シャーのイラン国民への抑圧・弾圧にも深く協力し、経済制裁を課すことは全くなく、核施設の開発にも積極的でした。
なぜなら、シャーは、西側政府と西側企業が、本来はイラン国民のものであるイランの石油を盗むことを、受け入れていたからです。
シャーや、その周りのいわゆるエリートたちは、賄賂などで、極端に裕福になりますが、多くの国民たちは、貧乏のどん底に突き落とされます。
イラン国民たちの不満が高まり、シャーは、革命で取り除かれますが、イラン国民から多額のお金を盗んでアメリカへと亡命します。
よく知られているフランス革命やロシア革命では、数パーセントの市民が積極的に参加したとみられていますが、イランの革命では10パーセント以上の市民が深く関わったとみられています。
革命後の不安定な時期につけこんで、アメリカを含む西側諸国は、イラクのフセイン元大統領を完全バックアップし、イランの豊富な石油と鉱物を奪うために侵略を行います。
この際には、イラク市民に対して、ドイツが提供した化学兵器が使われたこともよく知られています。
アメリカもイギリスも、それを知りながら、止めることはしませんでした。
多くのイラン市民の死者を出したものの、イラクとそれを支援する西側諸国が完全に勝つことはできず、8年後には戦争を終わらせる協定を結ぶことになります。
アメリカを含む西側諸国の行動の歴史をみると、パターンは明らかで、「自由・民主主義」などは、どうでもいいことは明らかです。
イランは、革命後以来、ずっと経済制裁にさらされています。
ちなみに、イランの長い歴史上で、イランがほかの国から侵略されたことは何度もあっても、イランがほかの国を侵略したことは一度もないことはよく覚えておく必要があります。
イギリスは12世紀以降から現在まで、地球上のほとんどの地域へ軍事的な侵略や介入を行っています。
アメリカも、短い歴史の中、イギリス同様、多くの地域へ、始終戦争をしかけています。
2025年だけでも、7か国を爆撃し、かつ、核兵器を多くの市民に対して実際に使用したのはアメリカだけであることは、心に留めておく必要があります。
アメリカやイギリスは、どこかの国を攻撃する前に、その国が「脅威」であるというプロパガンダを大きく行いますが、世界中の国々に脅威を与えているのは、アメリカやイギリスといった西側諸国であることは、明らかです。
経済制裁で、実際に何が起こるかというと、イランの場合(ベネズエラも)、石油の輸出が大きいため、石油の輸出が大きく制限されると、外貨が入ってこなくなり、インシュリンなどの一般的な病気を治療する薬や、医療機器の部品などを手に入れることが難しくなります。
石油の産出地だといっても、石油をガソリンなどとして使うためには、精製が必要であり、それに必要な薬品の輸入を禁じられたり、精製工場で必要な機器の部品などの輸入が禁じられると、精製できず、石油を自国民のためにさえ、使うことができなくなります。
経済制裁(アメリカを含む西側諸国の経済制裁自体が国際法違反)をなんとか回避しようとすると、さまざまな仲介組織を頼る必要があり、賄賂などの政治腐敗が起こりやすい環境を作り出します。
多くの物品や薬品が、二次的に軍事使用されるとして、輸入禁止となりますが、イランの近隣国のイラクでは、赤ちゃん用の粉ミルクが、このリストに加えられ、多くの子供たちが栄養不足で死んだこともよく知られています。
何が、輸入禁止となるかは、アメリカや西側諸国が一方的に決めることであり、これらが突然変更されることもあり、それは、普通の市民たちの生死に関わります。
イランでは、子どもが、西側諸国だと十分に治療可能ながんにかかり、がん治療のために必要な薬品を買うために、家財を売って治療を始めたものの、治療途中に、その薬品やがん治療を行う機器が輸入禁止となり、途方にくれるしかない家族・医療従事者なども珍しくないそうです。
イランでは、航空機の部品の輸入も経済制裁で禁止されていて、飛行機事故が多いのも、それが原因だと見られています。
また、経済制裁では、決まりの中では許されている取引であっても、銀行や保険会社(石油の輸出やものの輸出には船や飛行機などが必要で、そこには保険が必須)が罰則を受けるかもしれない可能性を恐れて(罰金は莫大な金額なため)、取引を避ける傾向が強く、これも、ひとびとの生活に深く打撃を与えます。
アメリカで、経済制裁のデザインと施行に大きく関わった核兵器と経済制裁専門家のRichard Nephew(リチャード・ネフュー)さんは、自著の「The art of sanction (制裁のアート)」で、経済制裁は「外交手段」のひとつで、その国の一般市民が生きるために必要とするものを標的にして輸入禁止にし、イランでは、間接的に鶏肉の価格を人工的に異様に高くし、市民たちの不満を高めることに成功したことを自慢しています。
これは、多くの一般市民の命や健康を奪う「犯罪」ですが、犯罪を行う側が、高いスーツを着て、いわゆるエリート大学を西側諸国で修了した白人であり、かつ犯罪の被害者が非白人であれば、犯罪とはみなされません。
非白人が何人死のうと、西側の白人(政府や、大企業の経営者・株主や大富豪たち)が気にかけることはありません。
この図式は、心に留めておく必要があります。
西側諸国が一方的にコントロールする輸出制限物品リストは、緻密に計算されたもので、イラン政府は少ない外貨準備金を、どうしても必要なものー人工的に高く設定された金額で買うしかないーに使う必要が生じ、外貨が少なくなれば、それに応じて国内でのインフレーションが高まり、ひとびとを苦しめます。
それと同時に、ドルとイラン現地通貨の交換率を人為的にアメリカが操作を行っていることもよく知られています。
最近のイランでの暴動の始まりとなった、正当な国民からの不満は、1年前に比べて70パーセント近くのインフレーションとなったことですが、アメリカが、イラン通貨の価値をさげ、インフレーションを起こさせ、社会全体・経済を不安定にさせることを意図的に行ったことは専門家たちも指摘しています。
書いていて思い出したのは、パレスチナのガザ出身のジャーナリスト、 ムハマッド・シェハーダさんの父のことです。
ムハマッドさんのお父さんは医師でしたが、治療可能ながんにかかったときに、イスラエルによるガザでの封鎖が続いていて、がん治療の薬を手に入れることができず、また、ガザから外にでて治療を受けることも許されず、ムハマッドさんが10代前半のときに亡くなったそうです。
お父さんが死ぬ前に、dates (ディツ/西アジアやヨーロッパで人気のある干し柿のような食べ物で、どこでも簡単に手に入る)が食べたい、と言ったそうですが、イスラエルによる封鎖で手に入れることができず、ムハマッドさんは、とても悲しい思いをしたことを覚えているそうです。
これは、ガザだけでなく、イランや、ほかの多くの経済制裁を受けている国々の普通の市民たちに起こっていることです。
カリッドさんの話に戻ると、西アジアやアフリカ大陸では、カリッドさんの家族のように、多くのひとびとが、近隣の国々に亡命したり、難民・移民とならざるを得ない状況が続いています。
それは、上記のように、アメリカをはじめとするヨーロッパが、これらの地域の豊富な資源と労働力を無料か格安で手に入れ、西側企業への富の蓄積を続けるために、これらの地域が主権をもって経済や社会をつくることを許さないからです。
植民地国が多大な犠牲を払って独立した後も、政治的な帝国主義(植民地主義は、帝国主義から派生したもの)は表面上は終わっても、経済的な帝国主義は今も続いている、と言われるのは、上記の理由からです。
カリッドさんが、カタールの小学校に通っていた時には、クラスメートは22か国からの出身で、パレスチナ難民のように、イスラエルに暴力的に追い出されて難民となったひとびとや、カリッドさん家族のように政情の不安定さなどで国外へ出るしかなかったひとびとなど、西アジアやアフリカ地域のひとびとの現実をよく表しています。
アメリカやヨーロッパでは、移民・難民についてエイリアンのように語るひとびとも増えてきましたが、約8割の難民は、カリッドさん家族のように、近隣の国々にとどまり、アメリカやヨーロッパなどのグローバル・ノースにわたるひとびとはわずかです。
日本やイギリスのように、元帝国主義国(=現在のグローバル・ノース)で育つと、これらの帝国主義の結果を目のあたりにしないかもしれませんが、西アジアの国々では、レバノン、カタール、イラン、トルコなどが、近隣の国々からの移民を大きく吸収せざるをえない状況です。
これらの国々もミドル・インカム・カントリーズ(中ぐらいの収入の国々)であり、それは簡単なことではありません。
アメリカや西側諸国が引き起こした侵略や紛争などにより、これらの状況が生まれているものの、実際に大きな影響を受けているのは、近隣の国々で、アメリカや西側諸国はほぼ影響を受けない、ということは、自分の周りで起こっていないから、といって忘れてはならないことです。
スーダン人であり、主に首都のカートゥームで生まれ育った、ブリティッシュ・スーダン人女性ジャーナリストのNesrine Malik (ネスリン・マリック)さんは、育った家のすぐ近くの化学工場(薬品を作っていた)が、ある日アメリカによって爆撃を受け、完全に破壊されたのを目撃したそうです。
奇跡的に、爆撃で直接殺されたひとはいなかったそうですが、首都の真ん中にある工場で、多くのひとびとが殺される可能性があったことは十分考えられます。
当時のアメリカ大統領、ビル・クリントンさんは、「テロリストが爆弾をつくっている工場を爆破した」と言ったそうですが、そんな事実は全くなく、工場の経営者はアメリカの裁判所へ訴えたそうですが、裁判に進むことすら許されず、棄却となりスーダン国内の約半分にあたる薬を大規模に製造していたこの工場は再建設されることはなく、必要な薬(抗生物質、抗マラリア薬、下痢の薬など)が手に入らず、死に至ったひとも数十万人いると見られているそうです。
記事はここより。
アメリカ側は、この工場が爆弾を作っていたという証拠を見せることは全くなく(証拠はないから)、当時、ビルさんと不倫関係にあった、若いインターンのモニカ・ルインスキーさんとの関係で嘘をついたことが追及される議会が近づいていて、そこから目をそらさせるためだったとされています。
ここには、非白人のひとびとの命の価値をゼロ以下と思っている、傲慢さもよく現れています。
ちなみに、アメリカや西ヨーロッパの国々が、アフリカ・西アジア・アジアで病院施設や薬品をつくる工場を爆撃したことは何度もありますが、それらは西側の主流メディアでは報道されません。
これは、西側主流メディアが知らないわけではなく、多くの独立系メディアが報道していて、西側政府に都合の悪いことは西側主流メディアに載せない通常の戦略だとみられています。
アメリカの大統領が誰かに関わらず、ノーベル賞を与えられたオバマ大統領のときも、病院への爆破は行っていて、これは珍しいことではなく、アメリカの戦略の一つです。
記事はここより。
でも、アメリカや西ヨーロッパ(←これらの国によって爆撃を行われた 西アジア・アフリカ・アジアの国々が、アメリカや西ヨーロッパの病院や製薬工場を狙って爆撃したことは一度もない)の兵士が、これらの地域で(違法)侵略を行っているときに殺されたりすると、野蛮人に殺されたとして、大きな話題となります。
これも、非白人に対する非人間化があまりにも日常的に行われていることがよく現れています。
カリッドさんの友人には、スーダンに今もなんとか生きのびている、スーダン人ジャーナリストや、カリッドさんのような政治風刺漫画を描いている漫画家もいるそうですが、ジャーナリストの友人に、「もっとジャーナリストからの映像や、市民からのヴィデオなどがあると、世界に何が起こっているかを知らせることができるのでは(ガザのように)」と伝えたそうですが、返ってきたのは、「ここでは、カメラを持って歩き回ることは、銃を持って歩き回ることよりずっと危険(争っているどちらの軍隊も、何が市民に起こっているかを知られたくないから)」という答えだったそうです。
そのため、映像は、争っている二つの軍隊の兵士たちが撮る残酷な映像ばかりで、市民たちがそこから抜け落ちてしまうそうです。
ちなみに、カリッドさんも、ほかのスーダン人ジャーナリストも指摘していましたが、これは市民戦争ではなく、二つの軍隊(そのうちの一つのRSFは、アラブ首長国連邦とそれをサポートするか見て見ぬふりをしている西側諸国に支えられている)の勢力争いであり、多くの市民は巻き添えになっています。
アラブ首長国連邦は、スーダンの豊富な資源である金(ゴールド)を、RSF(即応支援部隊ースーダン政府軍隊と闘っている組織)から違法に大量に手に入れ、RSFはそれと引き換えに大量の武器をアラブ首長国連邦を通して手に入れ、そのために、紛争が激化・長期化しているとみられています。
国民のみんなのものである資源が盗まれ、その盗まれた資源から手に入れた武器で国民たちが殺されているのは、とても皮肉なことです。
スーダンで起こっていることは、ほかの西アジア、アジア、アフリカ、中央・南アメリカで起きていることと根本は同じで、帝国主義のアレンジメントを必要とする資本主義で、これらの資源の豊富な地域から、元帝国主義国が資源のコントロールを行い続けようとしているところからきています。
アラブ首長国連邦は、元帝国主義国の従属国ではあるものの、石油などで経済的には豊かになり、元帝国主義国の真似をして、この地域での帝国主義的な覇権を握ろうとしたとみられています。
スーダンやガザのことを、「複雑な問題だから」という人たちもいますが、実際は、数百年前からはじまった、西ヨーロッパ・アメリカの行った帝国主義から始まっていて、西ヨーロッパ出身のひとびとの子孫(西ヨーロッパ、アメリカ・カナダ・オーストラリア・ニュージーランド・南アフリカ・イスラエルの白人)にとっては、とても都合の悪い話だから、話したくないか、知りたくない・理解したくないだけです。
また、帝国主義の仕組が今も強固に残っていて、それによって、上記の白人たちが特権をえている状況を変えたくない、ということも影響しているでしょう。
でも、これらの国々でも、多くの若いひとびとは、誰もが平等で、地球の環境のバウンダリーを守った範囲で、誰もが尊厳をもって生きられる世界を求めて、これらの枠を打ち破って闘っています。
カリッドさんは、インタヴューで以下のように答えています。
インタヴューはここから。
不正義が始終起こっていて、それを変えることをできる力のあるひとびとが、この不正義について、全く気にしていないのを見ることは、とてもタフなことです。
そして、彼ら(西側諸国の不正義をただす力をもっている人々)が、これ(ガザやスーダン、ベネズエラなどの地域で起こっている不正義)を普通のこととみています。
彼らは、これをとても明確にしました。
(たとえば)彼らは、パレスチナ人を「ヒューマン・アニマル(人間の姿をした動物)」と呼びました。
(アメリカの)トランプ(大統領)は、数日前に、「スーダンのことを今聞いた」と話したのは、私たちを非人間化する別の方法です。
(※スーダンでの二つの軍隊間での争いに、市民が巻き込まれ、多くの市民が殺されたり、国内の別の地域や近隣の国々へと着の身着のままで逃げなければならなかったり、地域が軍によって封鎖され飢餓状態になったりしているのは、2年以上続いていることで、報道もされていて、知らないということ自体が、非人間化している)
世界で一番権力をもっているひと(=トランプ大統領)は、なんて傲慢で、無知なんでしょう。
私の友人のスーダン人ジャーナリストは、この紛争の中、1年半ぐらい、スーダンに残っていました。
私は、彼に電話で話したときに、言いました。
「何が起こっているか(きみが見ていることを)映像にとって。私たちは、世界に、RSFがどんなに残虐か、民兵が市民に対して何を行っているかを見せる必要があります。」私のジャーナリストの友人は応えました。
「それは、とても難しいことです。それに、ここでは、カメラをもって歩き回ることは、銃をもって歩き回るよりも危険です。」
カリッドさんは、続けて、なぜなら、ここ(スーダン)で何が起こっているかを誰にも知られたくないからと、今は(非人間化、大勢の無実の市民が殺されることがあまりにも当たり前になり)4000人以上が(一気に)殺されないと、どんなメディアにも取り上げられことすらありません。
それに、スーダンの物語は、確かにとても複雑で、残念なことに、アラブの兄弟やアフリカの兄弟たち(スーダンは、民族的にはアラブ・アフリカ両方ーただし、これも植民地化の過程で、西ヨーロッパの帝国が勝手に国境線をひき、植民地支配下では支配を容易にするために、現地の人々を言語や民族、肌の色などで区分けして、一部を優遇し、残りを不遇扱いすることで、それまでは別々の民族や人種だと認識していなかったグループに対して、人為的に内部で憎みあうように仕向けたことが今も影響している)にも、実際に理解することは難しいことです。
そして、何がスーダンで起こっているかを実際に知っている人はほとんどいません。
残念なことは、ひとびとがスーダンについて話すだけでなく、実際に理解しようという努力をしないことです。
ただ、ここには、ノアム・チョムスキーが言っていたと思うのですが、今はニュースというのは、(テレビの)広告の間に入るようなものだということです。
(スーダンの話は)二つの広告の間に収まりきりません。
メディアは、ある時点で、エンターティメントの類になりました。
私は、これは問題だと思っています。
私は、ソリダリティーを愛しています。
今、私たちは、(スーダンの)エル・ファシャー(ダルフール州ー2003年~2005年に虐殺が起きた歴史がある)で起こった虐殺について話しています。
このエル・ファシャーでの虐殺は最近起こったことではなく、2年にわたり、続いています。
(これが現在話されるようになったのは)、スーダンの人々が自分たちの声を聞いてもらえるよう、このナラティヴをプッシュし続けたからです。
でも、ここには、いわゆる(ガザの)「停戦」が起き、ニュースに少し空間ができたことにもよります。
私は、誰がより死んだか、ということと、私たちが何をもっと話すべきか、何をもっとすべきかということを比べているわけではありません。
私にとっては、スーダンについて話すべきひとびとは、もっとスーダンについて話すべきであるということです。
スーダンで起こっていることだけでなく、(ガザで起こっていることはスーダンで起こっていることに深い関連性をもっていますが)ガザで起こっていることだけでなく、世界で起こっていることが全体としてすべてつながっていて、コネクションがあるということを理解しようと努力することです。
なぜなら、すべては、つながっています。
私たちが、お互いの問題や、基本的なことがらや、何が起こっているかについて理解しようとすることがなければ、私たちは自由(解放される)になることはありません。
(お互いの問題や、基本的なことがら、何が起こっているかについて理解しようとすることがなければ)私たちは、彼ら(=元帝国主義国)が私たちの周りに(勝手に/一方的に)決めて囲った国境などの、(奴隷がかけられていた)手枷・足枷を取り外して投げ捨てることはできません。
私は、知識に基づいたソリダリティーが重要なことだと思っています。
西側(元帝国主義国ーアメリカや西ヨーロッパ)がプッシュしたナラティヴは、大きな役割を果たしています。
それは、「彼ら(アフリカなどの西ヨーロッパではない非白人の国々)は、とても遠いところにあり、私たち(西側諸国のマジョリティーの白人)は、彼らのことを気にかける必要はありません。彼らは、私たちになんの関係もありません。」
これは、単純に人種差別でもあります。
たとえば、「黒人たちは、単純に(理由もなく)、いつもお互いを殺しあう」といった(嘘の)ナラティヴ。
同じ手段は、西アジアのパレスチナ人についても使われ、「西アジアは、常に問題に満ちている(=彼らはいつも自分たちの中で問題を起こしているから、西側にいる自分たち白人にはなんの関係も責任もなく、気にかける必要すらない)」などの嘘のナラティヴも使われます。
「歴史上の問題/アフリカでは、始終戦争が起こっている」といったナラティヴもよく使われますが、これは事実ではありません。
歴史や事実を知ること、なぜ特定のことが起こっているのかという原因を知ることはとても重要です。
正確な知識があることで、(上記のような偽りのナラティヴについて)どう答えるかが分かります。
そして、お互いにどうソリダリティーをもつことができるかも分かります。
(世界で起きていることはつながっていて、誰もがこれをSolveする責任がある)
そうすれば、私たちは、実際に起こっていることの状況を変えることができます。
それが、最も重要なことです。
カリッドさんが、漫画という手段を使うのは、絵を描くことが子どもの頃から好きだったこともありますが、記事にするとセンサーシップで禁じられてしまうようなことも、漫画だとそれらのセンサーシップの目をくぐって、公開することが可能なことも、別のインタヴューで語っていました。
また、漫画は、言語をこえて、ひとびとのハートに直接ひびきます。
カリッドさんの友人の政治漫画家は、紛争の中で、家を壊されすべてを盗まれても、近所の学校になんとか忍び込み、まだ残っていた絵具やペンで、漫画(紛争で、自分たちに起こっていることを描く)を描き続けたそうです。
見つかると、命に関わる可能性が高いので、描いたものは、地面に埋めて保管しているそうです。
【参考】
カリッドさんは、「Sudan Retold (再び語られるスーダン=西ヨーロッパ中心の歴史ではなく、スーダンにいつづけるスーダンの人々による、スーダンの人々の視点からみたスーダンの物語)」という本を、多くのスーダン人アーティストと協力して作りました。
カリッドさんは、スーダン人の両親をもっているものの、スーダン国外で育ち、自国について聞かれても、スーダンは自分の想像の中にある不確かなものに感じていたことで、多くのスーダン人でスーダンに住むアーティストや人々に呼びかけてこの本を完成させたそうです。
ロンドンで行われた展覧会のヴィデオはここから見れます。