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ヨーロッパで働く - 仕事の責任と権限 1/3

Yoko Marta
13.04.21 09:26 AM Comment(s)

ジョブディスクリプション

 ジョブディスクリプションについては、基本的な考え方について以前書きましたが、今回は実際に仕事上でどのように活かされているのかを記載しています。

 ジョブディスクリプションは通常、以下の内容で構成されています。

  1. ジョブタイトル   
  2. 仕事内容
  3. 必要なSkillsとCompetencies(コンピテンシー)
  4. Relationships (社内での位置、Reporting line等)
  5. サラリーや福利厚生 

 ジョブタイトルについては、日本とほぼ同じと考えてよいと思います。仕事内容については、企業側と雇用者側で仕事に対する正しいExpectation(期待・予測等)を持ち、透明性を高めて仕事内容についてのお互いの理解の齟齬がないよう、とても細かい記述となっています。3と4は、日本での感覚では分かりにくい概念だと思いますので、下記に説明しています。

 「SkillsとCompetencies」とは、熟練した技能とそれを実際の仕事にどう適用するのか、ということになります。Skillsはスキルということで、例えばプログラミング言語だったり、フランス語能力試験の資格等です。Competencies(コンピテンシー)というのは、リーダーシップやチームワーク、柔軟さや積極的にコミュニケーションをとれる等、自分の持っているスキル+知識+能力の組み合わせでどのように仕事を実行するのか、ということになります。私のバックグラウンドはITエンジニアなので、IT業界で例えをだすと、スキルとしてはC言語が必要だとして、ソフトウェア会社Aでは自社の開発担当、ソフトウェア会社Bでは、会社Cに正社員として所属しながら会社Bに顧客先常駐する開発担当だと仮定します。この場合、必要なコンピテンシーはかなり違うものとなる可能性が高いです。会社Aでは、プロジェクトにもよりますが、自社なのでプロジェクト全体も見やすく他のプロジェクトの関連性もある程度目に入りやすく、納期も融通はきくでしょう。ゆったりと全体を見ながら、他の部署とうまく関係を築きながら長期的な視点で粘り強く仕事をし、成果を少しずつ築いていくことがコンピテンシーとして求められる可能性が高いです。会社Bでは、顧客先常駐ということで、顧客企業内での人間関係・ハイラルキー・ルールを素早く理解し適切な言動を行い信頼関係を短期間で築く、プレゼンタブルであること、納期をきちんと守ること、顧客先の要望についてフレキシブルに対応できる柔軟性と短い期間で確実に成果を出すことが、コンピテンシーとして要求されるでしょう。

 「Relationships」は社内での仕事の位置づけとなります。どの部署に所属し、どの部署のどのマネージャーに報告し(複数の場合も多い)、またどのポジションの人が自分に報告を行うか等、会社内での自分の仕事の位置づけ、責任・義務の範囲を明確にします。ここは、ヨーロピアンの方々はきっちりと確認したい場合が多く、日本で育った方々の場合、あまり気にしていられないように見受けられることが多いです。ここでの、責任と義務の範囲という考え方は、日本でのみ働いた経験のある人と、ヨーロピアン或いはヨーロッパで働いた経験がある人とでは齟齬が大きい部分だと思います。日本だと、一人一人の義務と責任は明確でなく、部署全体で必要な仕事を完遂させるという形式が多いかと思います。ヨーロッパでは、基本的に一人一人の義務と責任は明確であり、それを的確に割り振り監督し仕事を完遂するのはマネージャーの仕事です。そのため、時間内に仕事を完了できないスタッフがいる場合、個別に話をして、どのように会社としてサポートできるのか(何らかのトレーニングが必要なのか、現在使っているものとは違う機器やソフトウェアが必要なのか、病気等で体調が悪い場合は病欠で何日かまとめて一度休んだほうがいいのか等)と、会社としてのExpectation(具体的に1か月後に現在の仕事内容がこういったクォリティーの高さで就業時間内に終えられるようになること等)をなるべく明確な形で合意します。状況が変われば、その都度見直しますが、基本的にはここで決められた期間がきたら再度見直しを行い、さらにサポートが必要なのか、或いは社内の別部署へと異動したほうがいいのか等が話し合われます。仕事でのパフォーマンスが明らかに悪いスタッフを長期間そのままにしておくのは、マネージャーの責任が問われることとなるので、この問題が放置されることはないでしょう。日本風の「頑張って残業しているんだからいいだろう」という甘えは通用しません。仕事を頑張るのは当然のことで、仕事を時間内で完遂させるスキルとコンピテンシーがないとその仕事を保持する正当性がないと判断されても仕方ないでしょう。また、明らかに合わない仕事を続けるよりも、本人が力を発揮できる場所で働くほうが誰にとってもハッピーな結果となるのではないでしょうか。 

Yoko Marta