潮流が変わるとき ー 虐殺が起こることを許した世界の構造をかえる
ある日、誰もが、自分はこれ(イスラエルによるパレスチナ人虐殺)に反対だったというでしょう。
「One day, everybody will have always have been against this」
これは、エジプト生まれ(両親はエジプト人)で、カタールで長く育ち、16歳でカナダに移民し、現在はアメリカに住むジャーナリスト・作家のOmar el akkad(オマール・エル=アッカド)さんの本の題名です。
イギリスに25年間住んでいるので、日本でパレスチナ人虐殺がどう扱われているかは、よく分からないのですが、イギリスを含む西側諸国(ヨーロッパ、アメリカ・カナダ・オーストラリア等)では、パレスチナ人虐殺に反対し、イスラエルが即時に虐殺をやめるよう求める人々は、弾圧されています。
病院や大学などで働いていて、この姿勢を明らかにしただけで解雇されたり、それを求める団体にテロリスト法が適用され、その団体を支持していると表明しただけで、数十年牢獄にいれられることさえありうる、という状況です。
イギリスでは、パレスチナ人の両親をもつ子どもが、パレスチナ国旗のとても小さなバッジをシャツにつけていただけで、学校から、そのバッジを外さないと登校を許さない、とされたケースもあります。
アメリカでは、パレスチナ人への虐殺に反対しているだけなのに、退学させられたり、ヴィザを取り上げられた学生たちもいます。
でも、ヨーロッパでもアメリカでも、ウクライナの国旗をかかげたり、ウクライナ国旗のバッジをつけたり、ウクライナの反撃・攻撃をたたえる言動は、全く問題になりません。
イギリスやヨーロッパ諸国でも、ウクライナからの難民は特別のヴィザがあり、移民へのしめつけが厳しくなっているにも関わらず、優先して受け入れられ、仕事も自由に行うことができるフレキシブルなヴィザとなっています。
ウクライナ人が占領されている地域で、ウクライナ人がロシア兵に対して手りゅう弾を投げたり、抵抗を行うことは、賞賛をよび、「英雄」扱いをされます。
でも、数世紀にわたって住んでいたパレスチナ人を、ヨーロッパからやってきた白人ユダヤ人が、虐殺、エスニック・クレンジングを行って追い出し、その後も70年以上にわたって、(国際法違反の)占領、包囲、アパルトヘイト、大量殺人、エスニック・クレンジングを行い続けているにも関わらず、パレスチナ人の子供がイスラエル兵に対して小石を投げるような抵抗を行っても、西側主要メディアや市民からは眉をひそめられ、イスラエルがどんなに残虐なことをしようとも、パレスチナ人が抵抗することは、テロリスト行為とされるか、「正しい」抵抗ではないとされてしまいます。
実際、西側諸国では、パレスチナ人は抵抗すること自体が許されていなくて、黙ってイスラエルに殺されるか、イスラエルからの暴虐な抑圧のもとで非人間的な扱いに耐えて自由やライツもない状態で過ごすか、別の国に難民としてわたることを受け入れるか(多くは、結局近隣の国の難民キャンプで数世代、無国籍で過ごすことになり、その国の政情がかわれば、あっという間に追放されるという不安定な状態)しか認められません。
ここには、人種差別、イスラム・フォビアもありますが、イスラエルは西側の帝国主義・植民地主義を行っている仲間で、イスラエルに抵抗することは、西側社会全体の構造に抵抗することだとみられ、どんな抵抗も許さない(帝国主義側のマジョリティーの人々がハイラルキーの上で、支配される側の非白人たちは野蛮人で文明もなく下で、人間以下の扱いをしていいという根深いイデオロギーからきている)、ということになります。
ロシアは白人がマジョリティーではあるものの、西側諸国の敵とみなしているので、それに抵抗するウクライナは喜んで受け入れる、という面もあります。
一方で、多重国籍をもっているユダヤ系ヨーロピアンが、イスラエル軍での兵士として従事するために渡航し、ガザやウエストバンクでパレスチナ人に対する戦争犯罪を行っても、国籍を取り上げられたり尋問にあうことはありません。(※1)
彼らは、ヨーロッパ生まれ・ヨーロッパ育ちで、ヨーロッパに市民権があり居住しているひとびとであり、本来なら、別の国の戦争に参加すると、ヨーロッパに帰国した際に尋問や、国籍をはく奪されて入国できなくなることにもつながりかねません。
メディアもひどい状態で、以前、オマールさんも指摘していたように、虐殺を助ける役割を果たしています。(パレスチナ人の非人間化、パレスチナ人虐殺を報道しない)
例としては、以下です。
(私の記事からの引用)
たとえば、4才の女の子が家族と一緒にいるところに、イスラエル兵に狙撃されて頭をうち抜かれて殺されたときの報道は以下でした。
「ある銃弾が車の中に向けて入り込み、4歳の若いLady(Childではなく、レイディーということばを用いることで、大人の女性のような印象をつくりだす)に衝突した」
アラビア語と英語の両方が母国語であるオマールさんにとっても、何度か読み返さないと意味が分からないような文章が並びます。
これは、偶然ではなく、故意に、加害者も加害も消し、被害者は自然災害で亡くなった若い女性(子供よりショックが少ない)という風な印象をつくりだしています。
また、戦争犯罪である、イスラエル軍による病院の爆撃もたくさん起きていますが、これも、以下のように報道されます。
「病院が燃焼した」
まるで、病院が自分で勝手に火を出して燃えたかのような印象をつくりだします。
ここでも、加害者のイスラエルの存在と加害が消されています。
(引用終わり)
オマールさんは、ある日、オランダ育ちのパレスチナ人ジャーナリスト・アナリストのMouin Rabbani(モーイン・ラッバーニ)さんのポッドキャストに出演していました。
オマールさんは、パレスチナ人虐殺について黙っていることで、自分のヒューマニティーや魂を失うことは耐えられなかったので、パレスチナ人虐殺に反対する表明しました。
そのことにより、著作の映画化の話は消え、多くの講演がキャンセルされました。
それについて後悔はないものの、多くの影響力をもっている人々は、ガザについては沈黙を続けています。
西側ではよく知られているフェミニスト団体やヒューマン・ライツ団体の人々も、ガザで虐殺にあっているのは多くが女性や子どもであるにも関わらず、沈黙を続けています。
大学などのアカデミックも同じです。
なぜなら、これらの団体やひとびとは、イスラエルの占領と虐殺から大きな利益をえている国際企業や団体から直接的・間接的に献金などを受けているので、自分たちの快適な生活やキャリアのために、自分たちの信条(フェミニズムやヒューマン・ライツ)から目を背けているからです。
自分たちの都合のいいときにだけヒューマン・ライツについて声高にいい、虐殺のように人類のヒューマニティーが問われていて、これらの団体が本当に必要なときに黙っているのは、hypocricy(ヒポクラシー/実際には自分がもっていない信条をもっているふり・演技をしている)で、ガザの虐殺は、リトマス紙のように、ひとびとや団体・機関・政府のヒポクラシー、歪んだ仕組をあぶりだしました。
ガザでは、現在は、飢餓が浸透し、飢餓の影響を強く受けやすい子どもたちだけでなく、大人たちも飢餓で死に始めました。
飢餓が、イスラエルによって人工的につくられたものであることは忘れてはいけません。
ガザのチェック・ポイントには、国連などからの救援物資のトラックがたくさん待機していて、イスラエルが許可すれば、すべての人にいきわたるだけの十分な、栄養のある食料、粉ミルクや医療品や燃料(浄水施設、電力、車などエイドを届けるためにも必要)があります。
欧州連合からの、エイド物資の許可を出さなければ貿易に関する取り決めを見直す、というプレシャーによって、イスラエルは限られたトラックを許可しましたが、虐殺以前は一日あたり500以上のトラックが
物資を運んでいたのにくらべて、許可されたのは数十台で、その数十台も、イスラエルがバックアップするギャングに強奪されるルートをイスラエルが指示し、イスラム教過激派ともコネクションのあるギャングの強奪を止めようとするパレスチナ市民や警察・抵抗組織の人々をイスラエル兵が撃ち殺しています。
そのため、市民たちに届いている救援物資はわずかか、ほぼないと見られています。
ちなみに、イスラム教過激組織と、パレスチナ抵抗組織は敵対関係にあり、イスラエルは、パレスチナ抵抗組織はイスラム教過激派組織と同じだと西側の人々にプロパガンダを繰り広げますが、パレスチナ抵抗組織は、イスラエルの占領に反対する組織で、パレスチナ以外の地で武力闘争は全く行っていないし、世界をイスラム教に変えるといったイデオロギーはありません。
逆に、イスラエルやアメリカは、自分たちの都合によって、これらのイスラム教過激組織に資金提供や武器提供を行ってきています。
同時に、飢餓で苦しみ、何度も強制移動させられている市民たちが密集したテントに爆撃が毎日のように落とされ、多くの人々が殺され、負傷しています。
ガザ人道財団という、「エイドのふりをした死の罠ー エスニック・クレンジングのツールの一つ」でも、小麦粉などの救援物資を受け取りにきたひとびとが、イスラエル兵やアメリカ民兵によって、ゲームのように狙撃されたり戦車から撃たれたりして、毎日、100人近くの人々が殺され、数百人が負傷しています。
この救援物資地点(国連組織は400以上の供給地点があるのにくらべ、ガザ人道財団は南部に4つだけー北部のひとびとを強制的に南部に移動させ、そこからエジプトなどの別の国にパレスチナ人を追放するエスニック・クレンジングの計画の一部)では、生体認識などの偵察技術のいくつもを通過する必要があり、誰も武器はもっていない飢餓に苦しんでいる市民であることは明らかであるにも関わらず、イスラエル兵・アメリカの民兵たちは、自由にいつでも射撃してもいい、という軍隊からの許可がでていることを、内部密告者の兵士がニュースで証言していました。
ガザ出身のアナリスト・ジャーナリストのMuhammad Shehada(ムハマッド・シェハーダ)さんは、まだ生き残っている友人や親戚は、死ぬ可能性が高いことがわかっていて、子どもやほかの家族が「飢えて死ぬことを待つことはかまわないから、ガザ人道財団の救援物資の配布場所には行かないで」と泣いて頼まれても、行かなければ家族が飢えて死ぬことは確実で、自分たち自身も飢餓状態でうまく思考が働かず、とにかく家族のために食料を手にしなければ、とゾンビのように身体を引きずって、行く状態だそうです。
この道程で、イスラエル兵に誘拐されたり撃たれたりすることも毎日起こっていて、ムハマッドさんの友人の一人は、10年前の13歳ぐらいのときに、平和なデモンストレーションに参加した写真がフェイスブックにあり、その写真の中に、たまたま現在、パレスチナ抵抗組織の一員となったひとが写っていたという理由で、テロリストの一員として牢獄にいれられ、裁判もないまま、イスラエル人との捕虜交換がない限り、牢獄から自由になるチャンスはないそうです。
もちろん、彼は普通の市民で、武器をもったことすらありません。
現在、こういった不当に牢獄にいれられているパレスチナ人は、一万人をこえていて、国際法違反である、子どもを牢獄にいれることも長年起こっていて、拷問やレイプも始終起こっていることは、国際団体や国連団体も、国際規範に基づいた調査をまとめた報告書もきちんと存在します。
パレスチナ人に対しては、イスラエルの軍事法が適用され、裁判があったとしてもすべてヘブライ語で、パレスチナ人の母語アラビア語は使われず、罪状が明かされないことも多く、結局は、何も悪いことはしていないのに、釈放されるには、自分が行ってもいない犯罪を行ったとサインするしかない場合も多いそうです。
イスラエルはパレスチナ人にどんなに残虐で不当なことを行っても、責任を取ることはないし、イスラエル兵は、自分たちにはどんな法律も適用されないことはよく知っています。
最近は、パレスチナ人が、ガザの海に行くことも禁止され、ガザの海に座って携帯電話で海の画像をとっていた若いパレスチナ人男性は射殺されました。
包囲で食べ物もないひとびとが、海に漁にでかけ、イスラエル兵に拿捕され、行方不明になっているケースもあります。
病院にも、イスラエル兵が攻撃・侵入し、医師をさらって行方不明にしたり(恐らく拷問にかけている)しています。
医療関係者の多くが、イスラエルに狙われて殺されています。
治療できるひとがいなくなり、パレスチナ人が死ぬことを早める目的だけでなく、医師や看護師は虐殺の証人なので、証人を消す目的であることも指摘されています。
ジャーナリストたちも二百人以上が殺され、ジャーナリストが少なくなっている現在でも、毎日のようにジャーナリストが狙われて殺されています。
このガザの状況から、目をそらすということは、自分のヒューマニティーもなくなっていくことにつながります。
沈黙している著名人が多いものの、どんな困難にあっても、ガザの虐殺を止めるよう、話し続ける人たちもいます。
Youtubeにも番組をもつ、子供たちに大人気の教育専門家、Ms.Rachel(ミズ・レイチェル)さんは、どんなにパワフルな機関や団体から攻撃を受けても、「子どもたちが爆撃にあったり飢餓にあうのは、絶対に間違ってる、すぐに止めないといけない」と大きく主張し続けています。 レイチェルさんは、番組のなかで、足を切断せざるをえず義足となったガザの少女と一緒に楽しく踊っている姿もあり、立派な服や恰好をした政治家たちより、よっぽどヒューマニティーがあり、自分の信条をしっかりと守り、一貫した行動であらわしています。 「虐殺」という人類が行う犯罪のなかでも最悪のものが起こっている現在、「沈黙」は、虐殺に加担することを意味します。 ドイツでユダヤ人に対する虐殺が起こりえたのも、多くの人々が沈黙していたからです。 いつか虐殺が沈静化するときはきます。 そのときに、これらの沈黙していた人々が、「私たちはいつも虐殺に反対して声をあげていました」と声高にいうのは、簡単に予測がつきます。 なぜなら、その段階では、虐殺はもう戻ることのできない段階まで進んでいて、「過去のこと」であり、それについて発言しても、なんの代償も支払うことがないからです。 それどころか、虐殺について講演したり、書いたり、歌ったりすることで、お金儲けもすることも積極的に行い、なんの罪悪感もいだかないでしょう。 彼らは、一般のひとびとは、彼らが、虐殺が起こっていた時に沈黙していたことは忘れていると予測していて、それは、実際、ほとんどの場合、そうなのかもしれません。 彼らも含めたリベラルというグループに入る人々(教養がある程度高く、収入の高いホワイト・カラーの職をもっていて、既存の権力の仕組から利益や権力・優遇を受けている人々)は、パレスチナ人虐殺が起こっていることを認めることで、自分たちの快適な生活が崩れるのをいやがっています。 彼らは、「今はこの不快なことが起こっているけれど、自分や自分の家族に起こっているわけではないから、ただ単に気づかないふりをして、悪いこと(虐殺)が彼らに(パレスチナ人たち)に起こることをそのままにして、放っておこう。これ(虐殺)は、どこかの時点で終わる。終わるまで、目を背け続けていれば、自分には目を背け続けていたことへの褒美があるだろう。そして、これ(快適な生活)は、永遠に続くだろう」と思っています。 「褒美」とは、虐殺反対を表明しないことで、自分の快適な生活(グレードの高い携帯電話や数時間で届くアマゾンの注文など)や社会階級、人間関係を保て、そのあとは虐殺について書いたり、講演するなどして、「虐殺」から利益をえることも指しています。 オマールさんは、長い目でみると、虐殺が起こることを許した世界の秩序・システム・構造が、この世界で一番危険な、生存にかかわる危険な面だとしています。 アメリカでは、現在、トランプ政権が、移民を罰しています。 移民のように見える(=現在は南アメリカ出身にみえる人々)というだけで、突然路上から、移民警察にさらわれ、移民収容施設に送られ、合法的に数十年にわたってアメリカに住んでいても、別の国の監獄に送られることも起こっています。 ちなみに、アメリカは、イスラエル・カナダ・オーストラリアのように、西ヨーロッパから侵略してきた白人が、数世紀にわたって住んでいた原住民のひとびと(非白人)を虐殺し、土地や資源を奪い、生き残った原住民のひとびとを奴隷扱いし、侵入者の白人がマジョリティーとして置き換わった国(もともとのマジョリティーは、原住民の非白人)です。 これは、移住者植民地主義とよばれていて、帝国主義・植民地主義・資本主義が大きく関与しています。 アメリカでは、原住民を虐殺、エスニック・クレンジングして土地と資源を盗むために、原住民の命・生活を支えていたバッファローを大量に殺し、原住民が飢餓で死ぬしかない状況に追い込み、生き残った人々を貧しい土壌の狭い地域に押し込めたことも記録に残っています。 でも、多くのアメリカ人(特に侵略者のヨーロピアン白人を祖先とするひとびと)は、こういった自分たちに都合の悪い歴史は無視し、アメリカは自由と民主主義を大切にし高い文明ともつというプロパガンダを信じ込み、非白人を自分たちより劣った人種だと信じてそのように行動します。 そうすれば、自分たちの祖先がほかのひとびとを残虐に殺し、土地や資源を盗んで、その盗んだ土地の上に住んでいることを考えずにすみ、自分たちをピュアでモラル・教養の高い文明人だと思い続けることができます。 ここには、イスラエルとアメリカのパラレルもみられます。 アメリカは、「野蛮な動物のようなひとびとが意味もなく攻撃してくる(←原住民が盗まれた土地や資源を取り戻そうと抵抗・対抗しているだけ)荒野で、彼らと果敢に闘って勝利した英雄である開拓者(侵略者であるヨーロピアン白人キリスト教徒)が、荒野を花開く豊饒な土地へと変えた」と、イスラエルは、「荒野で誰もいない地に(←荒野では全くなくパレスチナ人たちが数世紀にわたって文明を花開かせていた+肥沃な美しい土地)、多くの敵に囲まれて攻撃を受ける中で、勇敢に敵を倒しつづけハイテックな兵器産業をつくった素晴らしい兵士たち・ユダヤ人の国」です。
イスラエルがパレスチナや近隣の国々から、武力抵抗、経済的・文化的な抵抗を受け続けるのは、パレスチナの資源や土地を盗み続け、アパルトヘイト・占領・大量殺害を70年以上にわたってパレスチナ人に対して行い続けているだけでなく、シリアやレバノンにも違法侵略し、多くの市民を殺し続け占領を行い、イランに対して国際法違反の奇襲を行い多くの市民を殺し、イランの科学者や軍事・政治関係者の暗殺をいたるところで行っているからです。
歴史をみると、イスラエルとアメリカ(イギリスやフランスも含む)が、世界中にテロ(軍事クーデーターで西側に都合の良い傀儡政権をおいて、その地域の資源をコントロール)を巻き起こしのは事実です。
地球上の多くのひとびとにとっての脅威は、イスラエルやアメリカであることは明白です。
西側に住んでいると、中国やイランが脅威だというプロパガンダを吹き込まれますが、この二国は、数世紀にわたって外国に対しての侵略を行ったこともなければ、アメリカやイギリスのように政権転覆のために諜報機関をつかって軍事クーデーターを多くの国々に起こしたり、気に入らない政権に反対する過激派組織に武器や資金を提供して間接的にその国を不安定にさせ、資源のコントロールを行うなどは、全くしていません。
多くのリベラル・グループの人々は、特権のあるグループで、自分たちは、移民でもないし、白人だし、現在起こっていること(移民が道端から暴力的に誘拐され、移民収容所にまともな法律手続きがないまま押し込められる)は、自分たちには関係のないことだと思うでしょう。
なぜ、移民迫害から始まるかと言えば、社会の構造上、これらの人々の立場は弱く、彼らを迫害しても、政権が責任を取る必要はほぼ生じないからです。
でも、オマールさんは、このシステム(帝国主義・植民地主義・資本主義)は、「insatiable(インサティアブル/とどまるところを知らない欲求・強欲」であり、迫害のターゲットが、移民で終わるとは思っていません。
迫害のターゲットになるのは、「移民→政権に反論をとなえるひと → 政権に降伏していいなりになるひと →自分たちトップの権力者間」の順に進み、誰もが迫害のターゲットになる、とみています。
実際、アメリカのエリート大学とされる、コロンビア大学の元学長のミノーシュ・シャフィークさんは、いわれのない反ユダヤ主義を責められ、反論できたのに反論せず、トランプ政権に完全降伏し、言いなりになることを選択し、虐殺反対をとなえる学生たちを退学処分にしたり、デモンストレーションを禁止したり、警察をキャンパスに自由に入らせて学生たちを偵察・逮捕させたりしましたが、結局は退任へと追い込まれました。 オマールさんは、このとどまることを知らない強欲の飢餓には、最終地点はなく、パレスチナ人全員が殺されても、あるいは、別のグループの人々が全員殺されたとしても、終わらないだろうとしています。
終わるのは、世の中に住んでいるすべてのひとびとが殺されたあとです。
なぜなら、彼ら(現在のシステムのトップに座っているひとびと)は、それ以外(資源や利益を奪うためにひとびとを殺すこと以外)に何をしていいか、知らないからです。
オマールさんにとって、これは、どんな犠牲を払っても、闘い続けていく必要のあるものです。
オマールさんは、以下のように言っていました。
なぜなら、この世界には、別の秩序も可能です。
それは、私たちがお互いを生きたまま食べるようなことがないものです。
もし、この考えがナイーヴで、ありえないこと、絶望するほど遠い場所にあるようにみえるのなれば、それは、私たちの現在の(世界の)仕組みや考え方が、私たちをそう思うように仕向けているからです。
私は、それが真実であるとは思いません。
だからこそ、この本は、どんな価値があろうとなかろうと、私が書いた中で、一番希望のもてる内容です。
毎日、目を覚ますとき、すべてが無くなるまで、吸い上げ、吸い上げ、吸い上げるような世界を信じる磁石のように強力なアピールがたくさんありますが、私は、そんな世界に住みたいとは思いません。
オマールさんは、この本の読者から外すグループとして、世界では大多数のパレスチナ人虐殺に反対を表明している人々(既に、オマールさんと同じような結論にきているから特に本を読む必要はない)と、狂信的に虐殺が正しいと信じているひとびと(イスラエルのユダヤ人だけでなく、アメリカの福音主義のひとびとの中には、イスラエルをユダヤ人だけの地域にすればキリストが再降臨するので、どんな手段をつかってもパレスチナ人を消すことは神の教えに従っていて正しいするひともいるー現在のトランプ政権の閣僚たちも含めて)です。
オマールさんが、この本の読者として考えているのは、先述したような、いわゆるリベラル・グループに入る人々です。
これらの人々の数は多くなくても、政治やビジネスで大きな力をもっていることが多く、世界の流れに対する影響は大きいので、このグループの人々の考えや行動が変わることは、虐殺を止めることにも効果をもたらします。
オマールさんは、最近の文学フェスティヴァルで、少し希望がみえることがあったとしていました。
アメリカのポートランドの文学フェスティヴァルで、フェスティヴァルのオーガナイザーが、パレスチナ人の虐殺が起こっていることを認める発言をしたとき、多くのリベラルたちは、とても心地悪そうにしていたそうですが、その発言が終わるころには、まわりが拍手しているのをみて、仕方なく拍手をしていたそうです。
これらのリベラルとされるひとびとは、確固とした信条はなく(既存の社会構造から優遇・特権を受け続け、物質的に快適な人生を送ることだけが大事)、自分たちの階級に所属するひとびとに「自分がどう見られているか/彼らにとって自分は受け入れられるか」を大きく気にしているので、世間の流れが変われば、彼らも変わります。
このリベラル・グループが変わるときが、Civil Movement(アフリカ系アメリカ人公民権運動)でも起こったように、社会全体の潮流が大きく動き、必要な法律などが変わるときです。
そのときは、意外と早くくるのかもしれません。
(※1)最近、イスラエルで戦争犯罪を行った兵士2人が、ホリデーでベルギーのミュージック・フェスティヴァルに参加しているとき、ベルギー警察に国際犯罪(戦争犯罪)の疑いで逮捕され、尋問を受けました。いったん釈放されたようですが、犯罪のケースがオープンされ、調査・尋問は続く予定で、彼らはベルギー国内にとどまることが課されたようです。
これには、虐殺の犯罪者の責任を問う団体、Hind Rajab FoundationとGlobal Legal Action Networkの根気強い証拠集めと、国際的な働きかけがあります。
虐殺が2年近く続く中、国際法も何も役に立たないと、絶望的な気持ちになるかもしれませんが、さまざまな団体が既存の法律を使い、虐殺を行っている人々が責任を取るよう、行動を続けています。
また、 それぞれの国が国際法や国内法にしたがって、これらの戦争犯罪者を逮捕して、相応の責任(投獄)を取らせるようになれば、戦争犯罪を犯すこと自体をとどまる可能性も高まります。
記事は、イギリスの独立系メディア、Middle East Eyeのここより。
【参考】
パレスチナの占領経済から虐殺経済 へー 占領と虐殺から大きな利益をあげている企業や団体、アカデミック
https://www.thegreencatalyst.com/blogs/post/20250715