The Green Catalyst
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Creating futures we can believe in

Assertion (アサーション) ー 3

Yoko Marta
06.07.23 10:40 AM Comment(s)

「No」と言うこと、「No」を受け入れること

まず最初に、「NO」と言うほうも受け取るほうも、「No」は誰かを拒絶しているのではなく、特定の要求を断っているだけであることを理解しておくのが前提です。
また、どんな状況や関係性にあろうと、誰にでも「No」という権利はあり、それは尊重されなければなりません

特に、日本で女性として育っていると、「No」と言ってはいけないと育てられたり、「No」と言うことで、大きな罰や不利益、逆恨みを受けたことを何度も経験しているかもしれません。
ヨーロッパでは、上記は適用しないので、嫌なことには、はっきりと「No」と言う必要があります。
ヨーロッパの人々は、日本人と違って「No」を言うことにも、受け取るのにも慣れているので、恐れる必要はありません。
個人の権利とバウンダリーは尊重されます。
考えてみれば、「No」を受け入れることができない、というのは、ひととして未成熟であるといえるでしょう。

また、日本の強い男尊女卑と強いハイラルキーの文化の中でマジョリティーのトップ(男性グループの中の一部の人々)として育つと、自分の要求を常に周りが察し、自分の思い通りに周りが動くのが当たり前になって、「No」と言われるくらいで、「顔をつぶされた」という極端なバイアスのかかった見方になるのかもしれません。でも、そういったバイアスの強い受け取り方をするのは、受け取った人の責任で、フェアな言動で「No」と言った側には、相手の気を悪くさせたといった責任は全くありません。
大人なのだから、こういった拒否に伴う自分の感情をうまく扱うことができるのが当然です。

関わるすべての人が、お互いが譲り合えるスペースをもった上で、意志・意思を正直に明確・ダイレクトに話し、お互いが納得できるところで折り合う関係・風習に慣れると、「相手はこう言っているけれど、本当は違うかもしれない」等の無駄な探り合いがなくなり、とてもラクになります。
また、男尊女卑やハイラルキーは、日本のレベルと比べるとほぼ存在しないといっていいレベルなので、「No」と言うことで逆恨みをされてひどい目にあうのではないか、という心配もありません。
はっきりと意思表示をしないのに、自分の思い通りにいかないと、機嫌を悪くしたり泣いたりして、相手の罪悪感を呼び起こし、自分の思う方向にもっていこうとしたりするのは、manipulative(マニプュラティヴ/操作)であり、とても悪い行動です。
ひととして未熟だと見なされます。
大人として扱われたいなら、大人として成熟した行動をとる必要があります。

また、日本で育った日本人とヨーロピアンの間で問題となるのは、日本人側が無理やり食べ物をすすめ、「No」を尊重しないことです。
ヨーロッパには、嫌いな食べ物を無理やりにでも食べなければいけないという慣習はありません。嫌いな食べ物や口に合わないのであれば、そう言って無理には食べません。日本で「好き嫌いを言ってはいけない」と思い込まされて育てば、「せっかく私の料理したものを、食べないなんて許せない」となりがちなのですが、たまたま、その食べ物がそのときは食べたくなかった、食べられなかっただけで、作った人を拒絶しているわけではないことをよく理解しておくことが大事です。
また、ヨーロッパでは、アジア食全般が苦手な人もいれば、宗教上の理由や他の信条から、多くの種類の食べ物を食べない人もたくさんいます。ほかの人の権利を尊重することは大切です。
「女性の役割は母や妻で、料理をしてもてなすことは絶対的に重要な役割で、女性は料理が上手でなくてはならない」という考えは、ヨーロッパには存在しません。
イギリスだとMarks and Spencerといった少し高級系のスーパーマーケットで、誰もが食べられる総菜を買ってきてもいいし、出前でもかまいません。
大事なのは、楽しい時間を共有することです。多くの人が食べられないもの(たとえ、それが日本では一般的に好まれる手のかかる食べ物であっても)を懸命に労力と時間をかけて作った結果、食べてもらえないと怒るのは、誰にとってもよいことではありません。

「No」と言う
誰かからリクエストを受けたとき、瞬間的に、「ぜひ、そうしたい」と思うか「いや」と思うかを自分で観察しましょう。自分の気持ちや優先順位を考慮する必要があります。反射的に「Yes」と言うことは確実にやめる必要があります。

  • まず、「分からない」と言ってみましょう。そして、詳細を聞きましょう。詳細を聞くことで、あなたが本当にどうしたいかを決定する時間を得ることができます。これは、あなたが「Yes」と言った後で、その決定を疑うことがないようにします。これは、あなたが限られたあなたの時間の中で何をするかということに大きなコントロールを与えます。

  • 過剰な言い訳や謝罪をせず、「No」と言う練習をしましょう。説明を与えるということは、言い訳をすることとは違います。直接的な断りを短い説明とともに与えるのは、断られた相手も、自分の立ち位置がよく理解できます。

  • Equality(平等さ)ー 自分の決定に責任をもち、相手に相手の感情を表現するスペースを与えましょう

  • リクエストを断った後は躊躇しているような様子を見せないことが大事です。躊躇しているように見えると、相手は、「Yes」を引き出すスペースがあると思い、あなたが心変わりするようにトライするでしょう。

  • 作り笑顔をするのはやめましょう。笑顔と「No」は反対の意味を持ち、相手を混乱させます

  • できれば、誰か他のひとを言い訳にして断るのではなく、自分で責任をもちましょう。

この「作り笑顔」については、ヨーロッパでは気に留めておく必要があります。
日本だけでなく、日本を含むアジアで育った女性は往々にして、ひどい目にあったときですら、常にスマイルです。多分、生まれてからずっと刷り込まれているのですが、これは、ヨーロッパではとても奇妙にうつり、いったい拒否しているのかどうかを疑わせます。
ヨーロッパでは、「女性は絶対に怒ったりせず、常にスマイル」という考えは存在しません。毅然とした態度で、嫌なことには、「No」と怖い顔で言う必要があります。
また、男性の顔を失わせてはいけない、といった男性優位の考えもありません誰もが対等な立場で「No」と言う権利があり、言われたほうは、その決定を尊重しなければなりません。たとえば、男性の気持ちを優先して、男性が傷つかないような発言を心掛けないといけないといった、男性のニーズを女性のニーズよりずっと優先させるようなことはないし、誰もそんなことは期待していません。フェアな言動をしている限り(自分のニーズや望みに従い「No」と言うことはフェア)、相手がどう思うか、対応するかは、あなたの責任ではなく、100パーセント相手の責任です。「No」と言われて逆恨みしてひどいことをするようであれば、ひどいことをするという行為の選択を行ったのは相手であり、その結果と責任を取るのは相手自身です。

「作り笑顔をしない」は少し練習が必要かもしれません。
周りのヨーロピアンの友人や知り合いに聞いてみたり、彼女たちの対応を観察するのも助けになります。
私自身、笑顔を作っていないつもりでも、周りからは笑顔に見えていたりして、調整する必要がありました。
随分たってから、たまたま日系企業で働いたときには、「笑顔が足りない」というとんでもない理由で呼び出しを受けましたが、「そのことで、企業の利益やビジネスにどう影響をもたらしているのでしょうか?実際に、クライエントから苦情があったのでしょうか?具体的に教えていただければ、良い方向へもっていける話し合いができると思います」と言うと、結局は、言いがかりであったということが判明しました。
気分のいいものではありませんが、最初から論理的に対応していたので、相手は再び自分の理不尽さを周囲にさらけ出すのを恐れ、言いがかりはすぐに止まり、かつ、その人から他の人々への理不尽な言いがかりも減りました。別に悪い人ではなかったのですが、こういった幼稚な行動をとるひとが、会社への勤続年数だけで会社の上の立場にいることもあります。そういった場合にも、自分のコントロールがある範囲で、フェアであることには留意しつつ(攻撃的な態度を取らない等)、意見や疑問を表明することは大切であり、それは誰もがもっている権利です。

「No」ということが怖い、或いは今まで「No」と言った経験がなくて、どうしていいか分からない人もいるかと思います。
「No」と言うことの影響と、「No」と言わないことで起こる結果・影響について考えてみましょう。
ただし、これは「No」と言うことで、生命の危険にさらされないことが前提です。もし、銃やナイフをつきつけられていれば、そこには「No」という選択肢はないでしょう。

「No」と言った場合
「No」と言った場合、あなたが恐れている結果は何か、よく考えてみましょう。例えば、「No」と言うと、相手は、あなたのことをケチ、冷たい等、ネガティヴにとるかもしれません。また、逆恨みをして、何かひどいこと、たとえば嘘の噂をふりまく等をするのではと想像するかもしれません。それらは、どのぐらい現実に起こりうることでしょうか?
たとえ、相手が嘘の噂をふりまいたとしても、嘘をつくほうが完全に悪いし、そういったことを易々と信じるひとたち、面白がって加担するような人々とは最初から関わらないほうがいいに決まっています。こういったことを恐れて「No」を言わないと、言いなりになるひとだと思われ、さらにひどい目にあうかもしれません。
短期的には、居心地の悪い思いをしても、そういった人たちと早いうちに縁が切れたほうがいいし、リクエストを断ったぐらいで逆恨みをするひとは、そもそも少ないだろうし、意味を成さない報復行為にでるひとは、さらに少ないでしょう。
また、相手のリクエストに「No」と言ったときに、相手がどう感じるか、どういう行動を取るかは、あなたがフェアな言動を心掛けている限り、あなたには全く責任はありません。あなたには、あなたの優先順位や、やりたいこと、やりたくないことがあり、それらを大切にする権利があります
自分のことを尊重することで、周りのひとからの尊敬も得られ、お互いに尊重しあう健康な人間関係の構築が可能となります。

「No」と言わない場合
一時的には、衝突が避けられ、ラクな選択に見えるかもしれません。でも、中期的・長期的にはネガティヴな影響を及ぼします。
実際に「No」と言いたかったのに、「Yes」と言った場合、あなたは、自分が嫌であることに時間と労力を取られ、自分がやりたいこと、好きなことをする時間とパワーが減ります。また、行きたくないという思いから、身体的に不調になるかもしれません。いつの間にか無意識化に怒りを蓄積し、どこかで爆発するかもしれません。
もし、「No」と明確に言うことが難しいと感じられるのであれば、「それ(リクエスト)については、(受け入れることを)難しく/つらく感じている」という感情を明確に併せて述べることも効果的です。「意見」について議論を行うことはできますが、「感情」について議論することはできません。あなたがどう感じるかについて、そう感じてはいけない等は誰にも言えません。
また、「No」と言いたいのに言わないのは、自分のニーズを大切にしていない、ということになります。他の人々のニーズの尊重も大事ですが、あなた自身のニーズも同じかそれ以上に大切です。

最後に、どうフェアにリクエストを行うかについて。
日本で育つと、相手の状況等を先読みし、相手に受け入れられそうなリクエストだけを表明するようになっているかもしれません。または、逆に、社会的に強い立場にずっといて、顎で指すだけ、怒鳴るだけで誰もが自分の思い通りに動く、といった環境で過ごしてきたかもしれません。或いは、Manipulative(マニプュラティヴ/操作)という悪い手法を使い、直接的なことばを使わず、泣いたり、不機嫌になったりして、相手の罪悪感を引き出し、自分の思う方向に相手を動かしてきたかもしれません。
健康な人間関係では、お互いが対等で、フェアにリクエストを行うことが大切です。また、相手は大人で「No」と言うことが可能なので、助けが必要であれば、リクエストを表明していいのです。

  • あなたには、あなたが何をしたいかを周りのひとに知ってもらう権利があることを覚えておきましょう

  • あなたの望むことを表明しないとき、あなたは自分自身への尊重を否定しています

  • あなたの望みにできるだけ近いことを得るためには、何を望みとしているかを明確にダイレクトに言う必要があります。もし、あなたが間接的にいったり、ヒントを言うようなことをしていれば、結果として、あなたの望みは理解されず、実現しないでしょう。

  • 相手には、あなたのリクエストを拒否する権利があり、あなたはそれを受け入れる必要があります

最後に、アサーションとアグレッシブ(攻撃的)であることの違いについて。
Assertion (アサーション) ー 1Assertion (アサーション) ー 2にも少し記載したのですが、大きな違いは目的です。アサーションは、お互いが譲れるスペースを作りお互いにとって一番いい着地点を探ります。お互いの権利とバウンダリーを尊重します。
また、アサーションでは、他の人々の感情、ニーズ、権利や意見を尊重しつつ、自分の感情、ニーズ、権利や意見も正直にダイレクトに、適切に表明し、それらが周りの人々から尊重されます。
周りのひとの見方に関わらず、あなたは何かしら貢献できる意見をもっています。

攻撃的であるということは、どんな手段を使っても自分の言い分が100パーセント通るようにします。そのためには、相手の権利もバウンダリーも踏みにじります。泣いたり、不機嫌になったりするManipulative(マニプュラティヴ/操作)な行動も、分かりにくいかもしれませんが、相手に罪悪感を植え付け、相手を自分の思い通りに行動させようとする点で、相手の権利とバウンダリーを踏みにじる間接的な攻撃行動です。
攻撃的な行動をする人は、自分の怒りの感情すら、相手の責任(自分が不快・怒りを感じるのは相手のせい)とします。こういった攻撃的な行動に対しては、彼らがあなたの権利とバウンダリーを侵害した瞬間・早い段階に、「No」をつきつける必要があります。あなたには彼らの怒りといった感情についてなんら責任がないことを認識しておくことが大事です。
自分のバウンダリーと、ほかのひとのバウンダリーは常に意識しておく必要があります。
当然、生まれ落ちた家族であろうと、夫や妻やパートナー、子供であろうと、それぞれのバウンダリーと権利を侵害してはいけないし、あなたのバウンダリーと権利も同様に尊重されなければなりません。

日本だけで育っていると、ヨーロピアンが気軽に何かを頼んできたりして驚くこともあるかもしれませんが、「No」と言って全く問題ないので、心から「Yes」と言えることでなければ、気軽に「No」と返しましょう。

日本社会のように「Yes」と言わないといけないのではないか、とプレッシャーに感じるかもしれませんが、ヨーロッパでは誰もそんなことを期待していないので、Unlearnしましょう。

Yoko Marta