The Green Catalyst
The Green Catalyst
Creating futures we can believe in

Brexit後のイギリスでの雇用

Yoko Marta
27.05.21 02:52 PM Comment(s)

イギリスでの外国人雇用

 イギリスでは、2020年12月31日にEUより離脱しました。パンデミックもあり、その影響を現段階で判断することはできませんが、CPID(イギリスの人事のプロフェッショナルボディー)では、2020年10月の段階でPodCastをWebsiteにアップロードしています。現在も法律が変更されたわけではないので、イギリスでの外国人雇用についてざっとまとめています。

  • グループ①ː 2020年12月31日以前からイギリスで働いているEU圏の人々 ⇒ 2021年6月30日までにEU Settlement Scheme(イギリスへの滞在は5年以上必要)に応募し、Home Office(内務省)より受け入れられれば、今までとほぼ同じ権利(働く権利、病院での受診・治療が無料等)を保持。ただし、EU Pre-settlement(例/2020年の時点でイギリスにきてから5年以下の人等)の場合は、5年後にSettled Statusに応募する必要あり。SettlementもPre-settlementも、既に働いているEU市民であれば、まず断られることはないとのことです。
  • グループ②ː 2021年1月1日以降にイギリスへきた、EU市民と、EU以外の移民(日本人も含む)⇒ 雇用者からのスポンサーシップが必要で、語学レベル、教育レベル、スキルレベル等の基準(ポイント制)を越えていて、かつHome Officeの定める最低給料(職種等によって違いあり)条件を満たしている必要があります。雇用者は移民をスポンサーするためのライセンスが必要です。
  • グループ③ː 2020年12月31日以前からイギリスで働いているEU以外の移民(日本人も含む) ⇒ 基本的に変更はありません。期限つきのビザだと延長等の手続きを適宜行う必要があります。


ポイント制と謡ってはいるものの、他の国々のポイント制とは違います。

  • イギリスのポイント制ː 雇用者の都合が強い。雇用者のスポンサーがないと働けない。
  • 他の国々でのポイント制ː 働く人主体。働く人の能力、技術、職業経験等が、受け入れる国に必要かどうかで決定。雇用者のスポンサーは必要なし

 2021年7月1日よりポイント制の適用が始まります。UK国外からの外国人を雇用したい場合で、ライセンスを持っていない企業の方への情報はここよりHome Officeの情報にアクセス可能です。また、雇用者向けのEU Settlement Schemeについては、ここよりHome Officeの情報にアクセス可能です。先述のWebsiteでも明記されていますが、2021年7月1日以前にSettlement Statusを持っているか、応募したかどうかの確認を従業員に聞くことは必要ではなく、Settlement Statusの有無によって応募者の合否を決めることは許されていません。現時点(2021年5月26日)のHome Officeの情報では、既に働いているEU出身の従業員に対して、2021年7月1日時点で過去に遡ってSettlement Statusを持っているかどうかを調べる義務はないとしていますが、Settlement Statusを持っていないEU市民はイギリスで家を借りることもできず病院にも行けない等、生活すること自体が不可能になるため、最近のニュースでも近日中に詳細を発表するとのことでした。Brexitは結果をよく考えて決めたというよりも、いろいろなイデオロギーで感情的に走ってしまった面も強いので、貿易等についても問題が出てから慌ててで決める、或いは決定する締切を大幅に伸ばす等の混乱があり、移民雇用、特にEU出身者の扱いについては落ち着くまでには少し時間がかかるでしょう。当面は、パンデミックも続いており、外国人の雇用については、既にICT(Intra Company Transfer Visa)のスポンサーである企業は、企業内の国を越えた従業員の移籍は手続きも早いのでそれで対応することと、イギリス国外からのリモートワークとの組合せも大きくなるだろうとのことでした。ただし、どこの国に住んでいるか(Domicile)で、税金をどの国で払うのか等も違ってくることと、EU出身の従業員でPre-settlement statusだった場合、イギリスにいた期間が1年で6か月を切ると、Settled Statusへの切替ができ無くなる等の別問題も出てくるため、人事も法律の変更を随時確認しておくことが必須でしょう。リモートワークについては、ヨーロッパ内でもDigital Nomad Visa (デジタル ノマド ビザ)という制度が徐々に適用され始め、例えばエストニアでは、1年を上限にエストニアに住みながら他の国にある企業の仕事をリモートワークで行うことが法律的に可能である等となります。ただし、EU内でも国によって適用条件等もかなり違う為(最低限の年棒、フルタイム必須等)、該当機関にきちんと確認する必要があります。イギリスでは、パンデミックとBrexitが2重でやってきたので、こういった制度が取り入れられるまでにはEU内の国々よりは時間がかかるかもしれませんが、影響はあるでしょう。

 上記に加えて、Podcastでは、現在働いている従業員に対しての投資(再トレーニング等)の重要性を強調していました。これは、先進国のどの国でも今後大きな取り組みとなることでしょう。ただ、イギリスの場合、現時点でも大きな人材不足である看護師やケアワーカーは移民が大きく占めており、看護師のように人材を育てるのに時間がかかる分野では、移民法を特別に緩める可能性もあります。現時点でイギリスで不足があるとされており優先的にビザを発行している職種リストはHome Officeのこのページより参照可能です。サイエンス関連やエンジニアが多いですが、イギリスで働きたい場合、先述した職種で経験がある場合はビザが取りやすいでしょう。このリストは、社会状況やマーケットによって随時変更されます。

Yoko Marta