占領経済から虐殺経済へ ー どうこの経済システムを壊すか
パレスチナ占領地域の国連特別報告者であるFrancesca Albanese(フランチェスカ・アルバネーゼ)さんが、今年(2025年)6月30日に国連に提出した報告書「From economy of occupation to economy of genocide (占領経済から虐殺経済へ)」から。
フランチェスカさんの鋭い分析は、世界的に著名な経済専門家たちからも支持をえていますが、アメリカ政府から、イスラエルを批判しているとして、フランチェスカさんへの制裁措置(アメリカの資産の凍結等)が発表されました。
これは、国際法違反です。
ちなみに、アメリカ政府は、イスラエル首相のネタニヤフさんに対して、ICC(国際刑事裁判所)が逮捕状を出したことで、国際刑事裁判所のトップだった、ブリティッシュのカリーム・カーンさんにも同様の制裁を行いました。
この裁判に関わった4人の裁判官たちにも同様に制裁措置を行いました。
ネタニヤフさんに対しては、イスラエル国内でも汚職裁判が続けられていますが、アメリカ首相のトランプさんは、外国のことでもあるにも関わらず、イスラエル裁判所に対して、ネタニヤフさんの汚職裁判を停止するよう公言しています。
トランプさんは、トランプさん自身に犯罪歴があり、就任初日には、トランプさんが示唆して起きた議会襲撃に関わった暴徒たちを恩赦で解放しました。
議員の命を守るために、暴徒に殺された警察官たちがいるにも関わらず、です。
暴徒の一人の女性が、副大統領のいた場所によじ登り、危険なレヴェルで近づいたため警官が銃を発射して殺されましたが、女性の遺族には、大きな賠償金(約7億円)が支払われました。
アメリカ司法では、警察官の行動は、法的に正しかったとされていますが、トランプさんは、彼女は「無実」で、射殺されたのは違法だとしており、暴徒たちからは彼女は「殉教者」として祭り上げられています。
彼女が警察に止められなければ、閣僚や議員たちに対して深刻な傷害を与えることが確実だったにも関わらず、です。
これらは、国際司法や国際ルールを完全に破る・無視するものであり、世界中を危険にしていることは覚えておく必要があります。
これらを、普通のこととして、normalise(ノーマライズ)することのないよう、おかしいこととおかしいと気づけるモラルや気づきを持ち続けることは大切です。
ただ、アメリカだけでなく、イギリスやフランスのような西側諸国は、暴力や虐殺で植民地国から資源や労働力を数百年にわたって盗み続けたあと、植民地国が多くの犠牲を払って独立した後も、資源のコントロール・搾取を続けるために、直接的・間接的に軍事クーデターや紛争を引き起こして、民主的に選ばれたアフリカや南アメリカ地域の首相を暗殺したり、ひきづりおろして西側の傀儡政権をおいてきた歴史は現在も続いています。
西側諸国のいう「民主主義/国際ルール/自由・人権」といった美しいことばが、ダブル・スタンダードであり続けたことは認識しておく必要があります。
フランチェスカさんの報告書は、イスラエルのパレスチナ地域の違法占拠や、イスラエルによるパレスチナ人虐殺が、いかに多くの企業やアカデミアに利益をもたらしていて、だからこそ、このつながりをたたなくてはならないことを述べています。
60社近い企業名があがっていますが、これらの企業は氷山の一角で、大事なのは、占領や虐殺といった非人間的なことから利益をえる仕組に気づき、それを壊して、ひとびとの命を同等に大切にする本当の意味で平等で平和で正義のある社会をつくることです。
フランチェスカさんは、あるインタヴューで、「もしガザが犯罪現場であるならば、私たち地球上の多くの人々の指紋があちこちに残っている」と答えていました。
それだけ、イスラエルの占領経済と虐殺経済に、多くの企業が関わって利益をあげていて、気づかないうちに、私たち自身も間接的にこの経済に関与していることを気づかせてくれます。
最初にこの虐殺を止める責任があるのは、政府、これらの企業であり、最後に地球上の市民たちが、これらの企業の商品やサービスを買ったり使うことをやめるーBDS(Boycott, Divestment, and Sanctions/ボイコット、投資撤収、制裁)ということになります。
地球上の多くの地域でデモンストレーションやマーチが繰り返し起こり、さまざまな国での国民調査でも、圧倒的に多くの市民たちは、虐殺を即座にとめることを求めています。
でも、イギリスやアメリカなどの西側諸国は、いまだに武器をイスラエルに送り続け、虐殺についてジャーナリストや市民に聞かれても、政府は、虐殺が起こっていることを否定し、「イスラエルには自衛権がある(=イスラエルのパレスチナ市民に対する大量殺害や病院・学校への爆撃、包囲して人工的な飢餓を起こすことは正当防衛)」とオウムのように繰り返します。
でも、「パレスチナ人には自衛権がある」とは決して言いません。
国際法では、被占領者(パレスチナ人)には武力をつかってでも占領者(イスラエル)に抵抗する権利がありますが、占領者であるイスラエルが、占領下のパレスチナ人に対して正当防衛を主張することはできません。
また、国際法では、占領者(イスラエル)は被占領者(パレスチナ)に対して食料や水などを十分に供給する義務があります。
イギリスの現首相キーア・スターマーさんは、元人権弁護士ではあるものの、2023年10月時点で、「イスラエルは、ガザ地区に対して、水・Power(電気・ガスなど)を完全に止める権利がある」と発言して、大問題になりました。
市民に対して水や電気をとめたり、飢餓を武器として使うのは、国際法違反で犯罪です。
キーアさんは、自分の言ったことが曲解して解釈された、という言い訳をしていましたが、この発言のあとに、同じ労働党の高い役職をもったエミリーさん(元弁護士)が、キーアさんの発言を正しいと繰り返していたことから、曲解でなかったことは明らかだと見られています。
現在は、イスラエルが人工的に飢餓を引き起こしていることは明白ですが、イギリス政府は、イスラエルのプロパガンダ(「イスラエルには自衛権がある/ガザの市民ではなくハマスをターゲットにしている/すべてはハマスのせいでイスラエルはパレスチナ市民を殺したくないのにハマスが市民を盾として使うせいで市民が死んでいる」等)
を繰り返すだけで、虐殺を止めようとする動きは全く見られません。
最初の発言からしても、それは明白だったのかもしれませんが、ロシアによるウクライナ侵略については、正反対の対応で、人種差別・イスラムフォビアもあるのでは、とみられています。
また、イギリス政府は、常にアメリカ政府がどう言うかを待ち、アメリカ政府の声明やストラテジーをオウムのように繰り返すだけであることも指摘されています。
国民たちが、マーチやデモンストレーションで、これだけ虐殺を止めるよう、武器の輸出やインテリジェンスでの協力(イギリス軍が毎日ガザに偵察機を飛ばしインテリジェンスをイスラエル軍に提供)をやめるよう呼びかけても、何もしないイギリス政府には失望しますが、揺さぶり続けることをやめてはいけません。
誰もが無力感に陥ったり、自分には直接関係ないことだから、とガザやウエストバンク・エルサレムで起きていることに無関心になれば、イスラエルの思うつぼで、虐殺はさらに加速・残虐になります。
ガザ出身のアナリスト・ジャーナリストのMuhammad Shehadaさんが、「イスラエルは軍事的に強すぎて、丸腰のガザ市民には勝ち目がないのに、抵抗を続けるのはなぜか、抵抗(平和なマーチで、イスラエルに対してアパルトヘイトや包囲をやめるよう求めることなど)しても何も変わらないのだから、あきらめたほうがいいのでは」と聞かれて、抵抗をやめれば事態はさらに悪化するのをパレスチナ人は誰もが知っているから、と答えたことが印象に残っています。
実際、1982年に、レバノンに拠点をおいていたPLO(パレスチナ解放機構)は、難民となってパレスチナに戻れないパレスチナ人の安全を西側諸国が保障することを条件に、レバノンを去り武装解除しましたが、イスラエルとイスラエルに協力するレバノンの極右派によって、丸腰のふつうのパレスチナ人市民(多くの子どもも女性も)の約3000人が36時間の間に虐殺されました。
パレスチナ解放機構が所在していた間には、対抗できる武力もあったため、虐殺は起きていません。
武力解除させて、自分たちになんの危険もないことを確認したうえで、普通の市民たちを大量殺人するイスラエルの手段は、今回の虐殺が初めてではなく、長い間続いているパターンです。
フランチェスカさんのレポートに戻ると、イスラエルの移住者植民地主義のパレスチナ地域の乗っ取りの主要な3つの要素は以下です。
これは、アメリカ・カナダ・オーストラリアで、西ヨーロッパから侵略してきた白人・キリスト教徒が、現地の原住民だった人々に対して行ったことと、根本的に同じです。
①Displacement(ディスプレィスメント/強制的に移動させること)
原住民を武力や暴力で、強制的に移動させる
②Replace(リプレース/置き換えること)
マジョリティーであった、その地域に数世紀にわたって住んでいた原住民を、侵略者(イスラエルであればユダヤ人)がマジョリティーとして置き換わる
③Erasure(イレィジャー/抹消すること)
民族やグループとして存在することを不可能にする。
一番極端な形式は、虐殺。現在、ガザ地域で起こっていること
フランチェスカさんの報告書のフォーカスは、どのように企業が、パレスチナ人の「強制移動」「置き換え」「抹消」を可能にし、「移住者植民地主義の占領と虐殺の経済の統合」を行っているかを明らかにしています。
この報告書の終わりには、アクションを取ることを呼びかけています。
罪のないひとびとの命を抹消することを可能にし、そこから利益をえている商業的な活動は、止まらなければなりません。
企業・団体は、人権の侵害と国際犯罪への共犯となることを拒まなければならず、さもなければ、責任を問われるでしょう。
ここでは、「強制的な移動」「置き換え」に直接関わっている企業と、この2つを可能にしている「Enablers(イネィブラーズ/ 可能にするために助けているひとびと・機関や団体」について見ていきます。
武器や偵察テックなどはすぐに思いつくかもしれませんが、「Enablers(イネィブラーズ/ 可能にするために助けているひとびと」には、慈善団体・大学・銀行・保険会社・年金企業など、見えにくいものも多く含まれています。
①Displacement(ディスプレィスメント/強制的に移動させること)に関わっている企業
重工機、兵器、偵察に関するテクノロジー等が関わっています。
子会社や兄弟会社などの多くのレイヤーがある場合もあります。
例えば、Caterpillar(キャタピラー)は、イスラエル軍とイスラエルの兵器想像企業との深いコラボレーションでよく知られている例です。
キャタピラーは、数十年にわたって、パレスチナ人の家を破壊する機器をイスラエルに提供し続けてきました。
それだけでなく、キャタピラーは、ほかの大きな兵器製造に関する企業、Elbit Systems(エルビット・システムズーイスラエル最大の武器製造企業)、イタリアで最大の武器製造企業Leonarudo DRS(レオナルド)、イスラエルの航空業界ともパートナーシップがあります。
イスラエルは、キャタピラー社の特定の機種であるブルドーザーを、軍隊の核となる兵器として、自動化していて、リモート・コントロールできるように改変し、2000年以来、ほとんどの軍隊活動に使われています。
例えば、イスラエルが、(国際法でパレスチナと認定されている)パレスチナ地域への侵攻を行う際には、侵攻ラインの確保や「地域の無力化」(=建物の破壊、ひともすべて殺して、パレスチナ人からの反撃が起こりえない状態を確保)、そしてパレスチナ人の殺害に使用されています。
実際、イスラエル兵たちが、国際法違反にあたるパレスチナ地域のパレスチナ住居を破壊していたときに、それを止めに入ったアメリカ人女性、Rachel Corrie(レィチェル・コリー)さんは、2003年に、意図的にイスラエル兵の操縦するブルドーザーにひかれ、殺されました。
レィチェルさんは、操縦者であるイスラエル兵から完全にみえる場所にいて、かつ、このイスラエル兵は、一度彼女をひいた後、ブルドーザーをバックして、もう一度彼女をひいたそうです。
イスラエル軍が主導する国際調査で、兵士には落ち度はなかった、という報告が行われましたが、レィチェルさんと一緒にいた活動家のひとびとや、レィチェルさんの家族は正義が行われることをあきらめていません。
これも、イスラエルが関わると、アメリカは自国民が不正に殺されても何もしない、というダブル・スタンダードを示しています。
キャタピラー社はガザにおけるガザの中心におかれています。
キャタピラー社の機器は、(ガザの)大量破壊を行うことに使われていることが、記録されています。
普通の市民の家や、モスク、命を保つために必要な施設(浄水施設や下水施設、電力施設など)を含みます。
病院の襲撃や、負傷したパレスチナ人を生き埋めにすることにも使われています。
2025年には、キャタピラー社は、さらに、数億アメリカドルの契約をイスラエルとかわしました。
この重工機器業界では、キャタピラー社以外にも、多くの国際企業が占領・虐殺に関わっています。
韓国のHyundai(ヒュンダイ)、スウェーデンのVolvo Group(ヴォルヴォ・グループ)やこれらの企業の子会社などの重工機器も、パレスチナ人の家の破壊、農地の破壊、オリーヴ畑の破壊(オリーヴは、多くのパレスチナ人にとって大事な収入源であり、かつ文化的にとても大切なもの)などに使われてきました。
それだけでなく、パレスチナ人の村や町を完全に破壊した後に、国際法で違法である、ユダヤ人違法移住者の家や村をつくる建設にも、これらの企業の重工機器が使われ、大きな利益を得ています。
軍隊の偵察テクノロジーは、イスラエル入植者植民主義における(原住民であるパレスチナ人の)「強制的な移動」に大きな役割を果たしています。
イスラエルのNSO Groupは、偵察テクノロジーではグローバルな市場をつくりあげましたが、それ以外にも、国際的な企業であるIBM、Hewlettt-Packard(ヒューレット・パッカード)、Microsoft(マイクロソフト)、 Google(グーグル)、Amazon(アマゾン)、Palantir(パランティア)が、パレスチナ人の「強制的な移動」をサポートしています。
②Replace(リプレース/置き換えること)に関わっている企業
イスラエルが、パレスチナ人を強制的に移動させたあと、その土地に、イスラエルの(国際法違法の)ユダヤ人違法移住者の植民地がつくられます。
ここでは、新たな家や施設の建設、占領されているパレスチナ地域から盗んだ原材料(建設につかう岩や石など)の採掘や移動、アグリビジネス、旅行業などのさまざまな国際企業が、イスラエルの植民地を新たに作ることと、保持することによってその地域のコントロールを統合させることをサポートします。
ここでは、多くの国際企業が、イスラエルによるパレスチナ人の強制移動と、パレスチナ人からの盗みをnormaliseする(ノーマライズ/普通・当たり前のこととする)役割を果たします。
これは、長年続いているものの、2023年11月以降加速し、2023年11月から2024年10月の間に新たな57の植民地とOutposts(アウトポスツ/違法にパレスチナ人の土地を盗む最前線の場所)が設立されました。
そこでは、国際的な企業が、機器や原材料、ロジスティクス(原材料調達や物流、生産、それらを管理する過程)サポートを行っています。
「強制的な移動」に関わっている前述した企業(キャタピラー、ヒュンダイ、ヴォルヴォ)だけでなく、ドイツのHeidelberg Materials AG(ハイデルベルグ・マテリアルズ)は、子会社のHanson Israel(ハンソン・イスラエル)を通して、ウエストバンクのパレスチナ人の土地である採掘場から数百万トンのドロミテ岩を略奪しました。
2018年に、ハンソン・イスラエルは、植民地建設の採掘場から原材料を提供する入札に勝ち、その後、(イスラエルが違法な)植民地をどんどん拡張しているため、採掘場のドロミテ岩は、ほぼ使いつくされました。
交通
(パレスチナ人を殺したり、家々を破壊して武力でパレスチナ人を追い出した後の)植民地では、さまざまな国際企業が、この植民地の設立と拡張のためにとても重要な、道路や公共交通機関の開発を助けています。
これらの道路や公共交通機関は、ほかのイスラエルの違法植民地やイスラエル地域をつなげますが、パレスチナ人の村やパレスチナ人たちを分離させることに使われます。
(例/これらの道路や公共交通機関は、イスラエル人だけが使え、パレスチナ人は使うことが許されていない等ーアパルトヘイト・人種差別を実行している一例)
スペイン・バスク建設企業の「Construcciones Auxiliar de Ferrocarriles(略称:CAF)は、エルサレムのモノレールの拡張・メインテナンスと、新たな路線を建設しました。
これは、ほかの企業が、国際的なプレッシャーにより、この開発・拡張・メインテナンスから退いた、まさにそのときに起こっています。
この鉄道は27キロの新しい線路とウエストバンクの50の新しい駅を含み、ウエスト・エルサレム(イスラエルが、国際法違反で、一方的にイスラエルに併合したエルサレムの西側地域)を結んでいます。
Real estate(リアル・エスティト/不動産)
国際的な不動産企業は、植民地(イスラエルが違法に、暴力的に盗んだパレスチナ人の土地)の不動産や土地を、イスラエル人や国際的なバイヤーたちに売っています。
国際的な不動産グループ「Keller Williams Realty LLC」は、イスラエルのフランチャイズ企業「KW Israel」を通して、これらの植民地にいくつかの支店をもっています。
2024年3月の段階で、「Keller Williams Realty LLC」は、別のフランチャイズ「Home in Israel」を通して、カナダやアメリカで、バイヤーに植民地のアパートメントや土地を売るイベントを各地で開催しています。
(不動産企業だけでなく、マーケティング企業にも儲けがでる)
そして、ここには、「occupation tourism(占領ツーリズム)」があり、「Booking.com」と「Airbnb」が関与しています。
これらのトラベル・プラットフォームは、数百万人の人々によって使われ、植民地を保つこと、パレスチナ人を除外し、(違法な)植民地の存在を正当化する(違法)移住者のナラティヴを促進させます。
Booking.comとAirbnbは、これらの(違法)植民地にある家やホテルの部屋をリストに載せ、大きな利益をえています。
Airbnbは、2016年には(違法)植民地の139の部屋のリスティングだったのが、2025年には350の部屋・アパートメントをリスティングし、最大23パーセントの手数料を徴収しています。
これらのリスティングは、(法律的に正当な土地の持ち主である)パレスチナ人たちの自分たちの土地へのアクセスを妨げ・制限し、近くの村々を危険に陥れています。
また、Airbnbのリスティングでは、この植民地のコミュニティー(=パレスチナ人を殺したり日常的にひどい暴力でパレスチナ人を追い出している違法移住者であるユダヤ人たち)を、「温かで近隣愛にあふれるコミュニティー」のように、パレスチナ人に対する(違法)移住者の暴力をwhitewash(ホワイト・ウォッシュ/都合の悪い事実を隠すためのごまかし)することを助けています。
The enablers (ザ・イネィブラーズ/後援者、可能にしている人々)
Displacement(ディスプレィスメント/強制的に移動させること)とReplace(リプレース/置き換えること)を可能にしているのは、私たちが地球上の市民が普通に関わっている企業や機関・団体で、イスラエルの違法なパレスチナ地域の占領から、大きな利益をあげています。
これらの企業、機関・団体の利害関係者たちは複雑にからみあった大きなネットワークとなっています。
たとえば、金融(銀行や保険)、アカデミア(大学)、アグリビジネス、ロジスティクス(物流企業)、エネルギー(石油やガス、電気)、兵器産業(近年は「防衛産業」とよびかえてホワイト・ウォッシング)などです。
フランチェスカさんの報告書では、各業界について、詳細が説明されています。
兵器産業などのように直接虐殺に関わるものとは違い、想像しにくい分野だと思うので、フランチェスカさんの説明をいくつか訳しています。
Banking and Insurance(バンキング・アンド・インシュランス/銀行と保険)
戦争犯罪と人道に対する犯罪は、一般的にリスキーなビジネスです。
多くの混乱・騒動をつくりだしている国(=イスラエル)に投資することは、多くの企業やひとびとにとって常識や直感に反することにも関わらず、多くの投資家たちが(イスラエルの)ハイテック企業を(投資することによって)救いました。
この戦争のマシーンを動かし続けるための投資を確保することは重要で、だからこそ、金融の大企業は重要です。
フランチェスカさんは、イスラエルが虐殺を続けるために、世界最大の銀行が金融のカヴァーを与えていることを説明しています。
国際的な大銀行、BNP Paribas(フランス本拠地のBNPパリバ)、Barclays(イギリス本拠地のバークレイズ)も含みます。
これらの大銀行の一部は、市場の信頼感を高めるために、(イスラエルの)国際・国内の国債を引き受け、信用格下げがあったにも関わらず、イスラエルが金利のプレミアムを抑えることを可能にしました。
上記のイスラエルの国際・国内の国債は、36か国からの少なくも400以上の投資家によって、買われました。
この中には、Blackrock(ブラック・ロックー6800万アメリカン・ドル投資)、Vanguard(ヴァンガードー5億4600万アメリカン・ドル投資)、アリアンツの子会社であるPIMCO(ピムコー9億6000万アメリカン・ドル投資)などが含まれます。
これらは、イスラエルが虐殺を続けることを大きく助けています。
一方、イスラエルの開発公社(イスラエル債券)は、イスラエル政府のために、海外の個人投資家やその他の投資家に対して債券購入を勧誘するサービスを提供しています。
イスラエル開発公社は、2023年10月以降、年間の債券販売額を3倍に増やし、約50億ドルをイスラエルに送る一方で、投資家には債券投資による利益をイスラエル軍および入植地を支援する慈善団体に送金するオプションを提供しています。
保険会社もこれを支援しています。
アリアンツ(ドイツ拠点)やAXAなどの世界的な保険会社も、占領および虐殺に関与する株式や債券に多額の資金を投資しています。
一部は、保険契約者への支払い義務や規制上の資本準備金としての目的によるものですが、主に利益を生み出すための手段とされています。
アリアンツは少なくとも73億ドルを、AXAは一部の投資撤退を決定しているにもかかわらず、現在でも少なくとも40億9千万ドルを(フランチェスカさんの)報告書に記載されている企業(=虐殺に関与している企業)に投資しています。
さらに、これらの保険契約は、他の企業がイスラエルおよび(違法)占領下パレスチナ地域で事業を行う際に必然的に引き受けるリスクを補償することで、人権侵害の実行を可能にし、事業環境の「リスク除去」に寄与しています。
年金基金も、これに関わっています。
この中には、ノルウェー(世界最大)と、カナダ年金基金も含みます。
sovereign wealth fund (ソヴェレィン・ウェルス・ファンド/政府が出身する投資ファンド)と、年金基金も、(パレスチナ人虐殺に関わる)とても大きな投資家たちです。
ノルウェー政府投資基金は、世界最大で、とてもエシカルな投資ガイドラインに従っていると謡っています。
それにも関わらず、2023年10月以降、ノルウェー政府投資基金は、イスラエルに対する投資を32パーセント増やしました。
これは、19億アメリカン・ドルという大金です。
600万人のカナダ人の年金基金を運営しているThe Caisse de dépôt et placement du Québec(カナダのケベック州貯蓄投資公庫)は4733億カナダ・ドルのうち、96億カナダ・ドルを、フランチェスカさんの報告書にあるパレスチナの占領・パレスチナ人の虐殺から利益をえていると判断された企業に投資しています。
2023年から2024年の間、アメリカの世界でも最大とみられる兵器製造をしているLockheed Martin(ロッキード・マーティン)社への投資を3倍にし、キャタピラーへの投資を4倍にし、ヒュンダイへの投資を10倍に増やしました。
カナダのケベック州貯蓄投資公庫は、ヒューマニティーと厳正なエシカルに沿った投資を行っていると謡いながら、実際には、パレスチナの占領とパレスチナ人の虐殺に貢献しています。
Academia(アカデミア/学術)
アカデミア(大学など)と、パレスチナの占領と虐殺がどう関わっているかと不思議に思うかもしれませんが、実は、深いつながりがあり、イスラエルや兵器製造企業とのかかわりをたつと、経済的にたちゆかなくなる大学もかなりあります。
世界で最も名の高い大学の多くは、イスラエルとつながっています。
一例は、MIT(マサチューセッツ工科大学)です。
フランチェスカさんは、以下のように記載しています。
一流大学とみなされる、特にグローバル・マイノリティーの国々(西側諸国ーヨーロッパの白人を祖先とする国々+日本や韓国などのアメリカに従う経済大国ー地球上の人口の約2割強)にある大学は、直接パレスチナ人を痛めつけている分野のイスラエルの機関とのパートナーシップにあります。
マサチューセッツ工科大学では、イスラエル防衛庁に資金提供された兵器とサーヴェイランス(偵察)リサーチを行う研究室があります。
特筆すべきイスラエル防衛庁のプロジェクトは、ドローンを昆虫の大群のように飛ばしてコントロールするプロジェクトを含みます。
これは、イスラエルがパレスチナ人を殺傷する特異な方法としてガザで2023年10月以降使われています。
アルゴリズムと水面下の偵察技術についても追い求めています。
2019年から2024年の間には、マサチューセッツ工科大学は、イスラエルのチームとマサチューセッツ工科大学の学生たちをコネクトする、ロッキードマーティンのシード・ファンドを運営しました。
Elbit Systems(エルビット・システムズーイスラエル最大の兵器製造企業)は、マサチューセッツ工科大学の産学提携プログラムのメンバーシップを支払うことにより、リサーチや才能ある人へのアクセスが可能になりました。
巨大な、欧州連合のアカデミック・プロジェクトも関わっています。
欧州連合のHorizon Europe Programme(ホライゾン・ユーロップ・プログラム/研究とイノヴェーションのための欧州連合プログラム)は、イスラエル機関と積極的なコラボレーションを行っています。
このイスラエル機関の中には、イスラエルのアパルトヘイトと、イスラエルによるパレスチナ人虐殺に共犯関係である機関を含んでいます。
2014年以来、欧州連合はイスラエル機関に対して24億アメリカン・ドル以上にあたる補助金を支払いました。
このイスラエル機関には、イスラエル防衛庁も含まれています。
同時に、ヨーロッパの学術機関は、この絡み合いから利益を得て、それを強化しています。
ミュンヘン工科大学は、欧州ホライゾン基金から2億1800万アメリカ・ドルを受け取り、そのうち1260万アメリカ・ドルは、イスラエルのパートナー、兵器、テック企業との22のコラボレーションに使われています。
ミュンヘン工科大学とイスラエル国有企業のIsrael Aerospace Industries(イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ)は、ほかの参加者と一緒に、共同で、グリーン水素の給油技術の開発に関わっています。
この技術は、ガザで使われている、イスラエル・エアロスペース・インダストリーズの兵器ドローンで使われている技術に密接に関連しています。
ミュンヘン工科大学は、IBMイスラエルが欧州ホライゾンから受ける775万ユーロ(852万ドル)の資金の一部として、差別的なイスラエル人口登録を運営するIBMイスラエルと提携し、クラウドおよび人工知能システムに取り組んでいます。
※ちなみに、IBMはドイツのナチに協力して、ユダヤ人の虐殺についても、人口を登録したデータベースにあたるような仕組みをつくり運用し、強制収容所の人数の調整、強制収容所に送る人数と列車を配分するようなこともサポートしていました。
今回は、いくつかの大学名が出ていますが、これは氷山の一角であることは覚えておく必要があります。
Agribusiness(アグリビジネス)
アグリビジネスは、イスラエルのイノヴェーションの商標のようにもみられてきましたが、イスラエルの(パレスチナの土地の違法な)占領と切っても切れない関係があります。
パレスチナ人の食料システムを破壊し消滅させ、パレスチナ人の強制移動を加速させる一方で、アグリビジネスは、イスラエル主導の資源搾取と土地を盗み取ることで繁栄しました。
イスラエルが、暴力や殺人で盗み取ったパレスチナ人たちの土地で、イスラエルの入植者植民地主義的な利益を供給する商品や技術を生産し、市場支配を拡大し、世界的な投資を引き寄せました。
入植者植民主義であるシオニズムのイデオロギーをもとにして、原住民(この場合はパレスチナ人)を消し去り、ユダヤ人だけの国をつくろうという目的で、ヨーロッパから白人系ユダヤ人(アシュケナジ)が大量入植する前のパレスチナ地域は、オットーマン帝国の一部であった時代が長く、自然資源も豊富で、肥沃な農地があり、文明が栄えていた地域であったのに、自然資源(水も含む)をユダヤ人たちが力づくで、ときには大量殺人もおかして、盗み取り、その後も盗み続けていることは、歴史上の事実です。
フランチェスカさんの報告書では、イスラエル最大の食品複合企業のTnuva(トゥヌヴァ) と、メキシコのオルビア・アドバンス・コーポレーションが80%を所有する点滴灌漑技術を提供するNetafim(ネタフィム)が挙げられています。
トゥヌヴァは、現在、中国企業のBright Food(Group)が大半を所有していて、(イスラエルによるパレスチナ人の土地の違法)収奪をあおり、そこから利益を得ています。
トゥヌヴァの社長は、一般的に農業、そして特に酪農が、(ユダヤ人違法)入植者の戦略的な事業の柱となっていることを認識しています。
イスラエルは、kibbutzim(キブツ/ユダヤ人の集産主義的共同体)と、農業的なoutposts(アウトポスツ/違法にパレスチナ人の土地を侵略する前哨地)を使って、パレスチナ人の土地を奪い取り、パレスチナ人を(ユダヤ人と)置き換えました。
イスラエルの食料自給率は、8割以上だとみられています。
トゥヌヴァのような企業は、これらの(違法)植民地からの作物や製品を調達することで(ユダヤ人違法植民者たちを)支援し、その結果として捕虜となったパレスチナ市場を利用して、市場の支配を構築しました。
(簡単にいえば、パレスチナ人から土地をうばい、パレスチナ人が耕作できない状態にし、パレスチナ人から盗んだ土地で作った作物や酪農品などを、高い価格でパレスチナ人に売りつけるーパレスチナ人にほかに選択はない)
ネタフィムは、イスラエルの(違法植民地)拡大政策の要請にあわせて、アグリテックを開発しました。
ネタフィムは、サスティナビリティーといったポジティヴな世界的なイメージを保ちながら、そのアグリテックは、(パレスチナ人の土地である)ウエストバンクの水と土地の徹底的な搾取を可能にし、さらに、パレスチナの自然資源を枯渇させました。
ネタフィムは、イスラエルの軍事テック企業との協力を通じて、技術に磨きをかけています。
(イスラエルが違法に)占領しているヨルダン川西岸地区では、ネタフィムは(ユダヤ人違法入植者の)農地の拡大を助ける灌漑施設のインフラストラクチャーを提供しました。
同時に、パレスチナ人に対しては、水へのアクセスを拒否し、パレスチナ人が耕している農地の93パーセントは、灌漑されていない土地です。
イスラエルの農地とは競争にならず、パレスチナ人は、農業からも追い出されています。
さらに、このような灌漑技術は、ヨルダン川と死海の枯渇を招く恐れがあります。
※昨日(2025年7月14日に、イスラエルによる違法包囲によって、飲み水もほぼ入ってこないガザで、やっと入ってきた少量の水を得るために列に並んでいたパレスチナ人が、イスラエルの爆撃により、少なくとも6人の子供を含む10人が殺され、数十人が負傷しました。国連の記事はここより。水や食料というサヴァイヴァルに必要なものを戦争の武器として使うのは戦争犯罪です。)
Logistics(ロジスティクス/物流)
国際的なロジスティクス大企業のMarsk A/S(マースク)は、この「占領経済・虐殺経済」システムには不可欠です。
長年、(イスラエルの違法)植民地からアメリカやほかの市場に向けて製品や農作物を輸送してきました。
2023年10月以降も、民間需要の製品だけでなく、アメリカや他国からの武器の輸入も行い続けています。
フランチェスカさんの報告書ではないのですが、経済専門家のYanis Varoufakis(ヤニス・ヴァロファキス)さんは、海外からイスラエルへの武器の海上輸送の9割以上はマースクが行っていて、マースクが武器輸送を完全にとめれば(国際法でも、虐殺を起こしている国や政府に武器を輸出するのは違法)、マースクにかわる海上輸送会社を探すことはとても難しいはず(=虐殺につかっている多くの武器が届かなくなり、虐殺を止めることに大きく役立つ)、としていました。
Energy (エナジー/燃料)
イスラエルに燃料を提供している企業は、イスラエルによる植民地化だけでなく、虐殺にも寄与しています。
ここでは、多くの世界の企業が関わっています。
電気をつくるための石炭は、コロンビアから主にきています。
(コロンビアは、2024年8月にイスラエルに石炭を輸出しないことを決議)
これらの石炭は、アメリカのDrummond Company, Inc(ドラモンド社)とスイスのGlencore PLC(グレンコア社)が主要な輸出業者です。
この2社のそれぞれの子会社は、石炭の採掘場とみ3つの港を所有していて、2023年10月以降に、15回にわたる輸送を行い、コロンビアが石炭のイスラエルへの輸出を禁止した2024年8月以降にも6回にわたるイスラエルへの石炭輸送を行っています。
グレンコア社は、南アフリカからイスラエルに向けての石油輸送にも関わっていました。
2023年から2024年の間、イスラエルの石炭海外輸入の15パーセントは南アフリカからでした。
これは、イスラエルが、パレスチナの自然資源(水、岩などの鉱物資源、石油・ガスなどの資源)を徹底的に略奪している間に起こっています。
アメリカのChevron Corporation(シェブロン)とイスラエルのNewMed Energyは、Laviathan(レヴィヤタン)とTamar(タマール)油田から、天然ガスを採掘しています。
この採掘により、イスラエル政府は4億5300万アメリカ・ドルをロイヤルティー(油田使用料)と税金として受け取っています。
シェブロン財団は、イスラエルの70パーセント以上の燃料を提供しています。
シェブロンは、パレスチナの海上領域を通り、ヨルダンとエジプトへと天然ガスを運ぶパイプラインを一部所有していることによっても、利益をえています。
ガザの海上封鎖は、この天然ガスのパイプラインとタマール油田をイスラエルが確保することとつながっています。
(イスラエルによるパレスチナ人虐殺の)残虐さが日に日に増す中で、BP(British Petroleum/ビーピーーイギリスの石油企業)は、イスラエル経済への関与を拡大し、イスラエルによって違法に搾取された新たな資源を探すことを許可するライセンスを2025年3月に獲得しました。
この油田地域は、法律的にパレスチナに所属しており、イスラエルが企業に許可をあたえたりはできないし、どの企業も、明らかに国際法違反であるイスラエルの許可証発行を受け入れるべきではありませんでした。
フランチェスカさんの報告書からではないのですが、BPの前身は、イギリスが多くの植民地をもっていた時期に、世界でも有数のイランの石油・ガスを盗んでいたアングロ・イラニアン石油会社です。
1950年代に、イランの民主主義をおしすすめるモサッデグ首相が、イラン国民のために、自国の石油・ガスを国有化しようとしたことに対して、イランの石油・ガスへの利権を失うことをどんな手段をとっても許さないイギリス政府とアメリカ政府が共謀して、モサッデグ首相に対して軍事クーデーターを起こし、イギリスとアメリカの傀儡政権である、残虐なパフレヴィー2世を据えました。
この残虐なパフレヴィー2世は、アメリカやイギリスなどの西側諸国の傀儡政権として個人的にもこれらの国々から利益をえる一方、イランを警察国家にし、多くの無実の市民を拷問にかけたり、殺したり消したりして、多くのイラン国民から嫌悪されていました。
イランはこのパフレヴィー2世を自国内での革命で取り除いた後、アメリカやイギリスなどの西側政府にバックアップされたイラクから、侵略を受け、8年にわたる戦争に巻き込まれました。
これは、イランの世界でも有数の石油・ガス資源を西側のコントロール下にいれるためであったことは明らかで、この戦争では、ドイツがイラクに提供した化学兵器も使われ、多くのイラン人が殺害され、今でも化学兵器の後遺症で亡くなる人、苦しむ人々も存在します。
戦争犯罪ですが、西側諸国からの賠償などは全くありません。
イランは、リチウムの埋蔵量も大きいことが分かっており、現在も、西側諸国がコントロール下にいれることを狙っていることは明らかです。
アメリカやイギリスは、「自由や民主主義をほかの国々にも伝え、暴政からひとびとを解放している」といったプロパガンダを繰り広げていますが、これらの西側諸国は、旧植民地国が独立したあとも、手口をかえて、資源を盗み続け、これらの国々が発展できないようにし、世界全体を不安定にしています。
南アメリカやアフリカ、中東、アジアの国々で、民主主義の流れが起こり、首相や大統領などのリーダーが、資源を国有化して自分たちの国民の教育・福祉などに使おうとすると、アメリカとその味方の国々(イギリス、フランスなど)が軍事侵略したり、間接的に軍事クーデーターを起こし続けていることは、Wikileaksだけでなく、多くの記録から明らかになっています。
アメリカやほかの西側諸国は、西側諸国以外の地域で、戦争や紛争を常に引き起こし、民主主義を壊し続けているという事実は、覚えておく必要があります。
アメリカの軍事産業の規模や予算は、世界の中でも飛びぬけて大きいことは、戦争を起こし続けることが、これらの企業に利益をもたらしていることを示しています。
その一方で、西側諸国以外に住んでいるひとびとの命がこれらの軍事産業によって暴力的に奪われ続けていることも心に止めておく必要があります。
military industry (ミリタリー・インダストリー/軍事産業)
軍事産業は、直接パレスチナ人を消去する(=虐殺)ことに関わっていて、そこから利益をえています。
軍事産業は、(イスラエル)国内と、国際的な経済利益を供給しています。
軍事複合産業は、(イスラエル)国内の経済的な背骨となりました。
2020年と2024年の間、イスラエルは、世界で8番目に大きい兵器の輸出国となりました。
イスラエルの最も重要な2つの兵器企業は、Elbit Systems(エルビット・システムズ)と国有企業のIsrael Aerospace Industries(イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ)です。
上記の企業は、世界のトップ50の兵器企業に含まれています。
ガザでの虐殺に多く使われているF-35戦闘機プログラムは、アメリカを含む、国際的な協力が大きく関わっています。
イスラエルは史上最大の防衛調達計画の恩恵を受けていて、それは米国のロッキード・マーティン社が主導するF-35戦闘機の計画も含まれています。
この計画には、イタリアのレオナルド社を含む1650社以上の企業、そして8つの国が関与しています。
2023年10月以降、F-35およびF-16戦闘機は、イスラエルにかつてないほどの航空戦力を供給する要となり、およそ85000トンの爆弾(その多くが誘導されていない=正確に標的をしぼることができない仕様で無差別に市民を殺している、広島と長崎に落とした爆弾より、何倍も多い)を投下することで、179441人以上のパレスチナ人を殺害または負傷させ、ガザを壊滅させました。
また、エルビット・システムズ社製のドローンは国際的な協力の成果でもあります。
日本のファナック株式会社のようなサプライヤーは、兵器生産ライン向けのロボット機器を提供しており、それはイスラエル・エアロスペース・インダストリーズ、エルビット・システムズ)、ロッキード・マーティン社にも供給されています。
そして、輸送に関しては再びマースク社が登場します
デンマークのA.P. モラー・マースク社などの海運会社は、部品や武器、原材料などの部品を輸送し、2023年10月以降、あメリカから供給される軍需品の安定した流れを維持しています。
このように、純粋な軍事産業だけでなく、パレスチナ人に対する攻撃の最悪の部分として人々が想起するものとは別に、イスラエルのパレスチナおよびパレスチナ人に対する支配の装置には、とても多くの要素があります。
それはとても巨大で、グローバルにつながっているため、世界の誰もが少なくとも一つは関与企業を知っていると言っても過言ではないでしょう。
私たちの責任
フランチェスカさんは、報告書を、国家、企業、国際刑事裁判所、国際連合への推奨でしめくくっています。
企業に対しては、「パレスチナ人に対して国際犯罪と人権侵害を引き起こしていることに貢献している、直接関与している関係性を完全にたち、すべてのビジネス活動を止めること」と、「パレスチナ人に対して賠償金を支払うこと」を推奨しています。
フランチェスカさんは、賠償の例として、アパルトヘイトが終わった後の南アフリカ共和国で実際に行われた、apartheid wealth tax(アパルトヘイト・ウェルス・タックス/アパルトヘイト富裕税)を挙げています。
国家と国際機関(国際刑事裁判所、国際連合など)に対しては、イスラエルだけでなく、違法行為を可能にしている企業に対しても、各国がすでにもっている責任追及の仕組みを適用するよう求めています。
これに加えて、イスラエルに対して制裁と全面的な武器禁輸措置を行うよう、各国に呼びかけました。
そして最後に、市民社会への行動呼びかけとして、フランチェスカさんは以下のように述べています。
特別報告者(=フランチェスカさん)は、労働組合、法律家、市民社会、そして一般市民に対し、パレスチナの正義と国際・国内レベルでの責任追及のために、ボイコット、投資撤退、制裁を推進するよう訴えます。世界中の人々が団結すれば、これらの言語に絶する犯罪を終わらせることができます。
フランチェスカさんは、イスラエルによる虐殺を可能にしている、世界規模の連携ネットワークを明らかにしています。
その規模の大きさに圧倒される人もいるかもしれませんが、それは無敵のシステムではありません。
それは資源と金銭という非常にありふれた要素に基づいており、経済的ネットワークと世界的な合意に依存しています。
そして、これがこのシステムを解体する鍵となります。
フランチェスカさんは、以下のように締めくくっています。
報告書が明らかにした共犯関係は氷山の一角に過ぎません。
これを終わらせるには、民間セクター、特にその経営者たちの責任を追及することが不可欠です。
国際法は、責任の度合いに応じて精査と責任追及が必要であることを認めています。
特にこの件では、人々の自己決定権と存在そのものが問われているのです。
これは虐殺を終わらせ、それを可能にしてきた世界的なシステムを解体するために必要なステップです。
【参考】
Militarisation(ミリタライゼィション/軍事化)についての私の過去の記事
https://www.thegreencatalyst.com/blogs/post/20241205
https://www.thegreencatalyst.com/blogs/post/20241206
https://www.thegreencatalyst.com/blogs/post/20241210
https://www.thegreencatalyst.com/blogs/post/20241212
https://www.thegreencatalyst.com/blogs/post/20241216