ヒューマニティーにハイラルキーをつくらないことの大切さ

Yoko Marta
12.08.25 02:51 PM - Comment(s)

ヒューマニティーにハイラルキーをつくらないことの大切さ

国連は昨日(2025年7月29日)、ガザでは、飢餓がどんどんひろがり、現時点で50万人の人々が、飢餓レヴェルの最悪・最終段階である、「IPC段階ː5(飢餓・極度の困窮・死)」にあたると発表しました。
特に赤ちゃん・子どもには、飢餓は大きな影響を及ぼし、ある段階まで進むと、それ以降に十分な栄養がとれたとしても、心身の成長に一生にわたって悪影響があるだけでなく、その人たちの子孫にも数世代にわたって影響があることが科学的に証明されています。

イスラエル首相を含むイスラエル高官たちは、ガザでは飢餓は起こっていないと明言し、西側主要メディアは、飢餓が起こっていることを報道したとしても、自然災害で起こっているかのように書き、イスラエルが計画的・意図的に食料や水、赤ちゃんの粉ミルク、医療品・医薬品などの、生きるために必要最低限のものをブロックすることで、人工的に引き起こしている飢餓であることを隠します。
ここ数日は、嘘をつきとおすことが難しくなったことでイスラエル政府は方向転換し、「飢餓が起こっているのは国連が救援物資を配布しないから(実際は、イスラエルが国連の救援物資の配布を不可能にしている)」としていて、多くの西側主要メディアはこの嘘を拡散・増幅しています。

私の周りでも、西側主要メディア(イギリス国営放送BBCやNewYorkTimesなど)しか見ていないひとびとは、いまだに、「イスラエルは中東で唯一の民主主義の国で、ヨーロッパやアメリカと同じ人権や自由といった価値観を共有する文明化された市民たちがいる国だから虐殺などできるはずもない、パレスチナ人市民が死んだのはハマスのせいでイスラエル兵が市民を狙って殺すわけがない」です。
若い人々や、この国でのマイノリティー(非白人)は、多くの西側主要メディアのプロパガンダに惑わされず、何が起こっているかを見抜いているように思います。
そこには、どんな情報源にアクセスしているか、育ってきた環境での無意識のバイアス(白人は優秀な人種で非白人は文明化されてなく野蛮で劣っている、ヨーロッパやアメリカといった白人主要国はほかの国々よりモラルも高く優れている等)もあると思います。

「白人キリスト教徒ヨーロピアン」は、帝国主義・植民地主義時代につくりあげたアイデンティティーで、世界各地で先住民(非白人)の虐殺、エスニック・クレンジングを行い、先住民の土地や資源を奪い、生き残った先住民たちを奴隷扱いし無料か無料に近い労働力をつかうことで、白人がもともとマジョリティーだった地域(ヨーロッパ)と、先住民の大量虐殺、エスニック・クレンジングで、ヨーロピアン白人をマジョリティー・先住民に置き換えた地域(アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)で、富を蓄積してきました。

ほかの人々を残虐に扱うことは、相手を同じ人間だと認識していれば、多くのひとびとにとって、心理的にとても難しいことです。
そのため、帝国主義・植民地主義時代には、先住民たちの虐殺やエスニック・クレンジング、土地や資源を奪うことを正当化するために、新たなイデオロギーや偽科学をつくりだしました。
「白人キリスト教徒ヨーロピアン」は優勢な人種だから、劣勢な人種(非白人ー動物に近い野蛮なひとびとーもちろん事実ではない)に対して、虐殺や土地を盗んだりすることは正しく、そういったことを行う権利・資格がある、と正当化しました。
これは、イギリスで今でも人気のある元イギリス首相のチャーチルさんが明言していたことでもあります。
この歴史と社会・経済の仕組は、今も色濃く残っていで、非白人や非白人が多い地域を抑圧しています。

「ハマスが赤ちゃんの頭を切り落とした」という嘘は、何度も嘘であることが証明されたにも関わらず、現在でも、本当であるかのように出回っていて、アメリカやイギリスの議員、西側主要メディアのジャーナリストたちもこれを事実であると何度も繰り返します。
アメリカの元大統領バイデンさんは、この映像をみた、と怒りのこもった記者会見を行いましたが、後日、バイデンさん自身も側近たちも、そのような映像は全く存在しておらず、みたことはないことを明言しました。

エジプト人両親をもち、アメリカや西側諸国が中東諸国の不安定さを引き起こすせいで移民とならざるをえなかった経験をもつ、元ジャーナリストで小説家のOmal El Akkad(オマール・エル=アッカド)さんは、イギリスの主要メディアとのインタヴューで、「ハマスが赤ちゃんの頭を切り落としたというのは既に事実ではないことが証明されているのに、それを新聞やメディアは嘘だと分かっているのに広めている(=とても無責任で、ジャーナリズムの倫理責任から大きくはずれている)」といった内容のことを、インタヴュワーであるイギリスでもよく知られているブリティッシュ・ジャーナリストに会話の中で答えました。
このブリティッシュ・ジャーナリストは「戦争のさなかでは、知りえないことが多いし、ハマスが赤ちゃんの頭を切り落としたという証拠が今はなくても、将来でてくることは十分考えられるから、この情報を(本当であるかのように)流し続けることに、ジャーナリストである自分の職業上のモラルや、メディアの倫理責任においても不適切だと思わず、これを事実として言い続ける」といった内容のことを言っていて、オマールさんも絶句していました。

ジャーナリストは、真実・事実を語ることが仕事上の倫理で、よくたとえに出されるのは、「もし二人のインタヴュィーに同時に同じ場所でインタヴューしていて、一人が今雨が降っているといい、もう一人が今晴れている、といったとき、ジャーナリストの役目は、一人は雨が降っているといい、もう一人は晴れていると言っている、と述べることではなく、自分で確認して事実を言うことだ」です。
上記の場合、ブリティッシュ・ジャーナリストが、事実でないことを、事実であるかのように繰り返しひきあいにだすのは、完全に間違っていて、ジャーナリストとしての仕事上の倫理にも違反しています。
でも、このジャーナリストが批判にあったり、仕事を失うとは思えません。
なぜなら、イスラエルはいつも特別扱いだからです。

イスラエルに関することとなると、イスラエルは建国以来の70年以上にわたり、嘘を何度も繰り返しているにも関わらず、イスラエルが言うことはなんの証拠もなしに真実だと認められ、その被害者たち(特に非白人)がまぎれもない事実・証拠をもっていても、完全に疑いの目でみられ、報道されたとしても、信頼できない情報であるという印象をつくりだす前置きから始まります。

イスラエル市民で、良心を理由に兵役を拒否した若者、Tal Mitnik(タル・ミトニック)さんが言っていたことが思い出されます。
イスラエルではImpunity(インピュニティー/犯罪を起こしても罰せられないこと)が建国以来、70年以上続いていて、無実のパレスチナ市民が、イスラエル兵によって殺されることは始終起こり続けています
そのときに起こるのは以下です。

「イスラエル国防軍のスポークスマンは、まず最初に「パレスチナ人テロリストが犯人」と声明を発表(完全に嘘)し、その後に都合の悪い証拠がたくさん出てくると、数週間後に「国防軍がやったけど、この被害者の後ろにはパレスチナ人テロリストがいた(仕方ない。国防軍は悪くない)(これも嘘)」。
その後もジャーナリストや国際社会からさまざまな証拠がつきつけられ、数か月後に、とても小さい記事で「国防軍が被害者(多くは子供や普通の罪のないパレスチナ市民)を殺した」が出るそうですが、多くのユダヤ系イスラエル人の記憶に残るのは、最初の「パレスチナ人テロリストが犯人」だけだそうです。」

パレスチナ人両親をもち、クウェートで育ち(家族は、ほかの多くのパレスチナ人同様、ユダヤ兵の暴力によって祖先の地から追い出され難民となった)、イギリスで医師として長年働いているAbu-Sittah(アブ・シッター)さんは、ガザで何度も医師としてヴォランティアーを行い、実際に腕や足がもぎとられた子どもたちを毎日たくさん見ました。
今回の虐殺が始まってからも、さまざまな西側主要メディアからのインタヴューの要請がきて(西側ジャーナリストが、イスラエル国防軍の監視下以外でガザに行くことは許可されていない)、ガザの状況を伝えるため、できる限り多くインタヴューに応じていたそうです。

このインタヴューでの切り口にも、人種差別や白人至上主義は、さりげないやり方で現れます。
アメリカ人医師や、アブ・シッターさんのようにブリティッシュの医師だと、名前の前に国籍が説明され、さも、信用がおけるかのような印象をつくりだしますが、パレスチナ人医師たちは、たとえインタヴューされても、彼らには信用がおけない、といった印象が常につくりだされます。

ある日のインタヴューで、カメラが手術室の映像をとっていたとき、頭を切り落とされた赤ちゃんをカメラの前で必死にみせる若いお父さんの姿があったそうです。
それは、画面の向こう側にいる西側ジャーナリストたちに完全に無視されたそうです。
この若いお父さんは、ガザで本当に何が起こっているか、自分の赤ちゃんにどんなひどいことが起こったかを、西側のひとびとに理解してもらいたいと必死だった(事実を知れば、西側は虐殺を止めるよう心を動かされるだろうという期待)のですが、西側に長年暮らしているアブ・シッターさんは、これが無駄であることをよく知っています。

アブ・シッターさんは、「White Unseeing(ホワイト・アンシーイング)」と表現していましたが、これは、白人たちが、目の前に見えていること(非白人が白人によって残虐な目にあっている)を、見えているとして認めないよう筋肉のように訓練されていることを指しています。

アブ・シッターさんが、ガザの病院で、ひどい怪我をした子どもたちやひとびとの治療を絶え間なく行っている間、イギリスの国営放送BBCや、アメリカの主要メディアCNNから多くの取材を受けました。
何度もガザの多くの子どもたちが、爆撃や狙撃、テントに爆撃されたことで生きながら焼かれたりして、信じられないようなひどい負傷をして運ばれてくることを伝えようとしましたが、質問はいつも「ハマスを(病院内で)みましたか」「どこにハマスが(イスラエル人の)人質を隠しているか知っていますか(←アブ・シッターさんは医師でハマスの武装組織に属していないのに、まるでハマスの一員であるかのように扱う。これは、パレスチナ人の虐殺に反対し即時停戦を求めるひとびとにも同じ扱い)」「病院の地下にある(ハマスが隠れている)トンネルを見ましたか(←これは、イスラエルが病院を爆破したり攻撃したりするのに正当化として使った理由だけれど、イスラエルはこれが事実である証拠を示せたことはなく、20か月以上虐殺が続く中でも証拠が示せないということは、完全な嘘だとみられています。でも、主要メディアではイスラエルが証拠を見せないことについて全くふれず、事実であるかのように報道し続けています)」で、多くのパレスチナ人の子どもたちがイスラエルによって、ひどい負傷を受けているのが目の前の映像として見えていても、全くそのことにはふれられません。

とても明確な例としては、パレスチナ避難民が密集しているテントへの爆撃が何度も行われ、テントの中で多くの人々が焼け殺され、助かったとしても、ひどいやけどの状態で運び込まれた子どもたちが多く、それを、ただ機械的に説明するのではなく、インタヴューしている西側のジャーナリストの心に伝わるようアブ・シッターさんは努力したものの、返ってきたのは、「ハマスについて、600万人のユダヤ人は、どう感じていると思いますか?」という質問だったそうです。
この質問自体が不正確(ユダヤ人ではなく、イスラエル人なので)では、あるものの、この切り返しは、世界で考えつく限りで最悪なことが赤ちゃんや子どもに起こっていることは完全に無視(考える価値すらないー非白人=野蛮で動物に近いひとびとで命の価値はないと見ているから)し、加害者である虐殺者のイスラエル人の気持ちを考えるよう強要しています。
これは、西側ジャーナリスト一般の見方と反応です。
アブ・シッターさんは以下のように説明していました。

(西側ジャーナリストの、イスラエルによるパレスチナ人の子どもたちへの残虐な爆撃や狙撃によるひどいけがをみても完全に無視できる反応があらわしているメッセージは)人種のはしごがあり、はしごの下には非白人、はしごの上には白人がいて、非白人たちは、はしごの下に自分たちが位置することを認めなくてはなりません。
もし、非白人が「よい被害者」として、白人たちに認められれば、はしごを一つ上がることを許されるかもしれません。

 でも、パレスチナ人が「完璧な被害者」として認められることを不可能にするように、西側メディアは、必ず「パレスチナ人=ハマス」という嘘の図式をさりげなくもちこみます。
ハマスは、ガザでの民主選挙によって選ばれた政府で、政治や日々の行政機関を運営すること(ごみの収集や子どもへのワクチン接種など)も行っています。
政治組織と行政を行っているひとびとは、ハマスの軍事組織についてはコントロールはありません。
でも、西側では、ハマスがどういった組織なのかについて議論することは、ブロックされています。
ハマスは、パレスチナ抵抗組織の一つで、イスラエルの暴虐な占領・アパルトヘイト・大量殺人・子どもを含む無実のひとびとを牢獄にいれ拷問することなどから、イスラエルの違法占領への抵抗として発生したものです。
もし、これらのイスラエルの犯罪が止まらない限り、別の抵抗組織が自然発生するだけです。
国際条約で、占領・占拠に対して、占領・占拠されているひとびとが、武力を使うことも含めて、どんな手段を使っても(戦争犯罪は除いて)抵抗することが許されていることが定められていることも、知っておく必要があります。
また、パレスチナ人の有望なリーダーが現れるたび(ユダヤ人も含めた歴史的パレスチナに住むひとびとすべてが同じライツと自由をもつという穏健派で、イスラエルとも話し合いをする意志が十分にある)に、イスラエルが、暗殺を行ったり、無期限で牢獄に閉じ込め拷問を行うことも止めさせなくてはなりません。
これは犯罪でもありますが、イスラエル側のパレスチナ人を消去することが目的である長年の政策からきていて、国際社会がイスラエルにプレッシャーをかけること、イスラエルの犯罪にきちんと責任を取らせることは不可欠です。
イスラエル政府は、パレスチナ人との平和な共存は全く求めておらず、交渉だと自分たちも条件を譲らないといけないため、暴力・武力で自分たちの望み通りの結果(パレスチナ人の消去)を出そうとしています。
そのため、交渉をするようなふりをして、時間をかせぎ、その間に多くのパレスチナ人市民を殺しています。
アメリカや西側諸国の政府は、それを知りながら、イスラエルのゲームにつきあい、イスラエルが交渉をサボタージュするたびに、イスラエルを責めるのではなく、誠実に交渉を行っているハマス側を、ハマスが交渉を放棄した、というプロパガンダと何度も繰り広げています。

根本問題である、イスラエルの違法占領・占拠をやめさせ、国際条約で認められているパレスチナ人の自分の土地に戻る権利・Self determination(セルフ・デタミネーション/自決権)を実現させることを、国際社会が後押しし実行にうつさないと、今回の虐殺が沈静化したあとも、大量殺人が続くことは止められません。
カナダやオーストラリアの先住民たちへのエスニック・クレンジングはつい最近まで続いていたことは覚えておく必要があります。
私たちには、歴史から学ぶことができ、カナダやオーストラリアの先住民たちに起こった不正義が、パレスチナ人に起こらないようにする義務があります。
パレスチナ人が望んでいるのは、地球上の誰もが生まれつきもっている生きるライツや自由であり、ユダヤ系イスラエル人の支配と独占、ユダヤ人至上主義を保つために、パレスチナ人の基本的なライツがふみにじられていいわけがありません。

西側のひとびとには、「非白人は野蛮で教養もなく文化もなく動物に近いもの」という偏見は一般的で、無意識にそう思っている人たちも多いのですが、中東地域については、イスラム・フォビアもあいまって、「理由もなく、ひとを殺すことだけを考えている危険でクレージーなひとびとであふれている地域」という偏見がまかり通っています。
これは、非人間化することを加速させ、中東のひとびとには何をしてもいい、といった「製造された合意」をつくりだします。
中東では、アメリカをはじめとする西側諸国から、長年にわたって、何度も国際法違反の侵略にあい、多くの無実の市民が殺され続けています。
中東のひとびとにとっては、アメリカや西側諸国のひとびとは、「ある日突然自分の国に圧倒的な武力で攻め入ってきて、無実の市民たちを意味もなく毎日のように多く殺す殺人者/経済制裁で多くの市民の生活を難しくし、命を奪うひとびと」です。
それに対して、西側諸国が責任を取ったことはありません。

ガザで、たまたま迷い犬を見つけたパレスチナ人の少年が、その犬との写真をソーシャル・メディアにアップデートしていると、ヨーロッパの動物愛護団体から、犬の写真と犬が住んでいる場所の写真を送ってほしい、というリクエストがきたそうです。
少年が写真を送ると、爆撃や飢饉が続いて何度も避難場所を移動し続けることを強要され、心身ともに弱っている少年に対しては、大丈夫かどうかの気遣いのことばは全くなく、その動物愛護団体からは、犬がかわいそうだから、もっと犬の福祉にふさわしい食料も十分にあり、広い場所で遊べるように、動物愛護団体が手配してなんとか犬をドイツに送りたい、ということだったそうです。
少年は多くの親戚や友達も失っていて、自分自身も飢餓に苦しんでいます。
でも、この西側のひとびとには、パレスチナ人少年の命は、犬よりもずっと価値が低いものとなっていることが明らかです。
また、燃料がイスラエルによってブロックされていて、唯一の移送手段だったロバを、イスラエル兵がパレスチナ人から取り上げてフランスの動物愛護団体に送ったケースも報道されていました。

ずいぶん前の話では、ヴェトナム戦争が起きているとき、アメリカの大学で勉強していたヴェトナム人学生が、ヴェトナム戦争はアメリカが多くの無実のヴェトナム人の子どもや女性を大量に殺していたにも関わらず、なかなかプロテストをする学生が集まらないので、「この日の午後1時に、大学の前で犬を殺します」と書くと、信じられない人数の学生が集まったそうです。
もちろん、この学生は犬に危害を与える意図は全くなかったので、アメリカが殺しているヴェトナム人市民たちのことを、せめて犬の命を大切だと思うレヴェルで考えてほしい、という演説を行ったそうです。

アブ・シッターさんも、西側メディアは、パレスチナ人の子どもたちが数千人殺されても、全くなんとも思わないし、ただの数でしかないけれど、猫や子猫が同じ数だけ殺されたとすれば、大きくニュースで取り上げられ、多くのひとが心から同情しただろうことを話していました。

この「White Unseeing(ホワイト・アンシーイング)」は、生まれつきではなく、白人マジョリティー社会で育つことによって、意識的・無意識的に社会で訓練されて身につけたものです。
マジョリティーが、日本のように日本人(非白人)であれば、日本人として認識されていないひとびとの苦難を見ないふりをする、あるいは日本人グループの中に、undeserving(アンデザーヴィング/(マジョリティーと同じライツや扱いを受けることに)値しないーマジョリティーの命の価値より低い)なグループを作り出して、そのグループに対しての残酷な扱いは当たり前として受け入れさせるように、社会が訓練し、Unseeing(アンシーイング)が起こるようにしていることかもしれません。

先述した、パレスチナ人の赤ちゃんの頭が切り取られた映像を何度みても、それは見なかった・存在しなかったことにされますが、存在しない(だから見たこともない)イスラエル人の赤ちゃんの頭が切り取られた想像上のことは、事実だとして、なんの疑問もなく、今でも受け入れられています。

パレスチナ人(非白人)の命が、西側諸国によって、気にかけるべき問題となるのは、「西側諸国にとって脅威をもたらす」と認識された場合のみです。

アメリカや西側諸国がバックアップしたイスラエルによる虐殺、エスニック・クレンジングは、パレスチナ人やパレスチナ人の虐殺に反対するひとびと(特に非白人であるアラブ系のひとびとやイスラム教徒であるひとびと)が、20年後に、復讐として西側諸国に攻撃を行う可能性がある、という恐怖が既につくりだされ、被害者であるパレスチナ人たちは、被害者としてではなく、「(西側諸国にとって将来の)脅威」として扱われています。
これは、イスラエルと西側諸国にとって「共通の関心」となり、ますますこの腐敗した関係を保持し続ける理由となります。
西側諸国・イスラエルの価値観は、自分たち(白人或いはユダヤ人)の命や生活のクォリティーは何よりも尊く、それ以外のひとたちの命や苦難が自分たちの目に入るのは、それが自分たち(白人)の特権を脅かすときだけ」という社会的構造は変わらなくてはいけません。

日本に住んでいて、日本人だと認識されるアイデンティティーでマジョリティーとして暮らしていると、ガザで起こっていることが、自分とは全く関係ないことのように思えるかもしれませんが、私たちのヒューマニティーはつながっています
「誰かの命は、ほかのひとよりも価値があるーヒューマニティーのハイラルキー」がある場所には、暴力や不正義が起こります。
小さなスケールでいえば、女性に対するセクシャル・ハラスメントやドメスティック・ヴァイオレンスなども、世界的に、女性の命や存在価値は、男性よりも低いとされている社会の風潮、ひとびとの考え方、社会構造が大きく影響しています。

移民や外国人、心身に障害があるひとたち、マジョリティーと違う性的志向をもつひとたちに対しての差別や暴力も、「その地域でマジョリティーであるひとの命や存在の価値>>>>マジョリティーでない人たちの命や存在の価値」というハイラルキーからきています。
ガザで起きていることから目をそらさないこと、地球上に住む人類(ヒューマニティー)の仲間として、自分の周りのマジョリティーでないひとびとが不正義にあっているときに一緒に不正義に対して闘うことも、虐殺が起こらない世界にすることを助けます。

【参考】
Tal Mitonikさんに関する記事:
https://www.thegreencatalyst.com/blogs/post/20240102

Yoko Marta