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ヨーロッパで働くー兵役義務

Yoko Marta
04.05.21 09:31 AM Comment(s)

兵役義務のある国々

  日本に暮らしていると意外かもしれませんが、ギリシャ、スイスといったヨーロッパの国々に兵役義務(Millitary Service)が存在します。ここでいう兵役義務は国民の義務とされており、身体的に不可能等のやむを得ない事情がない限り、基本的に避けることはできません。私のギリシャ人の友人のパートナーは、大学時代は学業ということで免除期間で、その後はイギリスで就職しているので期間免除されています。ただし、一定の年齢になるまで(ギリシャでの兵役義務の期限が切れる年齢になるまで)は、ギリシャでの滞在期間は厳しく管理され、短い期間のみの滞在が許されています。ギリシャに永久帰国するのであれば、兵役義務を終了することが必要となります。ただ、兵役義務といっても、必ずしも銃の訓練といった兵役ばかりでなく、国によってはCivil Service(社会奉仕)という市役所や警察でのボランティア的なことも兵役義務として認められている場合もあります。ただし、通常は自分ではMilitaryなのかCivilなのかを選択できず、面接官等によって決定されるようです。スイスはいわゆる中立国のため、自国を自分たちで防衛する必要があり、若いうちに兵役義務を果たし、かつ一定の期間を開けて、短い期間呼び出されて再トレーニングを受けるということを聞きました。私のスイス人の友人(女性)によれば、「訓練っていうけど、湖でボート漕いでたり山に登ったり、ホリデーみたいなものじゃないの、ってみんな言ってるけどね~」ですが、銃の保持率も高い国であり、日本でのステレオタイプである中立=平和でのんびりではなく、中立という位置を保つためには、多大な努力が必要ということではないでしょうか。

 ヨーロッパとアジアの懸け橋となるトルコにも兵役義務は存在します。学業中は免除になりますが、大学が終われば兵役に行く必要があります。トルコでのリクルートメントのサポートを行いましたが、兵役義務にいつ呼ばれるかも明確には分からないので(さすがに一か月前くらいには通知がくるようですが)兵役を修了しているかどうかは重要なポイントです。ただ、兵役業務は1年なので、良い方であれば1年の間ポジションを保持しておくことも十分価値があると思います。

 上記の国々は、兵役業務は男性のみですが、少しヨーロッパを離れてイスラエルに行くと男女ともに兵役業務があります。イスラエル人のジュエラー(男性)と話していた時に、兵役義務期間の話を聞かせてくれました。ある日突然戦車に乗せられ、行先も理由も告げられず2日ほど移動。戦車が止まり、戦車から出るように言われたけどどこかも分からないし、夜中で真っ暗で畑が広がっているようで民家がぽつぽつとあることしか分からない。突然、どこかで犬が大きな声で吠え出し、彼を含めた兵役業務中の若者達は恐怖でとりあえず声がするほうに銃を撃ち続ける、というものでした。彼によれば、彼の所属していた部隊のコマンダーは、ストレス過多でうまくチームマネージメントができておらず、運が悪かったという面もあったようですが、自国内、周辺国との紛争を抱えている国々は多く存在し、自分が住んでいる場所から100KM程度離れるだけで、そこは戦場にいつでもなり得る場所であるというのは、とても苦しい現実だと思います。

 ヨーロッパに戻り、イタリアに行くと、昔は兵役義務がありましたが、今は選択制で兵役は義務ではありません。経済的に貧しい地方だと、仕事を見つけるのが難しく、無職でいるよりはと、とりあえず兵役で1年過ごした、という話も聞いたことがあります。彼の場合は、兵役の同僚たちはイタリア全土からきた若者たちで、自分が住んでいる南イタリアでは絶対に会えなかったような人々とも知り合えて、大事な親友たちとなり、彼の人生にとって有意義な時間だったそうです。私のイタリア人の友人は現在50代で、イタリアでの兵役義務が国民の義務であった時代を経験しています。その当時は兵役義務を果たさないのは国家に対しての犯罪ということで、非常に重い罪だったそうです。ただ、軍隊が合わない人もやはりいて、自傷行為を何度も行って軍の病院に繰り返し収監されている若者もいたそうです。だんだんとテロ事件等も他国からの脅威も減ってきて、国民からも、なぜ兵役義務を続ける必要があるのか、という声が大きくなり、最終的には兵役義務は廃止されたそうです。兵役義務(Military Service)が必要な状況が世界から無くなり、Civil Service(市民サービス)が多くの若者をつなぎ、仕事に必要なスキルやリファレンスが貧しい地域の若者達にも獲得でき、もっと平和で平等な世界になれば、と思います。 

Yoko Marta