なぜ、イランは決してcapitulate (キャピチュレィト/すべての抵抗をあきらめる、不本意ながら屈服・降伏する)しないのか

Yoko Marta
23.04.26 04:37 PM - Comment(s)

なぜ、イランは決してcapitulate (キャピチュレィト/すべての抵抗をあきらめる、不本意ながら屈服・降伏する)しないのか

日本だけに住み、日本語だけを話し、日本人だけに囲まれて過ごしていると、ほかの国で起こっていることは、自分にはなんの関係もない、知る必要すらないことと感じるひとも多いかもしれません。
でも、ガザやレバノン、イランで起こっていることは、500年近く続いた仕組(帝国主義・帝国主義のアレンジメントを必要とする資本主義)の残虐さがあからさまな形で現れていて、ヒューマニティーを無視することが当たり前になってしまえば、地球上のどの地域も安全ではありません。
これに対して、ヒューマニティーを持ちづづけ、抵抗を行い続けるのは、特に、私たち帝国主義の内側にいるひとびとにとっては、義務のようなものです。
なぜなら、帝国主義の外側にいて、帝国主義の暴力にさらされている・抑圧されているひとたちにとっては、サヴァイヴァルすることすら大変で、帝国主義の残酷な仕組みを、内側から壊すことが、とても大切です。

また、命の価値に国境はなく、地球上に生きている誰もの命に同等の価値があり、一枚の布が多くの糸で織られているように、私たちはつながっていることを意識しておくことは大切です。

イランや西アジア地域全体についての学者である、Sami Al-Arian(サミ・アル=アリアン)さんのインタヴューや記事は、これらの地域の歴史・文化・社会への深い知識と、帝国主義に抵抗し続けることについての共感も感じます。

サミさんの人生にも、正義を求めて「抵抗」を行うことが一貫しているように思います。

サミさんの両親は、パレスチナ難民でした。
多くのパレスチナ人と同様、イスラエル建国時に、ユダヤ系白人ヨーロピアンによる、先住民であるパレスチナ人虐殺・エスニッククレンジングにより、サミさんの両親は数世紀にわたって暮らしていた祖先の地を追われました。
両親は、歴史的パレスチナ地域で石鹸工場を営んでいて、中流階級か、それ以上の暮らしをしていたと思われます。
両親はほかのパレスチナ人同様、近隣の国に逃げますが、逃げた先のクウェートで生まれたサミさんは、クウェートの市民権を取れず、家族はエジプトへとわたり、サミさんは、エジプトで教育を受けます。
これは、サミさんだけでなく、ユダヤ系白人ヨーロピアンによって追い出された多くのパレスチナ人が経験したことで、多くのひとびとが、数世代にわたって難民生活を余儀なくされています。
市民権がない、ということは、病院で治療を受けること、教育を受けること、家を買うこと、就職することなどについて、大きな障害となります。
サミさんは、運よく、家族の助けにより、アメリカ大学へと留学し、コンピューター・サイエンスの修士を取り、その後は、アメリカ大学でコンピューター・サイエンスの教授としての職を得ることになります。
その間に、西洋と西アジアの対話を深めるために、世界イスラム研究企業(WISE)を設立します。
ブッシュ元大統領などに招かれて話したことなどもあったものの、2001年のテレヴィ・インタヴューで、司会者から、突然1988年のサミさんの講演の一部「イスラエルに死を」という部分を、文脈なしに取り出され、それを責められました。
サミさんは、ブッシュ大統領が、(国際法違反である)イラク侵略戦争について、「十字軍」ということばを使ったことに対しての反応であったことを挙げ、これは「イスラエルの占領/イスラエルのアパルトヘイト/イスラエルのパレスチナ人への抑圧」に対しての「死」を指している(=イスラエルの人々の死を願ったことばではない)と説明しましたが、無視されました。
サミさんは、カフカの話のような、非現実的に思われることを責められ裁判へと引きずりだされ、訴えられたことは、事実ではないと分かっているにも関わらず、裁判は長引き、その後、自宅軟禁状態が6年ほど続き、約40年近く過ごしたアメリカを去り、トルコへと国外退去となります。
この間も、サミさんは自分が正しいことを知っていたので、抵抗を続け、自分の無実を主張し続けました。
結局は、裁判所側もなぜこういったことで訴えられているのかがよく分からない(司法ではなく、政治的な意図で裁判にもちこまれていたから)ということで、サミさんもあまりにも長く続く裁判(たとえ最終的には勝てるとしても)で疲労し、別の国で生きることを選択しました。

サミさんは、善く闘った、といえると思います。

ちなみに、最近、アメリカ大統領のトランプさんが、イラン市民たちが「アメリカに死を」ということばを使っていることを挙げて、「アメリカ人全員を殺そうとしている証拠」としていましたが、これは、上記と同じく、アメリカの軍事・政治介入、アメリカの侵略戦争、アメリカの帝国主義について言っていることで、普通のアメリカ人市民の死を願っているわけではありません。
西アジア地域のひとびとは、日本のようなアジア地域とよく似ていて、知らないひとや外国人たちに対して、とても親切なことで知られています。

「アメリカに死を!」は、イラン市民だけでなく、地球上の多くの地域で使われています。
ヴェトナムへの侵略戦争で、20年にわたってアメリカが無実のヴェトナム市民たちの多くを殺したことは、覚えている/知っているひとも多いと思いますが、似たようなことを、アメリカは地球上の多くの地域で繰り広げました。
ヴェトナムのひとびとは、20年間抵抗を続け、アメリカ軍を追い出すことに成功しました。
アメリカは、圧倒的に大きな軍事力をもち、圧倒的な数のヴェトナム人を残虐な方法で殺しましたが、ヴェトナム人たちは、自分たちの土地や国、社会を守ろうとして必死に闘っていて、その地以外に住む場所はなく、とても遠い場所から侵略しにきている外国人たちに勝ち目はありません。
これは、アメリカ・イギリスがアフガニスタンを侵略・占領したあと、20年近く後に、結局は、侵略前の政府であるタリバンに政権をわたし、去るしかなかったことにもつながっています。

アメリカは、多くの地域に爆弾を落とし、社会・経済・環境を破壊しましたが、その責任を取ったことはなく、侵略された地域は、その結果を今も生きています。
ヴェトナムだけでなく、ラオスやカンボジアにも多くの爆弾が落とされ、50年以上たった後でも、不発弾によって殺されたり、視力や手足を失う子どもたち、爆弾や化学攻撃による地下水や土地の汚染により、奇形の子供が生まれたり、免疫系の病気やがんの多発などが見られますが、アメリカはこれらを引き起こしていながら、自分たちは遠くの無傷の国に帰り、自分たちの行動の結果を気にすることすらありません。
「なぜアメリカを嫌うのか?」という質問の前に、アメリカ人たちは、「なぜ、自国のアメリカは、地球上の多くの地域に侵略・爆撃を始終行っているのか?」と自問する必要があります。
また、同時に、日本が帝国主義で、近隣の国々に侵略し暴虐を尽くしたことも認識しておく必要はあります。
日本の軍事化について、近隣の国々が大きな不安を感じるのには、正当な理由があります。
日本は、世界で唯一、アメリカにより、核兵器を市民に対して使われた国ではありますが、だからといって、100年ほどにわたってアジア・パシフィック地域に対して行った侵略戦争、占領などの事実や責任が消えるわけではありません。
ユダヤ系イスラエル人や、ユダヤ系ヨーロピアンは、ガザ虐殺について話しているひとがいると、「私たちはホロコーストの被害者/2023年10月の攻撃では市民が殺された」といい、それらが、パレスチナ人に対する70年以上に続くエスニック・クレンジング、虐殺、意図的な飢餓をつくりだしていることを正当化して、議論をシャットダウンしようとしますが、ヒューマニティーをもって普通に考えると、虐殺やエスニック・クレンジングを正当化できる理由はどこにもないことは、明らかです。
それと同じで、日本が過去に行った侵略・占領も、正当化できないことは、明らかだと思います。
侵略・占領を受けた側は、今もその結果を生きていることは、理解しておく必要があります。
そのためには、歴史・事実を正しく知り、自国の行った間違いを正しく伝え、同じ間違いを二度と起こさないことを、被害者であった地域のひとびとに見せ続けていく必要があります。

サミさんの発言の中にあった「十字軍」に戻ると、11世紀末から13世紀末までに西ヨーロッパのカソリック教徒地域が中心となり、聖地エルサレムを異教徒(=イスラム教徒)から取り返す、という名義のもとに、残虐な殺人を西アジア地域で繰り広げ、多くの領地を奪いました。
現スペイン・ポルトガル地域では、国外で残虐な行為を行うだけでなく、国内でも、キリスト教徒以外は追放・処刑という暴虐を行いました。
ユダヤ人の多くは、キリスト教(カソリック)に改宗したにも関わらず、追放されたり、殺されたりしたことで、多くのユダヤ人は、近隣のオットーマン帝国(イスラム教)へと逃げ、そこで保護を受け、キリスト教の地域で暮らしていた時よりも、もっと多くの権利を手に入れ、地域にとけこんで、比較的、平和に暮らしたそうです。

ブッシュ大統領は、最近(2025年)公開されたイギリス政府の文書でも明らかになっていますが、「ブッシュは、アメリカ合衆国を「神によって選ばれた国家」で、サダム・フセインを含めた邪悪なひとびとを取り除く役目を与えられている、と考えている」としています。
ちなみに、アメリカの同時多発テロを行ったとみられるアルカイダは、アメリカの盟友国であるサウジ・アラビアが出所だったにも関わらず、サウジ・アラビアにはなんの攻撃もなく、イラクやアフガニスタンといった関係のない国が「War on terror(テロへの戦争)」として、アメリカに違法侵略・違法占領されました。
同時多発テロについては、CIAの内部告発者が、実際にはテロが起こるということが分かっていたにも関わらず、西アジア地域に侵略を起こす正当化として都合がいいので、テロを止める対策を行わなかったともされています。
アメリカの軍事政策に深く関わった元アメリカ軍将軍、ウェスリー・クラークさんは、同時多発テロの直後に、「イラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、イランの7か国を、5年以内に乗っ取る」という発言を行っています。
5年以内ではなかったものの、現在、最後のイランへの侵略を始めましたが、残りの6か国については、アメリカが侵略・占領、軍事・政治介入を行い、破滅へと導いたことは事実です。
ただ、アフガニスタンのように、占領は結局うまく行かず、現地からの抵抗が続き、アメリカ・イギリス軍は20年後に撤退し、もとのタリバンに政権を引き渡した、というケースもあります。
イラクについても、アメリカが露骨に内政干渉を行い、民主主義的な手続きにしたがって選ばれた、アル=マリキさんが首相に任命されれば、アメリカはイラク石油の売り上げをイラク政府に渡すことをストップさせる、と脅しましたが、アル=マリキさんは、アメリカの介入を非難し、イラクの国家主権がかかっているとして、首相任命から退任することを拒否しました。
アメリカはイラクへの侵略・占領により、イラク石油の売り上げのすべてがアメリカ銀行へと渡るようにし、イラク国民のお金であるのに、現在も、イラク政府が自由にアクセスすることはできません。
イラク政府の国家収入の9割以上が石油からきており、この売上金をアメリカ政府に握られている状態は、イラク国家の主権を、アメリカが踏みにじっているといえます。
でも、これも長く続かないかもしれません。
イランやキューバ、ヴェネズエラなどが望んでいるのは、自分たちの国の主権が尊重され、軍事・経済介入をアメリカやイギリスといった西側諸国から受けず、自分たちの国民が納得するやり方で、経済や社会を発展させたい、というだけです。
上記の国々は、西側の資本主義とは違うやりかたで、西側からの経済制裁・経済封鎖にも関わらず、福祉が充実していて、教育や病院も無料で、女性の教育もとても高い水準であることで知られています。キューバでは、住む場所も基本的人権のひとつとして無料で、路上で暮らす人は基本的に存在しないそうです。
アメリカはほぼ反対で、上記の国々と比べて識字率も高くなく、高等教育は金持ちにしか受けられず、病院の治療代が払えず自己破産するひとの割合がとても高く、投獄されている人々の割合も世界一で、殺人や集団殺人などの暴力的な犯罪も多く、それも、アメリカが上記の国々を破壊したい(人間としての発展を考えると、アメリカの仕組がとても悪いことは、上記の国々と比較すると明らかだから)と考える理由だと思われています。

上記の国々は、ほかの国々とも、お互いが同じ立場で、同様に主権を尊重しながら、貿易や協力関係を築きたい、と望んでいるだけですが、アメリカやイギリス、フランスといった西側諸国は、「支配・被支配」という関係性しか認められず、自分たちが「支配者」で残りの地域とひとびと(地球上の約8割のひとびと)」を自由に搾取し、搾取した結果の責任を全くとらなくていいimpunity (インピュニティー)と特権を手放すことは全く考えられません。

サミさんの、投稿から。
直訳は、以下です。

なぜ、イランは決してcapitulate (キャピチュレィト/すべての抵抗をあきらめる、不本意ながら屈服・降伏する)しないのか

1. 西側世界の戦争のセオリーは、残忍な力です。
威圧し、圧倒し、降伏を強制する
これが、(アメリカ大統領)ドナルド・トランプと(イスラエル首相)ベンヤミン・ネタニヤフの論理です。
イスラムは、これを拒否します。

2. イスラムでは、戦争は、支配のためではありません。
これ(戦争)は、攻撃に対して抵抗することです。
攻撃に対して、抵抗をあきらめること・降伏することは、禁止されています。
不正義への服従は、モラルの敗北です。
抑圧への降伏は、モラルの不履行です。

3. イスラムは、力のバランスに関わらず、攻撃を受け入れません。
攻撃に対して抵抗しそこなうことは、さらなる不正義を招き、害をひろげることになります。

4. イスラムでの抵抗は、厳格なモラルの境界によって治められます。
戦争は、実際の不正義と攻撃をはねつけるときのみに許可されます ー 支配や復讐のためではなく(=支配や復讐を目的とした戦争は、許可されない)
戦士ではないひとびとは、守られ、過剰(な力を使うこと)、残虐さは、禁止されています。
そして、(反撃に使われる)力は、(攻撃する側と)比例したものであり続けなければなりません。

5. 攻撃が止まったとき、戦争行為はとまらなくてはなりません。
それぞれの行動は、神の前で、意図と責任が判断されます ー 権力者や結果によってではなく。 
このモラルの規律はーコーランに基づきー 帝国主義の暴力から、イスラムの抵抗を区別するものです。

 6. コーランは、一つの義務を課しています。
「それら(=攻撃)に対して、あなたが持てる力をなんでもつかって、準備しなさい」
安全への約束はありません。 ー 真摯さ、準備、神への信頼だけ
です。

7. 不正義や傲慢さに直面したときの、尊厳、忍耐、果敢な抵抗、意志の強さ ー どんな犠牲をはらうかに関わらず ー は、イスラムの中心的な価値観です。
これらは、服従を強制するために、道義にはずれていて、違法で、過剰な暴力を使う西側の戦争論理には、異質なものです。

8. イスラムでの勝利は、見かけではありません。
本当の勝利は、その(イスラムの)教えを満たすことにかかっています。
攻撃に応え、それを阻止すること。
生死は、尊厳を保つこと、正義を実現することの外側では、なんの意味ももちません。
犠牲的で、断固とした抵抗は、真摯さを証明します。
勝利は、攻撃が撃退されたときに、与えられます。

9. 上記の理由で、イランは抵抗することを諦めないでしょう。
プレッシャーは、信仰心を試します ー それ(信仰心)は、砕かれません。
信仰は、降伏(抵抗をあきらめること)が代償である場合、生き残ることを交渉しません。

10. 西側は、アフガニスタンで、この教訓を学ぶことに失敗しました。
(西側は)イランでも、教訓を学ばないでしょう。
でも、そのうち、(西側は)それを、パレスチナで学ぶでしょう ー 攻撃的なシオニズム・プロジェクトが崩壊し、完全に取り壊されたあと。

信仰はもちこたえます。
帝国は、有効期限が切れます。
シオニズム・プロジェクトは、崩壊します。

また、イランでは、宗教上でも、「抑圧されたひとびとを助ける」ということが徹底していて、パレスチナ人の解放は、革命でイスラム教国ができて以来、国是だそうです。

西側諸国では、多くのイラン市民(多くの子供を含む)が、アメリカとイスラエルの違法侵略攻撃によって殺され続けていますが、爆弾が降り注ぐ中でも、イラン市民たちが広場に集い、「Avenge(アヴェンジ)/Revengeとは違い、不正義・不正行為に対して、正義を回復するための行動を行う」を天に向かって叫ぶとき、それを、「復讐を誓うとんでもなく残虐なひとびとだ」という印象をつくりだします。
そこには、自分たちヨーロッパの白人(アメリカの権力者グループは、アメリカの非白人である先住民を残虐に虐殺して土地や資源を乗っ取って、自分たちこそが先住民であると主張する白人ヨーロピアン侵略者の子孫たち)は、「自分たちヨーロピアン系白人・キリスト教徒は、誰よりも優れていて、どんなことでもできる権利と自由があり、それに抵抗する権利は誰にもない」という傲慢さが見られます。

イランの、国際法的にみても正当な自衛権の行使は、アメリカや西側の傲慢さに風穴をあける機会となっています。
でも、それに対する代償はあまりにも大きいのですが、自国が違法攻撃されている以上、抵抗し続けるしか、選択はありません。
抵抗をやめれば、シリアのように、民族や宗教・宗派などによって分断され、混乱が続くことになるでしょう。
イランは、西アジアの中でもとても歴史のある国で、数学でも大きな貢献をしました。
プロパガンダに惑わされず、事実や歴史を知ることは、とても大切です。

Yoko Marta