ヨーロッパの言語事情

16.04.21 02:57 PM

イギリス人は外国語が苦手

 「日本人は英語が苦手」と日本人の方々からよく聞きます。ヨーロッパ内では、イギリス人は外国語が話せないことで有名です。良く知られている冗談ですが、「イギリス人は、外国語も話せないし食事もまずいから、植民地をつくった(=現地の人々に英語を話させる)」。実際は、日本でいうイギリスはUnited Kingdom(The UK)を指している場合が多く、United(連合)とあるように、スコットランド、イギリス、ウェールズ、北アイルランドの国々から構成されています。この内、ウェールズには英語とは全く違う言語のウェールズ語があり、アイルランドはオリジナルの言葉はゲール語です。ただし、どこでも英語は通じます。UK政府の公式ウェブサイトにはウェールズ語の表記もありますし、問い合わせの電話をかけるときには、ウェールズ語ラインも選択できます。電話待ちのメッセージでは、英語とウェールズ語が流れ、歌うような異国のリズムのウェールズ語に意味は全く分からないのに、聞き入ってしまうこともありました。「外国語が話せないイギリス人」という冗談は、British(The UKに住んでいる全員)ではなく、The UKの中にある一つの国「イギリス」の人限定だと私は解釈しています。イギリス人の同僚たちは、スペインやフランスで努力して現地の言葉を話そうとしても、現地の人々の英語は自分たちのスペイン語やフランス語より何倍も上手で、結局英語で会話が終わってしまうとよく言ってました。また、どんな僻地に旅行しても英語が上手に話せる人が必ずいるので、外国語を習う意欲が湧かない、というのも聞きました。英語は他のヨーロピアン言語に比べて少し離れている(例えば、ラテン語起源のスペイン語とイタリア語は非常に似ているので、ゆっくりと話せばスペイン人がスペイン語、イタリア人がイタリア語を話していても会話が成り立つ)とはいえ、英語の医療用語や正式な硬い言葉はラテン語起源の言葉が多く、イタリア語を会話レベルでしか分からない私ですら多くの英語の単語とイタリア語の単語を結び付けられます。

 翻って日本を見てみると、外国語が苦手というのとは違うのではないかと思います。日本語と英語の違いと、英語とイタリア語の違いを比べると、日本語と英語の違いは、文化・宗教・歴史・文法・読み書きのシステム等全く土台が違いますが、英語とイタリア語だと文法は違うものの、一部の単語や仕組みは同じ起源を持ち、かつ文化や歴史等の面でも土台をかなり共有しています。イタリア語での言い方をそのまま英語に直訳すると、不自然な表現に聞こえても言いたいことは伝わります。日本での言い方を英語で直訳するとまず通じません。いくら文法的に正しく話していても、結局は言いたいことが伝わらない、というのは、この文化面での違いが大きいのではないかと思います。イタリア語を会社が終わった後に習っていたときのイタリア人の先生が、中国語の通訳者でもありました。中国の大学に留学していたときに、日本人学生の習得があまりにも早すぎて、すぐに日本人とそれ以外の学生でクラスを分けてもらったそうです。日本人だと、漢字も知っているし、文化や歴史、儒教といったものも、土台の大きな部分をもともと共有しているので、中国語・中国文化との土台を全く共有していないヨーロピアンと比べると、学習する前の段階で、中学生と赤ちゃんくらいの違いがあるのではないでしょうか。日本人が英語やヨーロピアン言語が習得するのが難しいように、ヨーロピアンにとっても日本語を習得するのは非常に難しいことです。もし、一生懸命日本語を話そうとしているヨーロピアンを見かけたら、ぜひ優しい気持ちで聞いてあげてください。優しさはきっと巡り巡ると思います。